今から間に合う日本株投資は?注目銘柄をプロ投資家が解説【2023年8月】

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日経平均株価は2023年初からすでに27%上昇(2023年7月末時点)しました。著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が2022年11月に日本の5大商社株を買い増したことを公表したことがきっかけで、海外投資家を中心に日本株が買い上げられました。

日本株の株価水準が低い時に投資しておけば良かったと思われている方は多いのではないでしょうか。そこで、2023年時点で割安であり、今から投資しても上昇すると期待できる日本銘柄を、プロ投資家の筆者が解説します。

※本記事は2023年8月25日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 日本株好調の背景
    1-1.ウォーレン・バフェット効果
    1-2.中国リスクと中国経済の低迷
    1-3.日本株が割安
    1-4.東京証券取引所のPBR1倍割れ改善の要請
  2. 日本株の今後
  3. 割安な銘柄
    3-1.INPEX(1605)
    3-2.東海旅客鉄道(9022)
    3-3.ブリヂストン(5108)
    3-4.JFEホールディングス(5411)
  4. まとめ

1.日本株好調の背景

日本株好調の背景には、ウォーレン・バフェット氏が日本株に注目していること、中国リスク、日本株が割安であること、東証がPBR1倍割れ企業に対し改善策を開示・実行するように要請していることなどがあげられます。それぞれ見ていきましょう。

1-1.ウォーレン・バフェット効果

ウォーレン・バフェット氏は投資の神様とも呼ばれ、投資行動は世界中の投資家が注目しています。誰も注目していなかった日本株にウォーレン・バフェット氏が投資したことが日本株見直しの切欠となったと考えられます。

ウォーレン・バフェット氏が5大商社(伊藤忠商事、三井物産、丸紅、三菱商事、住友商事)に投資したことが2020年8月に公表されました。三菱商事の株価を例にとると、当時同社の株価は2,512円でした。その後の株価は順調に上昇し、2023年8月8日の株価は7,085円でした。3年弱で株価が2.8倍に成長しました。

1-2.中国リスクと中国経済の低迷

中国リスクの台頭と、中国経済の低迷による中国株売りも日本株上昇の1役を担っています。中国の習近平政権は中国と台湾の統一を目指しています。中国による台湾侵攻の可能性もあります。

過去の例では、ロシアによるウクライナ侵攻により、ロシア株式や通貨は大暴落しました。日本ではロシア関連の投資信託の買付・売却が現在でも停止されている銘柄が目立ちます。もし、中国による台湾侵攻があった場合には同様のことが起きる可能性があります。

また、中国では不動産市況の悪化、経済の停滞からデフレ圧力が強まっています。これらを背景に、海外投資家はポートフォリオに占める中国株の比率を下げています。

こうしたことを背景にアジアにおける日本株の投資比率が引き上がったことが、日本株買いに繋がっていると考えられます。2023年7月までは、外国人投資家売買動向は3月を除く全ての月で買い越しとなっています。

参照:安藤証券「投資家主体別売買動向表

1-3.日本株が割安

日本株が割安だということも日本株買いの材料と言えます。日米のイールドスプレッドを比較すると日本株が割安です。イールドスプレッドとは株式益回り(PERの逆数)から国債利回りを差し引いた値のことです。

プライム全銘柄のPERは約16倍なので株式益利回りは6.25%、10年国債金利が約0.6%なのでイールドスプレッドは5.65%です。一方、米国のS&P500指数のPERは約16倍、10年国債利回りが4%であり、イールドスプレッドは2.25%です。つまり、日本株は米株と比較し、割安と言えます。

参照:multpl「S&P 500 PE Ratio

1-4.東京証券取引所のPBR1倍割れ改善の要請

東京証券取引所が2023年4月にPBR(純資産倍率)の低迷する上場企業に対し、改善策を改善・実行するように要請し、日本株にとって好材料です。

東証によると、4月時点のプライム市場上場銘柄の平均PBRは1.2倍です。そのなかで、平均PBR1倍割れの業種は、鉱業、建設業、パルプ・紙、石油・石炭製品、ゴム製品、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、輸送機器、電気・ガス業、海運業、倉庫・運輸関連業、銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業です。

参照:日本取引所グループ「その他統計資料

2.日本株の今後

2024年から日本では新しいNISAが始まります。新しいNISAのポイントは非課税保有期間が無期限であること、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となることです。また、年間投資枠が、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円となり、合計で最大年間360万円まで投資が可能となります。

非課税保有制限額は1,800万円(つみたて投資枠:600万円、成長投資枠:1,200万円)です。また、成長投資枠については、同年度以内であれば成長投資枠で購入した株式を売却した場合、投資枠が戻る制度に変更されました。

日本では、老後の生活に多くの人が不安を抱えています。新しいNISA制度がはじまることで、若者を中心に株式ブームが起きる可能性があります。また、インフレによる貨幣価値の減価も株式市場には追い風となるでしょう。

日本銀行によると、家計の金融資産残高(2023年3月末)は2,043兆円にのぼります。このうち、現金・預金は1,107兆円です。新しいNISAが始まると、現金・預金から株式市場への資金シフトが始まる可能性があります。

参照:日本銀行調査統計局「2023年第1四半期の資金循環(速報)

3.割安な銘柄

株式投資の基本は安く買い高く売ること、割安な銘柄を見つけて投資することです。2023年8月12日時点で、PBR1倍割れで低PERの銘柄を中心に、4銘柄を選びました。

3-1.INPEX(1605)

INPEXは日本最大の石油・天然ガス開発企業です。2006年に帝国石油と国際石油開発が合併し設立された新会社が、2021年に社名変更してINPEXとなりました。日本の年間エネルギー消費量の約1割に相当する規模の石油・天然ガスを世界各国で生産している企業です。

参照:INPEX「決算ハイライト

筆頭株主が日本政府で、持株比率は21.19%(2022年12月末)です。2022年12月期の売上高は前期比86.8%増の2兆3,246億円でした。親会社に帰属する純利益は、純利益が前期比96.5%増の4,382億円です。同社のPBRは0.73倍、予想PERが8.01倍です。

参照:INPEX「株式情報

3-2.東海旅客鉄道(9022)

東海旅客鉄道(JR東海)は、インバウンド関連銘柄の中で出遅れ感があります。

インバウンド関連株価の水準を、新型コロナ前の2019年12月末から現在(2023年8月10日)までで比べると、三越伊勢丹HDが188.92%、ANAHDが93.68%、JR九州が97.97%と90%を超えているのに対し、JR東海は85.30%という水準にとどまっています。

JR東海のPBRは0.96倍、予想PERが14.36倍です。この水準は、東日本旅客鉄道(PBR1.24倍、予想PER22.43倍)、西日本旅客鉄道(PBRが1.45倍、予想PER22.59倍)と比べて割安感があります。

中国が、日本への団体旅行を2023年8月10日に解禁したため、インバウンド銘柄の注目度が高まるでしょう。出遅れ感のあるJR東海の株価が注目してみてください。

3-3.ブリヂストン(5108)

ブリヂストンは、世界のタイヤ市場シェア2位(12.5%)のメーカーです。2022年度の売上高は4兆1,101億円(前年比26.61%増)です。米州向け売上高が1兆9,880億円(同36.66%増)と好調でした。

参照:ブリヂストン「株式情報

JTRO(日本貿易振興機構)によると(2023年4月3日)、米国の2023年第一四半期の新車販売台数は7.8%増の約359万台でした。米国での新車販売台数は、半導体不足の解消や堅調に推移する雇用市場、インフレ鎮静化などから今後も増加が期待できそうです。

参照:JTRO「ジェトロ「ビジネス短信」添付資料

同社のPBRは1.31倍、予想PERが11.56倍です。

3-4.JFEホールディングス(5411)

JFEホールディングスは、大手鉄鋼メーカーのJFEスチールを中核とし事業展開をしているグループを傘下に持つ持ち株会社です。

2023年度の年間売上収益を5兆3,800億円(対前年度比1,113億円増)、事業利益を2,900億円(同542億円増)と、前年度からの増加を見込んでいます。

参照:JFE「JFEグループインベスターズ・ミーティング

同社のPBRは0.61倍で、日本製鉄(PBR:0.74倍)、神戸製鋼所(PBR:0.78倍)と比較して割安感があります。

4.まとめ

日経平均株価は、2023年初からすでに27%上昇しました。日本株上昇の背景には、日本株が米国株と比較し相対的に割安なことや、外国人投資家による日本株買い、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対し改善策を開示・実行するように要請をしたことなどがあげられます。また、2024年から始まる新しいNISAを機に日本株ブームが起きる可能性があります。

興味のある方は、日本株への投資を検討してみてください。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。