市街化調整区域の不動産を売る方法は?3つの対策とコツを紹介

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計画的に都市を整備するために、土地にはそれぞれの区域に合わせて規制が設けられています。中でも市街化調整区域には新しく建物が建てられないなどの規制があり、不動産市場では売買が成立しづらい傾向があります。

そこで今回のコラムでは、市街化調整区域内の不動産を売却しやすくするための3つの対策と、3つのコツを紹介します。

目次

  1. 市街化調整区域とは?
  2. 市街化調整区域内の不動産を売却しやすくするための3つの対策法
    2-1.自治体の区域指定か確認する
    2-2.線引き時期を確認する
    2-3.土地の地目を確認する
  3. 市街化調整区域内の不動産を売却するための3つのコツ
    3-1.開発許可が得られるか確認しておく
    3-2.売却先のターゲットを絞る
    3-3.経験のある不動産会社に売却を依頼する
  4. まとめ

1 市街化調整区域とは?

土地は都市計画法によって区域が定められており、さまざまな規制が設けられています。持ち主が好きなように建物を建てることができると、統一性のない乱雑な都市になってしまう可能性があるからです。

都市計画法によって設けられているのは、まずは「都市計画区域」「準都市計画区域」「準都市計画区域外」の3つです。それぞれの概要は下記になります。

区域 概要
都市計画区域 人の動きや地形、都市の発展を見通して一体の都市として捉える必要がある区域
準都市計画区域 用途地域・風致地区といったように、土地の使われ方を定めた区域。
準都市計画区域外 上記以外の土地の区域

さらに、都市計画区域は「市街化区域」「市街化調整区域」、さらにどちらにも含まれない「非線引き区域」に分けられます。

市街化区域

積極的に住宅や店舗を建てる地域で、おおむね10年以内に市街化を図る地域のことです。第一種住居地域や工業地域などの用途区域を必ず定めることになっています。

市街化調整区域

田園地帯や自然が多いエリアで、自然環境を保つことを目的に原則として新しく建物を建てることは認められていません。

非線引き区域

市街化されるかはっきり方向性が定まっておらず、比較的に規制が少ない区域となります。

この三つの区域のうち、市街化調整区域は建物が建てられないという規制が設けられているため、売却に時間がかかる、なかなか売れないという事態が起きやすいのです。そこで次の項目では、市街化調整区域内の不動産を売りやすくするための対策を見ていきましょう。

2 市街化調整区域内の不動産を売却しやすくするための3つの対策法

市街化調整区域には規制が設けられていますが、すべての不動産が同じ条件ではなく、規制外になっているケースもあります。市街化調整区域内の不動産でも売却しやすくなりますので、確認していきましょう。

2-1 自治体の区域指定か確認する

区域指定は、2000年に都市計画法が改正された際に導入された制度です。自治体が指定した区域内の土地であれば、市街化調整区域内でも建物の開発が認められることがあります。

自治体の許可を得る必要がありますが、建物が建てられるのであれば市街化調整区域内の不動産が売れにくいという要因がひとつなくなることになります。ただし区域指定されるには、下記のような条件に当てはまっている必要があります。

  • 市街化区域に隣接している
  • 上下水道が配置されている
  • 住宅が密集している、など

これらは一例で、それぞれの自治体で条件を設けています。各自治体のホームページに「区域指定制度の概要」といったページがあり、そちらに内容が記載されていますので、ご自身の所有する不動産がある自治体のホームページを確認してください。もし見つけられなければ、各自治体の都市計画課に問い合わせをしてみましょう。

2-2 線引き時期を確認する

市街化調整区域は自治体の都合で指定されているため、市街化調整区域が指定される時期によっても、売却のしやすさが異なります。例えば、元々持っていた所有者の権利を自治体の都合で制限することはできないため、市街化調整区域に指定される前から所有していた不動産であれば規制されないケースがあります。

市街化調整区域に指定された時期を調べるには以下の方法があります。

  • 公課証明書を取得する
  • 都市計画課など自治体の管轄部署に問い合わせる
  • 固定資産税課税台帳を確認する、など

市街化調整区域に指定された年月を調べるのは労力と時間がかかりますが、条件が合えば売却しやすくなりますので、確認してみましょう。

2-3 土地の地目を確認する

土地には、不動産登記法に定められた地目と呼ばれる土地の用途があります。「宅地」「田」「畑」「山林」「雑種地」などを含めて、その区分は23種類あります。

この地目が「宅地」であれば、許可を得ることは必要になりますが、住宅が建てられる可能性があるため売却する際のハードルは下がります。ただしこのケースも、市街化調整区域に指定される前から「宅地」であることが条件になります。

このほか地目が「田」や「畑」の場合は、農地法の定めによって農家や農業従事者にのみ売却でき、さらに地目を転用して売却する方法もあります。下記の関連記事にて詳しく解説しているので、あわせてご参考ください。

【関連記事】農地を売却する方法は?売却の手順と注意点、不動産会社の探し方を解説

3 市街化調整区域内の不動産を売却するための3つのコツ

前述したように、土地の地目や市街化調整区域に指定された年月によっても売却のしやすさが異なります。これらを確認した上で、売却するためのコツを3つ紹介しましょう。

3-1 開発許可が得られるか確認しておく

市街化調整区域内では建物を建てることは原則として認められていません。しかしあくまでも原則で、市街化を促進する恐れがないものについては一部認められています。

これは都市計画法第三章「都市計画制限等」の第29条から第51条までに「開発行為等の規制」として定められていますが、中でも第34条では開発許可について下記のように記されています。

前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為(主として第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く。)については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。

都市計画法第34条は第1号から第14号まで細かく定められており、条件が揃えば下記のような建物を建てることができます。

都市計画法第34条 概要 建てられる建物の一例
1号 周辺に住んでいる居住者の日常生活に必要な店舗や事業所、社会福祉施設、医療施設、学校など公益上必要と思われる建築物 小規模な店舗、病院など
4号 農林水産物を処理・貯蔵・加工するために必要な建築物 農産物の集出荷場、倉庫など
6号 中小企業の事業共同化、または集積化に寄与するための建築物 工場、倉庫など
8号 危険物の貯蔵または処理のための建築物で、市街化区域内で建築が難しい場合 火薬庫、ガソリンスタンドなど

上記の表は都市計画法第34条の一部抜粋です。詳細は、e-Gov法令検索「都市計画法」でも確認してみましょう。

市街化調整区域の開発許可基準はそれぞれの自治体によって異なりますが、例えば倉庫などが建てられる区域であれば、倉庫が必要な事業者に売却することができます。どのような開発ができるのかをあらかじめ確認しておくことで売却の選択肢を増やすことにつながるため、調査してみましょう。

3-2 売却先のターゲットを絞る

不動産市場で買主を見つられないことが予想される場合、ターゲットを絞って買主を探す方法もあります。

例えば、地目が「農地」の場合は、農家や農業従事者に売却できるため、近隣の農家などに声をかけるという方法です。市街化調整区域内は「農産物の加工場」に対して開発許可が降りる可能性がありますので、事業を拡大する意向のある農業生産法人なども売却先の候補となります。

また資材置き場や工場、大型車の駐車場などとして活用するために、市街化調整区域内の土地を探している事業者もいます。通常の土地よりも価格が低くなる傾向があるためです。所有する不動産の近くにそうした事業を行っている会社があれば、アプローチしてみるのもいいでしょう。

3-3 経験のある不動産会社に売却を依頼する

前述したように市街化調整区域内の不動産には、いろいろな規制があるため売却には時間がかかるものです。しかし、不動産会社によっては市街化調整区域内の不動産を売却した実績を積み重ねているところもあります。

市街化調整区域の不動産売却の実績を持つ不動産会社は多くありませんが、できるだけ多くの不動産会社へアプローチをすることで、見つけられる可能性が高まります。

そこで、不動産一括査定サイトの利用を検討してみましょう。不動産一括査定サイトは無料で利用することができ、サイトに提携している不動産会社へ効率的に査定依頼をすることが可能です。

不動産情報や売主の情報を入力する際、備考欄に市街化調整区域であることを記載しておき、対応可能な不動産会社から返信があるよう工夫をしてみることも有効です。下記の表では、代表的な5つの不動産査定一括サービスをまとめています。ぜひ参考にしてください。

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サイト名 運営会社 特徴
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

まとめ

市街化調整区域内の不動産は、原則として新しく建物が建てられないなどの条件があり、売却先を探すのは難しいことが想定されます。しかし、開発許可が得られるかどうか確認したり、土地の地目に合わせてターゲットを絞ったりすることで、売却先を見つけることは可能です。

今回のコラムでは、市街化調整区域内の不動産を売却しやすくするための3つの対策と3つのコツを紹介しました。市街化調整区域の不動産売却を検討している方の参考となれば幸いです。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。