アメリカ不動産にはどのような相続手続きが必要なのか、相続税はかかるのかなど疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
アメリカ不動産の相続には、プロベートという手続きが必要です。しかし、プロベートを進めると、相続人の負担が大きくなります。相続人の負担を減らしてスムーズに相続手続きを進めるためには、事前の対策と信頼できるエージェントを見つけることが重要です。
アメリカ不動産の相続手続きと、プロベートの回避方法などについて解説します。
目次
- アメリカと日本における不動産相続の違い
1-1.日本では相続人同士で話し合いをする
1-2.アメリカでは裁判所によるプロベートが必要 - プロベートを避ける方法
2-1.プロベートを避けるには、生前信託の設定が有効
2-2.財産受取人の登記という方法も
2-3.遺言や共有名義の設定では不十分なことも
2-4.日本におけるアメリカ不動産の相続手続きは? - アメリカ不動産相続の相続税
3-1.連邦税と州税がある
3-2.連邦税の納税期限は9ヶ月以内 - まとめ
1.アメリカと日本における不動産相続の違い
アメリカでは、相続対策を特にしていないと、不動産の相続手続きへ裁判所が関与します。アメリカと日本とでは、不動産の相続手続きにどのような違いがあるのか解説します。
1-1.日本では相続人同士で話し合いをする
日本では不動産の持ち主が亡くなると、民法に従い相続人同士で遺産分割協議という話し合いを行います。
また、不動産の持ち主が生前に遺言書で遺産の分割割合を指定していた場合は、遺言書の内容に従って相続手続きを進めます。なお、日本では相続不動産の評価は相続路線価を参照して行います。
1-2.アメリカでは裁判所によるプロベートが必要
アメリカでは、特に相続対策をしないまま不動産の所有者が亡くなった場合は、裁判所によるプロベートという手続きが行われます。アメリカでは相続手続きを裁判所が管理するためです。
裁判所は、まず相続財産の管理人を選定します。裁判所に任命された管理人は、裁判所の監督下で財産の状況や相続人の調査を行い、相続税の申告まで行います。相続人が相続財産を受け取れるのは、管理人による一連の手続きが終了後、裁判所から財産の分配許可が出てからです。
2.プロベートを避ける方法
プロベートの手続きには、開始から終了までに1年〜3年など多くの時間が必要となり、何年で終了するのかは州や状況によって異なります。不動産が所有する州の裁判所がプロベートを管理するためです。
また、プロベートが終了するまでの期間中、裁判所が相続財産を管理するため、相続人は相続財産の活用・処分などができません。そのほかに言語や時差の問題などもあり、日本人にとってプロベートの手続きは負担が大きいと言えるでしょう。
アメリカ不動産のプロベートを避けるための対策について見て行きましょう。
2-1.プロベートを避けるには、生前信託の設定が有効
相続人の負担が大きいプロベートですが、あらかじめ対策をしておけば、プロベートを経ずに相続手続きを完了できます。
プロベートを避けるための方法として、アメリカ不動産を信託財産に設定しておく、という手段があります。なお、生前信託は英語でLiving Trustと言います。
生前信託によって財産管理の受託者を設定しておけば、不動産の所有者が亡くなった時に、不動産は自動的に管理受託者へ引き継がれます。生前信託を設定すればプロベートは不要ですが、設定するための手続きや費用が別途必要な点に要注意です。
2-2.財産受取人の登記という方法も
生前信託以外に有効な方法として、あらかじめ財産受取人を指定して登記するものが挙げられます。財産受取人の登記には「Transfer on death deed」という書類が必要です。不動産が所在する行政区の登記所へ書類を提出し、認可されればプロベートを避けられます。
ただし、Transfer on death deedを受け付けている州は限られる点に要注意です。また、生前信託は預金口座など不動産以外の財産にも使えますが、Transfer on death deedは不動産にしか使えません。
不動産投資の利益をアメリカの銀行口座へストックしている場合は、生前信託でまとめて手続きするほうが手間も少なく済む可能性が高いと言えます。
2-3.遺言や共有名義の設定では不十分なことも
日本では、相続対策として遺言書の作成や、あらかじめ共有名義を設定しておくこともあります。しかし、アメリカではこれらの対策はプロベートを回避する方法として不十分なこともあるので要注意です。
遺言書が法的に有効なものであるか、共有名義の設定に問題はなかったかなど、相続財産管理人による確認が入ることも考えられます。プロベートの要否は裁判所によって判断されるため、要確認と判断された場合にはプロベートの手続きが必要です。
2-4.日本におけるアメリカ不動産の相続手続き
日本におけるアメリカ不動産の相続手続きは、日本国内の不動産と同様の扱いとなります。法の適用に関する通則法という法律により、相続は被相続人の本国法によると定められているためです。
日本在住の日本人がアメリカ不動産を所有していた場合は、アメリカ不動産も日本の相続法に従って相続することになります。このため、日本国内の不動産と同様に遺産分割協議の対象となり、通常と別途の手続きなどは不要です。
3.アメリカ不動産相続の相続税
アメリカでは相続税が発生するのか、納税期限はあるのかなど疑問に思う人もいるのではないでしょうか。アメリカの相続税について解説します。なお、アメリカの相続税も外国税額控除の対象です。
3-1.連邦税と州税がある
相続税に限った話ではありませんが、アメリカの税金には連邦税と州税との2種類があります。連邦税はどの州で不動産を所有していても発生しますが、州税は税金の種類と税率とが州によって異なるため要注意です。
相続税が課税される州の不動産を相続する場合は、連邦税と州税との両方で相続税を支払う必要があります。なお、州税は年度によって税金の種類や税率が変更されることもあるので、あらかじめアメリカの税理士へ確認しておくと良いでしょう。
3-2.連邦税の納税期限は9ヶ月以内
アメリカでは、連邦税の相続税は相続発生後9ヶ月以内の納税を求められます。また、アメリカでは、相続財産の管理人が相続人を確定する前に、相続税全額の納税が必要です。各相続人が相続額に応じた相続税を支払う日本とは異なります。
4.アメリカ不動産投資は信頼できるエージェントが重要
アメリカ不動産投資をするならば、まずは信頼できるエージェントを見つけることが重要です。アメリカ不動産投資の相続対策は確認を要するポイントや手続きが多岐に渡り、投資家が自ら対応できないケースも少なくありません。
また、専門家の手を借りるにしても、税理士や弁護士など複数の専門家を見つける必要があります。各専門家とのパイプを持ったエージェントに相談できれば、大幅に手間を削減できる可能性があります。
相続が発生する前にアメリカ不動産購入時のエージェントや、不動産を管理している管理会社に相談してみることも検討してみましょう。
まとめ
アメリカ不動産の相続には、特に対策をしていないとプロベートという手続きが必要になります。また、プロベートには時間がかかる上に、物件が裁判所の管理下にある間は相続人が管理運用できないので要注意です。
プロベートを避けるための方法は、生前信託や財産受取人の登記などです。なお、遺言や共有名義の設定などでは不十分なこともあります。また、プロベートを避けるためには、税理士や弁護士など専門家のサポートを受けることも検討してみましょう。
あらかじめ信頼できるエージェントとつながりを持っておくことで、アメリカ不動産の相続はスムーズに手続きできるようになります。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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