北海道の不動産投資の特徴は?エリアごとの違いや積雪の対策、ランニングコストの目安も

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北海道には都道府県別で8番目に多い約510万人が住んでおり、「不動産投資が成功するのか興味がある」という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回のコラムでは、この北海道で行う不動産投資の特徴について取り上げていきます。エリアごとの特徴のほか、注意するべき点として雪対策や習慣の違いなどにも焦点を当てていきます。

目次

  1. 北海道の基本情報
    1-1.北海道の人口推移
    1-2.札幌市の人口推移
    1-3.札幌市の収益物件の表面利回り水準
  2. 北海道の不動産投資におけるエリア分け
  3. 北海道のエリアごとの特徴
    3-1.道央エリア
    3-2.道北エリア
    3-3.道南エリア
    3-4.道東エリア
  4. 北海道の不動産投資で注意するべきポイント
    4-1.礼金や更新料の習慣がない
    4-2.降雪・積雪・寒さ対策が不可欠
  5. まとめ

1 北海道の基本情報

北海道で不動産投資をする上で必要な基本情報を確認しましょう。この項目では、北海道と札幌市の人口、札幌市の表面利回りのデータを紹介します。

1-1 北海道の人口推移

賃貸需要に影響する人口の推移について見てみましょう。下記の表は、過去4年間の北海道の人口推移を表したものです。

集計年月日 人口総数 世帯数
2019年1月1日 5,304,413人 2,781,336世帯
2020年1月1日 5,267,762人 2,790,286世帯
2021年1月1日 5,228,732人 2,795,571世帯
2022年4月1日 5,163,605人 2,722,997世帯

※出典:北海道「住民基本台帳人口・世帯数」より抜粋。

2010年の国勢調査で5,506,419人だった北海道の人口は、最新のデータである2022年4月1日時点では5,163,605人となっています。12年間で約35万人の減少となっています。

また不動産投資で注目したい世帯数は、2019年1月1日の2,781,336世帯から2022年4月1日には2,722,997世帯に減少しています。

1-2 札幌市の人口推移

次に、北海道の約3分の1の人口が集まる札幌市を見ていきましょう。下記の表では、人口総数と世帯数が2000年から分かるようになっています。

集計年月日 人口総数 世帯数
2000年10月1日 1,822,368人 781,948世帯
2010年1月1日 1,913,545人 885,848世帯
2020年10月1日 1,973,395人 969,161世帯
2021年10月1日 1,973,331人 977,768世帯
2022年5月1日 1,973,495人 985,211世帯

※出典:札幌市「推計人口」より抜粋

幅は小さくなっていますが、札幌市では人口増加が続いています。また世帯数は1年間で10万世帯ほど増えており、100万世帯到達が近づいています。

1-3 札幌市の収益物件の表面利回り水準

下記の表は、不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )の「収益物件市場動向四半期レポート2022年1月〜3月」から、東京23区と札幌市を含む主要都市の区分マンション、一棟アパート、一棟マンションの表面利回りを抜粋したものです。

都市 区分マンション 一棟アパート 一棟マンション
東京23区 5.88% 6.46% 5.74%
札幌市 10.77% 9.43% 8.13%
仙台市 11.71% 10.09% 8.41%
名古屋市 7.24% 7.30% 7.90%
大阪市 6.63% 8.22% 8.28%
神戸市 9.35% 10.05% 7.96%
広島市 8.67% 10.16% 8.04%
福岡市 7.78% 7.09% 6.39%

札幌市の表面利回りは、区分マンションでは2番目、一棟アパートは4番目、一棟マンションは3番目に高くなっています。東京23区よりもすべての物件タイプで表面利回りが高く、投資効率が良さが伺えます。

ただし、表面利回りはランニングコストや入居率が考慮されておらず、必ずしも投資のパフォーマンスを反映した数値ではありません。不動産投資を検討する際は表面利回りを参考としつつも、その他の指標も含めて多角的な視点で検証することが大切です。

2 北海道の不動産投資におけるエリア分け

北海道には約150の市町村があり、大きく「道央エリア」「道南エリア」「道北エリア」「道東エリア」という4つに分けて考えることができます。

下記の表は、それぞれのエリアの特徴と主要な都市をまとめたものです。どのエリアに投資するのか検討する際に参考にしてください。

エリア 特徴 主要都市
道央エリア 札幌市を含む、行政や経済の中心地域。大学や専門学校も集積している。 札幌市、小樽市、石狩市、千歳市、恵庭市、苫小牧市など
道北エリア 北海道第2の都市である旭川市を含む。内陸気候で夏は暑く、冬は寒い。 旭川市、稚内市、名寄市など
道南エリア 北海道内では温暖な気候で、積雪はほとんどない。北海道新幹線の新函館北斗駅がある。 函館市、北斗市など
道東エリア 太平洋側に面しており、積雪があまりない地域だが、オホーツク海側の北見市などは積雪が多い。 帯広市、根室市、北見市など

北海道は、四方を海で囲まれていることと中央に山脈があるため、エリアによって気候や地理的特徴がまったく異なります。

また、道庁所在地である札幌市と他の中枢都市では都市の規模が違います。札幌市の人口は190万人ですが、道内2位の旭川市は32万人規模となっており、5倍ほどの違いがあります。そのため慎重なエリア選びが必要です。

3 北海道内のエリアごとの特徴

北海道が4つのエリアに分けられることを把握した上で、この項目ではそれぞれの特徴について紹介していきます。

3-1 道央エリア

札幌市を中心に、北海道の都市機能が集積したエリアです。北海道には、地域のキャンバスや通信制を含めて52校の大学がありますが、道央エリア内には6割以上の32校が点在しています。また石狩平野内に位置しており、西高東低の気圧配置になりやすい冬は降雪・積雪ともに多いのが気候における特徴です。

人口200万人に迫る札幌市で不動産投資を行う場合、学生やビジネスマンの単身者、ファミリーなどターゲット層は幅広くなります。また札幌市内のエリアによって給与水準が異なるのも特徴で、家賃水準の高い駅近くのマンションや、単身者向けのアパートなど、予算に応じた物件を選ぶことも可能です。

札幌市以外には、千歳市や恵庭市など賃貸用住宅に対する需要が多いエリアもあり、範囲を広げて探しやすいエリアと言えます。

3-2 道北エリア

北海道の北端に位置するエリアですが、富良野市など北海道の真ん中付近にある地域も含まれます。日本海側の空知管内は平野が広がっていますが、旭川市などは内陸気候です。そのため夏の暑さ、冬の寒さともに厳しいのが特徴です。

旭川市の天気に関して、気になるポイントを気象庁のデータから抜粋したのが下記です。

  • 平均気温…7.2度
  • 8月の最高気温…26.6度
  • 2月の最低気温…−11.8度
  • 年間降雪…557㎝
  • 最深積雪…89㎝
  • 雪日数…151.5日
  • 相対湿度…76%

※出典:気象庁「旭川 平年値(年・月ごとの値)主な要素

道北エリアで不動産投資をする場合、2022年6月1日時点で人口総数325,865人、世帯数178,069世帯の旭川市が選択肢に挙がりやすいエリアと言えますが、人口・世帯数ともに前月比で減少になっています。ただし、旭川駅前の再開発が進んでおり、商業施設とタワー型分譲マンション、17階建てのビジネスホテルなどが建設されています。賃貸需要が回復するか、注視したいところです。

3-3 道南エリア

北海道の南西部、主に渡島半島に位置するのが道南エリアです。西側は日本海、南側は津軽海峡、東側は太平洋と三方が海に接しており、建物を建てる際は潮風に対する注意が必要です。他の地域と比べて冬は暖かく、降雪も積雪も少ないのが特徴です。

中心となる函館市は、観光スポットの多い函館山麓の函館駅近辺と、住宅地が多い五稜郭近辺で景観の趣が異なります。歴史的な建造物が多いため、函館市内で建物を建てる場合は景観計画に則って建築する必要があります。(※参照:函館市「函館市景観計画」)

計画の構成は「誘導計画」と「保存計画」の2つに分かれ、さらに誘導計画は「まちなみ景観」「街路景観」「水辺景観」「地域外からの眺望景観」といったように詳細に分かれます。建物を建てる際は注意が必要です。

また2016年に開業した北海道新幹線は、札幌への延伸が2030年度に予定されており、2022年時点の終着駅である新函館北斗駅付近の開発がさらに進むことが期待されます。産業がどのように発展するかによって、北斗市内の賃貸需要に影響が出てくることになります。

3-4 道東エリア

北海道の北東部に位置するのが道東エリアです。代表的な都市には、帯広市や根室市、北見市などがあります。主な産業は農業や漁業で、観光スポットも多く観光業界も活発です。

不動産投資の視点から見れば、帯広市には道内企業の支店があることもあり、単身赴任者やファミリー層がターゲットになります。ただし賃貸需要に大きな変化が見られる要素は今のところはありません。

太平洋とオホーツク海に面しており、太平洋側の夏の平均気温は16〜17℃程度です。山脈の東側にあるため雪雲が発生しづらく、冬でも降雪、積雪ともに少ないのが特徴です。そのため別荘地となっている地域もあります。一方、オホーツク海側はフェーン現象によって夏は暑く、冬は寒い気候が特徴です。

4 北海道の不動産投資で注意するべきポイント

北海道で不動産投資をする場合、注意するべきポイントは2つあります。特徴として覚えておきましょう。

4-1 礼金や更新料の習慣がない

賃貸契約は全国すべて同じではなく、地域の特色が現れることもあります。その一つが礼金の習慣です。首都圏や京阪圏、東海圏などの国内主要都市圏では主流となっている礼金や更新料の習慣が、北海道ではほとんどありません。

そのため礼金や更新料を設定した場合は、似た条件を提示している競合物件に流れるケースがあります。収益のシミュレーションを行う場合は、礼金や更新料による収入が見込めないことを前提に行うようにしましょう。

4-2 降雪・積雪・寒さ対策が不可欠

「北海道の冬は雪が大変」というイメージを持っている人も多いでしょうが、これまで紹介してきた通り、エリアによって雪の多さは異なります。大まかに言うと、日本海側と道北エリアが多く、太平洋に面した道南エリアや道東エリアは降雪・積雪ともにほとんどありません。

そのため、函館市や室蘭市、帯広市あたりで不動産投資を始めるのであれば、それほど雪対策は必要ないでしょう。ただしそれ以外の地域では、雪対策は欠かせません。

下記が代表的な雪対策になります。

  • 暖房の設置
  • 室内の熱が逃げないように二重サッシ・二層窓を採用
  • 断熱性能を向上させる工法を採用
  • 建物内に雪や風を入れないための玄関フードを設置
  • 敷地内あるいは前面道路にロードヒーティングを設置
  • 土地を選ぶ際は前面道路に除雪車が入るか確認(札幌市の場合、幅員8m以上は市の除雪が入るなどルールがある)

北海道の住宅やアパートは雪対策が必須になるため、二重サッシ・二重窓、断熱工法、無落雪屋根などが基本になります。また玄関フードもほとんどの住宅についていますが、なくても玄関に雪が入らない構造にするなど工夫をしているケースが通常です。

このほか注意したいのは暖房機の設置です。入居者を確保するためにほとんどの賃貸用物件で設置されており、そのため初期費用がかかります。ただし、燃料会社などに設置してもらう方法もあります。機器を設置する代わりに、毎月の燃料を契約することで、物件オーナーの初期費用を増やさないことができるのです。

物件自体のコストについては、寒冷地用住宅の技術が北海道では進んでいるため、断熱工法や無落雪屋根、二重サッシ・二重窓、玄関フードなどは通常の価格に含まれており、他の地域で物件を建てる場合とそれほど変わりません。

ただし駐車場にロードヒーディングを設ける場合は、初期費用が50万円〜100万円前後になるケースがほとんどです。また電気や灯油などの燃料、広さによってランニングコストが変わりますが、月2〜10万円程度がめやすとなります。

まとめ

北海道で行う不動産投資について取り上げました。北海道はエリアが広い上に、市町村の数も多く、現地の情報が分からないと踏み出しにくい傾向があります。また習慣の違いもあり、戸惑うことも多くなる可能性があります。

北海道の不動産投資を検討する際は、各エリアごとの特徴を理解し、現地の賃貸需要に沿った不動産投資の戦略が必要です。また、積雪の対策などによってランニングコストを圧迫してしまうことも考慮したうえで検証していくことが大切です。

現地の情報について詳しくない場合や、その他のエリアと比較して検討していきたい場合は、北海道に拠点を持つアパート企画会社や不動産投資会社などへの相談も検討されてみると良いでしょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。