アパート一棟買いで失敗してしまう人の原因は?4つのケースごとにリスク対策も解説

アパート一棟投資は、個人の不動産投資において有力な選択肢の一つです。区分マンション投資よりも必要資金や借り入れるローンの規模は大きくなりますが、その分収益性が高まり、資金効率の良い運営が行える可能性があります。

一方で、さまざまな要因からアパート投資に失敗して大きな損失を抱えたり、物件を手放さざるを得ない状況に陥ったりする人も少なくありません。今回はアパートの一棟投資に失敗する人のパターンについてケースごとに対策を紹介します。これからアパート一棟買いを検討している人は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. アパートの立地が悪く空室が埋まらない
    1-1.対策①購入地域を考える
    1-2.対策②さらに具体的な立地を見る
    1-3.対策③最後に物件を見る
  2. アパート経営の資金計画が甘く赤字経営に
    2-1.対策①できるだけ自己資金を厚くする
    2-2.対策②将来の変動リスクを保守的に見積もる
    2-3.対策③大規模修繕を念頭に資金を貯めておく
  3. アパートへ入居している住民のトラブルが思わぬ損失に
    3-1.対策①質の高い管理会社への委託が必須
    3-2.対策②サブリースという選択肢も検討
    3-3.対策③治安の良いエリアの物件を選ぶ
  4. アパートの減価償却費を収支シミュレーションに反映してしまっている
    4-1.対策①長期にわたり賃料収入を得ることが第一
    4-2.対策②償却期間が過ぎた後の対応まで考えておく
  5. まとめ

1 アパートの立地が悪く空室が埋まらない

不動産投資において空室リスクはよく知られたリスクの一つです。いくら物件を所有していても、そこに入居する人がいなければ、賃料収入が得られないため、投資成績が悪化してしまいます。

アパートを現金で購入している場合は、空室により賃料収入が下がったとしても、ほとんどの部屋が空室であるような極端な状況でもない限り収支を維持できる可能性は高いと言えるでしょう。

しかし、多くの個人投資家はアパートローンを活用してアパートを購入しており、賃料収入を得る側でその一定割合をローン返済に当てています。その場合は、一定以上の空室が発生すると、ローン支払額などのランニングコストが賃料収入を上回り、毎月現金が出ていく赤字状態になってしまいます。

資金余力があれば当面は不動産経営を維持することも可能ですが、キャッシュフローの悪化状態が継続していると、突発的なトラブルや大規模な修繕などに対応できなくなることも考えられます。

このような事態を防ぐためには、空室が発生しにくい物件を選ぶのが第一です。そこで、空室リスクを抑える物件の選び方のポイントについて3つ紹介します。

1-1 対策①購入地域を考える

都市部に立つ物件の多いマンションの区分投資と比較して、アパート一棟投資はやや郊外に建てた物件を検討しなければならないケースが少なくありません。大都市圏ではそもそも低層のアパート自体が少なくなるうえ地価が高く、検討する上で相応の資金力が必要になるからです。

一方、複数区画を含むアパートの空室リスクを長期で抑制するためには、今後も過疎のリスクが小さい大きな都市の物件を選択すると良いでしょう。

その点では首都圏が最もリスクが低く、次いで大阪・名古屋あたりまでが初心者でもトライしやすい地域となります。その他、福岡・広島・仙台・札幌なども物件をしっかり選べば低リスクのエリアと言えますが、それより規模の小さい都市の物件は空室リスクが高いと理解しておきましょう。

1-2 対策②さらに具体的な立地を見る

購入地域をある程度しぼったら、今度はより細かい立地を見ていきます。空室リスクを抑制する観点からは、アパートは「最寄駅へ徒歩圏内」であることは重要なポイントです。できれば徒歩10分以内が望ましいと言えます。

また、できれば最寄駅の路線にもこだわりたいところです。いくら鉄道が通っていても、本数が少なかったり、その地域のターミナル駅まで何度も乗り換えが必要なようだと、物件の魅力は下がってしまうでしょう。大阪・梅田や名古屋など、その地域を代表するターミナル駅に乗り換えなしでできる物件を選ぶのがセオリーです。

1-3 対策③最後に物件を見る

物件自体のクオリティを見るのは最後にしましょう。例え美しく立派な物件があったとしても、街から離れていたり、不便だったりすれば空室を埋めるのは難しくなるからです。

上記で説明したような都心部へのアクセスが良い賃貸アパートは単身者が主なターゲットとなりますが、ターゲットが同じでも間取りのトレンドは地域によってやや異なります。例えば、東京ではワンルームも少なくありませんが、大阪・名古屋になると1LDK以上の競争力が高い傾向にあります。間取りがその地域のトレンドにあっていないと、途端に入居者を得るのに苦労するリスクがあります。

中古物件の場合は、最近の賃貸なら一般的についているクオリティの設備が一通りあるかを意識しましょう。例えばトイレの温水洗浄やインターフォンなどの設備、トイレ・風呂別であることなどは、築浅の賃貸においては「当たり前」になりつつありますが、一昔前はそうでもありませんでした。その当時の設備のままでは、入居者集めにおいて不利に働くおそれがあります。

その他、部屋が極端に狭いなど、自分が借りる立場になった時にネガティブに感じる要素がある物件はできるだけ避けた方がよいでしょう。

2 アパート経営の資金計画が甘く赤字経営に

空室を避けることは重要ですが、どんな優良物件でも空室リスクをゼロにすることはできません。もし空室率が10%程度に収まっているのに赤字経営になっているとすれば、それは物件ではなく、資金管理に問題がある可能性があります。

資金管理の失敗による赤字は例えば、次のような形で発生します。

  • 返済額が賃料収入に対して大きく、少しの空室で赤字に
  • 賃料を引き下げた結果赤字に
  • 大規模修繕の費用を払って赤字に

しっかりと入居者がいても、資金計画が適切でなければ赤字になるリスクがあります。また、今この瞬間は大丈夫でも、将来状況が変化して赤字になるケースも少なくありません。購入時点だけでなく、将来を見据えた資金計画が重要です。

2-1 対策①できるだけ自己資金を厚くする

資金計画の失敗の多くは、ローン比率の高さに原因があります。投資家自身の属性評価が高いと、物件価格の大半、時にはフルローンに近い水準まで借りられる場合がありますが、ローン比率が高すぎると、賃料の大部分をローン支払いに充てることになるため、空室リスクに脆弱になります。

目安としては、最低でも物件価格の20%~30%程度は自己資金で支払うのがセオリーです。また、ローン支払いや諸費用を控除した利回りである「ROI」という指標があります。

ROI=(賃料収入-諸経費-ローン支払い)÷(物件価格)

10%程度空室が発生して賃料収入が減ることを加味したうえで、大都市ではこの指標が2%、それ以外では3%以上が一つの目安となります。月々のローン支払いこの水準に収まるように、今ある自己資金から購入可能な物件を探してください。

2-2 対策②将来の変動リスクを保守的に見積もる

空室についてはすでに書きましたが、その他にも将来の月々のキャッシュフローを変動させる要因が大きく二つあります。

一つは賃料です。通常、賃料は物件が古ければ古いほど下がっていくため、購入時点の賃料を前提に計算するのは危険です。賃料の下がり方は地域によって異なるため、購入前にその地域の賃貸物件を見て調べておく必要があります。

あくまで一つの目安ですが、築20年ごろまでは毎年1%程度下落し、その後は横ばいとなるイメージです。どうしても下落の傾向がつかめない場合は、これを想定して将来のキャッシュフローをシミュレーションしましょう。

もう一つはローンの借入れ金利です。近年は不動産投資ローンを変動金利で組む人も多くいますが、変動金利のローンは金利上昇により将来返済額が増えるリスクがあります。金利の予想を正確に立てるのは金融のプロでもない限り困難なので、せめて少々金利が上がってもキャッシュフローをプラスに維持できるよう、適切な借入額を設定していくと良いでしょう。

2-3 対策③大規模修繕を念頭に資金を貯めておく

アパートを長期で運用すると、大規模な修繕が必要となります。最近の物件ではやや頻度が下がるケースもありますが、10年~15年に一度程度、対応が必要になる物件が多い傾向があります。

金額はアパートの規模や地域、アパートの状況や投資家のこだわりなどさまざまな要因で変動するため、一概にはいえませんが、一つの目安は10戸程度で200~300万円というところです。

35年ローンを組んで返済しきるまで経営し続けるなら、累計1,000万円前後かかる可能性もあります。賃料収入をある程度貯めておかなければ、定期的に発生する大規模修繕に対応しきれず、たちまち赤字化してしまうリスクもあります。大規模修繕の発生を念頭において、余裕のある資金計画を立てたうえで貯蓄をおこないましょう。

3 アパートへ入居している住民のトラブルが思わぬ損失に

当初の資金計画に問題がなくとも、思わぬ損失リスクに繋がるのが住民トラブルです。入居者がいれば毎月賃料収入が発生すると期待して物件を貸すため、住民が損失の原因になるリスクを軽視してしまう人も少なくありません。

比較的発生するケースが多いのは家賃の滞納です。家賃の支払いが滞ってもランニングコストの支払いは続くため、急に収支を悪化させる要因になります。滞納者が支払いに応じない場合は、保証人や保証会社に対して肩代わりを求めることになりますが、法的手続きになるため家賃回収には手間とコストがかかります。訴訟に発展するとなれば、高額な弁護士費用などを嫌気して泣き寝入りする人も少なくありません。

また、住民同士のトラブルによる退去の発生や、住民の過失もしくは違法行為などによる物件の破損・汚損といったリスクもあります。せっかく経営がうまくいっていた物件が住民関連のトラブルによって台無しになるリスクは決しておろそかにしてはいけません。

3-1 対策①質の高い管理会社への委託が必須

アパートの物件管理は、複数の入居者と建物や敷地内の共用部分の管理もあるため、区分マンションの管理よりも手間がかかります。不動産投資によほど精通していて、物件に目を向ける時間がない人でないかぎり、自前で管理するのは現実的ではないので、信頼できる管理会社に頼みましょう。

管理会社に依頼すると、管理コストがかかるため、できるだけこのコストを削減しようと安い会社を選ぶ方もいます。しかし、住民のトラブルや賃料の滞納などを防ぐためには、質の高い管理会社を選択して契約することが大切です。

近年では家賃滞納や一定範囲の物件設備の更新などについて保証がついている契約もあります。住民関連のトラブルを予防するためには、こうした制度を活用するのも有効です。費用とリスク抑制の両面に目を向けながら、適切な管理会社に管理を依頼しましょう。

3-2 対策②サブリースという選択肢も検討

サブリースとは一定期間にわたり空室の有無にかかわらず家賃を保証し、通常は物件管理を全て一括して引き受けてくれる契約です。管理コストが高くなりますが、空室や家賃滞納などの心配をする必要はなくなります。

一時は悪質業者によるトラブルが続出したことや「長期保証」と勘違いして契約した人がいたため問題視されていた制度ですが、2020年12月15日より、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の一部、いわゆるサブリース新法が施行され、悪質な不動産業者が排除されています。誇大広告や不当な勧誘が禁止されたことにより、大手の不動産会社などが今でも手掛けています。

【関連記事】サブリース新法と従来のサブリース契約との違いは?注意点や今後の影響も

サブリース契約はたいてい数年ごとに保証する家賃水準が見直されますが、今でも手掛けている不動産会社のほとんどのは、将来の保証賃料の下落も含めて収支のシミュレーションや提案を行ってくれます。

業者に問題がないことを前提とすると、家賃保証分の管理コストが高くなってしまうのが難点ですが、物件管理に目を向ける必要がほぼなくなるため、本業が忙しい人は検討の余地があります。サブリースでも収支の目処が充分に立つのであれば、過去の事例だけを理由に選択肢から外すのではなく、一度検討されてみると良いでしょう。

3-3 対策③治安の良いエリアの物件を選ぶ

自力でできる住民トラブルのリスクを下げる対策として、治安の良い地域の物件を選ぶのが有効です。ケースバイケースではありますが、治安の悪い地域の方が、問題を抱える住民が居住しトラブルに発展するリスクは高くなります。

また、住民自体に元々問題がなくとも、それ以外の人間とトラブルを引き起こしたり、外部の人間が共用部分を破損・汚損するなど物件に損害を与えるリスクもあるでしょう。管理会社が対応してくれるとしても、トラブルは少ないに越したことはありません。警察が発表している犯罪件数なども確認した上で、治安のよい地域の物件を保有すると良いでしょう。

4 アパートの減価償却費を収支シミュレーションに反映してしまっている

アパート一棟投資を手がける人の中には、所得水準が高く、不動産投資における減価償却費の経費計上の仕組みを期待して購入する人も少なくありません。税控除の効果を謳って営業活動を行う不動産会社もあるほどです。

不動産投資においては残りの耐用年数が短い、もしくは耐用年数切れの物件は短期間で多額の減価償却を行い、会計上の赤字を出して他の所得と相殺(損益通算)することで、所得税を圧縮するという手法が行われます。

しかし、減価償却費の計上期間は建物の耐用年数によって定められており、永続的なものではありません。また、計上した減価償却費は売却時の取得費から差し引かれ、譲渡税として課税されることになります。つまり、減価償却費を計上した税控除を実質的な収支シミュレーションに組み込んでしまうと、後々の収支が合わなくなる可能性が高いということです。

このような損益通算による所得の圧縮効果を期待しすぎて、投資収入が得られないスキームで不動産経営を行うのは本末転倒です。減価償却費の計上、損益通算による所得の圧縮は副次的な効果と捉え、着実な賃料収入を得られる形で投資するのが健全といえるでしょう。

4-1 対策①長期にわたり賃料収入を得ることが第一

ローンを活用して物件を購入すると毎年の金利支払い部分が経費として計上できるので、所得の圧縮に寄与します。

しかし、充分な賃料収入が得られず、現金が出ていく形で月々の収支が赤字になっては長期的なアパート経営を行っていくことが難しくなっていきます。まずは、一定の賃料収入が得られ、キャッシュフローで見たときに長期にわたり黒字の維持が期待できる物件を選ぶのが第一です。

4-2 対策②償却期間が過ぎた後の対応まで考えておく

耐用年数が過ぎると、会計上はその資産は価値がゼロとみなされ、減価償却はそれ以上できません。そのため、このタイミングからは税負担が一気に増大するリスクがあります。ローンが残っている状態で減価償却費の計上が出来なくなり、「ローン元金返済>減価償却費」という状態に陥ることを、通称「デッドクロス」と言います。

【関連記事】アパート経営におけるデッドクロスの仕組みは?回避する10個の対策も

デッドクロスによる赤字を避けるためには、償却期間が終了するタイミングを理解した上で、その時に不動産をどうするかしっかりと計画を立てておくことが大切です。

償却期間が終了し次第できるだけ早く売却するのであれば、不動産価格の下落リスクが低く、売買で収益が得られる可能性がある物件を厳選する必要があります。保有を継続するなら、償却期間経過後の税負担を加味しても黒字を維持できるよう、資金計画を立てていきましょう。

5 まとめ

まとまった賃料が期待できるアパート投資ですが、さまざまな部分に失敗するリスクがあります。物件選びや資金計画を慎重に行い、長期にわたり収支を黒字に維持できるように工夫しなければなりません。

また、減価償却費の計上による税控除を期待していたとしても、投資である以上まずは収益を継続的に出せるスキームで投資判断を行うことが大切です。不動産投資本来の目的を見失わず、今回紹介したアパート投資の代表的な失敗例と対策を理解したうえで、綿密な計画を立ててアパート投資に臨んでいきましょう。

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伊藤 圭佑

伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。