AIや機械システムによって乗り物を動かす自動運転の技術開発や実用化が年々進んできています。これまでの社会環境を根本的に変える可能性を秘めている自動運転業界は、今後も有望な投資先となっているため、関連する金融商品について知りたい方もいるのではないでしょうか。
この記事では、自動運転業界に投資できる金融商品の運用成績等を比較しながら紹介するので、参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は、2022年9月4日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- 自動運転業界に投資するメリットとは
- 自動運転業界に投資できる人気の金融商品5本
2-1.グローバル自動運転関連株式ファンド(為替ヘッジあり)
2-2.グローバル自動運転関連株式ファンド(為替ヘッジなし)
2-3.eMAXIS Neo自動運転
2-4.ARKQ(ARK Autonomous Technology & Robotics ETF)
2-5.IDRV(iShares Self-Driving EV and Tech ETF) - 自動運転業界に投資する際の注意点
3-1.相場過熱後の下落に注意する
3-2.ファンドによっては信託期限がある - まとめ
1 自動運転業界に投資するメリットとは
これまで人が運転中に行ってきた「認知」「操作」「判断」の3要素をシステムに任せる自動運転技術の実用化が進んでいます。
自動運転技術は、ドライバーの不注意による交通事故を防止できるようになるほか、車体に搭載されている自動システムが最適なルートを選択して走行するため、道路の渋滞が解消・緩和されたり、交通流もスムーズになったりするなど、社会環境に良い変化をもたらすことが期待されています。
自動運転業界の将来的な市場規模について、国内のマーケット調査会社である富士経済は、2021年の市場規模は24億円であるのに対し、2035年の市場規模は322億円まで大きくなると予測しています(参照:富士経済「自動運転シャトルの国内市場調査」)。
また、半導体素子会社「インテル」と独立系調査・コンサルティング会社である「ストラテジー・アナリティックス」は、自動運転の実用化で創出される市場規模が、2050年に7兆ドル(約966兆円:1ドル138円換算)まで上るとの予測を発表しています(参照:Intel “Intel Predicts Autonomous Driving Will Spur New ‘Passenger Economy’ Worth $7 Trillion“)。
自動運転技術は、自動車業界のほか、米国大手IT会社の「グーグル」「アマゾン」「アップル」などテクノロジー業界、プラットフォーム業界も自動運転業界へ参入しており市場規模の拡大が予測されているため、今後も投資先として期待できる業界となっています。
2 自動運転業界に投資できる人気の金融商品5本
自動運転業界に投資できる金融商品として、購入上位となっているのは以下の銘柄です(基準価額や運用成績の基準日は2022年8月29日時点)。
項目 | 基準価額 | 運用成績(1年) | 運用成績(3年) |
---|---|---|---|
グローバル自動運転関連株式ファンド(為替ヘッジあり) | 14,308円 | -16.11% | +60.54% |
グローバル自動運転関連株式ファンド(為替ヘッジなし) | 18,167円 | +3.42% | +108.07% |
eMAXIS Neo自動運転 | 25,779円 | -16.64% | +37.88% |
ARKQ(ARK Autonomous Technology & Robotics ETF) | 7,307.1円(1ドル138円換算) | -41.46% | +14.69% |
IDRV(iShares Self-Driving EV and Tech ETF) | 5,405.46円(1ドル138円換算) | -24.32% | +16.88% |
上記表の金融商品のうち、3つが国内の投資信託、2つが米国のETF(上場投資信託)になります。米国の長期金利の利上げが影響し、多くの上記銘柄で直近1年の運用成績がマイナスとなった一方、直近3年の運用成績を見るといずれもプラスで、投資元金額以上の運用成績を上げた金融商品もあります。
それでは、各銘柄の詳細を確認していきましょう。
2-1 グローバル自動運転関連株式ファンド(為替ヘッジあり)
基準価額 | 14,308円(2022年8月29日時点) |
運用成績(1年) | -16.11% |
運用成績(3年) | +60.54% |
設定日 | 2017年4月28日 |
信託報酬(経費率) | 年率1.903%(税込)程度 |
純資産残高 | 290億400万円 |
運用会社 | 三井住友DSアセットマネジメント |
グローバル自動運転関連株式ファンド(為替ヘッジあり)は、自動運転の実現に必要な技術を持つ企業に注目し、その中でも将来的に業績拡大が期待できる世界の企業を選定して投資を行う投資信託です。
投資対象地域は日本を含む全世界で、株式、円貨建ての短期公社債、国内の短期金融商品などに投資を行っています。また運用の際には為替ヘッジを活用し、為替変動による損失リスクの低減を図っています。
グローバル自動運転関連株式ファンドは、ファンドオブファンズ方式で運用されているのが特徴です。ファンドオブファンズとは、投資金を預けたファンドが別のファンドに投資を行い、そのファンドが対象資産に投資する運用方法です。
投資対象となるファンドは、「オートノマス・ビークル・ファンド」と「マネー・マーケット・マザーファンド」の2つです。オートノマス・ビークル・ファンドは、全世界の自動運転関連企業の株式へ投資を行っており、マネー・マーケット・マザーファンドの投資対象先は、円貨建ての短期公社債、国内の短期金融商品などです。
オートノマス・ビークル・ファンドの主要な投資先には、米国の半導体・テクノロジー関連企業が多く含まれています。これに対し、マネー・マーケット・マザーファンドの主要な投資先は、国内の政保地方公共団や政保道路機構などです。
なお、直近1年の運用成績は16.11%のマイナスですが、直近3年では、60.54%のプラスとなっています。また、基準価額は2022年初頭時点では18,000円台でしたが、2022年8月中は、14,000~15,000円台で推移しています。
2-2 グローバル自動運転関連株式ファンド(為替ヘッジなし)
基準価額 | 18,167円(2022年8月29日時点) |
運用成績(1年) | +3.42% |
運用成績(3年) | +108.07% |
設定日 | 2017年4月28日 |
信託報酬(経費率) | 年率1.903%(税込)程度 |
純資産残高 | 767億7,700万円 |
運用会社 | 三井住友DSアセットマネジメント |
為替ヘッジを活用しないグローバル自動運転関連株式ファンドです。運用の際に為替ヘッジを行わないため、その分為替変動によるリスクを直接受けることになります。
自動運転関連ファンドの多くは、直近1年の運用成績でマイナスとなっていますが、このファンドは3.42%のプラス成績となっています。また、直近3年の運用成績は、108.07%のプラスとなっており、投資元金以上の利益を出しています。基準価額は2022年初頭時点では19,000円台でしたが、2022年8月29日時点では、18,000円台とやや下がっています。
2-3 eMAXIS Neo自動運転
基準価額 | 25,779円(2022年8月29日時点) |
運用成績(1年) | -16.64% |
運用成績(3年) | +37.88% |
設定日 | 2019年5月28日 |
信託報酬(経費率) | 年率0.792%(税込) |
純資産残高 | 155億9,500万円 |
運用会社 | 三菱UFJ国際投信 |
「eMAXIS Neo自動運転」は、米国の金融商品取引所に上場している、日本を含む全世界の自動運転関連企業の株式へ投資するインデックス型の投資信託です。「S&P Kensho Autonomous Vehicles Index(配当込み、円換算ベース)」の指数の値動きに連動した投資成果を目標に運用されています。
運用方式はファミリーファンド方式となっています。ファミリーファンド方式とは、複数のファンド(ベビーファンド)の資金をまとめて別のファンド(マザーファンド)に投資し、そのファンドが株式や債券などの対象資産に投資する形で行われる運用の仕組みのことです。
組入上位10銘柄のうち、米国の自動車関連企業が7銘柄を占めており、その内訳は、米国の半導体関連企業2銘柄、米国のテクノロジー企業1銘柄となっています。
2022年8月中の基準価額は25,000~28,000円台を推移しており、2022年初頭時点より10,000円前後下がっています。直近1年の運用成績は16.64%のマイナスですが、直近3年の運用成績は37.88%のプラスとなっています。
2-4 ARKQ(ARK Autonomous Technology & Robotics ETF)
基準価額 | 52.95ドル(2022年8月29日時点) |
運用成績(1年) | -41.46% |
運用成績(3年) | +14.69% |
設定日 | 2014年9月30日 |
信託報酬(経費率) | 年率0.75%(経費率) |
純資産残高 | 12億1,200万ドル |
運用会社 | アークインベスト |
「ARK Autonomous Technology & Robotics ETF」は、アークインベストが運用する米国の上場投資信託です。自動運転およびロボット事業を行う国内外の企業の株式へ全資産の最低80%以上の投資を行い、破壊的イノベーションというテーマで長期的な資本成長を目指しながら運用されています。組入最上位銘柄は、米国の電動輸送機器およびクリーンエネルギー関連企業のテスラで、全体の約11%を占めています。
直近1年の運用成績は、41.46%のマイナスとなっていますが、直近3年では14.69%のプラス成績です。ファンドの基準価額は、約7,300円(1ドル138円換算)で、国内の自動運転業界のテーマ型投資信託と比較すると安く購入できます。
2-5 IDRV(iShares Self-Driving EV and Tech ETF)
基準価額 | 39.17ドル(2022年8月29日時点) |
運用成績(1年) | -24.32% |
運用成績(3年) | +16.88% |
設定日 | 2019年4月16日 |
信託報酬(経費率) | 年率0.47%(経費率) |
純資産残高 | 4億5,955万6,073ドル |
運用会社 | ブラックロック |
「iShares Self-Driving EV and Tech ETF」は、米国の資産運用会社ブラックロックが運用するテーマ型の上場投資信託です。先進国および新興国の中で、自動運転技術による成長や革新で恩恵を受けられる企業で構成される株式指数の値動きに追随するよう運用されています。テーマ型投資の金融商品ではありますが、インデックス型の運用方針をとっている点も特徴です。
組入上位の10銘柄の中には、米国のテスラ、アップル、グーグルのほか、日本のトヨタ自動車や韓国のサムスン電子も含まれています。直近1年の運用成績は24.32%のマイナスとなっていますが、直近3年は16.88%のプラス成績です。
3 自動運転業界に投資する際の注意点
自動運転業界への投資は、以下のポイントに注意しながら行うことが大切です。
3-1 相場過熱後の下落に注意する
自動運転業界への投資はテーマ型投資の種類に分類されます。テーマ型投資は投資対象先の内容がわかりやすく、投資対象先の業種分野への期待が高いと、その分多くの利益を狙えるメリットがあります。
しかし、相場過熱後は投資対象先の業種分野への関心が薄れてきたり、実際の業績が期待ほど伸びなかったりした場合、ファンドからの資金流出が起こり、短期間に大きく下落するケースもあるため注意が必要です。
自動運転業界への投資を行う場合、ファンドの純資産残高の額や推移をチェックした上で銘柄を購入したほうがよいでしょう。
3-2 ファンドによっては信託期限がある
投資信託は設定日にファンドの運用が開始され、償還日にファンドの運用が終了して償還される仕組みとなっています。ファンドの設定日から償還日までの期間が無期限となっているものであれば、保有している限り運用を続けられます。
一方、有期限となっているファンドの場合、設定日から償還日の期間しか運用されません。そのため、償還日の時点で含み損が発生すれば、償還によりそのまま損失が確定します。信託期間が有期限となっているファンドへ投資する場合、この点に注意が必要です。
自動運転業界など特定の分野への投資を行うテーマ型ファンドの中には、償還日が定められており、信託期間も決まっている銘柄もあります。例えば、上記のグローバル自動運転関連株式ファンドも、信託期間が2024年4月10日までと定められているため、投資する際はその点も考慮しましょう。
まとめ
自動運転業界は将来的に市場規模の拡大が見込まれており、投資先としても高い期待が寄せられています。自動運転業界に投資できる国内外の投資信託やETFは、ウクライナ侵略や米長期金利上昇などもあって直近1年の運用成績の結果こそふるいませんが、ファンド設定当初からの運用成績においては成果を出しています。
ただ、特定のテーマ型投資となるため、自動運転業界への関心や投資の期待感が薄れると、ファンドからの資金流出が起こって、短期的に大きく下落するため、運用する際には注意が必要です。また、投資するファンドを選択する際、信託期限の有無も確認しましょう。
自動運転業界に投資する場合、このようなメリットや注意点を踏まえながら商品を選ぶようにしてみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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