不動産売却、売買契約の締結後に解除する手順は?気を付けたい注意点も

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不動産売却を進めている売主の中には、買主と売買契約を締結したものの、何らかの理由で契約を解除したいと考えている人もいると思います。

売主の都合で自由に契約を解除できると、買主の計画に支障が生じるため、解除できないと思っている人も多いかもしれませんが、どのようなケースであれば売買契約の締結後に解除できるのでしょうか?

この記事では、売買契約の締結後に契約を解除できるのか、解除する場合の手順と注意点を解説します。

目次

  1. 売買契約は双方から解除が可能
  2. 売買契約の解除方法
    2-1.手付放棄による解除
    2-2.契約違反による解除
    2-3.契約不適合責任による解除
    2-4.話し合いによる合意解除
  3. 履行の着手後は原則解除できない
  4. まとめ

1.売買契約は双方から解除が可能

既に不動産の売買契約を締結した売主の中には、売買契約締結後に手放したくなくなった、現在の買主よりも高く購入してくれる買主を見つけたなどの理由で、契約を解除したいと考えている人もいると思います。

不動産売買契約の締結後でも、契約内容によっては買主と売主の双方から契約解除を申し出ることができるケースがあります。

ただし、契約解除が可能と言っても、無条件で契約解除が認められているわけではありません。

2.売買契約の解除方法

不動産の売買契約締結後に契約解除を申し出る場合、どのような条件に該当していれば契約を解除できるでしょうか?売買契約締結後に契約解除をできる条件は、大きく以下の4つに分類されます。

  • 手付放棄による解除
  • 契約違反による解除
  • 契約不適合責任による解除
  • 話し合いによる合意解除

解除方法の中には、期限が定められているものもあるため、事前にどんな違いがあるのか、注意点などを理解しておくことが重要です。解除方法ごとの解除の手順と注意点について詳しく見ていきましょう。

2-1.手付放棄による解除

不動産の売買契約を締結する際、取引慣例上、売買代金の1割程度の手付金を買主から受け取るケースがあります。手付金とは不動産の売買契約時に支払う前金のことで、残金は物件の引き渡し日に支払われます。

買主の都合で売買契約締結後に契約を解除する際は、手付金を放棄することで契約を解除することが可能です。

一方、売主は買主から受け取った手付金の倍額を支払うことで契約を解除できます。しかし、手付金の放棄または倍額を支払ったとしても、必ず契約を解除できるというわけではありません。

手付放棄による解除は、「買主または売主が契約履行に着手するまで」もしくは、売買契約書上で手付解除ができる期日の期限が設けられています。契約履行とは、買主の残代金の支払いや、売主の所有権移転登記への着手を指しています。

契約履行の着手前や手付解除の期限前であれば、売主は契約解除の意思を買主に伝えて、手付金の倍額を支払えば契約を解除できる可能性が高いでしょう。ただし、売買契約書に手付放棄による解除に関する条文が盛り込まれていなければ契約を解除できないので注意が必要です。

2-2.契約違反による解除

契約違反とは、履行遅滞や不完全履行、履行不能などの債務不履行に該当するケースです。例えば、買主の残代金の支払いが遅れている、火災や地震などの影響を受けて契約時点の状態で物件を引き渡せなくなったなどです。

ただし、買主が履行遅滞や不完全履行に陥っていても、売主はすぐに契約を解除できない可能性が高く、相当の期間を設けて催告するなどの対応が必要になるケースがあります。買主が履行遅滞や不完全履行に陥っている場合、契約の解除をスムーズに進めるためにも、「○月○日までに履行されない場合には契約を解除する」と速やかに催告しましょう。

2-3.契約不適合責任による解除

契約不適合責任とは、物件の柱や屋根などの構造上主要な部分に欠陥が見つかるといった物理的瑕疵、近くに墓地や火葬場があるといった心理的瑕疵など、物件に潜む瑕疵が原因で買主が目的を達成できない場合に売主が負う責任です。

売主が不動産を解除する場合に利用できる条件ではありませんが、2020年4月1日の民法改正で売主の負う責任が大きくなったため、こちらの解除条件についても確認しておきましょう。

このような契約不適合責任に該当する瑕疵が見つかった場合、買主から瑕疵の補填、代金の減額、解除、損害賠償請求のいずれかを請求されます。

故意や過失がない場合でも売主は責任を負わなくてはならないため、不動産の売買契約を締結して物件を引き渡した後も、契約不適合責任で契約を解除される可能性があります。売買契約に契約不適合責任の期間を設定しておくなどの対策が必要になります。

【関連記事】売主が不利に?不動産売却の契約不適合責任(瑕疵担保責任)を解説

2-4.話し合いによる合意解除

契約違反や契約不適合責任に該当していない、手付放棄による解除が売買契約書の条文に盛り込まれていない場合は、契約を解除できないのか気になっている人も多いと思います。

そのようなケースでも、買主と売主の話し合いによって双方の合意を得られた場合、契約を解除できます。

例えば、手付金を納めているケースでは手付金の放棄または倍返しで契約解除に合意する、契約を解除する側が違約金を支払うなどです。

しかし、条件を定めて契約解除に合意したものの、口約束の場合は条件が履行されず、後でトラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。

話し合いで契約を解除する場合は、条件についてしっかり話し合った後で覚書などの書面にまとめ、双方の署名と押印を行うなど、話し合った内容を残しておきましょう。

3.履行の着手後は原則解除できない

買主に何らかの落ち度がない限り、売主から解除を行う手段としては、手付解除を申し出ることが現実的であると言えます。しかし、売主が手付放棄による解除を申し出ることができるのは、買主の履行の着手までか、手付解除の可能日までに限られています。

買主が履行に着手した後は手付放棄による解除ができませんが、話し合いによって契約の解除に導くことは可能です。

買主は売主の話し合いに債務の履行(物件の引き渡し)または違約金の支払いのどちらかを選択できるため、必ず契約を解除できるわけではありません。

着手後は契約を解除できる可能性が低くなる、違約金という無駄な費用負担が増えるため、確実に解除したいまたは費用負担を抑えたいと考えている売主は、買主の履行の着手前に速やかに解除を申し出ましょう。

4.まとめ

不動産の売買契約を締結した売主の中には、何かしらの理由によって契約を解除したいと考えている人も多いと思います。

売買契約締結後は契約を解除できないと考えている人も多いかもしれませんが、契約後も買主と売主の双方から契約を解除することは可能です。

しかし、必ず契約を解除できるわけではありません。期限が定められているケースや解除の条件が定められているケースもあるため、解除方法と手順、注意点を把握し、売買契約書を確認することが大切です。

また、これから売買契約を締結する場合は、手付解除のできる期限や、契約不適合責任の期間について確認をしておきましょう。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。