アパート経営の戸数は多い方が良い?メリット・デメリットを検証

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1棟アパートを購入する際の選択ポイントには立地や利回り、築年数など様々な要素が重要となってきます。中でも戸数がアパート経営に影響を及ぼすこともあります。

そこで今回のコラムでは、戸数が多い1棟アパート経営のメリットとデメリットを紹介していきます。アパートの戸数は多い方がいいのか、それとも少ない方がいいのか、メリットとデメリットから検証していきます。

目次

  1. アパートの戸数が多いことによるメリット
    1-1.空室リスクが低くなる
    1-2.効率的に管理ができる
    1-3.アパート経営が事業として認められる可能性がある
  2. アパートの戸数が多いことによるデメリット・注意点
    2-1.管理に関わる時間が増える
    2-2.原状回復の頻度が高くなり、修繕費用が増える
    2-3.新築アパートを建てる際は初期費用が高額になる
  3. まとめ

1 アパートの戸数が多いことによるメリット

この項目では、戸数が多いアパートを経営する際に得られるメリットについて見てみましょう。ここでは代表的な3つのメリットを紹介しています。

1-1 空室リスクが低くなる

1戸の区分マンション投資をしていた場合、その1室が空室になるとオーナーの収入はゼロになります。しかし2戸の区分マンションを所有していた場合、空室リスクが分散され、仮に1室が退去してしまってももう一方が埋まっていればオーナーの収入は半分の減少幅に抑えられます。このように、2戸の区分マンションを所有していた方が空室リスクは小さくなります。

1棟アパートの戸数も同様に、戸数が多いほど空室リスクが分散されます。例えば、1室あたりの家賃が10万円のアパートの場合、アパートの戸数が4戸の場合と8戸の場合で、それぞれに空室が1戸発生した場合のオーナーの収入と減少率は下記の表のようになります。

アパートの戸数 家賃収入 減少率
4戸 30万円 25%
8戸 70万円 12.5%

つまりアパートの戸数が多い方が空室になった際の家賃収入の減少率が小さいので、それだけ経営に対する影響を少なくできるということなのです。

1-2 効率的に管理ができる

戸数が多いアパートの方が効率的に管理ができます。4戸のアパートを2棟管理するよりも、8戸のアパートを1棟管理する方が移動距離も少なくて済み、修繕などのメンテナンスも楽になります。

1棟アパート経営で注意しておきたいポイントは、外壁や階段部分などの劣化状況について自身で管理し、適切なタイミングで修繕を検討しなければならないという点です。修繕については管理会社のサポートも受けられますが、予算や工事のタイミングについてオーナーが自ら判断する必要があるためです。

1棟の戸数が多いことで、複数棟の管理の手間を省き、効率的に不動産運用を行えるという点はメリットと言えるでしょう。

1-3 アパート経営が事業として認められる可能性がある

賃貸用の物件を10戸以上所有している場合は「事業的規模」とし、アパート経営を事業として行っているとみなされる可能性があります。

不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。
ただし、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

※引用:国税庁HP「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分

アパート経営が事業として認められると確定申告で青色申告ができるようになります。青色申告特別控除が利用できると、最高で65万円を所得から控除することが可能です。そのほか、確定申告を青色申告でした場合には下記のようなメリットもあります。

  • 純損失の繰越しと繰り戻しができる
  • 貸倒し引当金を計上することができる
  • 経費で認められる範囲が広がる
  • 30万円未満の固定資産を一度に経費にできる少額減価償却の特例が検討できる

ただし、青色申告には複式帳簿での記帳が必要となり、経理業務に時間と労力がかかる、といったデメリットもあります。それらを踏まえて、検討してみましょう。

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2 アパートの戸数が多いことによるデメリット・注意点

次に、戸数が多いアパートを経営する際の代表的なデメリットを紹介します。ここでは修繕費用や管理作業の手間など4つを取り上げています。

2-1 管理に関わる時間が増える

アパートの戸数が多いと、入居と退去の回数が増える可能性があり、その際には管理に関わる時間が増えることになります。

入居や退去の手続きは管理会社のサポートを受けられますが、オーナーとしてはその確認を行う必要もあります。そのためアパートの戸数が多くなると、管理業務に時間が取られることになり、デメリットと感じる方もいるのです。

また、入居者の数が多くなると、運営リスクが増加する可能性があることにも注意が必要です。

例えば、利回りが同じで同価格帯のアパートで戸数が異なる場合、1室あたりの設定家賃が異なるということになります。戸数が多く設定家賃の低いアパートは入居者の属性が低下する可能性があり、家賃滞納などが起きることも想定できます。

多くの人が住むアパートではトラブルの種となる事案が多くなり、騒音トラブルなど入居者間の問題が発生する可能性もあります。入居者一人ひとりについてどのような人物か把握しながら、入居審査を慎重に行うことも重要なポイントとなります。

2-2 原状回復の頻度が高くなり、修繕費用が増える

アパートの戸数が多いと退去もその分多くなることが想定され、退去後の原状回復工事を行う回数が多くなると考えられます。その場合、原状回復の修繕工事にかかる費用も増えることになります。

特に1人暮らしを想定したアパート経営の場合、ファミリー向けの物件と比較して入退去の頻度も高くなります。賃貸契約の時点で原状回復費用をある程度回収できるよう、適切な敷金を設定しておいたり、入居者の過失によって重大な損傷が起きないように入居審査を慎重に行うなど、対策をしておきましょう。

2-3 新築アパートを建てる際は初期費用が高額になる

新築でアパートを建てる場合はオーナー自身が戸数を決めることができますが、戸数を多くすると設備機器の台数も多くなり、その分初期費用が高額になってしまうデメリットがあります。アパートを新築する際に必要な設備は、主に下記になります。

  • キッチン
  • トイレ
  • 浴室
  • 洗面化粧台、洗濯パン
  • 給湯器
  • 扉・ドア
  • 配電盤、コンセント
  • 電話配線
  • インターフォン

これらの設備がアパート1棟に4戸であれば4セットですが、8戸になると8セットが必要になります。つまり、戸数の分だけ初期費用が高くなっていくということなのです。それに伴い、使用する建材や部品も必要になり、大工などの職人も多くなることでも初期費用が高くなります。

また、これらの設備機器をメンテナンスする際にも費用がかかります。故障した際には修理費用が発生することになり、ランニングコストが増えてしまうという点にも注意しておきましょう。

まとめ

アパート経営を始める際にオーナー自身で適切な戸数を考えることは重要なことです。アパート経営に関わる時間が長くなって本業への影響が出てくる可能性があるなど、メリットとデメリットがあるからです。

アパート経営において適切な戸数は、投資規模やオーナー自身の投資目的によって異なってくると言えます。アパート経営を始める際には戸数にも注目して検討してみましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。