事務所やオフィス、テナントを高く売るには?事業用不動産売却の手順を解説

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事業用物件はアパートやマンションのような居住用物件と比べて、景気により賃貸需要が増減しやすく、空室期間も長めになりやすいなどの特徴があります。

そのため、事務所(オフィス)やテナント物件の売却ではタイミングが重要なポイントになるほか、信頼できる不動産会社選びや高く売却するための注意点などを把握しておくことが大切です。

この記事では、空きテナントの増加や事務所・オフィスの売却を検討している向けに、高く売る方法と注意点について詳しく解説するので、参考にしてみてください。

目次

  1. 事務所やテナント物件の特徴
    1-1.賃料単価を高く設定できる
    1-2.原状回復工事を貸主が負担しなければならないリスクがやや高い
    1-3.空室期間が長くなる場合もある
    1-4.景気により賃貸需要が増減する
  2. 事務所やテナント物件を高く売る方法
    2-1.テナントが使いやすいように設備を整えておく
    2-2.高く売却できるタイミングを図る
    2-3.修繕履歴をまとめておく
    2-4.取引実績が豊富な不動産会社に依頼する
  3. 事務所やテナント物件を売る際の注意点
    3-1.売却後にその旨をテナントへ通知をしておく
    3-2.適切な価格で売り出す
    3-3.譲渡所得税を申告する
  4. まとめ

1.事務所やテナント物件の特徴

事務所(オフィス)やテナント物件を高く売却するため、まず事業用物件の特徴について把握していきましょう。

1-1.居住用物件と比較して賃料単価を高く設定できる

事務所やテナント物件では、入居者のテナントが主な拠点として営業活動を行うことになるので、アパートやマンション等の居住用物件と比べて賃料を高く設定しても入居需要を見込むことができます。

そのため、都市部や地方都市では集客力の高い中心市街地に近いほど、賃料単価や物件価格が高くなる傾向があります。

1-2.原状回復工事を貸主が負担しなければならないリスクがやや高い

事務所やテナント物件の場合、用途に応じて内装や電気工事などを行うことになり、原状回復費用が高くなります。

そのため、賃料の大体3カ月~1年分となる「保証金」を契約時に預かりますが、テナントが賃料を滞納したまま退去すれば、その原状回復工事を貸主が負担しなければならないリスクがあります。

なお、預かった保証金は「償却」できる場合があります。テナントの退去時には償却費と原状回復費を差し引いて保証金を返還することになります。

1-3.空室期間が長くなる場合もある

事務所やテナント物件は居住用物件と異なり、立地によって集客できるテナントの業種や業態が限られます。事務所やテナント物件の流通市場は、居住用物件よりも狭いため、一度テナントが退去すると次のテナントがなかなかつかない(=売却期間が長くなる)ことがあります。

あるいは建物自体を特定の業種のみに求められる構造や設備に工事すると、ほかの業種の求める条件に合わないため、新たなテナント募集が難しくなります。

また、オフィスや店舗は景気の動向により売上が増減しやすいため、景気の後退によりテナントは撤退や移転を行う可能性が高くなります。

個人の居住者は主に別の転居先を探して退去していきますが、法人の場合は移転以外にも「廃業」という形で退去する可能性があります。景気が悪くなると事務所やテナントビルの需要自体が減少し、次のテナントが見つけにくい状況であることにもなります。

1-4.景気により賃貸需要が増減しやすい

日本の人口は減少しているため、全体的に見れば居住用物件の需要も減少する傾向にあります。一方、事務所やテナント物件の場合、景気がよくなれば新規に立ち上げる法人が増えることから、需要が増加するという特徴があります。

景気が悪化すれば逆に減少しますが、このように景気の動向に応じて需要が増減することも、居住用物件にはない特徴です。

2.事務所やテナント物件を高く売る方法

事業用物件の売却では、テナントが埋まっている=物件の収益力がポイントになります。空室が多く、年間の家賃収入が低いと売却価格に反映されます。高額の賃料が期待できるとしても、売却する際にテナントが埋まっていなければ査定価格は低く見積もられます。

テナントを埋めるためには事務所あるいはテナント物件の特徴や強みをきちんとアピールできるかも問われます。物件の特徴をしっかりと把握し、収益を生みやすい業種や店舗などに訴求することが重要です。

今回、テナントを埋める方法や物件を高く売る方法として、以下の4つの手段を取り上げています。それぞれ確認していきましょう。

2-1.テナントが使いやすいように設備を整えておく

空き店舗を作らないようにするためには、業態や業種に合わせて必要とされる設備をしっかりと用意することから始めます。

例えば、電気の容量やガス設備は店舗を運営する上で十分に確保できているか、給排水や排気、換気設備が整っているかをチェックします。もし不足しているようであれば、テナントが使いやすいように設備を整えておきます。

また、事務所としてテナントをつける場合には、ネットワーク回線や電話回線をどれほど引き込めるのかチェックし、十分な回線数を確保できているか確認しましょう。

また、二重床にして、ネットワーク回線や電源を床下に配線できるようにすれば、すっきりとしたフロアを希望する会社への訴求度も高まります。

2-2.高く売却できるタイミングを図る

不動産は売却時期によって高く売れるかどうかが変わります。例えば、同じ売却金額でも金利が高ければ買主の支払い負担は大きくなり、売却価格の低下に繋がります。逆に金利が低ければ支払い負担は少なくなります。

新型コロナウィルスによる経済への下押し圧力に備えて、日銀は7月15日に開いた金融政策決定会合において、現行の金融緩和策を維持することを決定しました。2020年10月現在、一定の期間においては低金利が続くと見込まれ、不動産の売却を検討するのに適している、と考えられます。

ただし、新型コロナウイルス対策の一環であるテレワークの導入により、都心部を中心にオフィス需要は減少傾向、オフィス賃料は低下傾向にあります。この状況はオフィス売却のタイミングとしてはややネガティブな要素であると言えるでしょう。

また、実際の不動産需要は該当物件の状態や、人口・家賃相場などのエリア動向、オフィス需要によって大きく左右されます。低金利状態であればどの物件も高く売れるタイミング、とは言えないため、物件ごとに売却タイミングを慎重に検討することが大切です。

2-3.修繕履歴をまとめておく

事務所やテナント物件などのビルを高く売却するためには、建物自体の資産価値を高く評価してもらうことも必要です。その判断材料として、過去の修繕記録をまとめておくと良いでしょう。

例えば大規模修繕工事が終わっていない場合、その建物を購入する新しいオーナーが将来的な修繕費用を負担することになります。それを考慮すると、建物の資産価値は低く評価され、売却金額も低めに見積もられる可能性があります。

しかし、修繕をしっかりと行っていれば補修費用もそれほどかからず、テナントもつきやすくなるので、資産価値を高く評価してもらえることもあります。また、過去の修繕費用としてどの程度かかったのかを買主が把握できるため、購買意欲を固めてもらうことにもつながります。

買主が前向きに購入を検討できるように、修繕工事はいつ・どこを・どのように行ったのかを明確にしておくことが大切です。

2-4.取引実績が豊富な不動産会社に依頼する

売却を依頼する不動産会社を探す際、事務所やテナント物件の売却実績が豊富な不動産会社を探すのがポイントです。

事務所やテナント物件は居住用賃貸物件と比較して、ハイリスク・ハイリターンな投資物件と言えます。不動産会社によっては取り扱い経験が乏しく、長い売却期間をかけてしまったり、売出価格の減額につながったりなどのデメリットがあります。

また、事務所やテナント物件の売却は、インターネット広告に加えて、仲介する業者が保有している独自の顧客ネットワーク等を使ってニーズに合う顧客へ紹介することがあります。

そのため、広いネットワークを持つ不動産会社に売却を依頼することで、より多くの購入検討者へ物件紹介ができ、高く売却できる可能性を高めることとなります。幅広い投資家のネットワークがあると、活用方法も含めて有利な条件で提案してくれることも期待できます。

このような事務所やテナントの売却経験が豊富で、幅広い顧客のネットワークを持つ不動産会社を探すために、不動産一括査定サイトを活用してみましょう。

不動産一括査定サイトを活用することで、1社ずつ問い合わせや査定依頼をする手間を省き、効率的に不動産査定の依頼・査定価格や査定根拠の比較が出来るようになります。下記、主な不動産査定サイトの一覧です。

主な不動産一括査定サイト

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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

上記の不動産一括査定サイトでは、オフィス・事務所・テナンド物件など、様々な物件に対応した不動産会社が提携しています。また、査定依頼時の備考欄に「過去に売却実績のある不動産会社へ依頼したい」などのように、希望条件を記入することも可能です。

一方、利用時の注意点として、不動産会社の中には売却を促すためにあえて高い査定金額を提示したり、売却差益を狙って低い金額での査定金額を提示する会社も存在します。

上記の紹介サイトでは悪質な業者の排除を積極的に行っていますが、新しい提携会社が悪質な不動産会社である可能性はゼロではありません。このような不動産会社を避けるため、最低でも3~5社の査定を受け、査定結果や対応内容の比較を検討しましょう。

3.事務所やテナント物件を売る際の注意点

事務所やテナント物件を売却するにあたり注意しておきたいポイントをご紹介します。

3-1.売却後にその旨をテナントへ通知をしておく

事務所やテナント物件を売却する際に、テナントにその同意を得る必要はありません。ただし、賃貸契約のまき直しや家賃の支払い先の変更、管理会社が変わったりすることがあるため、オーナーが変わったことは各テナントに伝えておきましょう。

具体的には所有権の移転手続きが完了した後、「賃貸人変更通知書」を発行し、通知を行います。テナントと良好な関係を維持するためにも、敷金の引き継ぎ先も変わったことをきちんと知らせることが大切です。

3-2.適切な価格で売り出す

オフィスのような事務所やテナント物件は賃貸用物件と比較して取引数が少なく、需要が読みづらいことから売却活動が長引く可能性もあります。

しかし、なかなか買手がつかないからといって安易に売り出し価格を下げてしまうと、相場よりはるかに安い金額で売却してしまう可能性もあります。また、価格を下げた後でも買手がつかないと、不人気物件と見なされる機会も増え、売却期間の長期化につながりやすくなります。

最初の売り出し価格を適切な金額にできるかどうかは、周辺の相場を加味した上で、売却を手がける不動産会社の経験が重要です。前述した「2-4.取引実績が豊富な不動産会社に依頼する」を参考に、実績豊富で信頼できる不動産会社を選びましょう。

3-3.譲渡所得税を申告する

事務所あるいはテナント物件を売却したあとは、確定申告により「譲渡所得税」を申告します。売却価格から差し引く取得費用に、「減価償却費」が含まれるためです。

売却価格から取得費用と売却に要した費用を差し引き、プラスとなれば譲渡所得税が発生します。居住用物件の売却と同じで、購入金額よりも売却金額が少ない場合でも必要です。売却した後の確定申告を忘れないようにしましょう。

【関連記事】【5分で分かる】確定申告が面倒な人へ。不動産売却後の確定申告ガイド

まとめ

オフィスなどの事務所や店舗などが入るテナント物件を売却する際、空室が少ないほど査定額も高くなります。

テナントが埋まるかどうかは景気動向に左右される面も大きいですが、テナントが入りやすいような設備を整えたり、各事業者と良好な関係を維持したりするなどして、長期的に入居してもらえる環境を作る努力も大切です。

また、高く売却するためにはパートナーとなる不動産会社選びも重要なポイントです。居住用物件とは異なり、事業用物件や商業ビルの売却は、不動産会社独自のネットワークを使って買い手を探すこともあります。

経験や知識の乏しい不動産会社へ依頼してしまうと、売却活動の長期化につながる恐れがあります。不動産会社は一括査定サイトや評判・口コミ等を参考にしながら、信頼できるパートナーを選べるよう慎重に検討しましょう。

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