投資は副業になる?判断基準や誰でもできる投資手法は

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勤務先で副業が禁じられている場合、投資が副業に該当するかどうか気になる人もいるでしょう。基本的には投資は副業には当たらず、本業に支障のない範囲で行ってもかまいませんが、例外もあるため注意が必要です。

この記事では投資と副業の判断基準や、仕事を持つ人でもできる投資について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年8月31日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 投資は副業に当たらない
    1-1.副業に明確な定義はない
    1-2.副業禁止だとしても投資は問題になりにくい
    1-3.副業が問題となるケース
  2. 会社員に向いている投資
    2-1.米国高配当株投資
    2-2.投資信託積立
    2-3.ロボアドバイザー
    2-4.FX自動売買
    2-5.不動産クラウドファンディング
    2-6.暗号資産
  3. まとめ

1.投資は副業に当たらない

最初に、投資が副業に当たるのかについて解説します。

1-1.副業についての明確な定義はない

副業についての法律による定義などはありませんが、一般的には本業以外の仕事で収入を得ることを意味します。会社員の副業は、法律で禁じられているわけではありませんが、就業規則により制限が課されている企業もあります。また、公務員の副業は原則として職場の許可を受ける必要があります。

2018年に厚生労働省が公表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では「モデル就業規則」から副業禁止の規定が削除されました。このように社会全体としては副業解禁が大きな流れになっていますが、依然として副業を認めない会社も少なくありません。

1-2.副業禁止だとしても投資は問題になりにくい

勤務先の就業規則に「副業禁止」が謳われているケースでも、投資は問題とならないケースが多いと考えられます。就業時間中の取引さえ避ければ、本業の業務に支障をきたす可能性は低いこと、また国家公務員法・地方公務員法においても、金融商品への投資は、以下のとおり「副業」の定義には当たらないからです。

国家公務員法における副業に関する条文

第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

参照:e-Gov「国家公務員法(施行日:令和三年九月一日)

地方公務員法における副業に関する条文

第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。

参照:e-Gov「地方公務員法(施行日:令和三年七月六日)

ただし、以下のように金融商品への投資とは扱いが異なる「投資」もあります。

不動産投資の「5棟10室」基準

投資の中でも現物の不動産投資は、家賃収入から必要経費を差し引いた所得が「不動産所得」に該当し、赤字の場合、給与所得等と相殺する「損益通算」が可能です。また、青色申告によって控除も受けられます。青色申告の控除は事業的規模であれば55万円か65万円、事業的規模でなければ10万円です。

この事業的規模かどうかを判定する基準は以下のようになっています。

  • アパート・マンションなら10室以上
  • 一戸建ての貸家なら5棟以上

この基準は税金を計算する上での基準ではありますが、社会通念上、この基準を上回ると副業と見なされる可能性があります。また、国家公務員法においても同様の規模以上であれば、任命権者の許可を取得しなければならないとされます(その他にも要件あり。地方公務員法は同法に準ずるが、自治体により別途規定がある場合もあります)。

副業で賃貸経営をする場合、管理業務を全て委託するなど、本業に影響が出ないような配慮が必要です。

1-3.副業が問題となるケース

上述した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、勤務先が労働者に副業を制限することが許されるケースについて以下のように示しています。

  1. 業務上に支障をきたす場合
  2. 業務上の機密が漏洩する場合
  3. 勤務先と同業を営むなどで勤務先の利益を害する場合
  4. 勤務先の名誉や信用を損なう場合

上記のうち投資で問題になりやすいのは、1の「業務に支障をきたす」という点です。デイトレードや投資のための欠勤や、業務効率の低下などが無いようにしましょう。

なお金融商品への投資については、インサイダー取引防止の観点から、上場企業社員や金融機関に勤務している人などについては、金融商品取引法により一定の制限が課されます。

2.会社員に向いている投資

次に、会社員や公務員でも取り組みやすい、副収入を得られる投資を紹介します。ここで言う会社員向きの投資とは、日中の業務に影響のない、あまり手間のかからない投資という観点で選んでいます。

2-1.米国高配当株投資

株式投資というと市場が開いている昼間に売買をするイメージがありますが、長期保有して配当金を受け取る方法もあります。

米国には年4回配当を支払う企業も多く、また1株から買えるため値がさ株(株価が高い銘柄)にも気軽に投資できます。高配当株を保有するやり方は売却のタイミングをつど考える必要がないため、会社員でも取り組みやすい方法です。

たとえば、IBMの2022年8月16日時点の株価は133.76米ドルで、配当利回りは4.77%です。1米ドル135円だとして、日本円で約1万8,000円程度から始められます(手数料等考慮せず)。

米国高配当株式投資のメリット

配当収入を得る投資なので、売却益を狙う方法に比べて投資に費やす時間が少なくすみます。そのため、本業に影響の少ない投資といえます。

米国高配当株式投資の注意点

米国高配当株式投資は、売却益を狙う投資に比べて一定の収益が見込める方法ですが、株価が急に下がるリスクも想定しておく必要があります。業績が悪化して株価が下がると、配当も支払われなくなる可能性があります。そのため、複数の銘柄を保有するなどのリスクヘッジを行うほうがよいでしょう。

また、米国株で配当が支払われると米国内で10%源泉徴収され、次いで日本で20.315%課税される「二重課税」が生じます。日米の二重課税は「外国税額控除」という制度で調整されます。

外国税額控除を受けるには、「特定口座・源泉徴収あり」の人でも確定申告が必要です。ただし、NISA口座で受け取った配当金には、外国税額控除は適用されません。

2-2.投資信託積立

投資信託は不特定多数の投資家から集めた資金を、運用会社が株や債券などで運用してくれる金融商品です。少額から分散投資ができることから、NISA・iDeCoなどの制度でも対象として設定されています。

投資信託にも値動きがあり、安く買って高く売るにはタイミングを図る必要があります。しかし、毎月1万円ずつのような積立を活用すると、設定をすれば自動的に買付が行われるため、投資の手間がかかりません。

投資信託積立のメリット

投資信託の積立は多くの大手ネット証券では100円から始められるので、まとまったお金がなくても取り組めます。また、同じ商品を定額で買い続けることで平均購入単価を平準化することができ、高値掴みを避けられます。

投資信託積立の注意点

投資信託の積立は少額から始められて手間もかからず、会社員に適した投資ですが、まとまった資産になるには時間がかかります。運用が順調でもなかなか資産が増えずにがっかりする人もいるかもしれません。

株式のデイトレードなどと違い、短期間で大きな利益を狙う方法でないことを理解しましょう。

2-3.ロボアドバイザー

ロボアドバイザーはAI(人工知能)を活用して、資産配分の提案をしたり運用の代行をしたりする金融サービスです。ロボアドバイザーには投資の提案のみを行う「アドバイス型」と、提案から運用代行まで行う「投資一任型」があります。

投資一任型では、ロボアドバイザーからの提案をユーザーが承認すると商品の買付などが行われるため、ユーザーに投資の手間はかかりません。そのため、会社員にも適した投資といえるでしょう。代表的なロボアドバイザーには、WealthNavi(ウェルスナビ)やTHEO+docomoなどがあります。

ロボアドバイザーのメリット

投資一任型ロボアドバイザーは簡単な質問に答えるだけで自分に合った資産配分を提案し、運用もしてくれます。そのため、投資の知識のない初心者でも、気軽に運用を始められます。また、自動的に売買が行われるため、ユーザーに手間はかかりません。

AIのアルゴリズムを活用した運用のため、人間の感情に左右されるリスクを気にせず、一定の成果が期待できます。

ロボアドバイザーの注意点

投資一任型のロボアドバイザーには、運用商品の信託報酬以外にサービスの利用料がかかります。また、商品選定から運用までを代行してくれるサービスですが、運用の成果が保証されているわけではありません。損失を負うのはユーザーであることを認識しておきましょう。

2-4.FX自動売買

FX(外国為替証拠金取引)は証拠金という仕組みにより、取引額より少ない資金での売買ができる投資です。昼間のデイトレードなどは会社員の方には不向きですが、FXにはさまざまな投資手法があります。

たとえば、FX会社などが提供している「自動売買」を活用すれば、24時間トレードが自動的に行われるため、本業に支障をきたすことを避けられます。

FX自動売買のメリット

自動売買ではシステムが取引を行うため、チャートを見張る必要はありません。また、システムが決めたとおりに取引するため、感情的になって失敗することを避けられます。

FX自動売買の注意点

一般的にFXの自動売買はスプレッド以外の手数料がかかり、裁定取引よりコストが高くなります。

また、自動売買のアルゴリズムは万能ではなく、相場の変化に対応できない場合もあります。たとえば、レンジ相場が得意なシステムでトレンドが発生すると、大きな損失を被るおそれがあります。

自動売買では常にチャートを注視する必要はありませんが、一定の間隔で相場の状況をチェックし、必要に応じてアルゴリズムを変更するなどのテコ入れを行うようにしましょう。

2-5.不動産クラウドファンディング

マンションなどの不動産を取得して家賃を得る不動産投資は、管理を不動産会社に委託すれば日常業務への支障がほとんどなく、適した投資といえます。しかし、多額の資金が必要なため、すぐには始められない人もいるでしょう。

しかし不動産投資には少ない資金でも取り組める手法があり、不動産クラウドファンディングはその1つです。不動産クラウドファンディングでは、サービス運営主体などの不動産会社がインターネットを通じて投資家から資金を集め、不動産を取得して賃貸事業などを行います。投資家には賃料収入などが還元される仕組みです。

主なサービスにはCREALなどがあります。

不動産クラウドファンディングのメリット

不動産クラウドファンディングは1万円から投資できる案件が多く、不動産を取得するような多額の資金は必要ありません。一般的に6%から8%の利回りで運用されている案件が多く、他の金融商品に比べると比較的高利回りが期待できます。

また、管理・運営はすべて運営会社が行うため、投資家に手間はかかりません。会社員にも適した投資といえます。

不動産クラウドファンディングの注意点

不動産クラウドファンディングは元本保証ではなく、現物投資と同様に空室リスクや災害による不動産の滅失リスクなどもあります。また、現物の不動産投資のように、損益通算や繰越控除などはできないほか、融資を活用して効率的に事業規模を拡大するような戦略は取れません。

2-6.暗号資産

暗号資産とは、主にブロックチェーン技術という仕組みによって取引履歴が記録される、インターネット上で取引されるデジタル通貨です。代表的な暗号資産に、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などがあります。

暗号資産のメリット

暗号資産は24時間365日取引できるため、時間的に会社員でも取り組みやすい投資対象です。

また、少額からの取引が可能です。たとえば、ビットコインであれば取引所(暗号資産交換所)によりますが「0.001BTC」や「0.0001BTC」から購入できます。2022年8月31日時点の1BTCは281万9,380.58円です。つまり、約2,800円や約280円から買えるわけです。

暗号資産の注意点

暗号資産は値動きの幅が非常に大きく、大きな損失を被る可能性があります。たとえば、2022年1月では1BTCが約550万円でしたが、2022年8月には約300万円と半値近くに下がっています。ビットコインより時価総額の小さな暗号資産(アルトコイン)はさらにリスクが高く、10倍・100倍以上の高騰や、1/10、1/100以下に暴落した事例も多数見られます。

対日本円レートが著しく高騰した影響で「億り人」という流行語も生まれた暗号資産ですが、一度に多額の投資は禁物です。非常にリスクが高い投資対象のため、生活に支障をきたさない余剰資金のうち一部のみで購入するとよいでしょう。

まとめ

ほとんどの場合、投資は副業にあたりません。業務に影響が及ばないようにすれば、勤務先に断る必要もないケースがほとんどだと考えられます。ただし、不動産投資については、一定の事業規模を超えると事業とみなされ、副業の禁止規定に抵触する場合もあるので注意してください。

今は低金利のあおりを受けて預貯金だけではお金が増やせないため、投資は必要不可欠なものです。自分にとってやりやすい方法で、資産形成を目指していきましょう。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント