不動産投資の初心者にとって、不動産投資をすることでなぜ利益が生まれるのか、その仕組みや流れは分かりづらい部分もあるでしょう。この分かりづらさの原因の一つに、不動産投資では知っておくべきことや、やらなければいけないことが非常に多いことが挙げられます。
実際に、不動産投資の仕組み、不動産会社の選び方や物件の選定方法、不動産購入時の融資、空室対策、税金や確定申告など、不動産投資を始めるにあたって求められる知識や投資のノウハウは多岐にわたるため、初心者の方にとって自身に何が必要な情報かを見分けることは簡単ではありません。
そこでこの記事では、初心者が知っておきたい不動産投資の仕組みと流れを解説しつつ、不動産投資の注意点も併せてお伝え致します。
目次
- 初心者が知っておきたい不動産投資の仕組み
1-1.融資によるレバレッジとキャッシュフロー
1-2.インカムゲインとキャピタルゲイン
1-3.表面利回りと実質利回り - 不動産投資を始める流れ
2-1.購入できる物件を探す
2-2.不動産の買付を入れる
2-3.不動産投資ローンの融資審査を受ける
2-4.不動産売買契約を締結する
2-5.管理会社の選定か引継ぎを行う
2-6.金銭消費賃借(金消)契約を締結する
2-7.物件の引き渡しを行う - 不動産投資のリスクと注意点
3-1.多額のローンを抱えることになる
3-2.入居率の低下による家賃の下落
3-3.不動産の売却(現金化)には時間がかかる
3-4.老朽化による修繕費 - まとめ
初心者が知っておきたい不動産投資の仕組み
不動産投資がどのような仕組みで収益を生むのかをご紹介します。不動産投資の仕組みを理解しやすくするために、ここでは3つの項目に分けました。
- 融資によるレバレッジとキャッシュフロー
- インカムゲインとキャピタルゲイン
- 表面利回りと実質利回り
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1.融資によるレバレッジとキャッシュフロー
資産家ではない一般の方が数千万円~何億円もの不動産を現金で購入するのは現実的ではありません。しかし、まとまった現金がなくとも投資を始める際に金融機関の融資を利用できる可能性があるという点が、不動産投資のメリットの一つです。
不動産投資の基本的なスタイルは、融資利用による返済金を月々の家賃収入で相殺し、不動産を徐々に純資産に変えていく手法になります。また、月々の返済の過程で生まれる差額の手残り金や現金の動きのことをキャッシュフロー(CF)と呼びます。
仮に家賃収入が多い物件でも、「借入金利が高い」「管理維持費が高い」といった要因でキャッシュフローがマイナスになることもあります。大幅なマイナスの状態が継続してしまうと経営を続けていくことが困難になってくるため、キャッシュフローが想定通りに推移していることが不動産投資を成功させる大切な要素になります。
1-2.インカムゲインとキャピタルゲイン
不動産投資のキャッシュポイントは、その特徴から2種類に分けられます。
- インカムゲイン:月々の家賃収入
- キャピタルゲイン:物件の売却益(購入時と売却時の差額)
不動産投資の利益はこれらインカムゲインとキャピタルゲインの総和で考えることが大切です。物件を購入後には賃貸して毎月の家賃収入を得ながら、機を見て売却することで、トータルでプラスの収支を狙うのが不動産の投資手法となります。
不動産投資の利益を最大化させるためにも、これら2つのキャッシュポイントを覚えておきましょう。
1-3.表面利回りと実質利回り
アパートやマンションなどの収益物件の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。
- 表面利回り:年間の家賃収入÷物件の売買価格で求める利回り
- 実質利回り:(年間の家賃収入-諸経費)÷物件の売買価格で求める利回り
この2つの利回りのうち、重視すべきは「実質利回り」です。なぜなら、表面利回りではどれくらいの支出(経費)が発生するのかが考慮されていないため、実際の収支を必ずしも反映していないからです。その物件が本当に収益を出してくれるのかどうかは、経費も含めて計算する実質利回りを確認する必要があるのです。
また、表面利回りの計算では空室期間は考慮されず、実質利回りの計算では対象年の入居実績に基づいた数値で算出されることが多い点にも注意が必要です。そのため表面利回りを物件探しの指標の一つとする場合には、今までの賃貸履歴から空室期間がどのくらいあったか等も確認することが望ましいと言えます。
では、表面利回りはどのような時に活用できるのか、という点を疑問に思う方も多いでしょう。表面利回りは物件の大まかなパフォーマンスを比較する際に役立つため、多くの物件情報の中から投資検討できそうな物件を取捨選択する際に活用できます。
実質利回りを比較するには不動産会社や売主との細かなやり取りが必要になるため、全ての物件で問い合わせる方法は現実的ではありません。多くの場合、表面利回りで物件の大まかな選別を行い、その過程で気になる物件があれば、経費や空室期間について問い合わせる、という流れになります。
2.不動産投資を始める流れ
ここまで不動産投資の仕組みについて解説しました。次に不動産投資を始めるまでの実際の流れについてご紹介します。
- 購入できる物件を探す
- 不動産の買付を入れる
- 融資の審査を受ける
- 売買契約を締結する
- 管理会社の選定か引継ぎを行う
- 金銭消費賃借(金消)契約を締結する
- 引き渡しを行う
融資を利用した不動産の購入は、少なくとも1ヵ月以上の期間を必要とします。それぞれ順を追って見ていきましょう。
2-1.購入できる物件を探す
購入できる不動産は投資家自身の融資限度額によって絞られてきます。既に多額の借り入れがある場合や、融資額に対し収入が不安定な場合には、金融機関から借入を断られてしまうことがあるためです。
また、投資家の評価だけでなく物件の評価も重要です。例えば、昭和56年6月より前に建築確認を受けている旧耐震基準の物件や、接面道路が建築基準に満たない再建築不可の物件には、大きな額の融資は期待できなくなります。
融資という観点で見ると、物件の所在地についても重要なポイントになります。東京都心の物件であれば多くの金融機関が対象エリアとしていますが、郊外の物件は金融機関が対象エリア外としており、融資を受けられないケースもあります。
融資利用に不安がある場合は、フルローンなどの融資実績が豊富な不動産投資会社を利用する方法もあります。例えば、提携金融機関12社、金利1%台・フルローン実績も豊富という特徴を持つ東証プライム上場グループ企業の「プロパティエージェント」では、東京23区・横浜エリアに集中したマンション開発・販売を行っています。
その他、東京・横浜エリアの2,000万円~2,500万円規模の物件価格の多い「湘建」は、他社と比べて購入しやすい価格帯で融資実績も豊富です。まずは自身の融資限度額を知った上で、融資が通る物件を探していくと良いでしょう。
【関連記事】フルローンや低金利など融資に強い不動産投資会社の比較・まとめ
2-2.不動産の買付を入れる
物件を探し当てたら、実際に現地確認を行うなどした後、不動産会社を通して売主に「買付」を入れます。「買付を入れる」とは「この物件を買いたい」という意思を文書で売主に差し入れることです。人気物件には多くの不動産投資家から買付が殺到することとなります。
人気物件の場合には、買付段階で「金額を上乗せする」「決算日を早める」「ローン特約なしの現金買い」という交渉をするケースもありますが、一般的に良物件を購入するために重要なのは買付を出すまでのスピードです。
購入のチャンスを得るために、良い物件が見つかった場合には希望金額とともに買付を出してみましょう。
2-3.不動産投資ローンの融資審査を受ける
融資が通りそうな物件が見つかったら、次は金融機関からの融資審査を受けます。
融資の審査基準は金融機関とそれらの支店によってまちまちで「A行のA支店で審査落ちしたがB支店では通った」ということも稀に起こります。これは「銀行側の不動産投資枠の予算」や「本部決済より支店長判断に任せている」という場合に発生します。
また、金融機関と提携している不動産投資会社によっても融資判断が異なることがあります。不動産投資会社と金融機関の過去の取引が豊富である場合は、より良い条件で融資を受けられるケースも少なくありません。
融資審査が通過できない場合は、複数の金融機関に相談したり、融資実績が豊富な不動産投資会社を利用されるのが良いでしょう。
2-4.不動産売買契約を締結する
金融機関の審査と平行して売主と売買契約を締結し、買主はこのタイミングで売買代金の一部を手付金として買主に差し入れます。
なお売買契約といっても、融資利用の売買契約では締結のタイミングで不動産が取得できるわけではなく、条件を満たせば双方から契約を取り消すことが可能です。下記は買主による契約解除の主な2種類の方法です。
- 手付解除:あらかじめ決めた期日(契約の履行に着手した時)までに、支払った手付金を放棄することで契約を解除できる
- ローン特約による解除:金融機関からの融資が下りなかった場合に、特約により契約を解除できる
その他にも、自然災害による物件価値の大幅な低下など、様々な理由によって契約が解除できることがあります。契約前に、双方がどのような条件を満たせば契約解除できるのか、予め確認をしておきましょう。
2-5.管理会社の選定か引継ぎを行う
物件を取得する際に管理会社を新規に選定するか、引継ぎするかを選ぶことが出来ます。管理会社によって特徴が異なり、入居者を探すことが得意、こまめに点検をしてくれる、管理料が安い、家賃滞納が出た際の補償内容が手厚い、など得意分野が異なってきます。
新築・中古物件問わず管理会社のサービス内容と料金を確認し、物件の状況と照らし合わせて管理会社を選ぶようにしましょう。
2-6.金銭消費賃借(金消)契約を締結する
金銭消費賃借契約とは、融資される借入金に関して金融機関と投資家の間で結ぶ契約のことです。金消(きんしょう)契約ともよばれ、借入金額や金利、返済計画などを契約により決定します。
この金消契約が問題なく完了すれば、最後にいよいよ物件の引き渡し(決済)が実行されます。
2-7.物件の引き渡しを行う
物件の引き渡し(決済)当日は、金消契約で取り決めた融資が実行され、買主はその資金で残代金の決済を行います。決済が完了した時点で不動産が引き渡され、所有権が売主から買主に移転します。そして売主の口座に残代金が入金され次第、司法書士が所有権移転登記に取り掛かります。
また、実際の登記簿謄本に反映されるまでには早くとも1~2週間ほどの期間がかかりますが、登記名義人が切り替わった日は残代金の決済を行った(売買契約書に明記された)「引き渡し日」であることには注意してください。
以上が不動産投資を始めるまでの大まかな流れになります。
3.初心者が不動産投資を始める際の注意点
売買契約後や物件の引き渡し後に「失敗した!」と思っても、購入前に戻り、やり直すことはできません。ここでは不動産投資を始める前に初心者が知っておきたい注意点を4つ挙げています。
- 多額のローンを抱える
- 入居率の低下による家賃の下落
- 不動産の売却(現金化)には時間がかかる
- 老朽化による修繕費
それぞれ見ていきましょう。
3-1.多額のローンを抱えることになる
融資を利用した不動産投資では、物件購入のための負債を抱えることになります。借入金は家賃収入で返済していくと言っても、入居率が下がり家賃収入が想定金額に届かない場合でも月々返済金を支払い続けなければなりません。
負債を抱えてしまうリスクをあらかじめ理解し、月々の手残りを貯蓄に回しておくなど、いざという時の対策と準備を怠らないようにしましょう。
3-2.入居率の低下による家賃の下落
入居者の満足度が高かったとしても、外的な要因から入居率が低下し、設定家賃を下げざるを得なくなることがあります。例えば、周辺の家賃相場の下落、近隣に新築マンションが建築される、入居者の通う学校や職場が廃止・移転されるなど、外的な要因から入居率が下がってしまうリスクは避けられません。
入居率が低下した際には想定家賃を引き下げることも考え、月々のキャッシュフローに余裕のある物件を選ぶようにしましょう。
3-3.不動産の売却(現金化)には時間がかかる
不動産は購入時と同じく、売却する際にも長い時間がかかってしまう点には注意が必要です。結婚、病気、事故などが起こり「今すぐ不動産を現金化したい」という時でも、通常早くとも3ヶ月ほどの期間を必要とするうえ、希望金額で売却するためにはさらに長期化してしまうケースもあります。
また、投資用不動産の売却には時期によって譲渡所得税の扱いが異なってきます。売却益が出る場合には、譲渡所得税の扱いが切り替わる5年をベースに売却時期を検討する必要があります。
短期譲渡所得(5年以下) | 長期譲渡所得(5年超) | |
---|---|---|
譲渡所得税(復興所得税を含む) | 30.63% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
※参照:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
これらの点に注意し、不動産の売却時期をあらかじめ考慮した資金計画を練ることが大切です。
【関連記事】投資用マンションの売却でかかる税金は?計算方法や課税額を抑える4つの対策も
3-4.老朽化による修繕費
不動産は年数が経つとともに外壁塗装や雨漏りなどの修繕を行う必要が出てきます。このような問題が顕在化した時には既に重篤な状態になっている場合もあり、多額の修繕費が必要になるケースもあります。
こうした状況に対処するためには、こまめな物件のメンテナンスを行い、大規模修繕に備えて修繕費を積み立てておくことも大切です。
まとめ
今回は初心者が知っておきたい不動産投資の仕組みと流れ、注意点を解説しました。
投資判断は自己責任で行われるものですが、不動産投資においては責任を「知識」で補うことが可能です。不動産投資のオーナーによってその手法の最適解は様々ですが、基本の仕組みと流れは同じです。基本知識をしっかり理解しておくことは、投資家としてのステップアップに不可欠な作業と言えるでしょう。
不動産投資の仕組みと流れを理解し、売買契約後や物件購入後に後悔しないように心がけましょう。
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