フランスの資産運用大手アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)は、アクサリサーチファンドと共同で「アクサIMクライメート・トランジション・アワード」を創設した。地球温暖化に対する取り組みでクライメート・トランジション(気候変動対策としての低炭素社会への移行)を促進し、「ネットゼロ」実現に向けた変革を起こす科学研究を表彰する。受賞者には研究によってもたらされ得る変革的な影響を評価し、10万ユーロ(約1300万円)の賞金を授与する。応募締め切りは10月6日。
今年8月、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が最新の報告書を公表、人類が及ぼす温暖化への影響と気候変動対策の緊急性に関して深刻な警鐘を鳴らした。「機関投資家、資産運用会社、その他多くの関係者はクライメート・トランジションを推進することはできるが、科学界からの多大なサポートなしでは『ネットゼロ』を2050年までに実現することは困難。また、科学は様々なクライメート・トランジションへのシナリオを提示し続けているが、重要な分野への取り組みはいまだ不十分」と、アクサIMはIPCCの報告書と現状の乖離を指摘する。
アワードの創設は、気候変動への取り組みの加速化が主眼。応募にあたっては、博士号取得後8年目から12年目までの研究者を対象としクライメート・トランジションの分野で「斬新かつ先駆的でインパクトを与えることができる」(同社)研究内容が対象となる。具体的な分野は①2050 年までに「ネットゼロ」を達成するための「ミティゲーション」に関する先進的な解決策と手法 ②「ミティゲーション」あるいは「アダプテーション」によるクライメート・トランジションにおいて重要な「自然を基盤とした解決策」。優れた効果や他の解決策との整合性③二酸化炭素などの汚染物質の削減における限界の見極めや進捗状況の評価という観点から、気候変動問題にとって重要な「測定とトラッキング」。例えば、二酸化炭素(およびその他温暖化ガス)削減のための金銭的・経済的なインセンティブとなるカーボン・プライシングやその他代替的な手法、または、温室効果ガス排出量削減や二酸化炭素除去に関する測定方法など④二酸化炭素以外での温暖化防止につながる「短寿命気候汚染物質」の削減。
ミティゲーションは、温室効果ガスの排出量を削減し、気温上昇効果のレベルを安定させること、アダプテーションは、すでに進行中の気候変動に適応することをそれぞれ意味する。
アクサリサーチチファンドは2008年設立。人々の生活を取り巻くリスクに関わる科学分野での研究を支援し、官民両部門における科学的根拠に基づく決定を広めるため社会貢献活動を行っている。これまでに健康、気候・環境、社会経済の分野で665以上の研究に対して、総額2億5000万ユーロを拠出している。
【関連サイト】アクサIMクライメート・トランジション・アワード 応募申請ページ
【関連サイト】アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社

HEDGE GUIDE編集部 ESG投資チーム

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