新型コロナウイルスの感染が拡大して久しい中、中国では未だ、新型コロナの徹底的な感染防止を目的としたいわゆる「ゼロコロナ政策」が継続されています。
ゼロコロナ政策では一時的に感染者の抑え込みに成功したものの、その強権的なやり方によって国民の不満が募っているとの報道も多いほか、世界経済への影響もますます大きくなっています。
そこで今回は、中国のゼロコロナ政策について、その概要および政策がいつまで継続されるのか、また解除後の日本株への影響などを詳しく解説していきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年11月24日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- ゼロコロナ政策とは
1-1.ゼロコロナ政策の概要
1-2.ゼロコロナ政策の先行き - 政策解除後の日本株への影響
2-1.影響を受けやすい日本株は
2-2.中国関連株
2-3.インバウンド(訪日外国人)関連株 - まとめ
1.ゼロコロナ政策とは
最初に、中国のゼロコロナ政策について概要を押さえておきましょう。
1-1.ゼロコロナ政策の概要
「ゼロコロナ政策」とは、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に食い止め、コロナ患者を1人も出さないことを目的とした政策のことを指します。
中国では、このゼロコロナ政策を積極的に推し進めており、実際に中国共産党による「都市封鎖(ロックダウン)」などによって、2020年の半ばには中国国内の新型コロナ新規感染者はほぼゼロになったと報告されています。
その一方で、中国政府のゼロコロナ政策にはやや強権的な行動制限が伴うため、中国国内からは不満の声が上がっているとされます。
また、中国ではゼロコロナ政策によって新型コロナの抑え込みに一旦は成功したものの、その後は再び新規感染者が増加するなど、先行きが不透明な状態が続いています。
現在、世界各国では新しい生活様式を取り入れて新型コロナと共存していこうとする「Withコロナ」の考え方が広がっていますが、中国では未だゼロコロナ政策が進められており、その影響は世界経済にも及んでいる状況となっています。
1-2.ゼロコロナ政策の先行き
中国では22年10月16日から、5年に1度開かれる最重要会議「中国共産党大会」が開かれ、会議内ではゼロコロナ政策についても言及がありました。
国家主席である習近平総書記は、共産党大会の開幕日に行った活動報告の中でゼロコロナ政策を擁護する姿勢を示しており、中国が国内の移動制限や都市のロックダウン、頻繁な大規模検査などといった戦略を和らげることを示唆するような動きは見られませんでした。
また、22年11月1日には、ゼロコロナ政策からの脱却を巡るいくつかのシナリオを評価する委員会が設置されたという未確認のSNS投稿がオンライン上で広まったことを受け、中国本土株が一時急騰する展開となりましたが、「国家衛生健康委員会」の当局者が改めてゼロコロナ政策を継続する方針を表明したことにより、こうしたうわさも後退することとなりました。
このように、ゼロコロナ政策の動向は金融業界にも大きな影響を与えており、世界中の投資家がその先行きに注目しています。
なお、中国保健当局は11月11日に隔離期間の短縮や市民に対する大規模なPCR検査の取りやめなど、新型コロナ感染対策の一部を緩和したことが明らかになっています。引き続き感染を抑え込みつつも、経済への影響を和らげる狙いがあると見られています。
ゼロコロナ政策がいつまで継続するのかについては、決定的な要素が出ておらず断言は難しいと言わざるを得ませんが、今後数ヶ月間で微調整が行われると予想されるほか、来年の3月には政府の陣容が集まる「全国人民代表大会(全人代)」が控えているため、来年の春あたりまではゼロコロナ政策が継続されるのではないかという見方が広がっています。
2.政策解除後の日本株への影響
次に、中国のゼロコロナ政策が終わった場合に、日本株が受ける影響について考察します。
2-1.影響を受けやすい日本株は
一般的に、中国がゼロコロナ政策を推し進めることによって中国国内における工場の稼働率が低下するため、中国から製品を輸入している企業は大きな打撃を受けることとなります。
また、中国国内における需要縮小によって、中国へ製品の輸出を行っている企業も売上の低下に見舞われることになるため、中国に自社工場を有している企業や、中国顧客が多い企業の業績にも悪影響が及んでいます。
このほかにも、ゼロコロナ政策により訪日中国人が著しく減少していることから、「インバウンド(訪日外国人)」関連の銘柄にも大きな影響を与えています。
しかし反対に、ゼロコロナ政策が解除された場合は、上記のような銘柄に特に良い影響が及ぼされると予想できるため、次の項では特に注目したい銘柄をいくつか紹介していきます。
2-2.中国関連株
共産党大会が終了し、ゼロコロナ政策の緩和などに期待感が高まったことを受け、現在中国関連株が世界で買い戻される動きが活発化しています。
国内でも、11月8日の東京株式市場では、アリババなど中国企業へ出資を行っている「ソフトバンクグループ」が5%高となったほか、中国企業の設備投資はそれほど落ち込まないであろうという期待から、「コマツ」も8.2%高、「安川電機」は4.5%高を付けるなど、中国関連の製造業が広く上昇する結果となりました。
このほかにも、中国の需要減速がやわらぐという期待から、製鉄をはじめとする素材関連の銘柄も上昇する展開となりました。
このように、ゼロコロナ政策の緩和を受けて中国関連株が大きな上昇を見せており、今後政策が本格的に解除された場合、価格にさらに良い影響を与えると見られています。
2-3.インバウンド(訪日外国人)関連株
最近の東京株式市場では、鉄道や航空、百貨店などといった「インバウンド(訪日外国人)」に関連した銘柄が逆行高となっています。
「日本政府観光局(JNTO)」が11月16日に発表した「訪日外客数(2022 年 10 月推計値)」によると、22年10月の訪日外国人旅行者数(推計値)は49万8,600人を記録しており、前月の20万6,500人と比較すると、約2.5倍もの増加を見せました。
これは、日本政府が10月11日から入国者数の上限撤廃を発表したこと、個人旅行の受け入れおよびビザの免除措置を再開したことなどによる、訪日旅行の本格再開の機運が高まったことが要因として考えられています。
またこのほかにも、中国による新型コロナの感染対策の一部緩和を受けて、今後さらにその動きが進むのではないかという期待も底流にあると見られています。
このような状況を受けて、インバウンド関連株が幅広く上昇する展開となり、具体的には「三越伊勢丹ホールディングス」や「高島屋」などの百貨店株が前日比一時6%高という急反発を見せました。
また、「JR東日本」をはじめとする鉄道株や「ANAホールディングス」などの航空株のほか、化粧品やドラッグストアなどに関連する銘柄にも買いが広がる結果となりました。
コロナが蔓延する前の19年と比較するとその水準はまだ2割程度に留まっているものの、前月からは大きな伸びを見せる展開となっており、今後、中国のゼロコロナ政策が解除された場合、中国からの訪日客が増加し、市場全体をさらに上方向へと押し上げる可能性も大きいと、期待の声が上がっています。
まとめ
中国は依然としてゼロコロナ政策を推し進めていますが、国民の不満が募っていること、世界経済に大きな打撃を与えていることなどから、11月11日に一部の制限を緩和することが発表されました。
ゼロコロナ政策は少なくとも全人代が開かれる来年3月までは継続されるであろうと予想されており、今後の動向に大きな視線が集まっています。
政策が解除された後は日本株へも良い影響が及ぼされる可能性が高いため、今のうちに前項で挙げたような銘柄をチェックしておくのも良いでしょう。
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中島 翔
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