アメリカ不動産投資、緩和政策による価格の影響は?テーパリング後の予測も

不動産投資の物件運用においては、運用の状況や物件価格の推移が経済状況に左右される側面もあります。このため、長期的に物件を運用する上では経済の状況に要注意です。

新型コロナウイルス感染症の拡大によって世界各国が経済的なダメージを受ける中、アメリカでも量的緩和政策が採用されています。また、新型コロナウイルスの影響が収束へ向かう場合は、テーパリングが始まる見通しです。

アメリカで導入されている量的緩和とテーパリングの内容に加え、テーパリングが始まるとアメリカ不動産市場ではどのような変化が起こるのか、予測について解説します。

目次

  1. 量的緩和とテーパリングとは
    1-1.量的緩和とは
    1-2.テーパリングとは
  2. アメリカで実施されている量的緩和政策
    2-1.量的緩和政策の詳細
    2-2.アメリカ不動産価格の推移
  3. テーパリング後に予測される事態
    3-1.テーパリングの時期
    3-2.テーパリング後のアメリカ不動産市場の予測
  4. まとめ

1.量的緩和とテーパリングとは

アメリカではコロナによって落ち込んだ経済を浮揚する目的で、量的緩和政策が導入されています。量的緩和とその後に実行されるテーパリングとはどういうことなのか、具体的に解説します。

1-1.量的緩和とは

量的緩和とは、景気が後退期に入った場合に中央銀行が金利を引き下げることで、各企業に設備投資などを促す施策のことです。金利を引き下げても、一定以上の効果を得られなかった場合は、中央銀行による国債や証券の大量購入が行われることもあります。

政策金利が引き下げられると、各金融機関が融資金利を引き下げるため、法人向けの融資や住宅ローンなどの金利も下がるのが最大の特徴です。

法人は運転資金を調達することによって事業の立て直しを図ったり、新たな設備投資をできたりするようになります。また、住宅ローン金利が下がれば、住宅需要を喚起することも可能です。

法人による設備投資や消費者による消費を喚起することなどにより、資金を市場に循環させて経済を一定以上の規模に保つのが量的緩和の主な目的です。

1-2.テーパリングとは

「テーパリング」とは英語では「Tapering」と表記します。テーパリングの意味は「徐々に減らしていく」ということです。量的緩和に対するテーパリングとは、量的緩和の規模を徐々に縮小していくことを指します。

具体的には、政策金利の引き上げや中央銀行による国債の買い入れ額を減らすことなどです。量的緩和によって景気が上向いてきたと判断された場合は、金利を引き上げることなどによって、中央銀行は市場への介入から撤退します。

なお、テーパリングが「徐々に」という意味を持つ通り、突然金利が大幅に引き上げられるなどのことはありません。市場の混乱を防ぐため、少しずつ通常時の運用に戻す施策が採用されます。

2.アメリカで実施されている量的緩和政策

実際にアメリカで行われている量的緩和政策の内容とともに、住宅市場への影響についても解説します。

2-1.量的緩和政策の詳細

アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は、コロナウイルス感染症拡大による経済落ち込みに対する対策として、2020年3月に政策金利をほぼ0%まで引き下げたほか、7000億ドル分の株式や国債購入を決定しました。

2020年2月には1.58%だった政策金利は3月に0.65%まで引き下げられ、4月以降は0.05%~0.1%の間で推移しています。なお、直近で最も政策金利が高かったのは2019年4月で、金利は2.42%でした。(※参照:Federal Reserve Bank of St. Louis「Effective Federal Funds Rate」)

新型コロナウイルスの影響によって1年の間に約35分の1まで金利が引き下げられたことになります。

なお、リーマンショックが起きた2008年秋以降にも同様の施策が採用されており、2008年12月以降は0.2%前後まで金利が引き下げられていました。

大規模な金利の引き下げが行われたのは、リーマンショックが発生した2008年以降では初めてのこととなります。リーマンショックの時は2016年12月から徐々に金利が引き上げられており、低金利政策は約8年間継続されたことになります。

2-2.アメリカ不動産価格の推移

量的緩和政策によって政策金利が引き下げられると、金融機関は住宅ローンを含む各種融資の金利を引き下げます。住宅ローン金利が引き下げられると、アメリカ国民は住宅を購入しやすくなるため、住宅需要が拡大します。

アメリカの不動産価格推移は、緩和政策が行われる前から上昇傾向にありましたが、2020年の第2四半期以降は値上がりの勢いが強くなっています。政策金利が引き下げられたのは2020年3月なので、住宅市場が金利の引き下げに敏感に反応した結果とも言えます。(※参照:Federal Reserve Bank of St. Louis「All-Transactions House Price Index for the United States」)

結果的に、アメリカでは住宅価格の上昇率が過去最高水準まで上がっており、経済の落ち込みとは相反して住宅市場は活発な状況です。

ただし、アメリカであればどこでも住宅価格が上昇しているというわけではありません。アメリカでも日本と同様に大都市から郊外への人口移動が起きているエリアもあり、一部の大都市ではニーズの減少から住宅価格が下落しています。

2021年以降も、アメリカ不動産投資を検討するのであれば、物件購入前に住宅価格の推移を確認しておくことが重要と言えるでしょう。

3.テーパリング後に予測される事態

新型コロナウイルスの収束とともにテーパリングが始まることは予測されています。テーパリングが始まった場合のアメリカ不動産投資への影響について、予測される事態を解説します。

3-1.テーパリングの時期

テーパリングによって発生する事態を予測するにあたり重要なポイントは、テーパリングがいつのタイミングになるのかということです。

テーパリングのタイミングについては、ワクチン接種の進捗とコロナの患者数にも影響されます。アメリカにおけるコロナの患者数推移は以下グラフの通りです。

アメリカにおけるコロナの患者数推移※画像引用:Centers for Disease Control and Prevention「COVID Data Tracker

アメリカではコロナに対応するワクチンの接種が進んでいることもあってか、ピーク時と比較すると、2021年6月時点の患者数はかなり少ないことがわかります。なお、2021年7月時点では、FRBはテーパリングの開始時期を明言していません。

しかし、感染者数の減少に伴って、市場では2022年以降にテーパリングが始まるとも予測されています。

3-2.テーパリング後のアメリカ不動産市場の予測

テーパリングとアメリカの住宅市場については、政策金利の引き上げがポイントになります。2020年に政策金利が引き下げられた直後から住宅価格の上昇ペースが上がったためです。

金利の引き上げによって住宅ローン金利が引き上げられると、住宅需要は落ち着きを取り戻し、住宅需要の落ち着きとともに住宅価格の上昇ペースも下がると想定されます。

金利が段階的に引き上げられるのであれば、住宅価格も突然暴落する可能性は低いと考えられます。ただし、金利の上昇幅によっては資金調達の難易度が上がり、住宅価格に大きな影響を与える可能性も少なくありません。

まとめ

新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、アメリカで導入されている量的緩和政策とは、具体的に政策金利の引き下げや連邦準備制度理事会による国債の購入などのことを指しています。

また、量的緩和政策の規模を段階的に縮小していくことをテーパリングと言います。アメリカにおけるテーパリングの実施時期は、コロナの感染者数推移によって変動すると考えられます。なお、2021年7月時点の感染者数はピーク時より大きく減少している状況です。

アメリカ国内での感染者数やワクチンの接種率、雇用統計などの経済指標の回復状況によってテーパリングが始まるものと予測されるほか、テーパリングに伴ってアメリカ不動産の価格は上昇ペースが落ち着くと考えられます。

アメリカ不動産を運用している、または、今後アメリカ不動産投資を検討しているという場合は、特に金利の引き上げ時期に注意しておきましょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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