チャイナマネーの流入が続くマレーシアでは不動産価格が上昇し、好調な経済成長を維持しています。今後もさらなる投資マネーの呼び込みが期待できることから不動産投資先として日本人にも人気があります。
しかし、外国人がマレーシアの物件を購入する際は、州によって条件が異なるなど事前の情報収集が大切です。
今回はマレーシアにおけるコンドミニアム購入に関する注意点やリスク、失敗例などについてご紹介します。マレーシアの不動産投資を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- マレーシアの不動産状況
1-1.マレーシアの不動産の特徴
1-2.マレーシアのコンドミニアムの特徴
1-3.対リンギット為替相場
1-4.マレーシアのコンドミニアム購入方法 - マレーシアでのコンドミニアム購入ポイント
2-1.コンドミニアム購入の戦略とは
2-2.収益確保の方法 - マレーシアのコンドミニアム投資における失敗例
3-1.賃貸付けに苦労するケース
3-2.購入時よりも安く売却するケース - マレーシアのコンドミニアム購入における注意点
4-1.中国企業が手掛けた物件には要注意?
4-2.信用できるデベロッパーと為替の動きがポイント - マレーシアのコンドミニアム購入リスク
5-1.外国人購入規制の動き
5-2.マレーシア政府の思惑
1 マレーシアの不動産状況
マレーシアは若年層の人口比率が40%超と高いことで有名です。経済成長は若年層を中心とした労働力の多さが基盤となっており、不動産需要が見込めることでもこれからの市場拡大が期待できます。
1-1 マレーシアの不動産の特徴
マレーシアでは不動産価格(一般庶民が購入する比較的安価な価格帯のもの)は上昇傾向にあります。しかし100万リンギット(約2,700万円)を超える高額物件が過剰供給状態となっています。
マレーシア中央銀行によるレポート(2017年11月1日付)によれば、高級不動産開発の供給が低価格住宅の需要を上回っており、マレーシア政府は、高級不動産開発プロジェクトを一時的に凍結すると発表しました。
その結果、現在は100万リンギット以上の高級コンドミニアムの建設が止められており、高級物件の過剰供給が改善するまで続くとみられています(海外メディアTHE EDGE MARKETSより)。
今回のように規制と聞くとマイナスイメージを持つ方は多くなりますが、今回のマレーシア政府による措置は、不動産相場を上げることを目的に供給数を制限した不動産市場のテコ入れ政策といえます。つまりマレーシアの不動産相場は、政府を後ろ盾に今後の上昇が期待でき、逆に安く購入するチャンスと捉えることができます。
1-2 マレーシアのコンドミニアムの特徴
マレーシアのコンドミニアム価格は東南アジア諸国の中でも割安で購入できる水準にあります。
海外不動産メディア「Global Property Guide」の最新データを見ると、各国の主要都市におけるマンション・コンドミニアムの㎡単位における価格は、次のようになります。
- インドネシア:2,823米ドル(約32万1600円)
- マレーシア:3,441米ドル(約39万2000円)
- フィリピン:3,952米ドル(約45万300円)
- タイ:10,373米ドル(約118万1800円)
- 日本:16,322米ドル(約185万9600円)
商業用地にはサービスアパート(コンドミニアムのようなもの)と呼ばれる住宅が建設されますが、1ベッドルームの間取りでも40~100㎡とかなり広いのが特徴で、共用施設としてプールやジム、テニスコートを完備している物件もあります。
1-3 対リンギット為替相場
コンドミニアムの購入では為替レートの相場も重要ですが、マレーシアの通貨リンギットは対円で安く推移しています。
2014年11月に1リンギット35円をつけてから下落し、2016年9月に24.6円をつけてからは徐々に上がり、2018年9月時点では27円台で推移しています。
過去の為替レートからみれば、コンドミニアム購入に有利な安い水準にあるといえるでしょう。
1-4 マレーシアのコンドミニアム購入方法
マレーシア政府は外資が安い物件を買い占めるのを回避するため、自国の不動産相場をある程度コントロールしています。
基本的に外国人が購入できる不動産は、100万リンギット以上の物件のみとなります。ただし州によって規制の条件は若干異なり、例えばリゾートアイランドとして人気のペナン島は最低購入価格が200万リンギットですが、同じ観光地でも北部に位置するサバ州では最低50万リンギットとなります。
なお、長期滞在ビザ(MM2H)を保有している場合、規制は若干緩和されます。例えばマレー半島の西方にあるペナン島では「最低50万リンギット以上、最大2物件」までの購入が可能となります。ビザ保有により信用力が高まるため、住宅ローンも組みやすくなります。
2 マレーシアでのコンドミニアム購入ポイント
マレーシアのコンドミニアムを購入してどのように利益を得るかを見ていきましょう。マレーシアでの不動産投資においては現在の経済状況と不動産市場、購入から売却に至るまでの道筋を立ててから購入計画を立てることが重要です。
2-1 コンドミニアム購入の戦略とは
海外コンドミニアムの不動産投資はおもに売却時での利益(=キャピタルゲイン)を目的とします。あるいは税金対策による利益を確保しつつ売却のタイミングを狙うかのどちらかとなるでしょう。
現在のマレーシアの不動産状況を見ると、すぐに大きなキャピタルゲインを狙うのは難しい状況といえます。Global Property Guideのデータを見ると、上昇は続いているものの前年度比での上昇率は低下しており、大手デベロッパーのプロパティ・グループも2017年第四半期での不動産価格は下落が続いていると指摘しています。
マレーシア政府はこのような状況を踏まえて不動産供給をコントロールしようとしています。経済成長が堅調に続くようであれば、いずれ需要が供給を上回ることで、再び不動産相場が上昇すると予測できます。
そこで、新築のコンドミニアムを購入して完成前に売却する戦略よりも、ある程度賃貸運用を続けて売却の時期を見計らうことになる可能性も考慮すると良いでしょう。もちろんプレビルド物件を購入すれば早期割引により安く購入できますが、外国人が購入できる100万リンギット以上の新規開発が凍結されているため、現在出ている物件以降の販売予定はない点に注意が必要です。
2-2 収益確保の方法
マレーシアのコンドミニアムは中古も購入できますが、管理状態によっては劣化が進んでいる物件もあります。キャピタルゲインが目的であれば新築物件を狙うところですが、価格はかなり高騰しており、さらに100万リンギット以上のコンドミニアム建設は一時的な凍結状態です。
単価価格は安いといえますが、マレーシアで高い利回りが期待できるのは広い間取りの物件となります。例えば首都クアラルンプールのKLCC地区における賃貸利回り平均は次のようになっています(販売価格と賃料の平均も記載しています)。
タイプ | 販売価格 | 賃料 | 利回り |
---|---|---|---|
2ベッドルーム | 41.3万米ドル | 1,281米ドル | 0.0372 |
3ベッドルーム | 67.7万米ドル | 2,025米ドル | 0.0359 |
4ベッドルーム | 90.3万米ドル | 2,567米ドル | 0.0341 |
(Global Property Guideより 2017年11月)
完成前の転売で利益を出すのが一般的ですが、長期間保有する場合、利回りと減価償却費の効果を考慮した売却価格の設定がポイントになります。課税所得によっては、あまりに高額な物件を購入しても税金の還付が追い付いてこないケースもあります。
3 マレーシアのコンドミニアム投資における失敗例
マレーシアにおける不動産投資で失敗するパターンは次のようなケースがあります。
3-1 賃貸付けに苦労するケース
まずクアラルンプールの都心部で新築のコンドミニアムを購入するケースです。
立地が良く、買い物や飲食に便利なエリアの人気物件を100万リンギット未満で購入できたとしても、賃貸付けに苦労することがあります。
その理由は、都心の人気物件でも既に物件が供給過剰になっていると、入居者がなかなか付かないためです。さらに管理会社やオーナーが集客を怠れば状況は一向に改善しません。そういった状況で転売しようとしても買い手がつかない可能性も十分にあります。
3-2 購入時よりも安く売却するケース
次に中古のコンドミニアムを購入して売却するケースです。
築3年の1ベッドルームタイプの中古物件を55万リンギットで購入し、短期の旅行者向けに貸していましたが、2年後に売却を決意するも、購入時を下回る価格でしか売れず、キャピタルゲインを得られないことがあります。
中古物件ではさらに水漏れなどの修理費用がかさみ、収益を圧迫することも珍しくありません。
売却してキャピタルゲインを得るには、エリアごとでどのような条件の物件がいくらで取引されているのかを事前に調査することが大切です。現地不動産会社の言いなりになって相場よりも安い価格で売却しないためにも、自ら調査し、相場感を身につけましょう。
4 マレーシアのコンドミニアム購入における注意点
マレーシアでコンドミニアムの多くを建設しているのは、実は中国企業です。シンガポールに近い人工島では大きな開発プロジェクトが進行していますが、これも中国の不動産開発会社カントリー・ガーデン・ホールディングズが手掛けています。
4-1 中国企業が手掛けた物件には要注意?
中国企業が手掛ける物件は、当初、中国、インドネシア、ドバイなどの投資家をターゲットにした売却を目的としていましたが、2018年5月の政権交代によりマハティール首相が外国人の購入を禁止しました。
また、中国企業が手掛けたコンドミニアムは品質にも要注意です。コストダウンの一環として人件費の高い日本人技術者の雇用をやめたこと、生産現場を管理する者がいなくなったことが原因で、中国メーカーによる品質管理を問題視する声もあります。
もちろん全ての中国企業に当てはまるわけではありません。しかし中国の経済成長に伴って職業の選択肢が広がり、工場労働を敬遠する中国人が増加したことも品質低下の一端と見られています。
4-2 信用できるデベロッパーと為替の動きがポイント
マレーシアでコンドミニアムを購入する際は、デベロッパーの信用力の調査が不可欠です。不具合の多い物件を購入すると、メンテナンスにお金がかかり収益性を圧迫します。デベロッパーがこれまでに手掛けた物件の評判や資金力、今後の成長性などを調べるのが良いでしょう。
またリンギットの上昇にも注意が必要です。マレーシアのコンドミニアムをいくらで購入するのかは、リンギット/円の相場によります。
マレーシアはハイテク製品の輸出が好調であることを背景に、2017年の経済成長率は5%台と高い水準を維持しました。また産油国でもあるため原油価格の上昇も追い風となり、リンギットは徐々に上昇しています。
2018年1月には中央銀行が経済の過熱を懸念して利上げをしましたが、リンギット買いを誘発する結果となっています。今後もリンギットの上昇が続けば、コンドミニアムの購入価格も実質的に上昇する可能性があります。
5 マレーシア・コンドミニアム購入のリスク
これまで述べた通り、コンドミニアムでの不動産投資における出口戦略は、あくまでも転売による利益確保です。
そのためマレーシア不動産にどれほど投資価値があるかによって、世界中の投資家の注目度が変わります。マレーシアの不動産市場に世界の投資マネーが流入しなくなれば、売却によって利益を得ることが難しくなります。
5-1 外国人購入規制の動き
現在マレーシア政府は、外国人による不動産購入を柔軟に認める動きを見せています。Global Property Guideの2018年9月9日付記事によれば、マハティール首相は、リゾート地として人気のジョホール州で進む巨大プロジェクト「フォレストシティ」における物件の外国人購入禁止措置を取り消すと発表しました。
しかし、フォレストシティの物件を外国人でも購入できるようになりましたが、住むためのビザは発行されません。
背景には外国人(特に中国企業)の占領を危惧したためと指摘されていますが、ジョホール州に限らず、このような規制の動きは他の州に波及する可能性があります。
5-2 マレーシア政府の思惑
現在マレーシア政府は不動産価格を維持するために供給規制をしていますが、外資を取り込むことが目的ではなく、経済成長のコントロールのために、不動産相場の下落を食い止めようという狙いがある一方で、自国民が購入できなくなることも避けたいという思惑があります。
マレーシアで不動産投資を成功させる場合、政府当局の不動産市場に対する動きを注視しつつ、いかに購入し売却するかを検討することが重要です。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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