2023年4月1日の民法改正で不動産に関連する部分は?ポイント6つを分かりやすく解説

※ このページには広告・PRが含まれています

2023年4月1日より施行された法改正では、生活にも影響が大きい分野で変化が起きています。このうち「民法」「不動産登記法」については不動産にも関連し、注意しておきたいポイントもいくつかあります。

しかし、不動産に関連する民法改正が気になる方で、具体的に何が変更されたかよく分からない方も多いのではないでしょうか。

そこで当コラムでは2023年4月1日より施行された民法改正により、不動産に関連する6つのポイントについて分かりやすく詳細を解説していきます。

目次

  1. 2023年4月1日の民法改正で不動産に関連する部分
    1-1.財産管理制度の見直し
    1-2.共有制度の見直し
    1-3.相隣関係規定の見直し
    1-4.相続制度の見直し
  2. 2023年4月1日に改訂された不動産登記法の概要
    2-1.形骸化した登記の抹消手続きの簡略化
    2-2.登記簿の附属書類の閲覧制度の見直し
  3. まとめ

1.2023年4月1日の民法改正で不動産に関連する部分

1-1.財産管理制度の見直し

財産管理制度の見直しでは所有者不明の土地を活用を目的として、特定の土地・建物の管理に特化した管理人を選ぶために以下の2つが設立されました。

  • 所有者不明土地管理制度
  • 所有者不明建物管理制度

所有者不明土地管理制度・所有者不明建物管理制度とは、利害関係人が地方裁判所に申し立てを行うことにより適切に管理されていない土地や建物の管理人を選任してもらうことができる制度です。改正以前までは所有者不明の土地・物件による近隣住民に対する悪影響に関して、問題の解決が現実的ではなく放置されたままというケースが問題となっています。

例えば、所有者不明の空き家から大量の虫が発生し近隣に悪影響をもたらしている場合、被害を受けている近隣住民は地方裁判所へ申し立てを行うことにより管理人を選別してもらうことができるようになりました。

選別された管理人は裁判所からの許可が降りた場合に土地の売却・管理といった処置を行えるため、結果として放置されて害虫が発生していた土地・建物を売却・解体などを行うことで管理することができます。また売却後の建物や土地は新しい地主による管理が期待できるため、現状では所有者が不明で放置せざるを得ない空き家などの活用促進が期待されるでしょう。

さらに、「相続財産管理制度」から「相続財産精算制度」に名称変更が行われ、債権者や相続人探しに必要となる広告期間が10ヶ月から6ヶ月へ短縮が行われました。債権者や相続人探しの期間が以前より4ヵ月ほど短くなるため、今後は所有者不明の土地による問題解決がスムーズに行われることが予想されます。

加えて改正後には今後は財産管理制度の見直しにより、所有者不明として放置されていた物件や土地といった不動産が売却されるケースが多くなることでマーケットに供給される物件・土地の数が多くなることも期待できるでしょう。

※出典:法務省「財産管理制度の見直し(土地管理制度等)

1-2.共有制度の見直し

2023年4月1日の民法改正では、共有制度で以下2点の見直しが行われました。

  • 不動産の現状に対して、軽微の変更であれば「持分の過半数の同意」を得ると変更が可能
  • 共有者の中で行方不明の人がいる場合、条件を満たすことで持分の所得・売却が行える

複数人の共有した不動産で「変更行為」が伴う工事を行う場合、以前までは共有者全員の同意がなければ変更工事を実施することができませんでした。しかし、不動産の現状に対して、軽微の変更であれば「持分の過半数の同意」を得ると変更が可能になります。

例えば、所有している土地の一部である私道の砂利道をアスファルトで舗装したい場合、以前までは共有者全員のうち1人が行方不明などで同意を得ることができないケースでは変更工事を行うことができませんでした。

しかし、2023年4月1日以降、民法改正により半分以上の所有者による許可がある場合には、変更行為を行うことが可能です。ただし、不動産を大きく形を変える変更が伴う工事であれば、民法改正による共有制度の見直しでの適応範囲外となる可能性があるため注意が必要です。

また共有者の中で行方不明の人がいる場合、一定条件を満たすことで持分の所得・売却を行うことができるようになります。一定条件とは行方不明者の持分の時価に相当する資金を法務局に供託し、地方裁判所の決定を得ることです。こちらは相続により共有になった場合は、相続開始から10年経過しなければ利用できない点に注意しましょう。

※出典:法務省「共有制度の見直し

1-3.相隣関係規定の見直し

2023年4月1日の民法改正で見直された相隣関係規定の見直しでは、以下の4項目の変更が行われました。

  • 隣地使用権の見直し
  • 越境した木の枝を切ることができる
  • 越境した木を切るために、共有者全員の同意が必要ない
  • ライフラインを引き込むため隣地に設備を設置する権利の明確化

※出典:法務省「相隣関係規定等の見直し

隣地使用権の見直し

2023年4月1日の民法改正により、隣地使用権では境界線付近の建物の修繕・増築や、土地の境界標調査や測量による隣地の使用が一定条件下で認められるようになりました。一定条件とは隣地の所有者に利用する目的や場所、時間を通知した上で、損害が最も少ない手段を選ぶ等の内容になります。ただし、隣地使用に伴い隣地所有者に損害が生じた場合には賠償を支払う責任が伴うため十分注意が必要です。

越境した木の枝

また以前までは木の根であれば境界線を越境して伸びてきた場合には切ることができましたが、木の枝は相隣関係規定から無断で切ることができませんでした。

相隣関係規定の見直し以降には自身の所有している土地に、所有者不明の空き家内で成長した木の枝が越境してきた場合や、木を切るように頼んでも放置される場合にも、越境された土地の所有者自身で切ることができるようになります。その他では道路を所有する自治体が管理として、通行の妨げとなっている木の枝も切ることができるようになりました。

越境した木を切るために、共有者全員の同意が必要ない

以前までは複数人で共有物として所有している土地に植えてある木が成長した場合、複数人全員の許可がなければ越境した木を切ることができませんでしたが、共有者全員の同意を必要としない見直しも行われています。

例えば3人の共有者が存在する土地に植えられている木が成長し自身の土地に越境してきた場合、1人の許可を得ることができれば切ることができるようになりました。

ただし、木が植えられている土地の所有者が切ることが原則のため、木の管理を一度お願いした後で数週間に渡り放置されたなど、一定以上の条件がそろえた上で木の切除を行うなど、配慮を行うことも大切です。越境問題では、それぞれの事情を尊重しながら慎重に対処していくことが、大きなトラブルへ発展することを防ぐことにつながります。

隣地に設備を設置する権利の明確化

電気やガスといった「ライフラインを引き込むため隣地に設備を設置する権利」についても、今回の民法改正により見直しが行われました。

一例として他人が所有する土地や設備を使用しなければ、電気やガスなどのライフラインを継続的に引き込むことができない場合に、一定条件を満たすことでライフライン設備設置に伴う隣地使用権を行使することができます。

以前までは電気・ガスといったライフラインに関する民法は、時代の移り変わりと共に変化するライフスタイルに伴い明確な条文が設けられていないのが実情でした。今回の民法改正では、電気・ガス・インターネットといったライフラインの規定や、ライフラインを引き込むために行使することができる隣地使用権の明確化が行われています。

一定の条件下とは土地の所有者や使用者に、ライフラインを引き込む目的や場所、方法を通知した上で、設備の設置を行うために被害が最も少ないものと定められました。ただし、ライフラインの設置や利用において民法213条の項目において費用・償金を支払う義務が伴うため注意が必要です。

1-4.相続制度の見直し

遺産分割は相続開始から10年経過後、「具体的相続分」ではなく「法定相続分」で一律に算定するよう変更になりました。例えば相続前に親の面倒を見たり、逆に援助を受けた際に配慮する具体的相続分の配慮は一部の例外を除いて10年経過すると一切考慮されなくなります。

そのため、「具体的相続分」では、10年以内に遺産分割を行わなかった場合には「法定相続分」が適応されてしまうため注意が必要です。また相続制度の改訂が行われる2023年(令和5年)4月1日以前の相続も対象となり、改正が行われた4月1日より5年間の間で具体的相続分での遺産分割を行うことができます。

例えば2023年4月1日から8年前に不動産を相続した場合は、相続制度の見直しが施行されて5年後となる2028年4月1日まで具体的相続分での遺産分割を行うことが可能です。そのため相続制度の見直しが行われる以前の相続に関しては、「法定相続分」が適応されるタイミングが異なる点に注意が必要でしょう。

※法務省「具体的相続分による遺産分割の時的限界

2.2023年4月1日に改訂された不動産登記法の概要

2-1.形骸化した登記の抹消手続きの簡略化

不動産登記法では「形骸化した登記の抹消手続きの簡略化」という改訂が行われました。登記が抹消されることなく放置された結果、登記義務者が行方不明になるなどの都合により登記が抹消することができない、もしくは抹消に手間やコストが生じるなどといったトラブルを防ぐ効果が期待されています。

以前までは登記義務者の所在が不明の場合には特例による登記の抹消方法が活用されていましたが、手続的な負担が重いといった理由で活用し辛い実情を抱えていました。

具体的に所有権以外の権利に関する登記の抹消を一定の条件下で可能とするために、2023年4月1日には以下の2つの改訂が行われています。

①買戻しの特約に関する登記がされている場合において、その買戻しの特約がされた売買契約の日から10年を経過したときは、実体法上その期間が延長されている余地がないことを踏まえ、登記権利者(売買契約の買主)単独での当該登記の抹消を可能とする。【新第69条の2】

②登記された存続期間が既に満了している地上権等の権利に関する登記について、現行不動産登記法所定の調査よりも負担の少ない調査方法により権利者(登記義務者)の所在が判明しないときは、登記権利者単独での当該登記の抹消を可能とする。【新第70条第2項】

※引用:法務省「不動産登記法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について

以上の改訂により、消滅した権利に関する登記が抹消されず現状と異なる登記が残ってしまうトラブルが解消されることが予想されています。

さらに、担保権の登記が長い年月抹消されないことにより円滑な不動産取引の阻害となる要因を解決するべく、不動産登記の公示機能をより高める概念などからの改正として以下の改訂が行われました。

解散した法人の担保権(先取特権等)に関する登記について清算人の所在が判明しないために抹消の申請をすることができない場合において、法人の解散後30年が経過し、かつ、被担保債権の弁済期から30年を経過したときは、供託等をしなくとも、登記権利者(土地所有者)が単独でその登記の抹消を申請することができる。

※引用:同上

これにより、以前より簡易に一定の条件下で担保権に関する登記の抹消ができるようになり、今後登記が抹消できない理由で放置されていた不動産の活用が促進されるといった効果が期待されています。

今後は登記の問題上、市場に出ることがなかった物件が出回る可能性もあり、不動産売買を検討している方にとっては、不動産市場にどのような影響があるのか注目しておきたいポイントの一つです。

2-2.登記簿の附属書類の閲覧制度の見直し

登記簿の附属書類の閲覧制度の見直しでは、土地所在図等の図面以外の登記簿の附属書類については、請求人が「利害関係」を有する部分に限って閲覧が可能とされているとされています。

しかし、近年のプライバシーの配慮による要請によって、登記簿の附属書類に含まれる個々の書類の性質・内容といった閲覧の可否が曖昧になっているのが実情です。

そこで、登記簿の附属書類の閲覧制度の見直しとして、「利害関係」との要件を「正当な理由」に変更したことで、閲覧の対象となる文書の性質ごとに閲覧の可否を検討・判断することになりました。正当な理由については、今後通達により明確化が必要なことを予定しています。

例えば、不動産の購入希望者が登記名義人から了承を得た後に、過去の所有権の移転の経緯について確認しようとする場合などが「正当な理由」として当てはまる一例です。また自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類については、以前と同じく閲覧は可能とされています。

※出典:法務局「令和5年4月1日から登記簿の附属書類(登記申請書及び添付書面)の閲覧請求の手続が変わります。

まとめ

令和5年4月1日の民法改正や不動産登記法では、所有者不明により活用が行えない土地の問題解消を目的として施工が行われました。

今後は令和6年に施行される相続登記の申請義務化や外国に住居する有権者の登記名義人の国内連絡先の登記、DV被害者等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例など、新たな施行が予定されています。

今回の法改正では、不動産関連の改正項目が多く、また不動産売買取引の活発化を期待した施策も多く含まれています。不動産の購入・売却を検討している方は、施行後の市場の動向についても着目されてみると良いでしょう。

【関連記事】相続不動産・空き家売却で2023年に知っておきたい制度情報や動向は?

The following two tabs change content below.

HIROTSUGU

過去に屋根工事・防水塗装・リフォーム業へ携わった現場経験を元に、20代で中古戸建物件を購入し初期費用を安価に済ませるDIYで不動産賃貸業を開始。不動産投資の他に暗号資産や投資信託、FXなど多彩な資産運用経験を元にフリーライターとして執筆活動を行なっています。