低金利や好景気を背景に不動産価格が上昇し続けており、不動産投資への注目が高まっています。その中でも利回りが良く、大きな家賃収入を生んでくれる1棟投資に挑戦してみようかと思っている方も少なくないでしょう。
しかし、一棟投資はワンルームマンションなどの区分所有の投資に比べて多額の資金がかかるため、うまく行かなった場合のリスクを不安に感じている方も多いかと思います。
本記事ではそのような方の疑問や不安を解消するため、一棟投資の種類やメリット・デメリットのほか、一棟投資で失敗しないためのポイントを紹介していきます。
目次
- 不動産投資における「一棟投資」とは?
1-1.一棟投資を始める前に
1-2.一棟投資のタイプ - 一棟投資のメリット5つ
2-1.利回りが高い
2-2.収入金額が大きい
2-3.資産価値が高く融資でも評価
2-4.運用の自由度が高い
2-5.収入ゼロになるリスクが小さい - 一棟投資のデメリット4つ
3-1.必要な元手が多くなる
3-2.失敗した時のリスクが大きい
3-3.流動性が低い(=買い手が見つかりにくい)
3-4.維持管理費用が多額、手間も多い - 一棟投資で失敗しないためには?
4-1.収支計算を綿密に行う
4-2.修繕・修理面を特に確認する
4-3.投資時期を見極める
4-4.入居率や過去の実績もチェック - 一棟投資を始めるのに必要な自己資金・頭金は?
1 不動産投資における「一棟投資」とは?
一棟投資とは、アパートやマンションを部屋単位で投資する区分所有ではなく、一棟単位でマンションなどを購入して家賃収入やその売却収入で投資資金の回収と利益を得る投資方法です。
1-1 一棟投資を始める前に
一棟投資は一棟単位の投資となることから区分投資よりも元手が多くかかりますが、その分大きな利益を得られるなどの利点があります。しかし、その反面、多額の資金の準備とともに失敗した場合のリスクも区分投資よりも大きくなります。
一棟投資を始める際は関連する知識を十分に備える必要があります。
1-2 一棟投資のタイプ
一棟投資のタイプは「一棟アパート」「一棟マンション」の2つに分かれます。両者のうち、どちらに投資をするかは投資目的や状況などで異なりますが、事前に両者の特徴をしっかり把握しておくことが大切です。「一棟アパート」「一棟マンション」のそれぞれの特徴は下表のようになります。
一棟アパートと一棟マンションの比較表(構造・法定耐用年数)
比較項目 | アパート | マンション |
---|---|---|
構造、法定耐用年数 | 軽量鉄骨造 19年 |
鉄骨造 34年 |
木造 22年 |
鉄筋コンクリート造 47年 |
|
鉄骨造 34年 |
– |
一棟アパートと一棟マンションの比較表(建築コスト、利回り、家賃)
比較項目 | アパート | マンション |
---|---|---|
建築コスト※1 | 木造・木骨モルタル 166.7千円/㎡ |
鉄骨鉄筋コンクリート 350.4千円/㎡ |
表面利回り(東京都) | 新築 5~6% |
新築 4%前後が中心 |
中古(築20年以内) 5%~8% |
中古(築20年以内) 4~7% |
|
家賃(東京23区)※2 | 7.5万円(27.24㎡) | 10.6万円(33.78㎡) |
※1 国税庁「建物の標準的な建築価額表」(平成29年)
※2 公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏賃貸居住用物件の取引動向(2020年4~6月)」より
一棟アパートと一棟マンションの比較表(性能、資産価値)
比較項目 | アパート | マンション |
---|---|---|
性能 | 耐火性、耐震性、防音性で劣ることも | 耐火性、耐震性、防音性、断熱性、防犯性に優れる |
資産価値 | 構造や建材などによっては長期にわたって維持するのがやや困難なケースも | RCやSRCなどは法定耐用年数が47年と長期であり、手入れ次第で長期に渡り価値を維持しやすい |
2 一棟投資のメリット5つ
一棟投資における5つのメリットを詳しく確認していきましょう。
2-1 利回りが高い
一棟投資は区分投資と比較すると利回りが高いといえるでしょう。「不動産投資と収益物件の情報サイト健美家」が発表している「収益物件 市場動向 年間レポート<2022年1月~12月期>」によると、新規登録された収益物件の表面利回りは次のようになっています。
- 区分マンション:7.41%(築10年未満4.59%、築10年以上5.08%、築20年以上8.25%)
- 一棟アパート:8.29%(築10年未満6.60%、築10年以上7.55%、築20年以上9.57%)
- 一棟マンション:7.84%(築10年未満5.37%、築20年以内6.81%、築20年以上8.37%)
上記は表面利回りですが、維持管理費や修繕積立金などの経費を含める実質利回りでの評価も重要です。上記の費用のほか固定資産税などの経費全体を正確に把握して検討しましょう。
2-2 収入金額が大きい
一棟投資は、1物件から得られる家賃収入の金額が多くなり、区分投資と比べて多額の収入を得ることが可能です。
例えば、10室のアパート一棟とワンルームマンション1室から得られる家賃収入では大きな差が生じます。
例えば、アパート1室の家賃が7万円の場合、年間収入は10室×7万円×12カ月=840万円です。一方、ワンルームマンション1室の家賃が11万円の場合、年間収入は11万円×12カ月=132万円になります。
このように、一棟投資は1物件あたりの家賃収入の金額規模が大きくなるためキャッシュフローが良くなり、投資資金を回収するスピードも早いというメリットがあります。
2-3 資産価値が高く融資でも評価
一棟投資では区分投資よりも多くの土地を所有することになるため、区分投資よりも投資対象の資産価値が高く評価され、高額融資を受ける可能性も高くなります。
建物は耐用年数が経過すれば資産価値は大幅に減少するので、投資物件の資産評価において土地があるかないかで大きな差が生じます。一棟投資で建物と土地を所有すれば、築年数経過で建物の評価が下がっても土地の評価は下がりにくい傾向にあります(逆に上昇することもあります)。
2-4 運用の自由度が高い
一棟投資では、大規模修繕や改装などを所有者の意向で進めることができるので、建物の価値の維持・向上が図りやすくなります。
もちろん区分所有でもリノベーションや改装によりその部屋の付加価値を維持・向上させることはできます。しかし、建物全体については所有者に権限があるため、区分所有者の思いどおりの修繕や改装ができないケースが多くなります。
また、区分所有の物件の室内がリノベーションによって魅力的なものとなったとしても、建物の外壁劣化、共有部分の汚れ・破損などが表面化していると資産価値の低下は避けられません。
一棟投資で建物の修繕をしっかり行い、オートロック、宅配ボックス設置など時代に合った改装をすることで資産価値を維持し、収益性の低下も回避しやすくなるでしょう。このほか、一棟投資には「部屋を売却して資金を回収する」という自由度もあります。
2-5 収入ゼロになるリスクが小さい
空室が出たとしても、家賃収入がゼロになりにくいという点も1棟投資の魅力の一つです。
例えば、区分所有の場合、1戸だけの所有でその1戸が空室となればその時点から家賃収入はゼロになります。しかし、10戸あるアパート1棟に投資した場合は、1戸が空室となっても残り9戸から家賃収入を得ることができるので収入への影響は10分の1に留まります。
区分投資1物件だけの場合で空室が出てしまうと「0か、100か」という極端な話になりますが、一棟投資はそのようなリスクを回避することができます。
3 一棟投資のデメリット
次に一棟投資の4つのデメリットを確認します。次のような内容が挙げられます。
3-1 必要な元手が多くなる
一棟投資は土地および一棟分の建物を所有することになるため、投資資金が多額になります。
一棟アパートなら数千万円以上、一棟マンションなら1億円以上といった投資額になります。また全額をフルローンで組める物件は少なくなります。中古物件では、頭金として2~3割程度求められるケースもあります。
3-2 失敗した時のリスクが大きい
一棟投資は投資金額が多額になるため失敗した場合のリスクが区分投資よりも大きくなります。
例えば、投資した一棟が地震や火災などに見舞われて倒壊したなどの状況になれば家賃収入のすべてが途絶えることになりかねません。一方、区分投資の場合、複数戸に投資しておけば1カ所で地震などにあっても損害は1戸で済みます。
一棟投資は投資資金が多額になりやすいことから区分投資のように複数物件に投資することが難しく、リスク分散が困難なのがデメリットです。
このほか、周辺地域の環境変化で家賃水準の下落により、収入が大幅に減少するというリスクもあります。
3-3 流動性が低い(=買い手が見つかりにくい)
一棟投資は投資額が大きいことから区分投資よりも買い手がつきにくいため、容易には売却できない可能性があります。
さらに売出しから売却までの時間が多くかかり、売却資金を手にするまでの時間も長くなる可能性があります。売却資金を別の投資や用途で利用したいと考えても思うように売却できなければ、そのチャンスを逃がすことになるでしょう。
3-4 維持管理費用が多額、手間も多い
一棟投資では建物全体の維持・向上を図る必要があり、一定期間での大規模修繕や機能向上に向けた改装をする必要があります。そのため毎月の維持管理には膨大な経費がかかります。
また、オーナーとしての手間も大きくかかります。業務を管理会社へ委託することもできますが別途費用が必要です。とくに会社員であるオーナーにとって毎日の共用スペースの修理、防水工事、設備の点検など、こまかい維持管理業務の負担は小さくないでしょう。
加えて、損害保険料、固定資産税や都市計画税も一棟投資のほうが高額になるので、物件によっては大きな負担になるでしょう。
4 一棟投資で失敗しないためには?
ここでは一棟投資のリスクを低減させるためのポイントを4つ紹介しておきましょう。
4-1 収支計算を綿密に行う
不動産会社が提供する収支計算例のみに頼らず、投資家自身者でも計算するか、他の専門家に依頼して計算してもらうといった慎重さが求められます。
不動産会社によっては投資家との成約を優先するあまり、必要となる経費を提示しなかったり、低めに提示したりすることもあります。低めに設定された収支計画で契約すれば、失敗するリスクの要因となります。
ポイントは、管理会社の毎月の管理内容と費用が妥当か、固定資産税等の負担は大きくないかなどをチェックすることです。期待されるキャッシュフローが本当に得られるのかを慎重に検討しましょう。
4-2 修繕・修理面を特に確認する
中古物件の場合、「直近の大規模修繕からの期間」「外壁や共用部ですぐに必要な修理の有無」などの確認が必要です。近いうちに大規模修繕が必要な物件には慎重な検討が求められます。
4-3 投資時期を見極める
投資物件が高止まりしている状況での一棟投資はリスクが高く、状況を把握した慎重な判断が必要です。
不動産市場がある時期・ある地域で好調に見えても、しばらく経って需要が急激に落ち、物件価格や家賃相場が大幅に下落することも珍しくありません。
「対象地域の物件価格が上昇し始める」「経済環境が好転し始めた」などの状況での投資がポイントになります。高値掴みの投資には注意しましょう。
4-4 入居率や過去の実績もチェック
このほか、「学校・駅やコンビニに近い」「人気沿線が利用可能」など入居率が高くなる理由があること、これまでの入居率の実績があることもポイントです。
たとえば、築30年以上の物件も含めて入居率98.56% (2023年年間平均入居率)という実績のあるシノケンプロデュースは、駅徒歩10分圏内、都市圏から電車で30分圏内という入居需要の高い土地を厳選して仕入れることで年数が経った物件でも高い入居率を維持することができています。1棟ごとに設計されたデザイナーズ物件で防犯性・防音性・耐震性・耐火性に優れた建物性能、設備は入居者アンケートで人気が高いものを標準導入、24時間管理でクレームに即対応など、立地以外でも様々な取り組みをしています。
気になる方は、無料の不動産投資セミナーや収支シミュレーションを教えてもらえるWEB面談などで詳しい説明を聞いたり、モデルルーム見学をしてみたりするなど、情報収集を検討されてみると良いでしょう。
5.一棟投資を始めるのに必要な自己資金・頭金は?
不動産投資を始めるために必要な頭金は、それぞれの年収や職業、資産状況などにも左右されるため、一概に具体的な金額で示せるものではありませんが、概ね物件価格の10%〜30%が目安となります。
一棟投資は数ある不動産投資の中でも大きな資金を必要とする投資対象です。仮に1億円規模の物件を購入するということであれば、自己資金として1,000~3,000万円を求められるケースもあるでしょう。
ただし、不動産投資ローンの審査では年収や勤め先企業、年齢、これまでの貯蓄状況などの情報を詳しく評価されることになります。その結果、通常よりも頭金割合の少ない条件で融資実行されるケースもあります。
例えば、前述した「アイケンジャパン」では、福岡市のアパート(1億1,147万円)で、アパートローンの借入額は1億500万円、年1.8%の金利でのアパートローンの借入を実現しています。直近1年間の年収が950万円で専門的な職業であることから、融資審査で高い評価を受けることができたケースです。
反対に、多くの自己資金を用意することで年収が低い方でも融資審査を通過できた事例があります。福岡市のアパート(9,414万円)で、地方銀行Dのアパートローンを7,900万円、年1.5%の金利で借入をしているケースでは、借主は直近1年間の年収500万円未満という属性でしたが、すでに不動産を所有していることや、自己資金を20%弱用意できることなどが評価され、融資審査を通過できた事例があります。
不動産投資を一棟で始めるのに必要な自己資金はケースバイケースとなりますが、自身の属性評価が高い場合には少なくて済み、反対に属性評価が低い場合には多くの資金を投入することで融資実行の可能性を上げられるということになります。自身の属性評価と投資対象の物件の規模から、必要になる自己資金を類推しておくと良いでしょう。
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まとめ
一棟投資は投資に必要な資金も大きく、高い収益を目指せるメリットのある投資対象です。一方、必要な自己資金・融資額も大きくなることから、投資先の物件は慎重に選ばなくてはならない注意点があります。
不動産投資を始めようと考えた投資目的に合わせて、一棟投資を始めるかどうか慎重に検討されていくと良いでしょう。また、都心部の一棟物件は非常に高額になるため、やや郊外寄りの物件が選択肢に入りやすいという点も注意点となります。
一棟投資に必要な自己資金は物件価格の10~30%が目安となります。自己資金の割合は自身の属性評価によって異なるため、購入検討する物件の規模や担保性と準備できる自己資金のバランスを取って、投資判断を行っていきましょう。
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