アパート経営における賃貸需要は、投資エリアでの人口と物件の供給数の比較によって慎重に判断する必要があります。賃貸需要が多いほど継続的に入居者を確保できる可能性があるため、アパート選びの際には将来的に賃貸需要が見込めるかどうか、検証してみましょう。
そこで今回のコラムでは、アパート経営における賃貸需要の見極めポイントを解説していきます。また特定地域の家賃相場を調べる方法も紹介します。
目次
- 賃貸需要とは
- アパートの賃貸需要を見極めるポイント
2-1.最寄り駅からの距離
2-2.生活利便施設の充実度
2-3.アパートの築年数と家賃推移
2-4.物件タイプと地域ニーズの合致
2-5.人気設備の導入
2-6.賃貸契約の条件 - アパートの家賃相場を調べる方法
3-1.不動産情報ポータルサイトを活用する
3-2.仲介店舗・管理会社に聞き込みをする - まとめ
1 賃貸需要とは
不動産投資で用いられる賃貸需要とは、賃貸物件に対する入居希望者からのニーズのことです。「賃貸需要が多い物件(あるいはエリア)」といったように使われ、入居したい人が多い物件(あるいはエリア)ということを指します。つまり、賃貸需要の多いエリアで賃貸需要の多いアパートを運営することができれば、アパート経営は軌道に乗りやすいと考えることができます。
また、単純に賃貸需要の多寡だけではなく、賃貸需要を見極めることで次のような利点もあります。
- アパートの物件タイプを絞りやすい
- 空室に対するリスクヘッジがしやすい
- アパートの将来性が予測しやすい、など
これらの利点を得るためにも、アパート選びの際には賃貸需要が多い物件であるかどうかを適切に判断することが重要になります。ただし、賃貸需要を示す具体的な数値がある訳ではなく、確実に将来の予測をすることはできません。過去のデータや傾向、家賃や人口推移などからリスクを想定し、投資家側の目利きや投資判断が重要になってきます。
2 アパートの賃貸需要を見極めるポイント
アパート経営の賃貸需要を見極める際、どのようなポイントを重視するといいのか解説していきます。
2-1 最寄り駅からの距離
単身者が住むことの多いアパートの場合、最寄り駅から近い方が賃貸需要は増加します。特に東京圏などの大都市では、公共交通機関の利用頻度が高まるため、駅からの距離の重要性が増していきます。
おおよその目安としては、駅から徒歩10分~15分であるかどうか、という点が指標となります。ただし、郊外エリアで公共機関が発展していなかったり、ファミリー層が主な入居者の物件であれば、駅との距離ではなく、駐車場が設置されているかどうかという点が重視されることがあります。入居者ターゲット層の利便性を考慮して検証しましょう。
2-2 生活利便施設の充実度
生活利便施設とは、生活に必要となるさまざまな施設のことです。代表的な生活利便施設は、下記のものを指します。
- スーパーマーケット(ショッピングセンター)
- コンビニ
- 商店街
- 金融機関
- 医療機関
- 郵便局
- 教育機関
- カフェ・レストラン、など
例えば、ちょっとした買い物なのに公共交通機関を使ったり、自動車で行ったりすると、不便さや時間のロスを感じることもあります。
また、生活スタイルによって変わるため、人それぞれで重要視する生活利便施設は異なります。そのため徒歩圏内にさまざまな生活利便施設があると、いろいろな人が暮らしやすさを感じることができます。つまり、生活利便施設が豊富な方が、アパートの賃貸需要は見込みやすいと言えるでしょう。
2-3 アパートの築年数と家賃推移
家賃も広さもほとんど同じ部屋であれば、築年数が浅い物件の方が賃貸需要が増加する傾向があります。外観や部屋の内装、設備や間取りなど、築年数が経過することで現代のニーズにマッチしなくなっていることがあるためです。
物件の築年数が経過して経年劣化してしまうことは不動産投資で避けることができません。築年数が経過した時の家賃相場や周辺の競合物件の入居率などを調べるなどして、築年数が経過した後の賃貸需要についても検証してみると良いでしょう。
2-4 物件タイプと地域ニーズの合致
アパートの賃貸需要を考えるときに注意したいのが、「単身者」と「ファミリー層」の2つの視点があることです。例えば、近隣に大学があれば単身者層、小学校が近ければファミリー層の賃貸需要が高くなるのが通常です。
このように該当エリアが、最寄り駅や路線、生活利便施設などによって、「単身者」と「ファミリー層」のどちらに適しているか異なるものです。そのため、エリアごとに賃貸需要があるターゲットを把握し、それに応じて間取りを選択したり、物件のタイプを決めていく必要があります。
ただし、単身者層とファミリー層の両方から賃貸需要があるエリアもあり、その場合はどちらの部屋タイプも備えた混合型アパートが選択肢になることもあります。
2-5 人気設備の導入
住まいの快適性を向上させる住宅設備が最優先されることは少ないですが、プラスアルファとして他の物件との差別化になります。
例えば、前述したように郊外エリアでは駐車場を必須条件として物件を探している家族もいます。この場合、駐車場を設けていないファミリー向けアパートは、ファミリー層の賃貸需要を見込むことが難しくなることがあります。
その他、アパートで主に導入されている設備には下記のようなものがあります。ターゲット層に合わせてこれらの設備導入も検討してみると良いでしょう。
- インターネット無料
- 洗浄機能付き便座
- 宅配ボックス
- TVモニター付きインターフォン
- 浴室換気乾燥機
- エントランスのオートロック
- 防犯カメラ
- ホームセキュリティ
- システムキッチン
- 独立洗面台
- 24時間利用可能ゴミ置き場
- 駐車場(ガレージ)
- ウォークインクローゼット
- IoT機器、など
2-6 賃貸契約の条件
アパート経営の戦略の一つに、ターゲットを絞ることで入居者を獲得する方法があります。それがアパートに付加価値を設けることです。具体的には、次のような付加価値があります。
- ペット可(ペット相談可)
- 楽器演奏可
- シニア可
- 外国人可
- 家具・家電付き、など
近年は各地で高齢化が進んでおり、高齢者の住居不足が社会問題になっていることもあります。そのため高齢者の入居を可能にすることで、シニア世代からの賃貸需要を増加することができます。そのほか家具・家電付きであれば、引っ越しを頻繁にする人や、初期費用を抑えたい人に対して訴求することができます。
このようにアパートに独自の付加価値を設けることで、それらを希望する層の賃貸需要の増加を見込むことができます。
ただし、競合物件が設定していないこれらの賃貸条件の設定には注意が必要です。例えばペット可能の場合には、原状回復費に大きな費用が掛かったり、騒音によるクレームが入ることがあります。リスク対策も行いながら、契約条件について検討してみましょう。
3 アパートの家賃相場を調べる方法
アパート経営の賃貸需要を見極める際に重要な指標が、家賃相場です。この項目では、適切な家賃を設定するために、家賃相場をエリアごとに調べる方法を紹介します。
3-1 不動産情報ポータルサイトを活用する
家賃相場を調べる方法として誰でもできるのが、SUUMOなどの不動産情報ポータルサイトを活用することです。それぞれの不動産情報ポータルサイトで、家賃をはじめとした不動産情報を提供しているので、エリアを指定して検索することで家賃相場を調べてみましょう。
具体的な手順は下記のようになります。
- 不動産情報ポータルサイトを開く
- 賃貸部門で同じ地域を選ぶ
- 検索条件に、部屋の大きさや間取りなどを選んで検索する
- 表示された部屋の家賃を確認する
このとき注意したいのが、アパートの築年数です。築年数によってアパートの家賃は異なることが通常ですので、築年数、階数、部屋の広さなどが同じような競合物件になりそうな部屋を見つけるようにしましょう。また、設置されている設備によっても家賃が異なる場合がありますので、できるだけ丁寧に確認するようにしてください。
一方、家賃相場をまとめて紹介している不動産情報ポータルサイトもあります。下記のサイトを開いて地域を選ぶと家賃の相場が分かりますので、手軽に確認することができます。
- SUUMO「全国の家賃相場・賃料相場情報」
- LIFULL HOME’S「家賃相場」
- athome 「家賃相場から賃貸を探す」
ただし、間取りなど大きな枠組みで家賃相場が表示されるため、細かな違いまでは分からないようになっています。
その他の注意点として、ポータルサイトで募集されている部屋は「募集中」であるということになります。募集家賃で成約していない可能性があるため、定期的にポータルサイトを確認するなどして、長期的に決まっていない案件がある場合には注意しましょう。
3-2 仲介店舗・管理会社に聞き込みをする
すでにアパートの地域が限定されている場合は、地域の仲介店舗に直接聞くこともできます。仲介店舗では地元で数多くの物件を仲介しており、入居者のターゲットやそれに合わせた家賃相場などを詳しく把握しているからです。
築年数や部屋のタイプ、主要設備などを伝えると、おおよその家賃相場を教えてくれます。また地域に競合物件が多い、問い合わせが多い、といった情報を教えてくれることもあります。この際、1軒だけではなく、複数の店舗に尋ねるとより家賃相場が絞りやすくなります。
まとめ
賃貸需要を見極めることはアパート経営を長期的に続けていくためにも重要です。今回は、そのためのポイントとして、最寄り駅からの距離や築年数、人気設備の導入、付加価値などの6つを解説しました。
物件によって入居者のターゲット層が異なり、全てのターゲット層の需要を満たすことは困難です。そのためどのような項目を優先して物件を選び対策を行っていくのかは、最終的にオーナーの投資判断となります。パートナーとなる不動産投資会社のアドバイスや、仲介店舗・管理会社への聞き込みなども行いながら、適切に判断していきましょう。
倉岡 明広
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