投資用マンション売却の注意点は?失敗しない売却の手順・相場の調べ方も

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不動産投資を始める際には、出口戦略のひとつとして売却時の注意点もしっかりと心得ておきたいところです。長年、滞りなく経営しても、利益が確定する売却時に失敗をしてしまうと損をしてしまうこともあるためです。

そこで今回のコラムでは、投資用マンションの売却にスポットを当てていきます。失敗しないための手順や相場価格を調べる方法も紹介します。

目次

  1. 投資用マンションを売却するときの注意点
    1-1.査定価格は収益還元法を参考にする
    1-2.空室での売却はできるだけ避ける
    1-3.キャッシュフローからも売却時期を考える
    1-4.税金の仕組みを理解しておく
  2. 失敗しない投資用マンション売却の手順
  3. 投資用マンションの相場価格の調べ方
    3-1.成約事例情報サイトで調べる方法
    3-2.不動産ポータルサイトで調べる方法
  4. まとめ

1 投資用マンションを売却するときの注意点

通常の不動産の売却を経験したことがある人でも、投資用マンションとなるとまた少し違う知識が必要になります。注意点を紹介しますので、見ていきましょう。

1-1 査定価格は収益還元法を参考にする

不動産の売却をする際に販売価格の目安となるのが不動産会社が行う査定です。通常の不動産であれば、物件の状態や類似の取引事例などを加味して不動産会社が査定価格を算出します。

これらは「取引事例比較法」や「原価法」と言われる方法ですが、自分が住むための不動産ではない投資用物件の場合は違います。投資用物件には収益性があるため、先ほどの査定方法に加えて「収益還元法」という方法が用いられます。

収益還元法は、その投資用マンションが生み出す収益力に基づいて不動産の価格を求めていく方法です。求め方は、直接還元法とDCF法の2つあります。

  • 直接還元法:投資用マンションが生み出す1年間の収益を、還元利回りで割り戻して求める方法
  • DCF法:Discounted Cash Flowの略で、将来得られると予想できる収益から現在の価値を引いて求める査定価格

ここでは、初心者でも分かりやすい「直接還元法」の計算式を見て行きましょう。

年間家賃収入÷還元利回り×100=査定価格

還元利回りはキャップレートとも言われ、周辺エリアの類似物件の利回りを参考にして決めます。例えば、年間の家賃収入が240万円で、還元利回りが6%であれば、240万円÷6×100の計算式から、査定価格は4,000万円ということになります。

住居用の不動産とは違い、査定価格の算出には収益還元法を加えて行われます。不明や疑問に思ったことは不動産会社に説明を求めてみましょう。

1-2 空室での売却はできるだけ避ける

投資用マンションは、所有する部屋を貸す代わりに家賃収入を得ることで事業として成り立ちます。そのため入居者がいる投資用マンションを購入すると、買主は「利益がいくらあるか」や「投資したお金はいつ回収できるか」などが予測しやすいメリットがあります。

一方、空室の物件を購入すると、家賃収入を得るために新たに入居者を募集しなければいけません。購入後すぐに収入が得られないばかりではなく、入居者がいつ決まるのか確約もないため、買主候補者にしてみると空室の投資用マンションを購入するのに二の足を踏んでしまうこともあるのです。

また空室の投資用マンションは、部屋の中を確認してもらえるメリットもありますが、値引き交渉の理由にされやすいというデメリットもあります。売買を成立させるために価格を下げることにもなりますので、できるだけ満室状態にしてから売りに出すようにしましょう。

1-3 キャッシュフローからも売却時期を考える

事業用の不動産は住居用物件とは違って、手元に資金をどう残すか、を考えて売却するタイミングを選ぶこともできます。その基準のひとつがデッドクロスです。

不動産投資におけるデットクロスとは、主に「ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態」を指しています。

事業用の不動産を購入すると、その購入費用は減価償却として毎年経費に計上することができますが、減価償却ができるのは物件の法定耐用年数によって期間が決まっています。つまり減価償却期間が終わると、計上できる経費が減少してしまい、利益が増えることで税金も増えてしまうのです。

こうした知識がないと、手元に残るキャッシュが知らずに減っているということもあるのです。売却する際は、減価償却がいつ終わるのかも考えてみましょう。

1-4 税金の仕組みを理解しておく

不動産投資は税金との関わりが少なくありません。不動産を取得するには、不動産取得税、所有時には固定資産税などがかかります。また、不動産投資によって得られる所得が増えることで支払う税金も増えていきます。

こうした税金の仕組みを知らないと、気づかずに損をしていることもあります。特に売却の際に知っておきたいのは、短期譲渡所得税と長期譲渡所得税の適用期間です。

短期譲渡所得税と長期譲渡所得税

投資用マンションを売却する際に注意しておきたいのは、売却するときにかかる譲渡所得税です。この譲渡所得税は不動産を持っている期間によって、税率が変わってきます。

譲渡所得には、下記のように短期譲渡所得と長期譲渡所得の2つがあります。短期譲渡所得は所有していた期間が5年以下で、5年以上になると長期譲渡所得となり、下記のように税率が違います。

  • 短期譲渡所得税=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)
  • 長期譲渡所得税=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)

※参照:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

つまり所有して4年以内で売却するよりも、5年経過してから売却した方が譲渡所得税が減額することになります。投資用マンションを売却する場合、この5年のひとつの目安と検討してみると良いでしょう。

2 失敗しない投資用マンション売却の手順

投資用マンションを売却するときの流れは、通常の物件を売却するときとほとんど変わりません。ただし売却活動の際には不動産会社や購入希望者に入居状況やレントロール(家賃収入表)を提示する必要があります。また、売買が成立した後は賃貸借契約の引き継ぎを行い、入居者にはオーナーが変更した旨を通知します。

手順としては下記のように進んでいきます。

  1. 査定を依頼する
  2. 媒介契約を結ぶ
  3. 売却活動を始める
  4. 買主が見つかったら売買契約を結ぶ
  5. 物件を引き渡す

投資用マンションの売却を失敗しないためには、まずは売却活動をしてくれる不動産会社の選定を慎重に行うことです。そのためには複数の不動産会社に投資用マンションの査定をしてもらうことですが、不動産一括査定サイトを活用することで効率的に不動産会社を探すことができます。

下記の表には、代表的な不動産一括査定サイトをまとめています。不動産会社を選ぶ際に活用してください。

主な不動産一括査定サイト

サイト名 運営会社 特徴
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不動産会社から査定結果が返ってきたら、複数社を比較して仲介を依頼する不動産会社を選定しましょう。依頼先の不動産会社と媒介契約書を締結しますが、この契約には下記の3種類があります。

媒介契約の一覧

項目 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数の不動産会社への依頼 × ×
自分で見つけた買主との単独契約 ×
指定流通機構への登録義務
販売活動の報告義務
契約期間 規制は無し 3ヵ月以内 3ヵ月以内

一般媒介契約は複数の不動産会社と締結できるメリットの反面、不動産会社が競合してしまい積極的な売却活動が期待しづらいデメリットがあります。好立地で収益性が高いなど、不動産需要が多い時に検討しやすい契約形態と言えるでしょう。

一方、専任・専属専任媒介契約は1社の不動産会社としか締結することが出来なくなりますが、レインズへの登録義務や活動内容の報告義務などがあり、契約期間中の積極的な売却活動が期待できます。これらの違いを比較して、契約形態を選んでみましょう。

購入検討者が見つかったら、詳細な売買条件について交渉し、売買契約書を作成します。不動産会社が契約書の作成を行いますが、契約締結後の無条件破棄は原則できないため、不明点があれば遠慮なく相談するようにしましょう。

契約後は、契約書に記載されている不動産の引渡し日に決済を行い、不動産の所有権移転登記が行われます。

以上が、不動産売却の主な手順・流れとなります。不動産売却に失敗しないためには、売却のパートナーとなる不動産会社の選定が重要なポイントとなるため、複数社を比較し、慎重に選ぶようにして行きましょう。

3 投資用マンションの相場価格の調べ方

投資用マンションの売却を失敗しないためには、相場の価格をあらかじめ知っておくことも大切です。ご自分でも不動産の相場を調べる方法がありますので、この項目で紹介いたします。

3-1 成約事例情報サイトで調べる方法

不動産売買が成立した事例を詳細に載せている成約事例情報サイトから、類似物件の取引事例を見ることでおおよその相場を探ることができます。

成約事例情報サイトとして情報を代表的なのは、国土交通省から依頼を受けて運営している不動産流通機構の「 レインズマーケットインフォメーション」です。直近の一年間に成立した売買取引の販売価格や成約価格が掲載されています。

検索する際にエリアや沿線、駅、専有面積、築年数などの絞り込みができますので、売却を予定している投資用マンションに近い物件の成約事例を見ることができます。

また国土交通省が運営する「 土地総合情報システム」でも同様に不動産取引価格についての情報が検索できます。こちらはアンケートによる情報をまとめたサイトになります。この「土地総合情報システム」では地価公示も掲載していますので、土地の価格について調べたいときにも役に立ちます。

3-2 不動産ポータルサイトで調べる方法

「LIFULL HOME’S」「suumo」「athome」などの不動産ポータルサイトには、売り出し中の不動産情報が多数掲載されています。この不動産ポータルサイトでも絞り込み検索をすることで相場価格を知ることができます。

それぞれのサイトによって違いますが、「地域」「物件種別」「専有面積」「最寄り駅」「間取り」「築年数」などの条件をご自身の投資用マンションに合わせて検索することで、現在売り出されている物件が一覧で掲載されます。

この物件の価格を検討することによって、ご自身の投資用マンションがいくらで売れそうか、だいたいの価格を予想することができます。

ただしあくまでも表示されるのは販売価格で、実際に売買が成立した成約価格ではないので注意してください。

まとめ

今回のコラムでは、投資用マンションの売却に関わる注意点を紹介しました。

今すぐ売却する予定がなくても、売却の際に戸惑ったり、想定外のことが起きて慌てたりといったことがないように、適切な知識を蓄えておきましょう。

また売却時を見据えることは、投資用マンションを運営していくのにも役立ちます。明確な売却予定がない場合でも、定期的に不動産価格を調査しておくなどの対策をして行きましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。