不動産クラウドファンディングのファンド選びのポイントは?最近の動向や注意点も【インタビューあり】

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不動産クラウドファンディングは、不特法(不動産特定共同事業法)に則って特定の不動産を小口化し、1万円などの少額資金で実物不動産へ間接的に投資ができる投資商品です。

不動産投資は、これまで数千万円~数億円の資金調達が必要であり、取得の難易度が高いという点がデメリットでした。しかし、不動産クラウドファンディングの登場によって、より身近に投資検討することができるようになっています。

一方、上場株式やREITなどの伝統的な金融商品と比較してまだ新しい投資商品であることから事業者の信用リスクに注意が必要であり、ファンドの運用スキームや開示情報もサービスごとに異なってくるため、慎重にファンド選びを行うことが重要です。

そこで本記事では、不動産クラウドファンディングのファンド選びのポイントを詳しく解説します。

目次

  1. 不動産クラウドファンディングへの投資で注意したいリスク
    1-1.事業者リスク
    1-2.災害リスク
    1-3.キャピタルリスク
  2. 不動産クラウドファンディングのファンド選びのポイント
    2-1.ファンド運用のスキーム(仕組み)を理解する
    2-2.物件タイプ・エリアを確認する
    2-3.運営会社の事業内容や経営状況を調査する
    2-4.優先劣後の割合
    2-5.運用期間とスケジュール
  3. まとめ

1.不動産クラウドファンディングへの投資で注意したいリスク

不動産クラウドファンディングは元本保証がされていない投資商品であるため、投資検討する際はどのようなリスクが内包されているのかを検証し、リスクとリターンのバランスをとった投資判断を行うことが大切です。不動産クラウドファンディングのファンド選びでも重要な視点となるため、ここでは代表的なリスク3つについて見ていきます。

1-1.事業者リスク

事業者リスクとは、不動産を取得・運用する事業者の倒産や経営悪化によって予定通りのファンド運用が行われず、元本回収の大きな遅延や毀損が起きてしまうリスクのことです。

不動産クラウドファンディングを提供する事業者の多くは、元々不動産事業を行っている企業が多く、他企業と比較して金融機関から多額の融資を受けていることも少なくありません。金利の上昇や、昨今のインフレ傾向を受けた景気の悪化によって経営状況が悪化し、ファンド運用が困難になってしまうリスクがあります。

1-2.災害リスク

不動産クラウドファンディングは、実物不動産を運用対象としています。そのため地震や台風、火災などの災害の影響を受けることになり、建物が大きなダメージを負ってしまうリスクがあります。

規模によっては、修繕費用だけでなく修繕期間中の運営も困難になることがあるため、大きく収益を低下させる要因となります。売却スキームのファンドであれば、売却価格にも悪影響を与えるケースもあるでしょう。

1-3.キャピタルリスク

不動産クラウドファンディングは、大きく分けて「インカムゲイン重視型」と「キャピタルゲイン重視型」の2種類のファンドがあります。インカムゲインは不動産運用によって得られる定期的な収入(賃料・宿泊費など)であり、キャピタルゲインは不動産の売却益のことです。

キャピタルゲイン重視型の場合、ファンド募集時の想定利回りにて運用が成されるかどうかについては、不動産の売却価格に大きく依存することになります。このようなリスクをキャピタルリスクと言い、不動産価格が大きく下落してしまうような市況の変化、また売却先の経営状況の変化などによって、キャピタルロス(売却損)が発生することがあります。

2.不動産クラウドファンディングのファンド選びのポイント

前述した不動産クラウドファンディングの主なリスクを踏まえ、どのような観点からファンド選びを行っていけば良いのか解説します。

2-1.ファンド運用のスキーム(仕組み)を理解する

不動産クラウドファンディングは様々な事業者から提供されているため、運用スキームについても各社で違いがあり、さらに組成されるファンドごとにも異なります。

最も多い事例としては、不動産クラウドファンディングを介して集めた資金で事業者が不動産を保有し一定期間運用した後に売却、売却によって得た資金と運用益を合わせて各投資家へ元本償還を行う、といった流れです。

ただし、中には不動産売却を予定していないファンドや、逆にあらかじめ売却先が決まっており2~3ヶ月程度の一時保有を目的としたファンド、マスターリース契約により賃料の一定化を図ったものなど、運用の方法は様々となります。

このようなファンドのスキームを理解しておくことで、どのようなリスクが内在しているのかを確認することが可能です。例えば、不動産の売却先が決まっているファンドについては売却先の事業者の信用リスクも勘案することで、より適切な投資判断に繋がります。

ファンドの運用スキームの開示情報についても、各社に違いがあります。開示されているファンド情報から運用スキームを比較し、投資検討していくことが大切です。

2-2.物件タイプ・エリアを確認する

不動産クラウドファンディングで運用される物件タイプ・エリアもファンド選びのポイントになります。

2023年時点、ファンド組成されている物件の多くは、マンション・アパートなどの賃貸物件、エリアは東京都内に集中しています。賃貸物件は毎月の賃料収入が一定となるため収益を見込みやすく、また人口も豊富な東京エリアでは売却時のリスクも他のエリアと比較して非常に低いためです。

一方で、これらの賃貸物件・東京エリアのファンドは低リスクの運用が見込めるメリットの反面、利回りの低さから高いリターンを得ることが難しいというデメリットがあります。

賃貸物件より高利回りになりやすい物件タイプとしては、商業施設やホテルなどがあります。その他、開発用地の仕入れ・売却などのファンドも募集金額も大きく、高利回りになってくる傾向があります。

エリアについても、東京都心ではなく地方や海外不動産のファンドであれば想定利回り10%を超えるファンドも多く見られます。このように、物件タイプ・エリアの運用リスクが高くなるほど、リターンを見込みやすくなります。物件タイプとエリアは、リスクとリターンのバランス調整を行う際に確認しておきたいポイントです。

2-3.運営会社の事業内容や経営状況を調査する

不動産クラウドファンディングの事業者、運営会社の事業内容や経営状況も重要なポイントとなります。これは先に挙げた事業者リスクを回避するためです。

運営会社がCREALのように上場企業であれば、IR情報を確認することで事業内容・経営状況については詳しく知ることができます。事業者が上場企業であれば、まずは純利益・純資産の推移から経営状況を大まかに確認されていくと良いでしょう。

一方、未上場の運営会社の場合には開示義務がないため、正確に経営状況を確認することは難しいと言えます。この場合は、事業者の本来の事業内容とファンドのスキームに無理がないか、ファンド運用が行える事業背景があるかなど、総合的に投資対象を検証することがポイントと言えます。

例えば、2019年にスタートした「COZUCHI」を運営する株式会社LARTOLIは1999年の創業から不動産事業を始め、2008年には不特法の投資商品をローンチしているなど、不動産・不特法の関連事業を長年取り扱ってきたという経緯があります。

その他、メインに中央アジアの不動産物件に投資できる「TECROWD」を運営するTECRA株式会社は、海外で建設業や不動産業の実績を豊富に持ち、日本の建築技術でモンゴル・カザフスタンなどの新興国に投資が出来るという特徴があります。

未上場企業の場合は、まずは過去の実績や運用ノウハウなどから企業の信頼性を類推し、投資先として問題がないか検証されていくと良いでしょう。

不特法3号・4号の「SPC(特別目的会社)」による倒産隔離のスキーム

2023年時点、まだ数は少ないものの不特法3号・4号の免許を取得し、SPC(特別目的会社)による倒産隔離のスキームで運用されるファンドも存在しています。これは募集事業者とは別のペーパーカンパニー(SPC)が不動産を保有するため、事業者の経営リスクを直接受けないというメリットがあります。

2-4.優先劣後の割合

不動産投資型クラウドファンディングに投資するときのリスク対策の方法として、優先劣後出資の中の劣後出資割合を見るというものがあります。劣後出資割合が大きいほど低リスクの案件と言え、投資判断に役立てることができます。

仮に1億円のファンドで投資家の出資分が8,000万円であれば、優先出資割合は1億円の中の8,000万円なので、80%となります。不動産会社の出資分が2,000万円であれば劣後出資割合20%です。

この不動産がファンド運用終了後に9,000万円で売却となった場合、損失分の1,000万円は不動産会社の劣後出資分から計上されていきます。そのため劣後出資の割合が高ければ高いほど投資家の損失が起こる可能性は低くなっていきます。

2-5.運用期間とスケジュール

不動産クラウドファンディングを通じて出資した資金は、不動産を所有する資金に充当されているため、通常、株式のようにいつでも売買を行うことはできません。このような仕組みになっているため、一部のサービスを除いて運用期間中の途中解約(キャンセル)ができないという点に注意が必要です。

ファンド選びをする際は、ファンドの運用期間にも注目されておくと良いでしょう。長期案件になるほど資金がロックされてしまう期間が長くなるため、初心者の方であれば短めの運用期間のファンドから検討してみましょう。

また、募集スケジュールもファンド選びのポイントです。ファンドの運用終了(元本回収)にあわせて次の投資先を決めておくと、資金効率が高まります。運用終了が近づいてきたタイミングで、次の投資先について情報収集を始めておきましょう。

不動産STOの導入による流動性の改善

不動産STOとは、ブロックチェーンの仕組みを活用して所有権をデジタル証券化し、売却や譲渡を比較的容易に行えるようにしたものです。不動産STOを導入しているサービスでは、ファンドの運用期間中に権利の譲渡を行うことで現金化を行うことができます。

2023年時点、不動産STOを導入しているサービスが少ないこと、証券取引所のような場がなく原則として譲渡先を自分で探す必要があるという2点が課題となっています。今後、不動産STOの導入企業が増えることで、不動産クラウドファンディングの流動性の改善が期待されています。

まとめ

不動産クラウドファンディングは、これまで投資ハードルの高かった不動産投資を手軽に行える方法として、年々人気が高まってきている投資商品です。

各社からバリエーション豊富なファンドが提供されていますが、運用スキームや対象物件、リスク対策には大きな違いも見られます。それぞれファンドに内包されるリスクを理解し、投資先を分散させていくことが大切です。

今回は募集ファンドの比較サイト「LIFULL不動産クラウドファンディング」へのインタビューを通じて、最近の不動産クラウドファンディングの動向や、初心者のファンド選びのポイントについて解説してきました。不動産クラウドファンディングのファンド選びに悩まれている方のご参考となれば幸いです。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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