2022年に始まった食品やサービス料金の値上げは、再値上げ、再々値上げを繰り返し、2023年10月時点においても継続中です。インフレによる原材料費や工費の高騰により物件価格が上昇するなど、不動産市場にも影響を与えています。
そこで今回のコラムでは、インフレがアパート経営に与える影響について解説し、資金調達に強いアパート会社も紹介します。
目次
- 2023年10月時点のインフレの状況
- インフレがアパート経営に与える影響
2-1.物件価格が上昇する
2-2.家賃を上げることができる
2-3.資産価値の下落が回避できる
2-4.退去や家賃滞納が増える可能性がある
2-5.ローン返済額の実質負担が軽くなる
2-5.金利が上昇する - 資金調達に強みがあるアパート会社
3-1.シノケンプロデュース
3-2.アイケンジャパン - まとめ
1 2023年10月時点のインフレの状況
2023年10月20日に総務省が公表した9月分の「消費者物価指数(2020年基準)」は、生鮮食品を除く総合指数が105.7、前年同月比が2.8%の上昇となり、物価上昇が続いていることがわかります。
項目 | 消費者物価指数(2000年を100として) | 前年同月比 |
---|---|---|
総合指数 | 106.2 | 3.0%の上昇 |
生鮮食品を除く総合指数 | 105.7 | 2.8%の上昇 |
生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数 | 105.4 | 4.2%の上昇 |
※引用:総務省「2020年基準消費者物価指数 全国2023年9月分」より抜粋
2022年通年の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が102.1となり、前年比2.3%の上昇となっています。通年で2.0%を超えるのは消費税率が上がった2014年を除くと、1992年以来となっており、31年ぶりの高い水準です。
2023年に入ってからも値上げラッシュは続いており、今後の予定も含めて2023年中の値上げは3万品目以上に上ると推測されています。日々の生活に大きな打撃を与えているこのようなインフレがアパート経営にどのような影響を与えるのか、次の項目から見ていきましょう。
2 インフレがアパート経営に与える影響
物価の上昇は不動産価格にも影響を及ぼしますが、アパート経営をしている場合、いい影響も悪い影響もさまざまにあります。ここでは以下の6つについて解説していきます。
2-1 物件価格が上昇する
2023年9月に国土交通省が発表した「不動産価格指数(2023年6月分)」は、下記のようになっています。
項目 | 不動産価格指数(2010年を100として) | 前月比 |
---|---|---|
住宅総合 | 136.1 | 1.7%の上昇 |
住宅地 | 115.6 | 4.0%の上昇 |
マンション | 191.4 | 1.0%の上昇 |
マンション・アパート(一棟) | 160.1 | 0.9%の上昇 |
※引用:国土交通省「不動産価格指数(2023年6月分)」より抜粋
インフレ時に物件価格が上昇するのは、建材やエネルギー料金、人件費などが高騰するからです。また、物価高で市場に出回るお金が増える一方、土地は限られているため土地価格も上昇することになります。
物件価格が上昇すると、経営者の状況によって下記のような影響が出てしまいます。
アパートを購入しようと考えている経営者
物件価格が上昇することで自己資金が不足し、想定通りの物件を購入することができなくなったり、借入額が増えることになります。
アパートをすでに所有している経営者
新築物件が高騰することで割安感のある中古物件の需要が増えることがあり、中古物件価格についても新築に追随する形で上昇していきます。これによって売却益(キャピタルゲイン)を得られる可能性が高まります。
ただし、中古物件の場合は不動産市場の状況によっても価格の変動があり、また金融機関の貸出態度も時勢によって大きくことなります。需要の少ない物件はインフレを起因とした価格の上昇が見込めないケースもあります。
2-2 家賃を上げることができる
家賃は自然に上がるものではなく、アパートオーナーが経済状況などを加味して設定する必要があります。そのため、すべてのアパートに言えることではありませんが、インフレ時には設定家賃の上昇につながることがあります。
消費者物価指数の項目の中には家賃も含まれており、「2020年基準消費者物価指数 全国2023年9月分」から家賃の数値を抜粋したのが下記の表です。
項目 | 指数 | 前年同月比 | 前月比 |
---|---|---|---|
家賃 | 100.3 | 0.1% | 0.0% |
※引用:総務省「2020年基準消費者物価指数 全国2023年9月分」より抜粋
2020年を100としており、指数では0.3ポイントの上昇、前年同月比では0.1%の上昇となっています。家賃設定は物価が上昇していることに合わせて上げていくため、「遅れて、ゆるやかに上昇する」という傾向があるのが特徴です。
家賃が上がるとオーナーの収入が増えることになり、手残りが多くなる、キャッシュフローが改善する、など経営にはプラス要因になります。
2-3 資産価値の下落が回避できる
物価が上がるということは、現金の価値が下がるということでもあります。例えば、これまで100円で買えていたものが、200円に上昇したとします。これは、その物品に対して現金の価値が半分になったことを意味しています。
アパートのような現物資産は経年劣化によって資産価値が目減りしていきますが、インフレによって現金の価値が下がると資産価値が上がる、もしくは資産価値が下がりにくくなります。そのため、インフレ時には所有しているアパートの資産価値の下落を回避しやすくなると考えられます。
2-4 退去や家賃滞納が増える可能性がある
インフレは物価が上昇することですが、「良いインフレ」と「悪いインフレ」の2つがあります。良いインフレはインフレによって好景気になることで、悪いインフレは不況になることです。それぞれ下記のような特徴があります。
良いインフレ
物価が上昇するメリットの一つは、ものやサービスの価格が上昇するため、企業の収益が上がることです。それに伴って従業員の給料も上がり、上がった分の給料で従業員がものやサービスを購入するようになります。つまり、ものがたくさん売れて企業の業績が上がり、従業員の給料が上がり、ものがたくさん売れるというサイクルが生まれて好景気になるのです。
悪いインフレ
反対に悪いインフレとは、ものやサービスの価格が上昇しても、商品の仕入れ価格も上昇しているため、企業の業績が良くならない状態になってしまうことです。そのため、従業員の給料も上がらないのに、食品や日用品の価格が値上がりしてしまうという状況になってしまいます。
つまり、悪いインフレの場合は家計が苦しくなってしまい、固定費である家賃を下げるために引っ越す人が増えることも想定されます。特に家賃設定が高いアパートでは空室が増えたり、家賃滞納が増える可能性もあり、アパート経営が逼迫してしまうことも考えられます。
2-5 ローン返済額の実質負担が軽くなる
アパート経営では物件を購入する際に多額の費用がかかるため、多くの場合、金融機関から融資を受けます。インフレになると借入金額は変わらないまま物件価格が上昇したり、設定家賃の上昇が見込めるため、ローン返済額の実質負担が軽くなります。
例えば、10年前にアパートを購入した際のローン残高が4,000万円残っているとします。10年前に比べて物価が2倍に上昇して実質的な現金の価値が半分になっていると、返済額自体は4,000万円で変わりませんが実質負担は2,000万円ということになります。
ローンの返済として月々20万円払っているとしても、インフレが起きていることによって10万円程度の価値しかないため、負担が軽く感じられるのです。
2-6 金利が上昇する
物価と金利には一定の範囲まで相関関係にあり、インフレは金利の上昇に、デフレは金利の低下につながります。インフレによって金利が上昇した場合、アパート経営に与える影響は下記のようになります。
ローン返済中の経営者
大幅なインフレが起きるとローン返済の負担感は軽くなりますが、金利が上昇するとローンの総返済額は増えることになります。金利上昇によりアパートのキャッシュフローが悪くなるといった事態に陥る可能性があります。
アパートを購入しようと考えている経営者
アパート経営では、入居者から受け取る賃料を原資にローン返済をしていくため、アパートを購入する際の融資が受けにくくなります。金利が高くなると総返済額が大きくなり、手残りが少なくなります。自己資金がそれほど多くない場合は、金融機関の審査に通りにくくなることもあります。
3 資金調達に強みがあるアパート会社
インフレ時には物件価格が上がって借入額が大きくなりやすかったり、金利が高くなりやすいことから、金融機関の融資審査にパスするのが難しくなる可能性があります。
アパート経営は区分マンションなどと比較して物件規模も大きく、多額の資金を必要とします。資金調達に強いアパート会社では提携金融機関を複数持ち、投資家の属性や物件のエリアに合わせた資金計画のアドバイスを受けることが可能です。
今回はインフレによって物件取得のハードルが高くなっている中、物件の事業性・担保性が高く、金融機関との関係も良好で融資実績の多い2社のアパート会社を紹介します。
3-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、土地の選定から企画、設計、施工、引き渡し後の賃貸管理まで一貫したサービスを提供するアパート会社です。一般投資家向け賃貸住宅経営のパイオニアとしても知られており、これまで供給したアパートは自社施工で7,000棟を超えています。全国賃貸住宅新聞の「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」において、自社開発物件部門での9年連続No.1を獲得しています。
5,000店舗以上(2024年5月時点)の仲介業者と提携し、良好な関係を築いているのも特徴の一つです。そのためグループ会社のシノケンファシリティーズの管理戸数は47,000戸以上(2023年12月末時点)、入居率98.56% (2023年年間平均入居率)と高い水準を維持しています。
高稼働を維持できるアパートを供給
シノケンプロデュースでは、「高稼働を維持できること」を目指してアパートを企画・開発しています。そのためのポイントは次の3つです。
1つ目は、通勤や通学がしやすいように、大都市圏のターミナル駅から電車で30分圏内、賃貸需要の豊富な最寄り駅から徒歩10分以内の立地にこだわって土地の取得を行っていることです。
2つ目は、2016年にグッドデザイン賞をダブル受賞したことでもわかるように、スタイリッシュかつ機能的なデザインです。専属デザイナーが土地の持つポテンシャルを最大限に生かしつつ、土地の形状や条件、建築のトレンドなどを加味して、デザインを施していきます。
3つ目は、快適性を向上させる住宅設備の導入です。一例を挙げると、独立洗面化粧台、サーモスタット付水栓、システムキッチン、カラーモニター付きインターフォンなどを標準にしているほか、オートロックや防犯カメラなどの防犯設備も多彩に用意しています。
多数の金融機関と提携
シノケングループは、新築アパート経営において日本で初めて独占提携ローンを提供したことでも知られており、資金調達に強いアパート会社です。それは、1990年の創業以来30年以上にわたり金融機関との取引実績を築いているからです。中には100%の融資が可能な金融機関もあります。
オーナーの属性によっては、金利1%台、RC物件と同程度の35年の返済期間などでの紹介実績もあります。
3-2 アイケンジャパン
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をコンセプトとして掲げているアパート会社です。「グランティック」「レガリスト」などのアパートブランドを全国に展開しており、2021年12月にはアパートの総数が1,000棟を突破しています。
2021年12月末時点で7,232戸の賃貸管理を行っており、2021年1月から12月までの平均入居率は99.7%となっています。フリーレントや家賃の値下げといったオーナーの負担が大きく、効果が一時的な対策を行わずに、このような高い入居率を維持しています。
新築時に提案した年間の想定家賃収入に対して、実際の家賃収入の割合を示す数値を同社では収益稼働率としており、自社で企画・開発した物件の収益稼働率は2022年12月末時点で98.3%となっています。
「堅実なアパート経営」の要は土地の選定
最寄り駅から徒歩15分以内など土地選定に関する独自の基準を設けており、クリアした土地以外は販売しない方針をとっています。これは土地選定を「アパート経営の要」としているからで、「老朽化しても入居者から選ばれるかどうか」を基準に、「入居者が入り続けるエリア」のみを厳選しています。
一方アパートのデザインは、シンプルかつ高級感のあるデザインが特徴的です。ワンランク上の住み心地と満足感を提供するために、アパートとは思えないような設備導入を追求しており、ビルトインキッチンや温水洗浄便座、浴室テレビなどが標準になっています。
物件への評価が高く、融資実績も豊富
アイケンジャパンは、供給する物件に対する金融機関からの評価が高く、融資の実績も豊富です。主な取引金融機関は下記となっています。
- 福岡銀行
- 西日本シティ銀行
- みずほ銀行
- 福岡中央銀行
- オリックス銀行
- 七十七銀行
- 十八親和銀行
メガバンクの一つであるみずほ銀行をはじめ、エリアに強い地方銀行とも取引があり、さまざまなタイプの金融機関に申し込みができる可能性があります。
まとめ
不動産はインフレ時は「資産価値が下がらない」「家賃が上げられる可能性がある」などのメリットの反面、「金利が上昇しやすい」「物件価格が高く取得しづらくなる」などのデメリットがそれぞれあります。
金利が上昇しやすい、融資が受けにくいといったケースでは、資金調達に強いアパート会社へ相談してみることも一つの方法です。
それぞれのアパート会社についてより詳しく知りたい場合は、資料を取り寄せたり、定期的に開催しているセミナーや個別相談会に参加することを検討されてみると良いでしょう。
倉岡 明広
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