中古マンションの中には経年劣化による設備不良が起きていたり、トレンドの変化によって間取りやデザインが古くなっていることがあります。
リノベーションを行うことでこれらの問題は解消できますが、資産価値にどのような影響があるのか、リノベーションを検討している方の中には資産価値をどう判断すると良いのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、リノベーションマンションの資産価値について解説し、資産価値が下がりにくい特徴や評価ポイントも紹介します。
目次
- リノベーションマンションの資産価値
1-1.金融機関の評価基準から見たリノベーションマンションの資産価値
1-2.リノベーションマンションの需要動向から見た資産価値 - 資産価値が下がりにくいリノベーションマンションの4つの特徴
2-1.個性を控えたシンプルな内装デザイン
2-2.あらゆるライフスタイルの方が住みやすい部屋構成
2-3.機能性豊かな住宅設備機器の導入
2-4.グレードが高い資材の採用 - マンション自体の資産価値を評価する4つのポイント
3-1.マンションの立地
3-2.マンションの築年数
3-3.マンションの建物管理の状況
3-4.マンションの防犯性や防災性 - まとめ
1 リノベーションマンションの資産価値
リノベーションとは、古くなったり破損した部分を取り除いて、現代の暮らしに合わせて新しく生まれ変わらせることです。また、中古住宅をリノベーションして再販することを中古住宅買取再販と言い、リノベーションマンションとは購入した後にリノベーションして新しく生まれ変わった中古マンションを指します。
1-1.金融機関の評価基準から見たリノベーションマンションの資産価値
各金融機関では、マンションの購入費用として活用できる住宅ローンなどの不動産担保ローンを提供しています。不動産担保ローンでは、ローンの返済が滞った時のために物件に抵当権を設定します。ローンの返済が行われない場合には、物件を差し押さえることによって融資元本の回収を行います。
金融機関による物件の担保評価は、融資を実行する際のリスクヘッジとして重要なポイントとなります。そのため、固定資産税の評価額や築年数、エリア、住宅需要などの多角的な視点から評価が行われます。この時、適切な修繕が行われているかどうかという点で物件の修繕履歴を確認することもあります。
しかし、2023年時点の金融機関の融資姿勢を見ていると、マンションの室内リノベーションが修繕という枠組みを超えてプラスに評価されるという事例は多くないと考えて良いでしょう。物件が劣化している部分については確認されますが、間取りやデザインなどの時勢によって変動しやすいポイントについては明確に評価することが難しいという事情もあると考えられます。
1-2.リノベーションマンションの需要動向から見た資産価値
一方、リノベーションマンションの市場規模は徐々に拡大しています。矢野経済研究所の「中古住宅買取再販市場に関する調査を実施(2023年)」によると、2022年の中古住宅買取再販市場規模(中古戸建および中古マンションの買取再販戸数の合計)は成約戸数ベースで41,000戸(前年比105.1%)となっています。
下記の表が、中古住宅買取再販市場の推移です。
調査年 | 成約戸数 | 前年比 |
---|---|---|
2017年 | 30,000戸 | ー |
2018年 | 37,000戸 | 123.3% |
2019年 | 40,000戸 | 108.1% |
2020年 | 36,000戸 | 90.0% |
2021年 | 39,000戸 | 108.3% |
2022年 | 41,000戸 | 105.1% |
※参照:矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査を実施(2023年)」より抜粋
コロナ禍の影響で、2020年は前年から減少していますが、その後は順調に成約戸数が伸びています。特に大都市圏の主要エリアでは未開発の土地は少なく、新しいマンションが建ちにくくなっているため、立地の良いリノベーションマンションの注目度が上がっています。そのため同調査では、2023年は50,000戸(前年比122.0%)に増えるという予測もしています。
リノベーションマンションは、リノベーションを行うことで居室内が新しくなっていることに加えて、不便なところは解消され、快適性が上がっています。また古くなった設備も改善され、住宅の使用期間が延長されているとも考えられます。
そのため、同じ築年数・同じ規模でリノベーションをしてないマンションに比べると付加価値が高く、市場規模が拡大していることからも「住みたい」という人も増えていると言えます。マンションの資産価値は需要の多さが影響するため、リノベーションマンションの資産価値は今後高まってくると考えられます。
不動産の売買は売り手と買い手の相対取引で行われます。購入したいという人が多い物件であれば売却価格も高くなるため、資産価値を保つことが出来ます。
2 資産価値が下がりにくいリノベーションマンションの4つの特徴
リノベーションを行うことで住宅性能や付加価値を高めることができ、同じ築年数・同じ規模でリノベーションをしてないマンションに比べると売却時の価格も高くなります。特に以下のような特徴があると、購入需要を獲得しやすいため、資産価値は下がりにくいと考えられます。
- 個性を控えたシンプルな内装デザイン
- あらゆるライフスタイルの方が住みやすい部屋構成
- 機能性豊かな住宅設備機器の導入
- グレードが高い資材の採用
この4つの特徴について、それぞれについて詳しく解説していきます。
2-1 個性を控えたシンプルな内装デザイン
内装のデザインも新しく生まれ変わらせることが出来るのは、リノベーションのメリットの一つです。ただし、個性が強すぎる物件は特定の人には評価を受けやすいですが、全体的な需要は少なくなる可能性もあります。
例えば、南国風の内装だったり、ビビッドカラーが多く用いられた物件であれば、そうした雰囲気を好む方に購入者が限定されます。住みたいと考える人の数が少なくなるほど需要は減り、価格の下落につながってしまいます。
反対に、個性を感じることがあまりなく、多くの方に好まれるようなシンプルな内装の方が資産価値は下がりにくいと考えられます。
2-2 あらゆるライフスタイルの方が住みやすい部屋構成
内装デザインと同様に、多くの方が「住みたい」と思える部屋構成であれば資産価値は下がりにくいと考えられます。そのため、年齢層や家族構成を問わずにあらゆるライフスタイルの方が住みやすい、不便のない間取りがポイントになります。
例えば、広々としたLDKや対面キッチンなどは多くの方に望まれます。また、段差が少ないユニバーサルデザインなどが取り入れられていると、高齢者の方がいる世帯からの需要も見込めるでしょう。
反対に、専有面積が70㎡とファミリー層向けの広さを持つ物件でも、1LDKのように部屋数が少なければ、子供の多いファミリー層からの需要は見込めなくなる可能性があります。このように広さと間取りのバランスがマッチしていない物件は、資産価値が下がってしまう懸念があると考えられます。
2-3 機能性豊かな住宅設備機器の導入
マンションには快適に暮らせるように、エアコンやキッチン、トイレ、給湯器などの住宅設備機器が設置されています。これらの住宅設備機器がどのような機種で、どのような状態にあるのかもポイントです。
例えば、住宅設備機器の劣化が進んでおり交換が必要な場合は、次の買主が新たに導入する必要があり、追加の費用が発生します。また、設備が古くなっていると、内見時の印象も悪くなってしまう可能性もあるでしょう。
反対に、機能が豊富で高性能のエアコンや省エネ性能に優れた給湯器などが新品に近い状態で設置されていると、快適かつ機能的な生活が長く続けられるという評価ができます。そのため付加価値は高くなり、資産価値にとってもプラス材料になると考えられます。
2-4 グレードが高い資材の採用
高品質な建築資材を用いると、住宅性能が上がるため、資産価値が下がりにくくなる可能性があります。以下が具体的な事例です。
- 汚れや衝撃などに強い壁紙
- 耐久性が強いフローリング
- 断熱効果が高く、結露に強いペアガラス
- 腐食に強い木材
- 省エネ性の高いLED照明、など
高耐久な資材が使用されていれば劣化が進みにくく、室内の良い状態を長く維持することができます。そのため、資産価値が下がりにくいと評価することができるのです。
3 マンション自体の資産価値を評価する4つのポイント
リノベーションマンションの資産価値は居室だけではなく、マンション自体の状況・状態からも影響を受けます。代表的なポイントは、「立地」「築年数」「管理」「防犯性・防災性」の4つです。詳しく見ていきましょう。
3-1 マンションの立地
生活拠点となるマンションの場所は、資産価値に大きく影響します。下記は資産価値が下がりにくい立地条件の事例です。
- 最寄り駅から近いなど交通アクセスが良い
- スーパーやコンビニ、商店街など買い物に便利
- 医療機関や郵便局、銀行などの生活利便施設が近い
- 公園などが多く、静かな環境が整っている
- 小中学校や幼稚園、保育園などの教育機関が近い
- 犯罪が起きにくく治安が良い
- 公的機関や公共機関などに行きやすい、など
このように生活に便利な要素が揃っていると「住みたい」という人が多く集まるため、土地価格が下がりにくく、資産価値も下がりにくいと考えられます。
3-2 マンションの築年数
マンションをはじめとするすべての建築物は、築年数とともに経年劣化が起きます。建物部分だけで評価した資産価値は新築時の方が高く、築年数が経つほどに下落していきます。
具体的な例として、中古マンションの価格が築年数によってどの程度下がっていくのか確認しましょう。下記の表は、公益財団法人東日本不動産流通機構(レインズ)が公表している「首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況【2023年1~3月】」から、首都圏で売買が成立した中古マンションの築年帯別の成約価格と㎡単価を抜粋したものです。
築年 | 成約価格 | ㎡単価 |
---|---|---|
〜築5年 | 6,704万円 | 108.0万円 |
築6年〜築10年 | 6,304万円 | 94.7万円 |
築11年〜築15年 | 5,765万円 | 85.2万円 |
築16年〜築20年 | 5,318万円 | 76.1万円 |
築21年〜築25年 | 4,648万円 | 65.6万円 |
築26年〜築30年 | 3,374万円 | 51.9万円 |
築31年〜 | 2,318万円 | 41.2万円 |
※参照:公益財団法人東日本不動産流通機構(レインズ)「首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況【2023年1~3月】」より抜粋
それぞれの築年帯別の成約価格における、「築5年未満」からの下落率は以下です。
- 築10年以内…6.0%
- 築11年〜築15年…14.0%
- 築16年〜築20年…20.7%
- 築21年〜築25年…30.7%
- 築26年〜築30年…49.7%
- 築30年以上…65.4%
成約価格がこのように下落しているということは、資産価値も下落しているということを意味しています。それぞれのマンションには特有の特徴があり、すべてのマンションの価値が同様に下がるわけではありませんが、全体的に見ると築年数が経つごとに資産価値も下落することがわかります。
3-3 マンションの建物管理の状況
居室の状態だけではなく、マンション自体の管理状況も資産価値に影響します。長く住むことができるマンションであれば、資産価値は下がりにくいと考えられるからです。
例えば、外壁やエントランス周辺、廊下やエレベーター、非常階段、駐車場、駐輪場、ゴミ置き場などの共用部分の清掃やメンテナンスがしっかりされていれば、老朽化が抑えられていると判断できます。このように管理が行き届いていると、住人が住みやすい環境が整えられているとして資産価値は下がりにくいのです。
反対に建物の劣化が進んでいれば、大規模修繕に向けた修繕積立金が上昇したり、建物自体の寿命が短くなる可能性があります。また管理状況が良くなければ「住みにくい」という評価になり、需要が減少し、資産価値の下落につながります。
3-4 マンションの防犯性や防災性
周辺の治安に加えて、マンション自体が高い防犯性・防災性を確保していることで、住人は安心して暮らすことができます。具体的には、以下のような設備が整っているかどうかがポイントです。
- 防犯カメラが設置されている
- エントランスがオートロックになっている
- モニター付きインターホンが設置されている
- 管理人が常駐している
- 宅配ボックスが設置されている
- ディンプルキーなど防犯性の高い鍵が採用されている
- 人感センサーライトが設置されている
- 停電時でも使用できるよう非常用電源が設置されている、など
まとめ
今回のコラムでは、リノベーションマンションの資産価値が下がりにくい4つの特徴と、マンションの資産価値を評価する4つのポイントを紹介しました。
新築マンションの価格が高まるにつれて、中古マンションの注目度も上がってきています。関連してリノベーションしてから販売するリノベーションマンションの需要も増えてきています。
一方、マンションの資産価値については売却時にその物件を欲しいと考える方の需要の多さや、売却時点での劣化状況などによって左右されます。資産価値を保つという観点から見るのであれば、リノベーションマンションの購入時から長期的な視点で検討されてみると良いでしょう。
倉岡 明広
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