アパート経営を50代で始めるメリット・デメリットは?アパートローン審査のポイントも

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アパート経営が軌道に乗れば、毎月の賃料収入を見込めることから、定年に向けた収入減や老後への対策として50代から始める人も少なくありません。

資金面での余力の大きさなどは50代からアパート経営を始めるうえでメリットとなります。一方で、収入の先細りリスクなどを背景に審査が厳しくなる可能性や、アパート経営に失敗したときには経済面で深刻なダメージを負うリスクがある点など、留意しておきたいポイントもいくつかあります。

この記事では50代からのアパート経営のメリット、デメリットやアパートローン審査のポイントなどを紹介していきます。

目次

  1. 50代でアパート経営を始めるメリット
    1-1.賃料収入が本業収入や年金の補填に
    1-2.自己資金を多く活用して健全性の高いアパート経営に
    1-3.生命保険の役割を団体信用保険に担ってもらえる
    1-4.与信枠に余裕があって借りやすいケースも
  2. 50代でアパート経営を始めるデメリット
    2-1.経営に失敗すると深刻な打撃を受けるリスクがある
    2-2.ステータスや収入状況を厳しく見られる可能性も
    2-3.団体信用保険の審査を通すのが難しくなるリスク
    2-4.ハイリスク・ハイリターンな案件には手を出しにくい
  3. アパートローン審査をスムーズに進めるポイント
    3-1.完済年齢は若い方が良い
    3-2.資産価値が高く手堅い物件を選ぶ
    3-3.自己資金を厚めにして返済額を抑える
  4. まとめ

1 50代でアパート経営を始めるメリット

50代でアパート経営を始めて賃料収入を得ることが出来れば、ゆとりある老後生活のための資金計画の一つになります。また、若年層と比較して50代は資金面で余裕のある人も多く、健全な資金計画を建てやすい傾向があります。

まずは50代からのアパート経営のメリットをみていきましょう。

1-1 本業収入や年金の補填に

黒字経営が維持されていれば、毎月にアパートの賃料収入を得ることができます。アパート投資では複数戸から賃料を得られるため、一棟で毎月数十万円以上のまとまった賃料収入を得られる物件も少なくありません。

50代は、一部の方を除いて60代の定年に向けては年収が下がる可能性が高いといえます。かつてなら50代は子供も独立して余裕のある生活、という人も多く見られましたが、近年は晩婚化の影響もあり、50代でもまだ子供の教育資金などがかかる人もいらっしゃるでしょう。

そのような中で、アパート投資を通じて毎月まとまった収入を得ることで、今後の家計に余裕を持たせることが可能になります。60代の定年退職後には年金に賃料収入を上乗せし、ゆとりある老後生活を目指すということも検討できるでしょう。

こうしたメリットを享受するためには、不動産投資の中でもまとまった賃料収入が得られるアパート経営が有効な選択肢の一つとなります。

1-2 自己資金を多く活用して健全性の高いアパート経営に

うまくキャリアを築き、家計管理も上手くこなしてきた人なら、50代には相応に蓄えができていると期待されます。年収も若いころと比較すれば高く、生活と資産状況にゆとりがある人が多いでしょう。

潤沢な蓄えがあれば、アパートを購入するときに、より多くの自己資金を投じることが可能です。金額面での物件の選択肢が広がり、物件サイズに対してローンの借入額を抑えて健全な経営を維持しやすくなります。

1-3 団体信用保険に加入できる

アパートをはじめとした不動産投資を行う場合、アパートローンの契約時に団体信用保険に加入します。オーナーにもしものことがあったときには保険から残債が支払われて完済され、遺族にはアパートという資産だけが残ります。

残ったアパートは保有し続ければ毎月賃料収入が期待でき、売却すれば諸経費を除いた不動産価格の大部分の資金を得ることが可能になります。団体信用保険は、生命保険のように万が一の時のリスク対策として有効な手段の一つです。

40代までは、保険というと医療保険や所得補償保険など、生きるためのリスクに備える保険が中心である人も多いでしょう。一方、50代以降は老後に向けて遺族のために残す終身保険などを検討するタイミングです。アパート投資に保険の役割を担ってもらうことで、保険をスリム化すれば、月々支払う保険料を節約できるでしょう。

1-4 与信枠に余裕があって借りやすいケースも

借入の限度額などに影響を及ぼす与信枠は、その人の収入や残債の状況に左右されます。50代の方は相対的に収入が高い傾向にあるため、与信枠に余裕がある人も多いと考えられます。

また、住宅ローンの残債も個人がアパートローンを借りる際に影響を及ぼします。ローンを借りてまもないと残債が多いため、アパートローンの借入限度額が伸びないケースが少なくありません。

対して50代になれば、早い人では住宅ローンの完済が見えてきており、そこまでは行かずともローンの残債は相応に小さくなっているでしょう。50代の収入の高さと残債の少なさは、高額なローンを活用する人が多いアパート投資において大きなメリットとなります。

2 50代でアパート経営を始めるデメリット

50代からアパート経営を始めるがゆえのデメリットも存在します。老後の資金計画に失敗するとリカバリーが難しくなるリスクや、ステータスや収入額をより厳しく見られる可能性、健康悪化により団体信用保険が通りにくくなることなどが考えられます。また、ハイリスク・ハイリターンな物件にはチャレンジしづらい点にも留意が必要です。

ここからは50代でアパート経営を始めることのデメリットについてみていきましょう。

2-1 経営に失敗すると深刻な打撃を受けるリスクがある

不動産投資においては常に資金管理や収支管理が欠かせませんが、50代からのアパート経営では一層重要性が高まります。

現役世代であれば、赤字額が本業から補填できるレベルであれば、アパート経営として不健全ではあるものの、さほど深刻な状態に陥らずに済む人も多くいます。また、経営に失敗をしてしまっても売却によってローンを完済し、日々の給与所得などで預貯金を増やせる時間的な猶予があります。

一方で、年金以外に収入がなくなる老後に入ってから収支が悪化して、赤字が続くような事態に陥れば、家計に致命的な打撃をもたらしてしまう可能性があります。

また、月々の収支では一見黒字が続いている人でも、大きな落とし穴になりうるのが大規模修繕です。大規模修繕においては数百万円の費用がかかるのが一般的ですが、50代からアパート経営を始めると、退職で本業収入がなくなるタイミングと修繕タイミングが接近もしくは重複する可能性があります。

収入減により大規模修繕に対応する余力がなく、たちまち経営が悪化するリスクもあります。黒字経営を維持できていても油断せず、賃料収入の一部は将来の修繕に向けてしっかり残しておくことが重要です。

2-2 融資審査で属性を厳しく見られる可能性も

金融機関受けるアパートローンの融資審査では、融資を受ける方の年齢や年収、勤め先の情報などが審査されます。これを属性と言い、属性が低く評価されてしまうと融資条件が悪くなるというデメリットがあります。

多くの50代は近い将来定年に向けて役職が外れ、年収が下がっていく可能性が高いため、若い人と比べると融資審査において属性評価を厳しめに審査される可能性もあります。

順調にキャリアを築いていれば、管理職についている、ある程度年収が高くなっているなど、属性面で高く評価される人も少なくありません。一方、年齢を重ねていることで将来の就業期間が短くなることが想定されるため、その人の属性によってはかえって審査上不利に働くケースも考えられます。

同程度の残債やステータス、収入状況であれば、若い人よりは審査が通りにくくなり、また借入限度額が伸びない恐れがあります。長期を返済期間を選択できず、借入額がさほど大きくないのに返済額が高い、という事態も考えられます。

この辺りの審査基準は金融機関によっても大きく異なるので、一行での審査が思わしくなくとも諦めずに、魅力的な条件を提示してもらえる金融機関に積極的にアクセスしてみてください。

2-3 団体信用保険の審査を通すのが難しくなるリスク

アパートローンを契約するときには団体信用保険に加入しなければなりませんが、健康上の懸念があると加入できないケースがあります。

50代となると、健康上の問題を抱える人も多くなってきます。糖尿病や高コレステロール、高血圧などの生活習慣病系は厳しく判断される場合もあり、日常生活に問題がなくとも、健康診断で引っかかっていたり、薬を飲んでいたりするだけでNGになる場合もあります。不安な人は健康管理に努めるとともに、できるだけ早いうちにアパート購入を検討していくのがよいでしょう。

なお、アパートローンでは団体信用保険への加入が必須ではありません。どうしても加入が難しい場合には保険なしでアパート投資を検討することもできます。ただし、オーナーが亡くなったあとも残債が残るため、遺された家族がアパート経営を引き継ぐことが必須要件となります。団体信用保険なしでのアパート経営を行う場合には、家族と慎重に相談して意思決定をしてください。

2-4 ハイリスク・ハイリターンな案件には手を出しにくい

近い将来収入が減少し、やがて年金収入のみとなっていく50代からのアパート投資では、失敗して赤字を発生させる事態は避けなければなりません。

そのため、50代のアパート経営ではハイリスクな物件へ手を出すのが困難で、低リスクの物件に選択肢が狭まってしまいます。値上がり益追求するようなハイリスク・ハイリターンな物件ではなく、一定の賃料収入が見込める物件を選ばざるをえません。

3 アパートローン審査をスムーズに進めるポイント

50代のローン契約は、ステータスや年収の高さがポジティブに働く可能性がある一方、年収の先細りや、健康リスクなどがマイナスになるケースも考えられます。

また、赤字経営になるとたちまち延滞につながる恐れがある点も見逃してはいけません。その中で、アパートローンの審査をスムーズに通すために、おさえておくべきポイントを紹介していきます。

3-1 完済年齢は若い方が良い

アパートローンには、たとえばオリックス銀行のように完済年齢の上限が決まっているものと、上限が決まっていないものがあります。いずれのケースでも、若いうちに完済の目処がつく契約の方が、返済計画に無理がないことを前提とすれば審査は通りやすいでしょう。

年齢上限があるローンでは、80歳前後に上限が定められているものが散見されるため、まずは80歳前後で完済のめどがたちそうかシミュレーションしてみてください。どうしても困難な場合は、完成時期の上限がないローンで検討しましょう。

3-2 資産価値が高く手堅い物件を選ぶ

アパートローンの審査においては、物件の資産価値や賃料収入など、アパート自体の収益性、担保性も重視されます。

空室リスクが低く一定の賃料収入が見込みやすいアパートの方が、ローン返済が滞りなく進むと期待されます。

また、ローン契約では購入するアパートが担保になるため、資産価値が長期にわたって維持される物件の方がローン審査上はプラスに働きます。万が一返済が滞って物件を差し押さえることになったときに、担保物件の売却などによりローン延滞による損失をカバーしやすくなるからです。

仮にハイリスクな物件でオーナーが高収益を得たとしても、金融機関がオーナーから返済してもらえる金額は増えません。そのため、ハイリスク・ハイリターンの物件より、大都市圏で利便性が高く手堅い物件の方が金融機関の審査で高い評価を得やすい傾向にあります。物件を選ぶときには、金融機関からの評価も想定しながら担保性の高い物件を選ぶことも検討しておきましょう。

3-3 自己資金を厚めにして返済額を抑える

年収の先細りが想定される50代のアパート経営においては、月々のキャッシュフローは出来るだけプラスに維持するように努める必要があります。キャッシュフローが日々の生活にゆとりを持たせる源泉となり、万が一多少の空室が発生しても赤字に陥らずに済むからです。

ローン審査においても、賃料収入に対してローン返済額が高すぎるスキームは、特に50代になると金融機関に敬遠されます。あくまで目安になりますが、賃料収入に占める月々のローン返済額の割合を50%以内に抑えられるように資金計画を立ててみると良いでしょう。

50代は近い将来収入が減り、いずれは年金暮らしとなると想定される年齢となります。家賃に対する返済額の余裕度は、若い人よりも厳しく見られる可能性があるでしょう。

4 まとめ

月々の賃料収入を見込んだアパート経営は、将来の先細りする収入を補完する役割を果たしてくれるため、50代にとって相性の良い資産運用手法です。

また、順調にキャリアを築いてきた50代の方の場合は、ステータスや収入の高さ、金銭面での余裕がローン審査においてポジティブに働く可能性もあります。ただし、団体信用保険に加入できないリスクや、返済期間などにおいて若い人よりも制約が大きくなるリスクには留意しましょう。

また、賃料収入に対して返済額が高いスキームや、ハイリスク・ハイリターンなアパート経営は50代には適していません。低リスクの物件を選び、堅実な資金計画を立てて投資にチャレンジしていくことが大切です。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。