築40年以上の不動産売却が難しい3つの理由とスムーズに売るコツ

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不動産売却がなかなか成約に至らないケースでは、築年数や立地、間取り、価格などが要因になっていることがあります。中でも築年数はオーナーの意思で改善することができないポイントのため、築古物件を売却できずに困っている人もいるでしょう。

そこで今回は築40年以上の不動産に焦点を当て、売却が難しい理由を解説する一方、売却をスムーズに進めるためのコツも紹介します。

目次

  1. 築40年以上の物件が売れにくい理由
    1-1.法定耐用年数がゼロか、ゼロに近い
    1-2.融資審査をクリアできない可能性がある
    1-3.耐震基準を満たしていない可能性がある
  2. 築40年以上の不動産をスムーズに売却するコツ
    2-1.適切な販売価格で売り出す
    2-2.リフォームやリノベーションをする
    2-3.専任媒介契約で売却活動をしてもらう
    2-4.不動産会社に買い取ってもらう
  3. まとめ

1 築40年以上の物件が売れにくい理由

中古不動産の市場では築年数が経っていると売却が難しくなるのが通常です。実際に統計にも現れており、公益財団法人東日本不動産流通機構が2021年2月26日に発表した資料「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」では下記のような数字が示されています。

築年数 2019年 2020年
築0~5年 23.3% 26.3%
築6~10年 31.9% 36.4%
築11~15年 26.1% 28.0%
築16~20年 25.8% 28.4%
築21~25年 18.6% 20.7%
築26~30年 13.5% 14.1%
築31年~ 12.6% 12.5%

※参照:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)

この表は、2019年と2020年に新規登録された中古マンションが成約となった割合を表しているものです。最もボリュームが多いのが「築6~10年」で、2019年は31.9%、2020年は36.4%となっています。

これに対して最も低いのが「築31年~」で、2019年は12.6%、2020年は12.5%です。つまり築年数が経っている物件は成約が難しくなるということなのです。

この要因として挙げられるのが「法定耐用年数」「融資審査」「資産価値」「耐震不足」などです。次の項目から見ていきましょう。

1-1 法定耐用年数がゼロか、ゼロに近い

法定耐用年数とは、建物や機械設備などの固定資産を使用できる法律的な期間のことを言います。建物に関しては、構造によって細かく耐用年数が決められており、下記の表のようになっています。

構造または目的 法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 47年
れんが造、石造またはブロック造 38年
木造 22年
軽量鉄骨造(厚さ3ミリ以下) 19年
軽量鉄骨造(厚さ3〜4ミリ) 27年

※引用:国税庁「 減価償却のあらまし」より抜粋

例えば、築40年の鉄筋コンクリート造の建物であれば、耐用年数の残りが7年ということです。一方、鉄骨造や木造ではすでに耐用年数がゼロになっており、税法上、償却を終えた資産ということになります。

1-2 融資審査をクリアできない可能性がある

築年数は融資を受ける際の審査にも影響を与えます。金融機関は主に融資対象者の属性や対象不動産の担保評価額などを考慮して、融資の審査を行うからです。

融資対象者の属性とは、主に下記のようなことを指します。

  • 家族構成
  • 居住環境
  • 勤務先と勤続年数
  • 年収
  • 金融資産の有無および内容
  • 借入金の有無および内容

この属性が一定基準に達していたとしても、担保評価額が足りなければ融資の審査をクリアすることができません。

法定耐用年数は、金融機関が行う担保評価においても重視されています。耐用年数が切れている物件は担保評価を得にくく、次の買主が物件の購入を行う際の資金調達のハードルが上がることになります。このような背景があることから、耐用年数の切れた築古物件は売却のハードルが高くなってしまいます。

築年数が経っている不動産では資産価値がゼロに近く、融資できる金額や返済期間が制限されてしまいます。そのため、現金で購入できる人など売却先が限られてしまい、売買の成立が難しくなるのです。

1-3 耐震基準を満たしていない可能性がある

地震の多い国の一つである日本では、建築基準法などによって建物に対して耐震基準が設けられています。この耐震基準とは、最低限満たすべき地震への耐性基準のことで、初めて法律に盛り込まれたのは1924年に制定された市街地建築物法です。

その後、何度か耐震基準は改正されていますが、1981年5月に大幅な内容変更が行われました。そのため1981年5月以前の基準を「旧耐震基準」と言い、それ以降は「新耐震基準」と呼ぶようになっています。

旧耐震基準と新耐震基準の代表的な違いを下記の表にまとめましたので、確認してください。

項目 旧耐震基準 新耐震基準
震度5程度の地震に対する基準 倒壊しないこと 軽いひび割れ程度の被害に抑えること
震度6程度の地震に対する基準 なし 倒壊しないこと

つまり、1981年5月以前に建てられた築40年以上の建物は、その後に耐震工事を行っていなければ現在の新耐震基準を満たしていない可能性があります。そのため購入者が限られてしまい、売却が難しいのです。

2 築40年以上の不動産をスムーズに売却するコツ

前項では築40年以上の不動産がなかなか売れない理由を紹介しましたが、公益財団法人東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」では築古物件の方が市場に登録される数と成約物件数の割合が多いというデータがあります。

下記の「2020年中古マンション築年帯別構成比率」をまとめた表で確認してください。

築年数 新規登録物件 成約物件
築0~5年 7.2% 9.6%
築6~10年 7.6% 14.1%
築11~15年 11.5% 16.3%
築16~20年 9.8% 14.1%
築21~25年 10.7% 11.2%
築26~30年 10.0% 7.2%
築31年~ 43.2% 27.5%

※参照:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)

新規登録される物件のうち「築31年〜」が4割以上を占め、成約物件のうち約3割を「築31年~」が占めていることがわかります。

つまり工夫をすれば、「築31年~」の物件でも売却することが可能だということです。次の項目から、どのような方法があるのか、紹介していきます。

2-1 適切な販売価格で売り出す

築年数が経つことによって物件の資産価値は下がりますが、市場の相場価格に沿った価格であれば売買が成立する可能があります。それは「古くても安く買えるなら」というように、価格帯の低い不動産を求めている層がいるからです。

ちなみに公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」から、首都圏で売買が成立したマンションにおける1平方メートルの単価を表にまとめました。

首都圏 ~築5年 ~築10年 ~築15年 ~築20年 ~築25年 ~築30年 築30年~
㎡単価(万円) 100.4 83.1 69.4 63.2 55.5 38.4 34.1

※参照:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況【2021年04~06月】

表によると、1平方メートルの単価は築5年に比べて築10年では約82.7%、築20年では約62.9%、築30年では約38.2%に下落していることがわかります。こうした資産価値の下落を把握した上で価格を設定することで、売却がスムーズにいく可能性があります。

2-2 リフォームやリノベーションをする

築年数が経っている物件でも、リフォームやリノベーションによって暮らしやすい環境を整えることで売却できる可能性を高めることができます。

キッチンやバスルームを最新モデルに買い替えたり、フローリングや壁紙を張り替えるだけではなく、リノベーションなら現在のトレンドに合った間取りや内装にすることもできます。例えば、3LDKの中古マンションの和室を壊して、20畳以上のリビングダイニングを備えた2LDKにするといったこともできるのです。

また、旧耐震基準の建物であれば、リフォームやリノベーションと同時に新耐震基準に合わせた耐震工事を行うのもいいでしょう。

ただし、これらのリフォームやリノベーションには費用がかかります。売却価格にかかった経費分の上乗せができないケースもあるため、事前に市場調査を行ったり、不動産仲介会社への相談を行うなど慎重に判断してみましょう。

2-3 専任・専属専任媒介契約で売却活動をしてもらう

不動産を売却するには、媒介契約を締結した不動産会社に売却活動をしてもらいます。しかしこの媒介契約には3つの種類があり、選び方を間違えると物件が売れにくくなることもあります。

例えば、築古物件は元々市場での売却が難しく、価格も低くなりがちなため、一般媒介契約では不動産会社が手間暇をかけて売却活動をしてくれないことがあります。このような場合には、仲介依頼を1社に限定する専任媒介契約や専属専任媒介契約を検討することで、積極的に売却活動を行える可能性があります。

契約の種類による特徴の違いについて、下記にまとめましたので参考にしてください。

項目 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数の不動産会社への依頼 × ×
自分で見つけた買主との単独契約 ×
指定流通機構への登録義務
販売活動の報告義務
契約期間 規制は無し 3ヵ月以内 3ヵ月以内

2-4 不動産会社に買い取ってもらう

それでも不動産を売却するのが難しい場合は不動産会社に買取をしてもらう方法があります。仲介は一般客が買主になるのに対して、買取では不動産会社が買主になります。

下記に買取と仲介の違いを表にしました。

買主 売却価格 売却活動の期間
仲介 個人もしくは法人 不動産市場の相場価格で売り出す 買主を探すところから始めるため、予測しづらい
買取 不動産会社 不動産会社が買取価格を決める(相場より2~3割程度安くなる) 買取する不動産会社が決まるとスムーズに進められる

買取で価格が2~3割程度安くなるのは、不動産会社が買い取った物件をリフォームして市場に売り出すからです。「急いで売却したい」「確実に売却したい」ときなどに適した方法と言えるでしょう。

買取を検討する際は、できるだけ複数社の査定を受けて価格を比較することが大切です。不動産査定一括サイトを活用するなどして効率的に査定価格を比較してみましょう。

なお、物件情報の登録時に備考欄に「買取と仲介の両方の査定を依頼したい」と記述することで、買取対応を行っている不動産会社と仲介会社の両方の価格を比較することも可能です。まずは価格を知りたいという方は利用を検討してみると良いでしょう。

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まとめ

築40年以上の不動産は、法定耐用年数や融資審査に通りにくいといった理由がネックになり、売却がスムーズに進まない可能性があります。その一方、リノベーションをしたり、適切な価格をつけるなどによって、売却しやすくなるケースもあります。

築古不動産の売却では、物件にどのようなニーズがあるのか、どのような対策をすれば売却に繋がるのか、売主が自ら考えることも重要なポイントとなってきます。不動産会社にも相談をしながら、スムーズな売却を目指していきましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。