オーナーズブックは、東証プライム上場企業であるロードスターキャピタル株式会社が運営する融資型クラウドファンディングサイトです。
オーナーズブックは1万円からの少額資金で間接的に不動産投資ができるメリットがあり、人気が高く多くのファンド運用実績を持つサービスです。しかし、2019年9月に募集開始された「大阪市中央区ホテル素地」というファンドで返済遅延が起きています。
今回のコラムでは返済遅延が起きた原因を確認するとともに、投資先の返済遅延によるリスクを軽減するための対策などをお伝えしていきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年12月時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- オーナーズブックの大阪ホテル案件の返済遅延
1-1.大阪市中央区ホテル素地(2019年9月にファンド募集
1-2.遅延の状況(2022年12月時点) - オーナーズブック「大阪ホテル案件」で遅延が起きた原因を検証
2-1.新型コロナウイルスの影響でホテルの建設が遅れた
2-2.観光客の減少により不動産相場の下落が発生
2-3.観光業界の先行き不透明で買い手が現れにくい - オーナーズブック「大阪ホテル案件」から見るリスク対策
3-1.詳細な物件情報を確認できるファンドに投資する
3-2.宿泊施設やテナントは経済動向によって売上が上下しやすい
3-3.複数の物件タイプのファンドに分散投資する - まとめ
1.オーナーズブックの大阪ホテル案件の返済遅延
オーナーズブック(OwnersBook)は、ロードスターインベストメンツ株式会社が運営しているソーシャルレンディング・不動産投資クラウドファンディングのプラットフォームです。オーナーズブックでは、クラウドファンディングの手法を活用し、「1口1万円からの小額資金による不動産投資」というサービスを提供しています。
以下より、オーナーズブックで返済遅延が発生した案件を確認しましょう。
1-1.大阪市中央区ホテル素地(2019年9月にファンド募集)
返済遅延が発生しているのは「大阪市中央区ホテル素地」というファンドで、2019年9月にファンド募集が行われています。
募集規模は7億5千万円、想定利回りは5.0%、運用期間は12ヶ月の予定でした。しかし、運用期間終了の2021年1月末に投資家への出資金返済が行われておらず、オーナーズブックからは以下のリリースが行われています。
延滞の理由としては新型コロナウイルス感染拡大に伴うインバウンド客の一時的な落ち込みと不動産取引量の一時的な停滞等により、担保不動産の売却が最終期限内に整わないことから、貸付先である不動産保有会社AY(「本借入人」)より1年間の最終弁済日延長の申出を受けました。(※引用:[重要]大阪市中央区ホテル素地第1号第1回 | 貸付期間延長について)
1-2.遅延の状況(2022年12月時点)
新型コロナウイルスの流行という不測の事態により、返済遅延が発生したといえます。なお、返済遅延が発生したのは2021年1月ですが、2022年12月時点でも投資家への返済は行われていません。
オーナーズブックは定期的に状況報告を上げており、競売や任意売却、保証人への請求といった債権回収の取り組みを行っているものの、売却先が決まらないために投資家への返済も行うことができない状況が続いています。
2.オーナーズブック「大阪ホテル案件」で遅延が起きた原因を検証
大阪ホテル案件ではなぜ返済遅延が発生してしまったのでしょうか。オーナーズブックは2014年から融資型クラウドファンディングサービスを運営していますが、返済遅延はこの1件のみです。その事情を発表などから推察します。
2-1.新型コロナウイルスの影響でホテルの建設が遅れた
まず返済遅延の直接的な理由は、リリースにあるように新型コロナウイルスの流行による観光客の減少が大きいと言えるでしょう。ファンドの募集開始は2019年9月と、新型コロナウイルス発生の前でした。
また、ホテルのような事業用不動産は居住用不動産と比較して経済動向の影響を受けやすい傾向にあります。観光業全体の落ち込みと、コロナショックによる景気不安の両方を受け、想定していた事業計画が履行できなくなってしまったと考えられます。
2-2.観光客の減少により不動産相場の下落が発生
一方で、返済遅延の発覚から1年半以上が経過しても、投資家への出資金の返済が行われていません。その理由としてはホテル素地の価格がコロナ禍で大きく落ち込んだことが原因だと予測されます。
実際に大阪市中央区付近の公示地価を見ても、2021年は大幅な落ち込みが見られています。国土交通省の「令和3年地価公示結果の概要」において下記の記載があります。
特に大阪圏では、外国人観光 客の増加を背景として近年高い上昇を示してきたが、新型コロナウイルス感染症の影響で収益性が著しく低下し、大きな下落となった地点が多い。
2022年12月時点では海外からの観光客の制限もなくなり観光客数は一定の回復を見せていますが、コロナ禍以前の水準までの需要回復には時間がかかると予想されます。
2-3.観光業界の先行き不透明で買い手が現れにくい
ホテルの売却が遅延している大きな要因として、観光業界の先行きがまだ不透明な状況が続いているからという理由が考えられます。新型コロナウイルスの感染者数は2022年の年末でまた増加の傾向を見せており、各国の感染対策の動向によっては観光客数が減少する可能性があります。
また、ホテルのような事業用不動産はランニングコストも大きく、買主として土地を取得しても需要回復までのキャッシュフローをどのように工面していくのか、という問題もあります。いずれにせよ、観光業の需要回復とその見通しが、今後の返済状況に大きく関連してくると言えます。
3.オーナーズブック「大阪ホテル案件」から見るリスク対策
新型コロナウイルスの流行やリーマンショックなど、世界経済に大きく影響を与える不測の事態は起こりうるリスクとして受け入れ、投資判断をしていく必要があります。投資型クラウドファンディングでの投資を検討する時に、投資家はどのようにリスク対策をしておけば良いのか見て行きましょう。
3-1.詳細な物件情報を確認できるファンドに投資する
オーナーズブックの大阪ホテル素地案件は、物件の住所などの情報は公開されていませんでした。そのため土地の資産価値を計りにくく、どの程度の担保価値があるのか客観的に判断がしづらいという注意点がありました。
リスク対策を重視するのであれば、出来るだけ詳細な物件情報を確認でき、実際に運用されていて収益を確保している物を選ぶことを優先されてみると良いでしょう。
3-2.宿泊施設やテナントは経済動向によって売上が上下しやすい
今回のホテルのような宿泊施設やテナントビル、大型商業施設などは不動産物件の中でも、人の流れや景気の影響を受けやすいものに該当します。
景気が良ければ大幅に利益が上がり、高値での売却や家賃収入の増加が見込めますが、景気が悪化すれば空室が増え満足な収入が得られなくなり、投資家への分配金も減少しやすくなります。
宿泊施設やテナントビルは高収益が期待できる反面、ややハイリスクな投資対象と言えます。リスク対策を考えるときには、ホテル案件だけではなく、居住用物件や物流施設といった不動産にも分散投資し、リスクヘッジを行っていきましょう。
3-3.複数の物件タイプのファンドに分散投資する
リスクを大幅に下げる基本的な対策として、重視したいのが様々なファンドに分散投資することです。投資先の一つに資金を集中するのではなく複数のファンドに分散させておくことで、リスクとリターンを標準化させる効果があります。
投資対象の中の1つでリスクが発生したとしても、損失の範囲を限定することができます。
投資するときは、投資時期、投資先の種類などを分散し、リスクを軽減していきましょう。
まとめ
オーナーズブックで返済遅延が発生したホテル案件は、新型コロナウイルス流行前に募集されたファンドであり、不測の事態によってファンドの運用に問題が発生しています。
ファンド運用終了から2年以上経っても売却ができない背景には、物件が高額であることに加えて、観光事業の需要回復が見込みづらい状況にあることなどが理由として考えられます。
融資型クラウドファンディング投資でリスク対策を行うには、出来るだけ詳細な情報が開示されている低リスクのファンドを選択したり、事業用不動産以外の不動産に分散投資などの対策が考えられます。自身でも細かく情報を集め、確認していく習慣を身につけると良いでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム
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