アメリカ不動産、新型コロナウイルスの影響は?米国株の価格推移と比較検証

2020年に世界中へ拡大した新型コロナウイルスは、各国の経済に大きな影響を与えており、アメリカも例外ではありません。

しかし、例えば日本では景気が落ち込む一方で2021年1月までの段階では不動産価格があまり下がっていません。

アメリカでは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、不動産市場や株式市場にどのような影響が出ているのか、データを用いてその推移を比較します。

目次

  1. アメリカ全体の不動産価格動向
  2. 最大の要因は低金利と住宅供給の減少
    2-1.アメリカ政策金利の推移
    2-2.住宅需要の増加
    2-3.住宅供給数の推移
    2-4.住宅に対するニーズの変化
  3. アメリカの株価動向
  4. まとめ

1.アメリカ全体の不動産価格動向

新型コロナウイルスの感染拡大はアメリカ全体の不動産市場にどう影響しているのか、アメリカ全体の不動産価格から検証します。アメリカの不動産ポータルサイトRedfinによると、2020年におけるアメリカ不動産の値動きは2020年2月までは$290,000台で推移していましたが、3月に$300,000を超えています。その後は、5月に1度$300,000を割り込みますが、6月以降は$300,000台を維持しており、9月には$330,000を超えました。

2020年1月から11月までの間に、アメリカ不動産は全米で10%以上値上がりしています。また、月別に対前年比の動向を見ると、2020年はマイナスになっている月がありません。11月までは全ての月でプラスに推移しています。

アメリカの経済はコロナウイルスの感染拡大に大きく影響されましたが、不動産価格についてはマイナスの影響が出ていない状況です。なお、2020年11月の住宅価格は$335,519で、対前年比14%のプラスとなっています。

2.最大の要因は低金利と住宅供給の減少

アメリカの不動産市場には、全体的な値下がりなどの動きは見られていません。不動産市場への影響が限定的となった理由として、低金利と住宅供給の減少が大きな要因であったと考えられます。それぞれの要因について解説します。

2-1.アメリカ政策金利の推移

アメリカの政策金利を決定しているFRBは、コロナウイルスの感染拡大で影響を受けている経済を浮揚する目的で、利下げに踏み切りました。政策金利の推移は以下の通りです。

アメリカ政策金利の推移
※参照:FRB「Selected Interest Rates (Daily) – H.15

2020年2月には年1.58%だった金利が3月には0.65%へ引き下げられ、4月にはさらに0.05%まで引き下げられました。その後8月には0.1%まで上がっていますが、0.1%前後を推移しており、引き上げの目処は立っていません。

アメリカでは、FRBが従来の10分の1以下まで金利を下げたことによって、住宅ローン金利が大幅に下がっています。低下した住宅ローン金利が、アメリカ国民の住宅需要を引き上げている状況であることが分かります。

2-2.住宅需要の増加

前述のRedfinの統計によると、2020年は売出し価格よりも高い価格で成約した物件の割合が大幅に増えており、6月以降は特にその傾向が顕著です。成約価格が売り出し価格よりも高いということは、物件の購入希望者による競争が激しいことを意味します。

アメリカ不動産の取引は入札制です。物件の購入希望者は、売主に対して購入希望額とともに購入希望の意思表示をします。意思表示のことをオファーと呼び、複数のオファーを受けた売主は、より高い購入価格を提示した買主候補者を選んで交渉することが可能です。

売り出し価格よりも高い価格で成約した物件は、それだけ多くのオファーが入ったと言えます。多くのオファーが入った物件数が増えている原因は、住宅需要が増加していることです。

過去5年の推移で見ると、30%を超えたことはありませんでしたが、7月以降は毎月30%以上の成約物件が売り出し価格より高い価格で合意しています。データからはアメリカ全体で住宅需要の高まりが顕著になっている様子が伺えます。

2-3.住宅供給数の推移

低金利が住宅需要を押し上げている一方で、アメリカ全体の住宅供給数は減少しています。Redfinの統計によると、2020年の住宅供給数は右肩下がりで推移しています。対前年比で供給数がプラスになった月はありません。2020年のアメリカは、高まった住宅需要に対して供給が追いついておらず、やや需給バランスが崩れていると言えます。

また、コロナウイルスの感染拡大で外出ができなくなったことも、住宅の建設工事を遅延させ、住宅供給の鈍化に影響していると推測できます。

なお、アメリカの不動産市場においては建物の建築許可に要する時間がとても長く、住宅の新規供給が起こりにくい背景を持っています。建築認可までに2〜3年程度の時間がかかることもめずらしくありません。

建設の計画から着工までに時間が空いてしまうと、その間にマーケットの状況が変わってしまうこともあります。不動産会社にとっては、新築不動産は売り上げの目処を立てにくいと言えるでしょう。

アメリカにおける住宅供給数の減少の背景として、それほど多くなかった新築住宅の供給がコロナの外出自粛によってさらに足止めされている状況であるということが考えられます。

2-4.住宅に対するニーズの変化

日本ではコロナウイルスの感染拡大によってテレワークが普及しました。テレワーク拡大の流れは、日本だけではなくアメリカでも起こっており、テレワークの拡大は消費者の住宅ニーズを変化させています。

これまでは、オフィスへのアクセスが重視され、交通の便が良い場所に立地する物件に人気が集まっていました。しかし、テレワークをする上では出社する必要性が下がり、テレワークを続けるために家の中に作業スペースを整えることの重要性が上がりました。

これまでは多少狭くても都心に立地する物件へ人気が集まっていましたが、テレワークによる生活環境の変化から2020年は郊外の広い家を求める人が増えました。ニーズの変化は住宅の買替えや購入を後押ししています。住宅ニーズの変化もまた、住宅価格上昇の一因といえるでしょう。

3.アメリカの株価動向

次に、アメリカの株価動向から新型コロナウイルスの影響を見て行きましょう。アメリカの株価推移を確認するため、ダウ平均株価が1年間でどう推移したか確認してみます。

アメリカの株価動向※出典:INDEXDJX: .DJI

コロナウイルスの感染拡大がアメリカ全土に広がった2020年の春は、平均株価も大幅に下落しました。しかし、2月終盤に下がり始めた株価は約1ヶ月後の3月下旬に底を打ち、以降は長期的に見て右肩上がりで推移しています。

12月中旬には$30,000を超えており、年初来最高値を更新しています。アメリカの株価は一時的に不動産よりもマイナスの影響を強く受けましたが、政策金利の引き下げ等の金融緩和の影響や、新型コロナウイルスのワクチン成功期待などを背景に、株価が押し上げられていた状況であると言えます。

しかし、2020年12月には世界各地で新型コロナウイルスの変異種が確認されるなど、不安材料が全くないわけではなく、ワクチンの副作用などの懸念点もあります。株価や政策金利の推移には今後も注意する必要があるでしょう。

まとめ

アメリカ全体の不動産価格推移を確認すると、新型コロナウイルスの拡大はアメリカの不動産市場にマイナスの影響を与えているとは言えず、政策金利の引き下げを背景にアメリカでは不動産価格が上昇している状況です。

不動産価格が上昇している原因は、FRBの判断による低金利と住宅供給数の減少です。低金利が住宅需要を押し上げている一方で、新規住宅の供給が減ったことから、需給バランスが崩れています。

その一方で、アメリカの株価動向を見ると、2020年2月から3月にかけて大幅に落ち込みましたが、その後は徐々に回復しています。12月には年初来最高値を更新しており、アメリカの株価は、感染拡大前の時点とさほど変わらない状況です。

2020年1月時点、コロナウイルスの終息に伴って政策金利が上昇していくのか、引き続き感染拡大が懸念されて低金利状態が続くのか、予想が難しい局面であると言えます。今後もコロナウイルスの感染状況や経済動向に目を配ることが重要と言えるでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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