アパート経営において、物件の立地選びは重要なポイントの一つです。首都圏や関西圏は、どちらも人口規模・経済規模が大きな大都市圏であるため、アパート経営がしやすい地域の一つといえます。
今回の記事では、さまざまな市況・統計データから首都圏・関西圏それぞれのアパート経営の魅力を紹介します。後半では、さらに細かい地域・立地選びのポイントもまとめました。
これからアパート経営を始めようと計画している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 首都圏・関西圏のアパート市況をおさらい
1-1.首都圏・関西圏の入居率推移
1-2.賃料の推移
1-3.物件価格と利回りも要チェック - アパート経営は首都圏と関西圏どちらがおすすめ?4つの視点
2-1.物件価格を抑えるなら関西圏
2-2.2-2 過去の利回り実績では関西圏の方が収益を得やすい環境
2-3.潤沢なインカムゲインを求めるなら首都圏を選ぶ考え方も
2-4.将来性に着目すると首都圏のメリットが大きい - アパート経営の立地選びのポイント
3-1.利便性の高い沿線・最寄り駅
3-2.最寄り駅までの距離
3-3.周辺環境も見ておく
3-4.災害リスクへの適切な対処を - 首都圏・関西圏のアパート経営に強い不動産会社
4-1 シノケンプロデュース
4-2 アイケンジャパン - まとめ
1 首都圏・関西圏のアパート市況をおさらい
首都圏・関西圏は日本を代表する都市部で、アパートを検討する際には両地域を比較検討する方も少なくありません。アパート経営の地域を決めるうえでは、双方の地域の空室率や賃料、不動産市況などを見ておく必要があります。それぞれの市況推移について見ていきましょう。
1-1 首都圏・関西圏の入居率推移
入居率の推移は、日本賃貸住宅管理協会が定期的に集計しています。こちらのデータに基づくと、以下の通りです。
首都圏・関西圏の入居率の推移
※出所:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「市場データ(日管協短観)」2020年度以前は下期のデータを使用。
上記のデータをもとに平均を取ると、首都圏が93.4%、関西圏は93.7%となります。年により若干の差はあるものの、入居率では大きな優劣の差はないと考えて良いでしょう。
1-2 賃料の推移
続いて、首都圏と関西圏の賃料の推移ですが、全国賃貸管理ビジネス協会にて都道府県別の賃料推移を集計しています。首都圏の例として東京都、関西圏の例として大阪府の賃料推移をまとめると次の通りです。
首都圏・関西圏の平均賃料の推移
2012年度~2022年度。すべての間取りの賃料を集計した「総平均賃料」の水準
※出所:日本賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」
賃料は東京の方が一貫して高水準です。東京の家賃を基準とすると、上記の期間で首都圏と関西圏には15%~23%程度の家賃較差があります。
一方で、推移を見ると、東京は2012年→2023年でわずかに下落していますが、大阪は緩やかな右肩上がりです。東京の方が潤沢な賃料収入が期待できる一方で、大阪の方が長期的にみて賃料の底上げが期待できます。
1-3 物件価格と利回りも要チェック
アパート経営では物件価格や利回りもチェックしておく必要があります。不動産投資と収益物件の情報サイト健美家(けんびや)の「収益物件 市場動向年間レポート2022年」によると、2022年のアパート一棟の平均価格は、首都圏が7,907万円で関西圏が6,380万円です。
首都圏の価格を基準とすると、関西圏は約20%低い計算となります。こちらでは利回りも集計していて首都圏が平均7.90%、関西圏が8.85%です。賃料収入では東京の方が高水準でしたが、その分物件価格も首都圏が高いため、価格に対する収益率でみると関西圏の方が高いという結果となっています。
2 アパート経営は首都圏と関西圏どちらがおすすめ?4つの視点
関西圏・首都圏を選ぶ場合、どちらが適しているかは投資家のスタンスにもよります。ここからは、アパート経営に適した地域を選ぶ際の着眼点について4つ紹介します。
2-1 物件価格を抑えるなら関西圏
物件価格を抑える必要があるのであれば、関西圏を中心に検討するのが一つの考え方です。基本的に、物件価格は関西圏の方が抑制できる傾向にあります。
物件価格が低ければ、自己資金や借入額を抑えることが可能です。借入限度額は投資家の属性や既存の借入状況に依存するため、借入が少なく済めば審査ハードルも下がります。自己資金を抑えたい、多額の借入を避けたいという方も、関西圏での購入を検討するのが一案です。
2-2 過去の利回り実績では関西圏の方が収益を得やすい環境
過去の実績からリターンに着目すると、関西圏の方が収益を得やすい環境であったと考えることも可能です。足元の利回りは関西圏が首都圏より高くなっており、物件取得に要した費用対比では、より多くの収益が期待できることを意味します。
また、賃貸経営における主要なリスクの一つである空室率(100%-入居率で計算)でみると首都圏・関西圏では明確な差はありません。賃料については大阪の方が緩やかに上昇しているため、経営していく中で賃料収入が増える可能性もあります。
しかし、投資においては利回りとリスクは緩やかに比例する傾向にあり「利回りが高ければ価格変動や損失リスクも高い」と言えます。実際、関西圏よりも多くの人が首都圏のアパートを求めることによって物件価格が高くなり、利回りの低下につながっているのです。
関西圏が首都圏に比べて利回りがやや高くなっている一つの要因として、人口動態の影響が考えられます。こちらについては、「2-4 将来性に着目すると首都圏のメリットが大きい」で詳述します。
2-3 潤沢なインカムゲインを求めるなら首都圏を選ぶ考え方も
首都圏の物件は、賃料の絶対額でみると関西圏より魅力的です。購入後の潤沢な賃料収入を重視する方は、首都圏の物件を選ぶというのも一つの考え方といえます。
2022年末で東京都と大阪府ではおよそ1.2万円の賃料較差がありました。年間では約14.4万円、20年間おなじ格差が維持される前提に立つと、20年間では約285.4万円もの差が付きます。現金収入に着目してアパート経営を検討する方も少なくありませんが、その場合は首都圏の物件を選ぶのが有効な場合もあります。
2-4 将来性に着目すると首都圏のメリットが大きい
売却時を見据えて各地域の将来性に着目して、首都圏を選択する考え方もあります。日本は少子高齢化が進行するなかで、全体としては人口減少傾向になる見込みです。
外国人の流入増などがポジティブに働く可能性もあるものの、基本的には人口減少=賃貸需要の減退リスクに直結します。このリスクに対処するためには、長期にわたり人口が減りにくく、他地域からの流入を見込みやすい地域を選択するのが一つの考え方です。
東京都・大阪府の転入超過数推移
出所:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 結果の概要」
近年の転入超過(転入者と転出者の差)を見ると、コロナ禍の影響が最も大きかった都市部への流入数が激減した2021年を除いて、東京都の方が転入者数が多くなっています。
転入超過が多い方が、それだけ新たな賃貸需要も期待できるため、アパート経営を行ううえでは追い風要因です。
2022年の東京都はコロナの影響が残っており、2019年以前並みの転入超過数は回復できていません。それでも、都道府県別の転入超過数は東京都が最大です。こうしたデータから、長期的な視点で賃貸需要が期待できると考えるなら、首都圏でアパート経営を始めるのが有効な選択肢となります。
3 アパート経営の立地選びのポイント
ここまでは首都圏・関西圏という大きな地域で比べてきましたが、それぞれの地域内でも具体的なエリアによって経営の難易度は大きく変わってきます。ここからは、更に細かい立地を選ぶときの検討ポイントについて紹介します。首都圏・関西圏で大まかな優先順位をつけた後に参考にしてみてください。
3-1 利便性の高い沿線・最寄り駅
首都圏や関西圏のような都市部では、最寄り駅の沿線の付加価値で地価や賃料水準、賃貸需要の将来性などが大きく変わります。各都市圏のターミナル駅に一本で通えて、なおかつ乗車時間が短く、本数も多い便利な駅の方が価値が高まります。
ターミナル駅とは、東京で東京・池袋・新宿・渋谷・品川クラスのオフィス拠点が形成されている駅です。関西の場合は大阪(梅田)・新大阪となります。都心部は高層マンションが増えてアパートが少ないため、首都圏なら単身者向けのケースで乗車時間30分圏内が一つの目安です。大阪の方が都市圏が小さいことを踏まえると、もう少し近接した地域を狙いたいところです。
3-2 最寄り駅までの距離
最寄り駅までの距離は、近い方が賃貸需要の観点からは優位です。一方で、近いほど物件価格は高くなるため、リスクと収益性の両面を比較検討しましょう。
単身者向けアパートの場合で、最寄り駅の利便性が高いことを前提とすると、徒歩10分圏内で探したいところです。より駅に近い物件があればそれに越したことはありません。
たとえ、首都圏のように全体で見れば流入が見込まれる地域でも、不便な地域は局所的に人口減少や賃貸需要の減退が進む恐れがあります。駅までの距離は利便性の重要な要件の一つなので、通勤・通学に便利な立地の物件の購入を検討しましょう。
3-3 周辺環境も見ておく
商業施設・公共施設など、駅以外の利便性も見ておきましょう。首都圏・関西圏で、駅の利便性も高ければ極端に差が付く要素ではないものの、やはり利便性の高い物件の方が空室が出にくく、また空室が発生しても埋まりやすいと期待されます。
普段使いするコンビニ、スーパー、飲食店などの商業施設を見ておきましょう。また、病院、役所など公共施設との距離も確認してください。
騒音や治安の悪さが、入居者集めの障害になる恐れもあります。周辺環境については、かならず購入前に自分で下見をして、住みやすい環境であることを確かめて購入を進めましょう。
3-4 災害リスクへの適切な対処を
それぞれの災害リスクについても確認し、物件選びを進めましょう。想定される災害リスクについては、対策を立ててください。首都圏と関西圏で利便性の高い地域は、実は災害リスクが高い地域も少なくありません。
低地や窪地が多く河川が流れているため、一定の水害リスクが懸念されます。沿岸部では津波のリスクを無視できない場所もあります。自治体のハザードマップなどをチェックして、特に初心者の方であれば、極端に災害リスクが高い地域は避けることが大切です。
また、災害リスクを完全に避けるのは困難なので、水害まで保障範囲に含まれる火災保険や地震保険などで災害リスクに備えてください。どうしても不安な方は、災害から復旧するための修繕期間の家賃を補填する、家賃収入特約を利用するのも一案です。
4 首都圏・関西圏のアパート経営に強い不動産会社
首都圏・関西圏のアパート経営を比較検討する際は、どちらのエリアでもアパート経営の実績が豊富な不動産会社から情報収集を行うのも有効な手段です。ここでは、首都圏・関西圏のアパート経営に強みがある不動産会社を2社ご紹介します。
4-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、一般投資家向け賃貸住宅経営のパイオニアとして知られているアパート会社です。
「シノケングループ」の100%子会社で、東京都港区の本社ほか、福岡市、名古屋市、大阪市、仙台市にオフィスを展開しています。土地の選定から企画、設計、施工、引き渡し後の賃貸管理まで一貫したサービスを提供しており、創業以来30年以上の間に供給したアパートは自社施工で7,000棟を超えています。その他、「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」(全国賃貸住宅新聞)では、自社開発物件部門でのNo.1を2015年度から2022年度の8年連続で獲得しています。
グループ会社のシノケンファシリティーズの管理戸数は47,000戸以上(2023年12月末時点)、入居率98.56% (2023年年間平均入居率)と高い水準を維持しています。これは5,000店舗以上(2024年5月時点)の仲介業者と提携し、良好な関係を築いていることも要因の一つです。
高稼働を維持できるアパートを供給
シノケンプロデュースでは、「高稼働を維持できること」を目指し、次の3つポイントでアパートを企画・開発しています。
通勤や通学がしやすいように、土地の取得は大都市圏のターミナル駅から電車で30分圏内、賃貸需要の豊富な最寄り駅から徒歩10分以内の立地にこだわって行っています。また、土地の形状や条件、建築のトレンドを生かしつつ、専属デザイナーがスタイリッシュかつ機能的なデザインを施していきます。2016年にはグッドデザイン賞をダブル受賞している実績もあります。
最後は、独立洗面化粧台、サーモスタット付水栓、システムキッチン、カラーモニター付きインターフォンなど快適性を向上させる住宅設備の標準化です。また、オートロックや防犯カメラなどの防犯設備も多彩に用意しています。
多数の金融機関と提携
シノケングループは、1990年の創業以来30年以上にわたり金融機関との取引実績を築いており、日本で初めて新築アパート経営において独占提携ローンを提供しています。
オーナーの属性によっては、金利1%台、RC物件と同程度の35年の返済期間の融資プランも用意されています。中には100%融資が可能な金融機関もあります。
4-2 アイケンジャパン
アイケンジャパンは、新築アパートの企画・設計・販売・管理をワンストップで提供しているアパート会社です。「堅実なアパート経営」をコンセプトとして掲げ、「グランティック」「レガリスト」などのアパートブランドを全国に展開しています。2021年12月には、アパート供給棟数が1,000棟を突破しています。
2006年に福岡市で創業し、2023年5月時点で福岡本社と東京本社を含めて国内外に11拠点を展開しています。2015年には大阪支店を大阪市中央区に開設し、関西エリアでの物件供給も行っています。
アパート経営は入居率が下がると、フリーレントや家賃の値下げといったオーナーの負担が大きく、効果が一時的な対策を行う管理会社もありますが、同社ではこのような対策は一切していません。そうした中で、2023年3月末時点で8,313戸の賃貸管理を行っており、2022年1月から12月までの平均入居率は99.4%となっています。
また同社では、新築時に提案した年間の想定家賃収入に対して、実際の家賃収入の割合を示す数値を収益稼働率として表しています。2023年6月末時点で、同社が企画・開発した物件の収益稼働率は98.6%となっています。
「堅実なアパート経営」の要は土地の選定
アイケンジャパンでは、土地選定を「アパート経営の要」とし、「老朽化しても入居者から選ばれるかどうか」を基準に、「入居者が入り続けるエリア」のみを厳選しています。最寄り駅から徒歩15分以内など独自の基準を設けており、クリアした土地以外は販売しない方針をとっています。
デザインの特徴は、シンプルでありながらなおかつ高級感があることです。また、住み心地と満足感を提供するため、ビルトインキッチンや温水洗浄便座、浴室テレビといったアパートとは思えないような設備を標準としています。
メガバンクやネットバンクなどさまざまなタイプの金融機関と取引
豊富な取引金融機関がある同社は、供給する物件に対する金融機関からの評価が高く、融資実績も豊富です。
主な取引金融機関は以下になっています。
- 福岡銀行
- 西日本シティ銀行
- みずほ銀行
- 福岡中央銀行
- オリックス銀行
- 七十七銀行
- 十八親和銀行
メガバンクの一つであるみずほ銀行に加えて、エリアに強い地方銀行や全国から申し込みができるネットバンクとも取引があります。このようにさまざまなタイプの金融機関と取引があるため、多彩な融資プランの提案にも期待ができます。
まとめ
首都圏・関西圏はいずれも日本を代表する大都市圏で、どちらを選んでも堅実なアパート経営が期待できます。首都圏の方が賃料が高く将来性が期待できる一方、関西圏の方が2023年11月時点では相対的な物件価格の低さや高い利回りが魅力です。投資家それぞれがアパート経営で重視するポイントを整理して、自分に合った地域を選んでください。
立地選びでは、沿線や駅からの距離など、より細かい立地選びも重要です。エリアの全体傾向も把握しつつ、不動産会社から情報収集を行って、実際の物件情報も比較されていくと良いでしょう。今回の記事を参考に、ぜひ自分のスタンスに合った物件を選んで、アパート経営にチャレンジしてください。
伊藤 圭佑
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