不動産投資型クラウドファンディングは少額から不動産投資ができる方法として、注目される投資方法の一つです。
しかし、クラウドファンディング事業者を介して不動産へ間接的に投資を行うため、不動産を実際に所有するわけではありません。そのため、任意のタイミングで所有権を売却したり、譲渡することが難しいという点がデメリットと言えました。
不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTOの仕組みは、この不動産の所有権をデジタル証券化し、売却や譲渡を比較的容易に行えるようにしたものです。今回は不動産投資型クラウドファンディングでのSTOについて説明していきます。
目次
- 不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTOとは?
1-1.不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTOの持つ意味
1-2.STOとは - 不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTO導入のメリット
2-1.権利の譲渡が容易になる
2-2.投資の小口化が可能
2-3.世界中の多様な不動産を取引対象にしやすくなった - 不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTO導入のデメリット・注意点
3-1.不特法STOを導入したサービス・ユーザーが少ない
3-2.不動産登記を伴う取引はできない - STOスキームを導入しているサービスやSTOファンドが探せるサービス
4-1.STOをいち早く導入した「大家どっとこむ」 - まとめ
1.不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTOとは?
不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTOの持つ意味を見ていきましょう。
1-1.不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTOの持つ意味
不動産売買における STO は、不動産をデジタル証券化することを指します。不動産をデジタル証券化することで株式のように自由に売買することが可能になり、また小口取引や権利の譲渡なども今までよりも容易に行えるようになっています。
従来の不動産取引にSTOを導入することにより、不動産取引の流動性の向上や資金調達の選択肢が増えるなど、様々な面における課題の解消が期待されています。
1-2.STOとは
STOとは、(Security Token Offering)の略称です。STOは仮想通貨の取引にも使われているブロックチェーン技術(分散型台帳技術)を導入しています。
ブロックチェーンの仕組みを用いることで、取引履歴をより正確に残すことが可能で、ハッキングに対する耐性も非常に強いという点が特徴です。
実際の不動産の所有権を移転するには不動産登記が必要になります。一方、セキュリティトークンを発行することで「不動産収益を受け取る権利(持分)」のみを譲渡可能になり、所有者や購入者、また購入や譲渡の履歴を正確に残しておくことができます。
2.不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTO導入のメリット
不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTO導入のメリットについて詳しく見て行きましょう。
2-1.権利の譲渡が容易になる
STOでは売買の履歴を正確に残すことができます。その結果、一度購入した不動産投資型クラウドファンディングの持分を他人に譲渡することができます。
不動産投資型クラウドファンディングは、サービスによっては一旦投資するとファンドの運用終了まで現金化することができないという、流動性におけるデメリットがありました。
しかし 、STOによって権利者を正確に記帳できるSTOであれば、持ち分の売買も可能となります。ファンドの運用途中であっても譲渡先を見つけることで現金化することが可能です。
2-2.投資の小口化が可能
STOでは取引の正確な記帳が可能であり、小規模になってもそれは変わりません。そのため取引回数の増加、小口化にも対応しやすく、投資に関するセキュリティ面やコスト面の問題を解消しています。
2-3.世界中の多様な不動産を取引対象にしやすくなった
STOにより、場所や時間の制限を受けずに不動産取引が可能になったため、STOを導入した不動産投資型クラウドファンディングでは世界中の不動産を運用対象にすることができます。
出資持分を容易に譲渡できることで、不動産関連の出資持分の流通市場が確立され、より市場流動性が高まるという期待もあります。
3.不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTO導入のデメリットや注意点
不動産投資型クラウドファンディングにおけるSTO導入のデメリットやリスクなど、注意すべきポイントを解説します。
3-1.不特法STOを導入したサービス・ユーザーが少ない
不動産投資型クラウドファンディングサービスの事業者は多くありますが、STOを導入しているサービスは未だ限定的であると言えます。また、同一サービスのユーザー間でのみSTOを活用した持分の譲渡が可能となっているうえ、原則として自身で譲渡先を見つける必要があるという点はデメリットとなります。
STOは不動産投資型クラウドファンディングの流動性の改善が期待されている技術ですが、未だ流動性の改善に至っていないという点は今後の課題となるポイントと言えるでしょう。
3-2.不動産登記を伴う取引はできない
STOは不動産のような物理的に細分化が難しい資産を細分化できるというメリットがあります。一方で不動産そのものの所有権を移転するには不動産登記が必要になるため、STOで対応することは難しいという点がデメリットになります。
現行の民法では、「不動産の物権変動は登記なしには第三者に対抗することができない(民法177条)」と定められており、ブロックチェーン上で所有権が移転していても、登記が完了していない場合は民法が優先されて解釈されることになります。つまり、現行法が対応していない以上、登記が必要な所有権移転については適用できないということです。
4.不動産投資型クラウドファンディングでSTOスキームを導入しているサービス
実際にSTOスキームを導入している不動産投資型クラウドファンディングサービスをご紹介します。
4-1.STOをいち早く導入した「大家どっとこむ」
大家どっとこむは、株式会社グローベルスが運営する不動産投資型クラウドファンディングサービスです。
運営会社の株式会社グローベルスは、東証スタンダード市場に上場している株式会社ミライノベートの関連会社です。2020年12月から不動産投資型クラウドファンディング事業の大家どっとこむを開始しました。
同サイトはSTOをいち早く導入し、運用中の持ち分譲渡や自己口座からの引き落としが可能など、他社のサービスとの差別化を図っています。
まとめ
不動産投資型クラウドファンディングのSTOの仕組みによって、不動産の所有権をデジタル証券化し、売却や譲渡を比較的容易に行うことが可能です。流動性が課題であった不動産投資型クラウドファンディングにおいて、STOを導入するサービスが増えていくことで、より手軽に投資を検討できるようになることが期待されます。
ただし、2022年10月時点では導入サービスが少ないという点や、所有権移転登記を伴う取引には活用できていないという点には注意が必要です。今後も不動産投資型クラウドファンディングのSTOの動向について、注視してみましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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