電気代の高騰が不動産投資に与える影響は?再生可能エネルギーの課題も

コロナ禍後の経済回復や、2022年に勃発したロシアのウクライナ侵攻などの影響による資源価格の上昇などにより、電気代の高騰が続いています。電気代の抑制に対する意識が高まり、住居選びにおいてもオール電化を敬遠したり、省エネや再生可能エネルギーの有無などを重視したりする人が増える可能性が想定されます。

今回の記事では電気代の高騰が不動産投資に与える影響や、再生可能エネルギーを賃貸経営に導入するうえでの課題について紹介します。

目次

  1. 2022年11月、全国の電力会社から電気料金の値上げ申請
  2. 電気代の高騰による不動産投資への影響
    2-1.共用設備の電気代高騰を通じた収支悪化
    2-2.オール電化物件の需要減少
    2-3.間接的には賃料への低下圧力をかける可能性も
    2-4.省エネ性能や再生可能エネルギーの性能の高い物件の評価向上
  3. 不動産投資に再生可能エネルギーを活用することへの課題
    3-1.投資収益を求める太陽光発電投資は設置コストがかかる
    3-2.売電価格が今後変動する可能性がある
    3-3.設置後のコストやリスクを念頭に置いておく必要がある
    3-4.ゼロスキームは収益性向上にはつながりにくい
  4. まとめ

1 2022年11月、全国の電力会社から電気料金の値上げ申請

エネルギー価格の高騰などを背景に、電気代の高騰が進んでいます。複数の大手電力が経済産業省に平均料金の値上げを申請していて、認可が進められています。

大手電力会社の経済産業省への値上げ申請の例(数字は値上げ幅)

  • 東京電力エナジーパートナーズ:29.31%
  • 北海道電力:34.87%
  • 東北電力:32.94%
  • 北陸電力:45.84%
  • 中国電力:31.33%
  • 四国電力:28.08%
  • 沖縄電力:43.81%

出所:経済産業省 資源エネルギー庁「電気料金について

電気代の高騰は、人々の日常生活だけでなく、不動産投資においてもさまざまな影響を及ぼします。足元の電気代の高騰により、電気代の節約を意識する人が増えたことをふまえると、電気代の高騰リスクを加味して物件選びや賃貸経営を進めるのが有効な不動産投資の手法の一つとなるでしょう。

2 電気代の高騰による不動産投資への影響

電気代の高騰は、不動産投資においてもさまざまな影響を及ぼしうる要因です。単純に収支の悪化要因となるほか、賃貸におけるトレンドへの影響や再生可能エネルギーに対するニーズの拡大にもつながるでしょう。

2-1 共用設備の電気代高騰を通じた収支悪化

不動産を一棟所有して運営している場合には、共用部分のコストを直接的・間接的に負担しなければなりません。電灯やエレベーターオートロックなどは電気を消費する設備なので、電気代の高騰は管理コストの増大につながります。

オーナーが直接物件を管理している場合や、電気代について発生したコストを直接負担する仕組みになっている場合は、電気代の高騰が直接月々の収支の悪化要因となります。

管理費が固定料金で、管理会社が直接的に負担している契約の場合は、短期的には影響がありません。しかし、電気代の高騰が継続してしまうと固定の管理費用の引き上げなどにつながるため、この場合もやはりコストが増大し、収支が悪化するリスクにつながります。

2-2 オール電化物件の需要減少

賃貸の中にはオール電化の物件と、ガスを使用する物件があります。ガスを使用する物件の中にも、調理器具はIHで湯沸かしなどがガス、調理器具もガスコンロで電気を使うのは電灯と空調のみ、といったように、物件により熱源はさまざまです。

オール電化は火を使うことによる火災リスクの低下や、ガス対比でコストが下がる場合があるなどのメリットがあります。そのため、オール電化の賃貸物件に好んで住む人も少なくありません。

しかし、オール電化物件は電気代が高騰すれば、電気を多用する分負担が大きく増大する可能性があります。電気代の高騰が長期化するようだと、オール電化を求める入居者が減る可能性も想定されます。

オール電化物件の建設・保有や自分が持つ賃貸物件のオール電化へのリフォームを検討している人は、慎重な判断が必要になります。

2-3 間接的には賃料への低下圧力をかける可能性も

電気料金が高騰しても賃金の上昇が見られない場合、これまでと全く同じ消費行動をしていると、家計の収支が悪化するリスクがあります。電気料金の高騰が長期にわたる場合は、家計の帳尻を合わせるために他の固定費を削る、という判断をする消費者は少なからず存在するでしょう。

人が生活するうえで、家賃をはじめとした住居費は固定費において大きな割合を占めるケースが少なくないため、家計を節約するときに、削減対象となる可能性が考えられます。

短期的に変化が起こるものではありませんが、安い家賃の物件が高い物件よりも入居者を獲得しやすくなり、次第に平均的な家賃に低下圧力がかかると想定されます。このような市場の変化も、不動産の投資家にとっては収支の減退要因となるでしょう。

2-4 省エネ性能や再生可能エネルギーの性能の高い物件の評価向上

省エネ性能の高い物件に入居することで、電気代の高騰による光熱費などの上昇を抑えることができます。断熱性能の高い物件、省エネ性能の高いエアコンや照明などを取り付けた物件の付加価値が高まることが想定されます。

また同時に、物件自体が電力を生み出す物件についても着目されるようになるでしょう。再生可能エネルギーの導入は三つの方法で不動産投資の収支改善に寄与する可能性があります。

一つは共用部分の電力を再生可能エネルギーで賄うことで、管理コストを改善できます。二つ目は、余剰電力を売電することで得られる売電収入により、収益を増やすことが可能です。

最後に、入居者に電気を供給することで「電気代込み」の物件とすることで賃料を加算することもできます。この3つの手法の中から、最も付加価値が高くなる方法を取ることが大切です。

ESG意識への向上により太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーの発電設備を持つ物件も増えています。電気代の高騰を通じて、省エネ・再生可能エネルギーつきの物件への注目が高まり、入居需要も拡大すると期待されます。

電気代高騰に伴う収支悪化リスクを抑制するために再生可能エネルギーを取り付けて物件の付加価値を高めるのは、有効な対策の一つとなるでしょう。

3 不動産投資に再生可能エネルギーを活用することへの課題

電気代高騰に対して有効な対策となる再生可能エネルギー設備の設置があります。一棟投資を行うオーナーの中には、再生可能エネルギーを活用し始めている人、活用を考えている人が少なからず存在します。

しかし、再生可能エネルギーを活用した不動産投資にはいくつか注意すべき課題があり、それらの課題を踏まえても導入すべきか慎重に検討することが大切です。

3-1 投資収益を求める太陽光発電投資は設置コストがかかる

太陽光発電による電力を売電したり、電気代を抑える目的で共用部や入居者が使用したりするためには、自ら太陽光発電を設置する必要があります。この場合、多額の設置費用がかかるのがネックとなるでしょう。

経済産業省 資源エネルギー庁「太陽光発電について2021年12月」によると、事業用の太陽光発電のシステム全体の設置費用は2021年で20〜30万円/kw程度でした。アパートやマンションの屋上に設置できるパネルの容量はケースバイケースですが、10kw程度の容量を設置できるケースは少なくありません。その場合は太陽光発電の設置コストは200〜300万円かかる計算になります。

3-2 売電価格が今後変動する可能性がある

太陽光発電の売電価格は10kwを超える規模の場合はFIT価格が適用されて20年間価格が固定されますが、その後は価格は変動するようになります。また、規模がそれより小さい場合は余剰電力の売電スキームとなり、こちらは価格が変動します。

経済産業省は2021年時点で11円(10kw~50kw未満)であった売電価格を2025年には7円まで下げる計画を掲げています。今後売電価格が低下すれば、収益性が低下する懸念もあります。

太陽光発電による付加価値を売電を通じて享受しようと考えている人は、今後の売電価格の変動が収益性に影響を与えるリスクについて留意が必要です。

3-3 設置後のコストやリスクを念頭に置いておく必要がある

太陽光発電は一度設置したのちも、継続的にメンテナンスコストや、修繕コストが発生します。こうしたコストを念頭に置いて太陽光発電の運用計画を立てなければ、期待通りの効果を得るのは難しいでしょう。

また、太陽光発電の災害リスクにも注意が必要です。不動産投資と太陽光発電を組み合わせる場合は屋根に設置するケースが多いと考えられますが、台風や降雪などにより重大な損害をうけ、最悪太陽光パネルが全損して交換などが必要となるリスクもあります。

保険に加入するなどして、こうした重大なリスクへ備えるのが望ましいと言えますが、そのためにも追加的なコストがかかることをおさえておく必要があります。

3-4 ゼロスキームは収益性向上にはつながりにくい

最近は初期費用ゼロで太陽光発電を利用できる「ゼロスキーム」が普及しつつあります。今後新築における太陽光発電が義務化される東京都などでは、初期費用をかけずに太陽光発電を普及させる手法として事業拡大を推進しています。

この手法を使用すれば、コストをかけずに太陽光発電を設置・利用できるわけですが、投資目的で設置する場合には注意が必要です。なぜなら、このスキームは当初の一定期間、太陽光発電の設置業者から発電した電力を購入する仕組みとなるため、少なくとも当面はオーナーが売電収入を得られるわけではありません。

一定期間が経過するとオーナーが発電した電力を自由に使ったり、売電したりできる仕組みになっているケースが多く見られますが、そのような状態になるのは10年以上先となっている契約がしばしば見られます。

太陽光発電のゼロスキームを利用すると、少なくとも売電収入などによる収益の拡大効果は見込めない点に注意が必要です。導入を検討する時は通常の電気代と、業者に支払う太陽光発電による電力使用料のどちらが割安かを精査しなければなりません。

太陽光発電業者の電力使用料の方が安いならば、コスト抑制の面からは導入の検討余地があります。そのときには、共用設備にのみ使用するのか、入居者にも使ってもらうのか検討が必要です。

入居者も太陽光発電の電力を使用する仕組みにできれば、入居者も電気代が割安になるので金銭的なベネフィットがありますが、太陽光発電事業者が入居者への売電に応じるかは確認する必要があるでしょう。

これが認められず、共用設備だけに太陽光発電を使用するとなると、物件のサイズに対して太陽光発電による消費電力が相対的に小さくなります。共用設備の規模が大きな物件でなければ、電力を持て余してしまう可能性が高くなるでしょう。

まとめ

2023年3月時点、電気代の高騰は不動産オーナーに対しても大きな影響があります。直接的には共用設備の管理コスト増大がありますが、長期的には家計の圧迫を通じて賃料へ低下圧力をもたらす可能性もあります。

太陽光発電の導入は、このような状況に対する有効な対策の一つといえますが、自分で設置する場合は初期費用が高く、メンテナンスコストや被災リスクなどもあります。それらのコストやリスクを加味しても設置する合理性があるかどうかの慎重な判断が必要になるでしょう。

また、近年普及しつつある初期費用ゼロのスキームについては、少なくとも当面は売電収入がオーナーに入るものではありません。導入の是非を考えるうえでは、通常の電気代とどちらが安いか精査することが大切です。

環境に優しい、電気代の節約になるからといって安易に太陽光発電を設置しても、期待した効果が得られなかったり、かえってコスト増になったりする恐れもあります。費用対効果を冷静に分析して、導入是非の精査や設置スキームの検討を行っていきましょう。

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伊藤 圭佑

伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。