投資初心者の方がアパート経営を行うにあたって、最も気にされるのが空室リスクです。空室リスクを低く抑えるためには、入居率の高いアパートを選ぶことが大切ですが、実は入居率が高いということだけを見て物件を選んでしまうと、想定していた利回りを実現できなかったり、アパート経営が赤字になってしまったりするケースがあります。
今回は、アパート経営を検討している方に向けて、入居率が高くても期待通りの利回りが実現できないケースや、これからアパート経営を始める上での重要なポイントについてご紹介したいと思います。
目次
1 入居率が高くても支出が多ければ収支は悪化する
毎月の家賃収入は各部屋の入居状況と賃料によって決まるため、高い入居率を維持できるかどうかがアパート経営において重要なポイントとなります。
しかし、アパート経営によって手に入れることができる手残りの収入は、家賃収入から経費などを差し引いたものとなるため、コストが多くかかってしまった場合には、空室が生じて家賃収入が減ったのと同じくらいの影響が出てしまいます。
そのため、安定したアパート経営を行うには、入居率を高く維持することができるかだけでなく、アパート経営にかかるコストを抑えることができるかも重要になってくると言えるでしょう。
2 アパート経営の収益を大きく左右するコストは3つ
では、アパート経営の収益性を低下させてしまうコストにはどのようなものがあるのでしょうか?
毎月の賃貸管理費など一定額がかかるものを除くと、考慮をしなければいけないコストとしては、原状回復費用や広告費用、アパートローンの返済などが挙げられます。
原状回復費用とは、次の入居者が気持ちよく入居することができるように、傷んでいるクロスを張り替えたり、ハウスクリーニングを依頼したりするためにかかる費用で、広告費用とは、次の入居者の募集広告を行う場合にかかる費用を指しています。
どちらもアパートの入居者が退去した場合に発生するコストとなりますが、不動産会社が日常的に行うアパートの清掃や家賃徴収といった管理業務の範囲には含まれていないため、管理委託費用とは別に徴収されます。
また、アパートローンの返済については、ローンの契約内容によって毎月・毎年の返済額が大きく変動するため、できるだけ良い条件での借り入れを目指したいところです。
以下では、それぞれのコストがどれくらいの金額となるかについて詳しく見ていきましょう。
2-1 退去後にかかる原状回復費用
国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に従って原状回復費用を見ていくと、主な原状回復費用は以下の通りになります。
- 壁や天井の穴補修:約3万円/箇所
- フローリングの汚れ除去:約1万円/箇所
- クロスの張替え:約2千円/1平方メートルあたり
- フローリングの張替え:約8千円/1平方メートルあたり
- カーペットの張替え:約3千円/1平方メートルあたり
- 畳の張替え:約6千円/1畳あたり
部屋の使用状況や損耗度合いによってかかる費用は変わってきますが、1部屋の原状回復費用の相場としては5万円~10万円程度(家賃の1ヶ月分前後)と考えておくと良いでしょう。
次に、誰が原状回復の費用を負担するのかという点ですが、通常生活しているだけで生じるような消耗の場合は、入居者の負担とならず、故意の過失や通常想定していない使用方法によって生じたような消耗の場合は、入居者の負担になります。
例えば、通常使用していて、日焼けなどによってクロスが傷んだ場合などは入居者の負担になりません。しかし、ペットを飼っていたり、タバコを吸っていたりなど、通常の使用方法ではない場合などは入居者の負担になります。
そのため、通常使用していて生じる消耗に関しては、入居者に別途請求することができず、家賃に原状回復費用が含まれていると解釈されてしまいます。入居者から入居時に預かる敷金を使用することはできず、実質オーナー負担になってしまうので注意が必要です。
2-2 入居者を集めるためにかかる広告費用
広告費用は、いくらまで請求できるといったような内容は規定されていません。そのため、実際に入居者を募集するにあたってかかった費用を請求することができますが、入居者の家賃収入の1ヶ月分を広告費として徴収するのが一般的です。
しかし、競合物件の多い激戦区や入居者を探すのが困難な不人気物件の場合は広告費を引き上げる不動産会社も多く、入居者の家賃収入の2~3ヶ月分を広告費と徴収されるケースもあります。
この原状回復費と広告費が、アパート経営の収益に対して実際にどれくらいの影響があるかも見ておきましょう。仮に、1棟8部屋のアパートを経営していて、退去しても1ヶ月以内に次の入居者が見つかるような物件であったとします。
一見すると入居率が高く、すぐに入居者が見つかる優良なアパートに感じるかもしれませんが、たとえば各部屋の入居者が2年に1回入れ替わっている場合だと、1部屋につき2年間で以下の家賃収入減とコスト増が発生することになります。(以下では、原状回復費、広告費をそれぞれ家賃1ヶ月分として計算)
次の入居者が決まるまでの家賃1ヶ月分+原状回復費(家賃1ヶ月分)+広告費(家賃1ヶ月分)=家賃3ヶ月分
これを1年あたりに直すと、「家賃3ヶ月分÷2年間=1.5ヶ月分/年」の収入減となりますので、たとえば満室時の利回りが6%の物件であれば、以下の計算のように実質的には5.25%の利回りしか得られないということが分かります。
満室時の利回り6%×(12ヶ月-1.5ヶ月)÷12ヶ月=5.25%
このように高い入居率を実現できていたとしても、入退去の頻度が多いと経営状況は厳しくなってしまいます。
2-3 アパートローンの返済費用
アパート経営の場合には、各金融機関が提供している投資用の不動産ローン(アパートローン)を利用することになりますが、住宅ローンよりも金利が高く(1%台~4%台)、返済期間が短い(20年~30年程度)という特徴があります。
例えば、物件価格が1億円で、利回り6%の新築アパートがあったとします。このアパートを30年返済のローンで、金利1.5%と金利3.0%でそれぞれ融資を受けた場合の毎月の返済金額はどうなるのでしょうか?シミュレーションを行うと、結果は以下のようになります。
融資金利 | 1年間の家賃収入(満室) | 1年間の返済金額 | 1年間のアパート経営の収支 |
---|---|---|---|
1.5% | 600万円 | 414万1440円 | 185万8560円 |
3.0% | 600万円 | 505万9248円 | 94万752円 |
両方とも満室経営が実現できているにも関わらず、融資金利の違いによって年間91万7808円の返済額の違いが生じていることが分かります。1ヶ月に直せば、7万6484円となり1室分の家賃収入相当の金額となりますので、融資の契約内容のアパート経営に与える影響がいかに大きいかが分かります。
3 入居者の満足度が高い立地や設備を選ぶことが大切
では、入退去の頻度や融資金利をできるだけ低く抑えるには、どうすればよいのでしょうか?
両方を解決するための方策は「アパートの品質にこだわり、入居者の満足度を高めること」になります。入居者の満足度を高めることができれば、長く住むインセンティブが働き、入居率が高く長く住むと見込まれるアパートは金融機関からも高く評価されて金利面でも優遇されるためです。
たとえば、入居者から求められる以下のような要素を満たすアパートであれば、入居者の満足度を長期にわたって高く維持できると考えられます。
- 立地が良い(駅から近い、ターミナル駅へのアクセスが良い)
- 築年数が経っていない(新築・築浅)
- 外観がきれい(デザイナーズアパート)
- 人気の設備が揃っている
- 設備故障など際の対応が速い
- 騒音が少なくストレスが少ない
- 防犯性が高い
アパートの設備や立地条件が他のアパートより劣ってしまっている場合は、入退去が多くなってしまいます。最初のうちは新築アパートのきれいさを求めて入居者を確保できても、同じような金額で駅に近かったり設備が優れていたりするアパートが新しくできた場合は、そちらのアパートに移ってしまうことが予想されます。
最初から入居者の満足度の高い立地や設備が備わっているアパートを経営している場合は、近くにアパートが新しくできても見劣りしません。そのため、高い入居率を維持することができるだけでなく、1人1人の入居者が長く入居してくれるため、原状回復費用や広告費といったコストを抑えることができるでしょう。
以下のアパート販売会社は高品質なアパートを提供していますので、まだアパート経営の会社を決め兼ねているという方はぜひ参考にしてみて下さい。
- 対象エリアを主要駅15分以内、入居者のターゲットはアパート造りの基準を物件選びの目線が厳しい社会人女性に絞って、入居率99.7%(2021年12月時点)「アイケンジャパンのサイトを見る[PR]」
4 まとめ
アパート経営を行う場合は、空室のリスクが付いて回るため、高い入居率を維持することが重要です。しかし、アパート経営によって得られる手残りの収入は、家賃収入からコストを引いたものであるため、コストをうまく抑えることができるかどうかが成功の分かれ目となります。
そのためにも、入居者が長期にわたって入居してくれるような立地条件や設備を備えたアパートを選び、好条件の不動産ローンを契約することが重要となります。
これからアパート経営を考えている方は、入居率の高さにこだわるだけでなく、今回ご紹介したポイントにもこだわることによって、安定したアパート経営を行うことを目指していきましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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