経済成長を背景に不動産投資で注目される新興国の中でも、フィリピンは多くの投資マネーを呼び込んでいます。キャピタルゲイン・インカムゲインともに大きく、米USニューズ&ワールド・レポート誌による「2018年 投資するのに最も適した国」の第1位に選ばれるなど、非常に魅力的な市場の一つとして注目を集めています。
今回はフィリピンでコンドミニアムを購入する方法とリスク、注意すべきポイントなどをご紹介していきます。
目次
- フィリピンの不動産状況
1-1.なぜフィリピンで不動産投資が人気なのか
1-2.不動産相場の推移と家賃利回り
1-3.経済成長と利上げがコンドミニアム購入の追い風に - フィリピンのコンドミニアムを購入する4つのポイント
2-1.コンドミニアム購入にビザは不要
2-2.プレビルド、中古物件の購入が可能
2-3.小切手による支払いが主流
2-4.不動産相場の上昇率が大きいエリアを選ぶ - フィリピンのコンドミニアム購入時における注意点
3-1.プレビルド物件は工期遅れに注意
3-2.プレビルド物件購入はエージェント詐欺に注意
3-3.完成時の支払いに充てる融資がつかないリスクに注意
1 フィリピンの不動産状況
まずはフィリピン不動産の概況と経済の現状から見ていきましょう。
1-1 なぜフィリピンで不動産投資が人気なのか
高い経済成長率を維持する東南アジアの新興国には世界中から投資マネーが不動産市場に流入しており、中でも人気を集めているのがフィリピンです。過去5年間の不動産価格の上昇率をみてみると、中国(49.38%)や香港(53.56%)を上回る70.28%となっています(Global Property Guideより)。
直近1年間を見ても日本(5.74%)に対して10.26%と大きく上昇していることから、不動産投資のためにコンドミニアム購入を検討する海外投資家も多くいます。
フィリピンは1990年までASEAN主要国の中で経済成長率では最下位でしたが、2010年のアキノ前大統領就任時には7.6%にまで上昇しました。
2012年以降はASEANの中でもトップクラスの経済成長率となり、世界の投資家がフィリピンのコンドミニアムを購入し、不動産相場も急速に上昇してきました。
フィリピンの経済成長を支えるのは高い出生率です。年々低下しているものの、2016年の合計特殊出生率(1人の女性が15〜49歳までに産む子供の数の平均)は2.96%となっています(THE WORLD BANK「Data Indicators」より)。
また、2018年の経済成長率は6.67(日本は1.21)と高く、まだまだ不動産相場は堅調に推移することが予測されます(IMF「World Economic Outlook Database」より)。
それではフィリピンのコンドミニアム価格の推移と賃貸利回りを見てみましょう。
1-2 不動産相場の推移と家賃利回り
フィリピンのGlobal Property Guideのデータによると、首都マニラにおけるコンドミニアムの価格(1平米単位)は、上昇を続けています。
2016年初頭 | 167,950フィリピンペソ(約347,600円) |
2017年初頭 | 185,950フィリピンペソ(約384,900円) |
2018年初頭 | 205,021フィリピンペソ(約424,400円) |
(※2018年8月時点でのレート 1フィリピンペソ=約2円で換算)
また、家賃利回り(40平米のコンドミニアムの場合)は2016年の時点で6.13%から7.64%と高い水準です(Global Property Guideより)。
価格上昇は年間10%以上ですが、コンドミニアムの価格は日本と比べると安価です。6%以上の賃貸利回りとなる40平米のコンドミニアムでも1,600万円程度となります。東京の4分の1の価格で首都マニラに高級コンドミニアムを購入することができるのが人気の理由のひとつです。
1-3 利上げがコンドミニアム購入の追い風に
フィリピンのコンドミニアムの魅力は、価格上昇だけではありません。経済成長に伴うフィリピンペソの上昇も期待できます。
海外コンドミニアムを購入する際、一般的には円高となった方が得で、売却時には円安ほど円換算での利益は大きくなります。
2015年にフィリピンペソは円に対して高値をつけたあと、2018年3月までジリジリと下がりました。フィリピンペソの下落は米国の利上げの影響を受けたのが主な理由ですが、フィリピン中央銀行は2018年6月に金利引き上げを実施しています。
インフレ率の上昇を抑える目的もありますが、この利上げに伴うフィリピンペソの上昇が見込むことができます。つまり、「ペソ高円安」となることでフィリピンのコンドミニアムを購入する投資家にとっては追い風になるでしょう。
2 フィリピンのコンドミニアムを購入する4つのポイント
それではフィリピンでコンドミニアムを購入する前に知っておきたいポイントをご紹介します。
2-1 コンドミニアム購入にビザは不要
フィリピンでは非居住者である外国人は土地を保有することができません。この点は他の東南アジア諸国と同様ですが、コンドミニアムや低層のタウンハウスなどの購入は可能です。ただし、1棟の中の40%までと法律で制限されています。購入後は登記することも可能です。
契約書は英語表記となり、支払いに関する記述内容は小切手割引やローンのシステムについて専門用語が使用されるため、専門家に依頼するなど十分にチェックする必要があります。
なお、外国人が不動産を購入する際にピザは必要ありません。フィリピンのビザは30日以内の滞在であれば不要で、延長したい場合は現地の大使館で計59日間まで伸ばすことができます。
※2018年時点の情報ですので、最新情報はフィリピン政府のサイトやエージェントなどにご確認下さい。
2-2 プレビルド、中古物件の購入が可能
フィリピンでは中古不動産のマーケットが十分に整備されていないため、一般的にはプレビルド物件が購入対象となりますが、中にはデベロッパーからリセール(中古物件)やラッシュセール(売却を急いでいる物件)に関する情報を得ることもできます。
なお、リセールは完成直後に売却される物件(新古物件)を含みます。RFO(Ready for Occupancy)とも呼ばれる物件です。プレビルドで安く購入した投資家は、このリセールでキャピタルゲインを狙うことになります。
ラッシュセールは事情があって売却を急いでいる物件です。プレビルドのコンドミニアムは建設工事が進む段階に応じて分割で支払いますが、何かしらの事情により支払いが難しくなったオーナーが、早急に売り出す物件がラッシュセールです。
プレビルド物件は支払いが滞ってしまうと、それまで支払ったお金は没収されて契約自体がキャンセルとなってしまうため、それを避けるために、売り急ぐというわけです。通常の市場価格よりも安く購入できるのがメリットです。
ただし、ラッシュセール情報は入手するのが難しいため、通常はプレビルド物件を建設前に購入する形が多くなります。
2-3 小切手による支払いが主流
コンドミニアムを購入する代金の支払い方法は、複数あります。
まず現金で一括支払いする場合、10%以上の割引を受けることができます。
分割払いする場合、頭金として10%から50%を支払い、残りは工事の進行に応じて小切手で支払うことになります。ローンを利用しないケースでは小切手による支払いが一般的です。
このほか、ローンを組んで支払う方法もあります。フィリピンでは外国人も現地銀行でローンを組むことができます。例えばHSBC(香港上海銀行)は外国人でも保証人なしで住宅ローンを組めます。融資限度額は最大60%となるため、残りは頭金を入れる必要があります。融資期間は最長20年、融資利率は変動金利で年4.5%です。
2-4 不動産相場の上昇率が大きいエリアを選ぶ
フィリピンでコンドミニアムを購入する場合、需要の高いエリア選びが必要です。インフラが整備されて人が多く集まり、不動産相場の上昇率が大きなエリアを選びましょう。これはキャピタルゲイン、もしくはインカムゲインを狙う場合でも同じです。もちろん、不動産価格が急騰して下落リスクを伴うようであれば別ですが、マニラは上昇余地があります。
参考としてGlobal Property Guideの2016年のデータをもとに、40〜50平米のコンドミニアム価格と賃貸利回りを比較したものをエリア別にご紹介します。価格は平米あたりの米ドル表記となっています。
エリア | 1平米あたりの価格 | 利回り |
---|---|---|
ロックウェルセンター | 4,236ドル/㎡ | 6.39% |
レガスピ・ビレッジ | 3.359ドル/㎡ | 7.38% |
マニラ(メトロ・マニア) | 2.918ドル/㎡ | 7.01% |
サルセド・ビレッジ | 2.844ドル/㎡ | 7.35% |
これはひとつの参考例に過ぎませんが、人気エリアは刻々と変わるため、コンドミニアムの建設計画などを参考にして需要の動向をチェックしつつエリア選定を行うと良いでしょう。
例えば近未来的な街並みが印象的な「BGC」(ボニファシオグローバルシティ)の北側エリアで建設中の「タイムズ・スクウェア・ウェスト」は、日本のオリックス株式会社が開発を手掛けた物件として注目されています。BGCエリアは開発エリアが進み、地価の上昇率も高いのが特徴です。このような人気エリアの物件をチェックするのが海外不動産投資を成功させる秘訣のひとつです。
3 フィリピンのコンドミニアム購入時における注意点
フィリピンでプレビルド物件を購入する際には注意するべき点があります。後述するように、現地でローンが組めることがリスクにつながるケースもあります。一つずつ見ていきましょう。
3-1 プレビルド物件は工期遅れに注意
フィリピンのプレビルド物件は工期が遅れることが多々あります。契約書にも「工期が遅れる可能性がある」との旨が記載してあり、1年間遅れることも珍しくありません。
ここで注意が必要なのは、「気付かないうちに実はコンドミニアムが完成していた」というケースです。フィリピンの現地ブローカーを通してコンドミニアムを購入した場合、ブローカーが完成したことを把握していないために物件の引き渡しが遅れることがあります。
物件を分割払いしている場合には、完成時に残金を支払う必要がありますが、完成したことを知らず、不払い扱いにならないよう注意が必要です。
3-2 プレビルド物件購入はエージェント詐欺に注意
プレビルド物件は中古物件と比べて割安に購入できる分、計画段階での購入となるため完成しないリスクもあります。英語や現地の言語に堪能でないと、エージェント詐欺に遭う可能性も高くなります。
そのためプレビルド物件の購入では信頼できるエージェントやデベロッパー探しが何より大切です。例えばフィリピン不動産に明るいエージェントは、独自の情報網で得た人気の物件などは、予約金を払って取り置きしています。
またエージェントが日本人ならコミュニケーションに問題はありませんが、その際にも注意が必要です。フィリピンでは不動産ブローカーとして活動するには資格が必要ですが、無資格者も少なくありません。現地エージェントに依頼する際は資格の有無をチェックすることが重要です。
3-3 完成時の支払いに充てる融資がつかないリスクに注意
プレビルドのコンドミニアム購入の利点は、建設途中で分割支払いできるため、最初に現金を用意する必要がありません。また完成後に残金支払いをする際に、現地の銀行でローンを組むことができます。
通常は、完成する半年から3ヶ月前には銀行と交渉し、物件の担保価値を査定してもらった上で融資額が決定します。査定には一般的に2ヶ月ほどかかります。しかし、工期遅れで物件の完成時期がずれ込めば、融資を申し込む時間的余裕が無くなります。十分な査定期間を確保できないと融資を受けることが難しくなります。
またデベロッパーから融資が下りるのは間違いないと太鼓判を押されても、実際に査定してもらうと必要な額の融資が認められないというケースもあります。フィリピンでプレビルドのコンドミニアムを購入する際には、できる限り現金を用意して融資額は少なく済ませることが大切です。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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