2020年の不動産相場は?コロナショック前後のREIT指数から分析

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2020年における新型コロナウイルスの流行は、世界各国の経済に多大な影響をもたらしています。日本においても株式市場やREIT市場などの様々な市場に影響を与えており、大きく価格を下げている取引商品も出てきました。

特に、REIT市場は2020年2月から3月のおよそ1ヶ月間で東証REIT指数が半減するなど、非常に大きな相場の下落を見せました。

このREIT指数の値動きが、今後の不動産価格へどのように影響するのでしょうか。REIT指数を見ながら確認してみましょう。

目次

  1. コロナショック後の各REIT(リート)の相場の変動
    1-1.ホテル特化型REIT
    1-2.物流特化型REIT
    1-3.居住特化型REIT
    1-4.オフィス型REIT
    1-5.テナント型REIT
  2. コロナショックの影響を受けて各種不動産の相場はどう変わるか
    2-1.ホテルなどの観光施設
    2-2.倉庫などの物流不動産
    2-3.マンションなどの居住施設
    2-4.オフィスビル
    2-5.テナント施設
  3. まとめ

1.コロナショック後の各REITの相場の変動

まずは各種REITの価格がどの程度変化したのか、アセットごとに確認してみましょう。

1-1.ホテル特化型REIT

観光客数の減少により、大きな影響を受けているのがホテル特化型REITです。

日本政府観光局「訪日外客数(2020 年 3 月推計値)」によると、海外からの日本への観光客は、2020年3月時点で前年比93%も下落しています。

また、観光客だけではなく、日本国内でも観光地での移動が自粛要請されていることもあり、ホテルや民泊施設などの客数が大きく落ち込んでいます。

このような状況下で、ホテル特化型REIT銘柄の騰落率を抜粋してみました。

星野リゾート・REIT投資法人 下落率 -32.08%
大江戸温泉REIT投資法人 下落率 -34.88%
森トラスト・ホテルREIT投資法人 下落率 -36.06%
インヴィンシブル投資法人 下落率 -47.46%
いちごホテルREIT投資法人 下落率 -54.31%
ジャパン・ホテル・REIT投資法人 下落率 -56.63%

(期間 2019年4月16日~2020年4月15日)

価格の変動率が最も低い銘柄でも、30%以上も暴落していることがわかります。さらに大きな変動を見せている銘柄は60%以上の下落となっており、各銘柄とも多大なダメージを負っていると言えるでしょう。

1-2.物流特化型REIT

次に倉庫などの物流不動産を運用しているREITです。インターネットショッピングの市場の拡大で、物流特化型REIT銘柄は近年増加しています。

三菱地所物流REIT投資法人 上昇率 37.94%
ラサールロジポート投資法人 上昇率 28.10%
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人 上昇率 27.01%
CREロジスティクスファンド投資法人 上昇率 20.85%
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人 上昇率 16.73

(期間 2019年4月16日~2020年4月15日)

物流特化型REITのデータを見ると、1年間で30%以上も価格が上昇しているものがあり、いずれも10%以上の上昇を見せるなど、好調な値動きとなっています。

新型コロナウイルスの影響が大きくなった2020年2月には値段を下げていますが、1年のスパンで見ればかなりの伸びを見せています。

1-3.居住特化型REIT

次に、マンションなどの居住施設を運営するREITを見てみましょう。

日本アコモデーションファンド投資法人 上昇率 18.20%
コンフォリア・レジデンシャル投資法人 上昇率 10.54%
スターツプロシード投資法人 上昇率 5.66%
GLP投資法人 上昇率 4.93%
アドバンス・レジデンス投資法人 上昇率 4.22%

(*期間 2019年4月16日~2020年4月15日)

こちらも物流特化型REITと同じく、1年で見れば値上がり傾向にあります。

最も大きく値上がりした銘柄は18%以上も伸びており、他の銘柄も3~10%以上伸びています。

1-4.オフィス型REIT

会社のオフィスが入るビルを運営するオフィス特化型REITです。

ジャパンリアルエステイト投資法人 下落率 -2.75%
森ヒルズREIT投資法人 下落率 -5.49%
日本ビルファンド投資法人 下落率 -11.96%
OneREIT投資法人 下落率 -14.68%
サンケイリアルエステート投資法人 下落率 -15.87%

(期間 2019年4月16日~2020年4月15日)

オフィス型REITの各銘柄を見ると、ホテルREITよりも値下がりは軽微ですが、それでもここ1年のスパンで見る限りでは価格が下落しています。

単一の銘柄で見ると、コロナショック前は順調な値上がりだったものの、コロナショック後に大幅に値下がりしていることがわかります。その後はやや値を戻しているものの、未だにコロナショック前の水準に戻っていない銘柄が目立ちます。

1-5.テナント型REIT

商業施設を運営するテナント特化型REITを見てみましょう。

イオンREIT投資法人 下落率 -18.80%
フロンティア不動産投資法人 下落率 -30.78%
日本リテールファンド投資法人 下落率 -44.05%

(期間 2019年4月16日~2020年4月15日)

銘柄数はあまり多くないのですが、どの銘柄もかなり大きな値下がりを見せています。

コロナショックによる外出自粛の要請により、イオンなどの大型店舗では大半のテナントが2020年4月時点で営業を見合わせています。売上の計上が難しい状況にあり、今後の運営再開も不安定な中、テナント型REITの相場も下落傾向にありました。

2.コロナショックの影響を受けて各種不動産の相場はどう変わるか

アセット別にREIT相場の傾向について取り上げてみましたが、今後の不動産市場はどのように変わるのでしょうか。

物件タイプごとにそれぞれ解説していきます。

2-1.ホテルなどの観光施設

REIT指数を見る限り、影響が大きくなりそうなのがホテルなどの観光施設でしょう。

コロナショックにより営業を中止したり、廃業するホテルが増えたりすれば、ホテル物件などが売られることも考えられるでしょう。

また、都心から離れた観光地にあるホテルなどの宿泊施設は、観光客が来なければ施設の売上がなくなり、土地の価格自体が都心のホテルと比較して高くないため、売却が難しい案件になります。

経営難による廃業するホテルが多くなるほど、物件の価格が大きく下落する可能性も大きくなると言えます。

2-2.倉庫などの物流不動産

各REITで最もコロナショックの影響が少ないのが、物流不動産REITです。

物流不動産は個人に売却されることは稀ですが、それだけに不動産の流動性が低く、REITの値動きを見ていても価格は安定していると考えられます。

インターネットショッピングの普及によって物流倉庫の需要は高まり、国土交通省総合政策局の「建築着工統計調査報告」によると、令和元年では新規施工店舗面積よりも新規施工倉庫面積が上回っているというデータもあります。

人々が外出しなくなればインターネットショッピングの需要がさらに増し、同時に物流倉庫の需要も高まっていくことも考えられます。

2-3.マンションなどの居住施設

マンションなどの居住施設REITは、ホテル型REITと比較してコロナショック後も大きな下落はありませんでした。居住施設は人々が生活をする上で必ず必要なものであるだけに、影響が少なかったものと考えられます。

REIT指数の現状の動きを見ていると、高級マンションや都心の一等地など、投機的な目的で値上がりを見せていたマンションの値段は下がる可能性がありますが、それでも数が少ないことから、ホテルなどの観光施設と比較して大きく値が下がる可能性が低いと言えるでしょう。

ただし、オフィスのテレワーク化によって都心での居住に需要が減退した場合、23区内の居住用不動産の需要の減少によって値が下がり、一方で郊外の戸建住宅などの需要が高まる可能性があります。

2-4.オフィスビル

オフィスビルREITはやや値下がりを見せており、2020年時点における東京や大阪などの都心のオフィスは、空室率が非常に低い状態が続いています。

コロナショックの影響により倒産する企業が増えればオフィスビルの空室が増え、家賃(テナント料)を下げざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。

家賃を下げれば収益性が悪化するので、オフィスビルの価格もやや下降する可能性があると言えるでしょう。また、テレワークが一般的になれば、オフィス自体の需要の低下が予想されます。

コロナショックの影響に加えて、テレワークの普及によってオフィスビルの相場が下がる可能性があると言えます。

2-5.テナント施設

コロナショックの拡散防止を目的とした外出自粛の要請により、テナント施設の売上が下がりました。

ただし、今後コロナショックが終息すれば、ショッピングセンターなどのテナントは人々の生活に必要であるため、需要は回復する可能性が高いと言えます。

テナント施設は一時的な値下がりが起きる可能性がありますが、コロナショック後に経済活動が活性化すればテナント施設の相場が元に戻ることも考えられます。

まとめ

REIT指数を見る限りでは、人々の生活に密着しているもの、人々の生活に不可欠なものほど価格が下がりにくい傾向にあることが分かってきます。一方、ウイルスの感染を避けるための自粛によりテナント施設や、オフィスビルへの影響が大きいことがわかります。

新型コロナウイルスの影響が大きい現段階では、今回ご紹介したREITの値動きから不動産需要を把握し、今後の投資判断の参考にしてみましょう。また、不動産は融資を受けて購入するケースが多く、金融機関の動きに注意を払っておく必要があります。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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