日本国内では人口減少など不動産需要の縮小が懸念される一方で、アメリカでは長期的に人口増加が続くなど不動産投資を検討しやすい状況が続いています。
しかし、アメリカ不動産投資を始めるためには頭金をいくら用意すればいいのか、諸費用については日本と同じように考えておけばいいのかなど、疑問に思う人もいるのではないでしょうか。アメリカ不動産投資にかかる資金や頭金について、事例を用いて解説します。
目次
- アメリカ全体の物件価格
1-1.アメリカ不動産の物件価格中央値は? - アメリカ不動産投資に必要な頭金のポイント
2-1.アメリカ不動産投資ではフルローンを利用できない
2-2.アメリカ不動産の購入にかかる諸経費
2-3.必要な頭金を事例で解説 - まとめ
1.アメリカ全体の物件価格
不動産の購入にかかる諸経費は、多くの場合、日本と海外を問わず物件価格に対する割合で設定されています。最初にアメリカ不動産の価格推移と2021年4月時点の不動産価格について解説します。
1-1.アメリカ不動産の物件価格中央値は?
アメリカの不動産ポータルサイトRedfinのデータによると、2021年4月のアメリカ不動産価格中央値は$371,000です。
2012年以降のデータを見ると、アメリカ不動産は長期的に緩やかな値上がりを続けてきましたが、2020年以降は値上がり幅が大きくなっています。このような値上がり傾向が顕著になったのは、アメリカ政府が景気浮揚の目的で低金利政策を導入したことが大きく影響しています。
長期金利が0%近くまで引き下げられたことにより、アメリカでは住宅ローン金利も低下傾向にあります。住宅ローン金利の低下が住宅需要を喚起した結果、2020年以降のアメリカ不動産は大幅に値上がりしました。
なお、アメリカ不動産は長期的に見ると値上がりを続けています。キャピタルゲインを狙える可能性があるのは、アメリカ不動産投資が持つメリットの1つです。
2.アメリカ不動産投資に必要な頭金のポイント
不動産投資に必要な頭金は、ローンの有無によって大きく変わります。アメリカ不動産投資のローンに関する注意点と、物件購入にかかる諸費用などについて解説します。
2-1.アメリカ不動産投資ではフルローンを利用できない
アメリカ不動産投資に関する注意点として、フルローンは利用できないことが挙げられます。アメリカ現地の金融機関では、外国人がローンを利用するのは難しいのが実態です。
アメリカ現地の金融機関でローンを利用するためには、アメリカの銀行口座に継続的な収入が入っている証明を求められます。なお、継続的な収入がある証明のことを「クレジットヒストリー」と呼びます。
クレジットヒストリーを作るためには、アメリカに駐在員として赴任するか、まずは1件物件を購入してから一定期間運用を継続することなどが必要です。
なお、ハワイなどエリアが限定されることもあるものの、日本国内にはアメリカ不動産投資に融資している金融機関もあります。しかし、融資限度額は物件評価額の50%など限定されている場合も少なくありません。
アメリカ不動産投資では、フルローンを利用するのは難しいため、物件価格の半額程度は自己資金の用意が必要になります。
2-2.アメリカ不動産の購入にかかる諸経費
アメリカ不動産を購入する際には、一例として以下のような諸経費がかかります。物件所有権の登記費用や固定資産税の日割り精算は、日本国内での不動産取引と変わりありません。
- インスペクション費用
- エスクローフィー
- タイトルインシュアランスの費用
- 署名の公証にかかる費用
- コンサルティングフィー
- 物件所有権の登記費用
- 固定資産税の日割り精算額
インスペクション費用
インスペクション費用とは、物件購入前の調査点検にかかる費用のことです。アメリカでは契約適合責任(旧:瑕疵担保責任)という考え方がなく、物件購入後に不具合が見つかっても売主負担による修繕などを求めることができません。
物件の不具合については物件購入前に調査しなかった買主の責任とされます。このため、アメリカ不動産投資では、リスクヘッジのためにインスペクションは必須です。インスペクションの費用は委託先業者によって異なるものの、概ね$1,000〜$1,500が相場となっています。
エスクローフィー
アメリカでは取引の透明性や公正さを担保するために、不動産の取引にエスクローという第三者が介在します。エスクローの役割は、物件の決済に関する業務や物件所有権の変更登記などです。
よほど特殊な取引を除いて、アメリカ不動産の購入手続きにおいてエスクローを排除することはできません。エスクローに支払うフィーは、取引額の0.1%などに設定されることが多くなっています。
タイトルインシュアランス費用
タイトルインシュアランスとは「タイトル保険」とも呼ばれる保険のことです。アメリカでは、物件の所有権登記に売主以前の所有者が入っているなど、権利関係が正常に処理されていないケースが散見されるのも事実です。
そのほか、過去に税金が滞納されたままとなっている場合もあり、過去に発生した瑕疵によって買主が被害を被ることもあります。タイトルインシュアランスは買主が被害を被った場合に被害額を保障する保険です。
署名の公証にかかる費用
アメリカ不動産の購入に利用できるローンには、購入物件を担保に入れられるものもあります。購入物件を担保にするためには、金融機関による抵当権の設定が必要です。
抵当権をアメリカでも登記するため、金融機関が融資することを証明するとともに、抵当権の設定内容について記載した書類へ、買主と金融機関がサインします。アメリカで登記するためには、買主の署名について公証が必要です。
公証は公証役場が対応するため、公証役場に支払う手数料がかかります。手数料は融資額次第で変わるため、予約の段階で確認が必要です。
コンサルティングフィー
アメリカ不動産の取引では、買手と売手の双方に別々の不動産エージェントがつくものの、不動産エージェントに仲介手数料は、売主が買主の分まで負担します。このため、不動産の買主は仲介手数料を支払う必要がありません。
しかし、アメリカ不動産の購入手続きを、アメリカの不動産エージェントではなく日本の不動産会社へ委託する場合は、コンサルティングフィーとして物件価格の3%を支払うことが主流となっています。また、日本国内に登記されている不動産会社の場合、このコンサルティングフィーに日本の消費税が課税されることとなります。
2-3.必要な頭金を事例で解説
アメリカ不動産の購入時にかかる諸費用は、インスペクション費用及び公証費用を除くと、概ね物件購入額の2%〜3%になります。例えば、日本の不動産会社を利用した上で、日本国内の金融機関から融資を受けて$370,000の物件を購入する場合に必要な頭金は以下の通りです。
費目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
物件価格 | $185,000 | 物件価格の50%をローンで賄うと仮定 |
インスペクション費用 | $1,500 | |
公証役場の手数料 | 23,000円 | 目的の価額1,000万円を超える場合 |
エスクローフィー タイトル保険料 所有権登記費用 |
$11,100 | 物件価格の3%と仮定 |
コンサルティングフィー | 1,343,100円 | 物件価格の3.3% |
※$370,000の物件価格は2021年4月時点のアメリカ不動産価格中央値から想定
上記を合計すると、$197,600+136万6,100円+固定資産税の精算額となります。$1=110円で換算すると、2310万2,100円+固定資産税となるため、総額の目安は2,310万円〜2,400万円です。
まとめ
アメリカ不動産投資では、日本国内の不動産投資と違ってフルローンを利用しづらい点に要注意です。物件価格の50%など多くの自己資金が必要になります。
また、契約適合責任に関する考え方やエスクローの存在にタイトル保険など、アメリカ不動産の取引には日本と違う点が少なくありません。頭金を用意する上では、物件購入にかかる費目と金額の目安について把握することが必要です。
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