アパートの防犯対策は、住民がトラブルや犯罪に巻き込まれないために重要なポイントです。防犯対策をしっかりと行うことで入居率の改善や、資産価値の向上などの収益面でのメリットがあります。
また、適切な防犯対策は犯罪の起きにくい社会づくり、地域住民等の安全安心の向上につながり、地域内で取り組みが増えれば地域全体のイメージ向上やブランディングにもつながります。
この記事では費用対効果の高い6つの防犯対策について紹介します。物件の防犯性を改善させたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 費用対効果の高い6つのアパート防犯対策
1-1.防犯カメラ
1-2.電子キー
1-3.防犯性の高い窓の設置
1-4.外灯や共用部分の照明の工夫
1-5.ホームセキュリティ
1-6.エントランスのオートロックと宅配ボックス - アパートに防犯対策を施す効果とは?
2-1.犯罪やトラブルの予防はオーナーのリスク軽減にもなる
2-2.入居者の募集や定着につながる
2-3.資産価値の向上につながる
2-4.地域貢献、犯罪の起きにくい社会づくりにつながる - まとめ
1 費用対効果の高い6つのアパート防犯対策
アパート経営において防犯対策は重要な要素です。人口密集地に建てられることも多いアパートを借りる時は、アパートのセキュリティの高さも加味して物件選びを行う人も少なくありません。
警察庁「手口で見る侵入犯罪の脅威(令和2年)」によると、3階以下の共同住宅では、無締り、ガラス破り、合いかぎなどが主な侵入経路となっていることが分かります。
侵入窃盗の侵入手口
※画像引用:警察庁「手口で見る侵入犯罪の脅威(令和2年)」
侵入窃盗の手口を踏まえ、ここでは費用対効果の高い6つの防犯対策を紹介します。予算も踏まえながら、必要に応じて自分がもつ物件に防犯対策を施しましょう。
なお、価格については購入部品や施工業者によって大きく異なる可能性があるため、あくまで目安となっております。必ず専門業者に見積もりをもらって具体的な金額を把握したうえで、対策を進めてください。
1-1 防犯カメラ
防犯カメラはアパートにおいて多くの物件で取り入れられている防犯対策です。入口や共用部分の部外者が必ず通過するところ、侵入リスクが高い場所などに設置すると、不法侵入やトラブルを防止できます。また映像を録画しておけば犯罪やトラブルにおける証拠映像として、捜査や調査にも役立つでしょう。
また防犯カメラを「防犯カメラ設置」などのステッカーと共に目に見えるように設置しておくと、それだけでも犯罪行為を抑止する効果があります。
侵入リスクの高い個所には一通り設置しておくのが有効ですが、特にアパートでは2階部分の死角から侵入されるケースが多くなっています。2階部分に重点的に設置すれば費用対効果の高い防犯対策となるでしょう。
設置するには防犯カメラ本体、レコーダー、モニター、設置費用がかかります。おおよその1台あたりの相場は次のとおりです。
- 防犯カメラ:2〜10万円程度
- レコーダー:3〜10万円程度
- モニター:2〜5万円程度
- 工事費用:3〜10万円程度
最低でも最初は10万円以上を見ておく必要があるでしょう。ただしモニターはパソコンなどで代用可能です。また、モニターやレコーダーは複数台の管理に対応しているものもあるので、2台目以降の費用はさらに圧縮可能です。
1-2 電子キー
従来のギザギザが付いている鍵は「シリンダーキー」と呼ばれるもので、現代ではピッキング技術がある人だと1分もかからずに開けることが可能なため、防犯性に不安が残ります。さらに進化した、鍵の部分に多数の窪みがあるディンプルキーなら相対的にリスク低下につながりますが、それでもピッキングが行われる危険性は残ります。
近年は電子キーを導入するアパートも増えています。電子キーには次のようなパターンがありますが、いずれも鍵穴がない状態にできるためピッキングのリスクは大きく低下します。
- 指紋登録式
- 暗証番号式
- カードキー
- ボタン付きの電子キー
費用は1戸あたりで施工費も込みで5~15万円程度が目安です。性能により機材の費用にばらつきがあるため、高性能なものを設置すると大きくコストが増加する可能性があります。各戸に設置することになるため、戸数が多いと費用が高額になるため、費用対効果を慎重に精査しましょう。
1-3 防犯性の高い窓の設置
施錠をしっかりしていても、ガラスを破られて侵入されるリスクがあります。間に防膜層が入った三層構造の強化ガラスにすると破られるのに時間がかかるため、侵入リスクを大きく低下させることが可能です。
また、近年は都市部ではシャッター付きの窓も増えています。夜間や長期の外出などの際にシャッターを締めておくと、さらに侵入が困難になり、空き巣などに狙われるリスクが下がるでしょう。
強化ガラスやシャッターは台風などの災害時に飛来物が窓にあたっても、ガラスの破損を防いでくれます。防災面でも入居者に安心感を与える対策となります。
ガラスは1平方メートルあたり2〜6万円程度、工事費用は1枚〜数枚程度なら1〜2万円程度ですが、枚数が多くなると工事費用も高くなります。防犯シャッターの方が高額で、1箇所あたりで工事費用も含めて5~17万円程度かかります。
1-4 外灯や共用部分の照明の工夫
全体的に薄暗く、また死角や暗がりが多い物件は、犯罪者が身を潜めやすくなるため犯罪リスクが増加します。適切な箇所に外灯を設置し、夜間でも適度な明るさを維持することで、空き巣や強盗のほか、ストーカー、痴漢などさまざまな犯罪リスクの抑制につながります。
新築でアパート建築を予定してる人は、照明の場所や明るさにも気を配り、犯罪者が目をつけにくい明るい物件にしましょう。あとづけで設置する場合は、照明自体が1万円程度~、施工費用も1万円程度~です。ただし、器具の質や施工内容によって開きがあり、建物の壁への加工や、配線工事が必要になる場合は高額になるケースも想定されます。
1箇所に照明をつけるだけで解決しないときは、大規模なリフォームのときに物件内外の照明の設置場所や明るさを全面的にみなおすのも有効な選択肢となります。
1-5 ホームセキュリティ
建物に異常が発生したときに警報が鳴るとともに自動的に警備会社に通知が行って、警備員が駆けつけてくれるホームセキュリティサービスも有効な選択肢の一つです。警報音は犯罪者の犯罪行為を躊躇させますし、知名度の高いホームセキュリティサービスに加入しているステッカーをエントランスなどに掲示しておくことで、犯罪者から目を付けられにくくなります。
最近では火災などの異常を検知してくれる機能もあるため、事故や災害の防止にも役立つでしょう。また、ホームセキュリティサービスは知名度が高く、入居者のターゲット層によっては募集や定着の観点からも高い効果を期待できるでしょう。
こちらは設置時の工事費用・保証金などが合計20万円~かかります。また加入後は月額で利用料金が発生します。こちらは建物の規模に比例する仕組みになっています。機器1台の場合は月額数千円程度から加入できますが、具体的な金額はサービスを扱っている会社に物件の規模を伝えて見積もりをもらって確認しましょう。
1-6 エントランスのオートロックと宅配ボックス
マンションでは多くの物件で設置されているエントランスのオートロックですが、近年は都市部を中心にアパートでも設置される物件が増えています。
ここでいうオートロックとは、来訪者があった際、入り口で部屋番号を指定して、住人のインターフォン越しに会話したうえで問題がない時だけ解錠して部外者が物件内に入ることができるシステムのことです。部外者が住人の許可なく入れなくなるため、防犯効果は高いといえるでしょう。
オートロックと組み合わせると有効なのが宅配ボックスです。オートロックだけでは配送業者が荷物を届けるときに共用部分に入ってくるため、配送業者を装って侵入を試みる犯罪者のリスクがあります。そこで、エントランスに宅配ボックスを設置すると、荷物はボックスにいれればよいので、配送業者を居住区域に入れる必要がなくなります。さらに防犯性は向上するでしょう。
オートロックや宅配ボックスも、防犯性を気にする人が重視する設備なので、設置しておくと物件の評価が高まり入居者を獲得しやすくなります。
オートロックは各戸に呼び出し通話システムをつけなければならないため、通常100万円規模の施工費用が掛かります。宅配ボックスも30~50万円、設置費用に10万円前後が必要となるため、かなり大がかりな出費となります。
これから購入物件を検討してる人は、これらの設備が既に設置された物件を購入するのがよいでしょう。もし、自前で設置するときには大規模なリフォームの際に合わせて検討するのが効率的です。
2 アパートに防犯対策を施す効果とは?
アパートに防犯対策を施すことは犯罪を抑止するだけでなく、その他にもいくつか副次的な効果があります。単に防犯目的だけを意識して対策を施すと、費用対効果を見誤って継続が難しくなったり、対応が不充分になってしまうリスクもあるでしょう。
これらの点を踏まえ、アパートに防犯対策を施す効果について整理してみましょう。
2-1 犯罪やトラブルの予防はオーナーのリスク軽減にもなる
防犯対策は住民のためのサービスという観点に加えて、オーナーにとっても突然の費用発生や対応を迫られるリスクの軽減につながるものであることをおさえておきましょう。
犯罪者が侵入を試みれば物件の破壊行為をおこなう可能性は高く、犯罪に巻き込まれた物件は何かしらの修繕が発生するケースが少なくありません。
また、犯罪が発生すれば、警察の捜査への協力などが必要となり、オーナーとしては少なからず手間がかかります。不幸にも住民が被害を受けてしまったら、救急車への通報や応急処置などが必要になるケースもあるでしょう。
こうした突然の費用・負担の発生を予防できることをふまえると、防犯対策はアパートの経営上のリスクや負担を軽減するうえでも重要な役割を果たすのです。
2-2 入居者の募集や定着につながる
投資用アパートは都市部に立地するケースも多いことから、セキュリティに着目して物件を探す入居希望者は少なくありません。防犯対策が行き届いた物件は入居希望者の評価が高まり、より速やかに入居者を獲得することができるでしょう。
万が一アパートで事件が発生したり、トラブルが頻発していたりすると、住民がこれらを嫌って早期に転居してしまうリスクもあります。防犯対策を万全にしてトラブルのないよう管理すれば、住民が定着し、空室率の抑制にもつながるのです。
2-3 資産価値の向上につながる
防犯対策は資産価値を向上させる効果も期待できます。中古物件を売買するときには、立地や築年数だけなく、その物件に施された設備の内容や質も価格に影響を与えます。
そのなかで、空室対策にもなる防犯関連の設備は重要な要素の一つで、行き届いた物件はより競争力のある価格で売却するチャンスが大きくなるでしょう。すなわち防犯対策は単なる「コスト」ではなく、資産価値を向上させるための投資の側面にも注目されてみると良いでしょう。
2-4.地域貢献、犯罪の起きにくい社会づくりにつながる
アパートの防犯対策のような経営上の対策は、「防犯CSR」として推奨されている活動の一つです。CSR(Corporate Social Responsibility)は企業の社会的責任と訳され、持続的な発展を目的に行われる経営上の自主的な取り組みのことを指しています。
アパート経営では、率先してアパートオーナーが防犯対策を行うことで周辺地域全体の治安維持に協力することになります。犯罪の起きにくい社会づくりに貢献できる、という観点でも効果を期待することができます。
※参照:警察庁「防犯CSR活動について」
3 まとめ
住民の安全を守るうえで防犯対策が重要であると同時に、オーナーの賃貸経営のリスクを低減させるうえでも必要な投資です。中には大きな費用がかかる対策もありますが、将来の売却などの出口戦略を見据えたうえでも、他の物件に負けない品質の防犯対策を施しておくのが有効です。
購入物件を選ぶ際には、今回紹介した設備の有無を見ながら物件を選別していくとよいでしょう。また既に保有する物件に対策を施す場合には、費用対効果や予算をふまえて適切なリフォームを検討してください。
伊藤 圭佑
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