クラウドファンディングでは、投資家が出資したお金を分別管理口座で管理します。
クラウドファンディング投資は新しい投資手法であることからも、なぜ分別管理を行うのか、実際にどのような仕組みになっているのかを知り、事業者側で正しい資金運用が行われているかどうか確認することも大切なポイントです。
そこで今回は、クラウドファンディング投資における分別管理口座の仕組みや注意点について紹介します。実際に投資を行う場合の参考にしてください。
目次
- クラウドファンディング投資とは
- 分別管理口座とは
2-1.分別管理が導入された理由 - 分別管理口座の仕組み
- 分別管理口座を開設する銀行の種類
- 信託銀行に分別管理口座を開設する理由
5-1.第三者によるチェックが行われる
5-2.事業者の倒産・破綻があっても差押えの対象外となる
5-3.受益管理人が資産の返還を行う - クラウドファンディング投資における分別管理の注意点
6-1.分別管理口座を開設する銀行によって資金管理のリスクが異なる
6-2.通常の銀行であれば事業者は自由に資金を引き出せる - まとめ
1.クラウドファンディング投資とは
クラウドファンディング投資は、利益を上げることを目的に、投資型クラウドファンディングに資金を投じることをいいます。
クラウドファンディングとは、インターネット上で資金提供を募る仕組みのことです。投資型と非投資型に分類でき、投資型にはファンド型、融資型(ソーシャルレンディング)、株式型などがあります。
ファンド型ではプロジェクトへの出資、融資型では企業への融資、株式型では非上場企業の未公開株式の購入を行い、運用期間中または運用期間後にリターンを受け取れる可能性があります。
2.分別管理口座とは
分別管理口座とは、出資を受ける会社(この場合、クラウドファンディング事業者)が、自社の財産と投資家からの出資金を明確に区別して、出資金を管理するための口座のことをいいます。
投資型クラウドファンディングにおいては、匿名組合契約に基づき出資された金銭を、出資を受けた事業者(クラウドファンディグ業者)が「明確に区別して管理」することが法律によって義務付けられています(金融商品取引法)。
そのため、事業者は分別管理用の口座を別に開設して、出資金の区別・管理を行います。
ただし、分別管理は事業者の財産と投資家の出資金を区別することが目的です。実際の投資・運用において出資元本が全額保証されるということではないことを理解しておきましょう。
2-1.分別管理が導入された理由
分別管理が導入された理由は、企業の財産と出資者のお金の区別がつかないケースが発生したためです。
例えば融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の場合、下記の問題点から行政処分を受けた業者が存在しました。
- ファンドの償還金に他のファンドの出資金が充てられている
- 第二種金融商品取引業者の代表者が自身の借入返済などに出資金を利用している
- グループ会社の増資資金に出資金が充てられている
- ファンド資金が流出しており、事業実態の確認や資金使途を把握するための管理体制を構築していない
※参照:金融庁「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」
このような事態を避けるために、匿名組合契約において、出資金と事業者のお金を明確に区別すること(=分別管理)が義務付けられました。
また、分別は帳簿上で行うようなものではなく、専用の銀行口座を設置するなど、「実効性のあるレベルでの明確な区別」が必要とされています。
3.分別管理口座の仕組み
クラウドファンディング事業者は、自社の資金や財産を管理する口座とは別に、分別管理のための口座(出資者からのお金を管理する口座)を開設します。
クラウドファンディングによる出資者からのファンドや企業への出資は分別管理口座に入金され、分別管理口座からそれぞれの目的に応じて利用されます。
返済元本や利益・返済利息などから発生した投資家へのリターンも分別管理口座に集められ、出資額に応じて投資家へ償還されます。
4.分別管理口座を開設する銀行の種類
クラウドファンディング事業者が分別管理口座を開設する銀行には、主に下記の2種類があります。
- 銀行
- 信託銀行
クラウドファンディング事業における分別管理用の口座を開設する銀行の種類について、法令などによって指定されていません。
また、信託銀行の分別管理口座からの入出金の際に手数料が発生し、クラウドファンディング事業者がコストを負担する必要があります。そのため、クラウドファンディング事業者の多くは、普通の銀行で分別管理用の口座を開設します。
一方で、信託銀行に分別管理用の口座を活用するクラウドファンディング事業者も少数ながら存在します。例えば、不動産投資クラウドファンディングの「CREAL」では、投資家からの出資金を信託銀行で分別管理しています。
5.信託銀行に分別管理口座を開設する理由
信託銀行で分別管理を行う理由は、資金管理のリスクをより低減することができるためです。
信託銀行では、通常の銀行業務のほかに信託業務を行っています。信託業務とは、信託銀行などの信託会社が、個人や法人が持つ財産を受託者(この場合、信託銀行)に移転させて、その財産を管理・運用することです。なお、株式取引やFXなどでは信託銀行による分別管理が法令により義務付けられています。
信託銀行を利用して分別管理を行うことで、資金管理のリスクを低減させられる理由は下記の通りです。
- 第三者によるチェックが行われる
- 事業者の倒産・破綻があっても差押えの対象外となる
- 受益管理人が資産の返還を行う
5-1.第三者によるチェックが行われる
信託銀行に資金管理を信託することで、常に第三者による資金のチェックが行われます。
信託銀行の口座で投資家からの出資金を分別管理することを「信託保全」といいます。信託保全を行う場合、「受益者代理人」が認定されます。
受益者代理人とは、出資している投資家の代理人で、外部の弁護士や公認会計士などが役割を担います。
受益者代理人は、信託口座内の資金を常にチェックすることができるため、クラウドファンディング事業者が悪意のもとに資金を引き出すことを防ぐことができます。信託銀行で信託保全を行うことで、出資金をより厳重に管理できるようになるのです。
5-2.事業者の倒産・破綻があっても差押えの対象外となる
信託銀行に管理を信託された資金は、差押えの対象にはならないという特徴があります。
クラウドファンディング事業者が倒産・破綻した場合、債権者がお金を回収するための手段として、事業者の保有資産への「差押え処分」「担保権の実行」などが実行されます。
投資家からの出資金を信託銀行の口座に移して管理を信託している場合、その資金に対して差押えを行ったり、担保権を実行したりすることはできません。
つまり、クラウドファンディング事業者が倒産・破綻した場合でも、債権者は信託銀行で分別管理されているお金に触れたり、操作したりできないということです。そのため、信託銀行で分別管理を行えば、事業者に万が一のことがあっても投資家の出資金が守られやすくなります。
5-3.受益管理人が資産の返還を行う
事業者の倒産・破綻が発生した場合、受益者代理人が資金を管理するというのも、資金管理のリスクを低減させられる理由の一つです。
クラウドファンディング事業者が倒産・破綻した場合、信託銀行が受託している口座内の出資金は、受益者代理人によって投資家に返還されることになります。出資者と出資額を確定させたのち、受益者代理人の手続きによってすべての投資家に出資金が返還される仕組みになっています。
6.クラウドファンディング投資における分別管理の注意点
クラウドファンディングにおける分別管理での注意点は下記の2点です。
- 分別管理口座を開設する銀行によって資金管理のリスクが異なる
- 通常の銀行であれば事業者は自由に資金を引き出せる
6-1.分別管理口座を開設する銀行によって資金管理のリスクが異なる
分別管理における注意点は、口座を開設する銀行によって出資金管理の資金管理のリスクが異なるということです。
特に事業者が倒産・破綻した場合における資金の取り扱いについては注意が必要です。通常の銀行口座で分別管理を行っていて、事業者が破綻した場合、口座内のお金は破産管財人の差押え対象となります。
債権者が資金を回収する手段に活用されるため、出資金が全額投資家に償還されることなく、投資元本を毀損する可能性があります。
一方、信託銀行での分別管理では、口座にあるお金は信託銀行と受益者代理人によって厳重に守られます。事業者の破綻・倒産が発生しても、信託銀行の口座に分別管理されている場合は差押えの対象にはならず、出資金は受益者代理人によって投資家に返還されます。
6-2.通常の銀行であれば事業者は自由に資金を引き出せる
信託銀行ではない銀行の口座で分別管理を行う場合、資金管理の詳細については業者の良心に委ねられることになります。
普通の銀行口座で分別管理を行う場合、クラウドファンディング事業者名義の口座に、名目上クラウドファンディング事業者の資産として、出資金が保管されることになります。そのため、事業者が自由にお金を引き出せる状況にあります。
事業者によって出資金が流用される事例があったために分別管理が義務付けられていることに加え、分別管理口座を開設する銀行の種類までは指定されていないのが現状です。万が一のことが起こる可能性については、十分な注意が必要といえます。
まとめ
今回は、クラウドファンディングでの分別管理口座の仕組みや注意点について紹介しました。
分別管理は投資家の出資金を守るために義務付けられていますが、分別管理口座を開設する銀行によって資金管理上のリスクは異なります。
分別管理がどのような仕組みなのか、それぞれの違いやリスクをしっかり把握したうえで、投資を行うプラットフォームを選択することも検討してみましょう。
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山本 将弘
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