「東洋のデトロイト」と呼ばれ、自動車の輸出拠点として目まぐるしい発展をみせるタイは、コンドミニアムの建設ラッシュが続いており、不動産投資市場も注目されています。
そこで今回は、「タイで不動産投資を始める方法」「手順」「気をつけるべきポイント」などをご紹介します。老後の海外移住先としてタイを検討している方などもぜひ参考にしてみてください。
- タイ不動産の情報収集
- タイのエージェント・仲介会社を探す
- タイの物件を選ぶ(視察する)
- タイの優良エリアを選ぶ
- 収支シミュレーションをする
- 購入の「申し込み」をする
- ローン申請する
- 売買契約をする
- 物件の支払い
- 物件の引き渡し
ステップ1 タイ不動産の情報収集
有数の親日国として知られるタイですが、不動産投資においては国内と勝手が大きく異なるため、現地の情報収集が欠かせません。例えば外国人は土地を購入することはできませんが、コンドミニアムの保有と自己名義での登録は認められています(ただし保有比率に制限あり)。
また、タイで不動産を取得する場合、購入資金となる外貨をタイへ送金してタイ国内の銀行で現地通貨「バーツ(THB)」に両替する必要があります。さらに送金先銀行で外貨送金証明書をもらい、管轄の土地局へ提示することが必要です。
このようなタイ独自の商習慣や物件の選び方などを知るためには、不動産会社が主催するセミナーや現地ツアーへの参加が効果的です。個人が行う海外不動産の情報収集は、国内不動産の場合と違って限界がありますが、海外に支社を持っていたり、信頼できる現地エージェントを多数抱えている不動産会社は、現地情報を豊富に仕入れることができるためです。
なお、タイ不動産のセミナーは、無料セミナーと有料セミナーがありますが、購入方法など基本的情報は無料で、リアルタイムの不動産情勢などは有料というケースがあります。講師は、不動産会社のスタッフや投資家のほか、公認会計士、ファイナンシャルプランナーなど専門スキルを持つ方が担当するケースもあります。
ステップ2 タイのエージェント・仲介会社を探す
冒頭で述べた通り、タイはすでにコンドミニアムの建設ラッシュとなっています。例えば首都バンコクを通る高架鉄道BTS(スカイトレイン)の「アーリー駅」周辺では、利便性の向上による値上がりを見込んだコンドミニアムの建設が過熱しています。政府機関やビジネス地区へのアクセスも良好で、外国人の他にもタイ人からの需要も多いエリアです。このようにすでに値上がりしている地区では賃貸利回りの低下も見られます。
そこで、慎重さが求められるタイの物件選びは、信頼できるエージェントや実績豊富な仲介会社選びが重要です。タイ不動産の仲介実績が豊富な国内の会社としては、「ビヨンドボーダーズ」や「デュアルタップ」などがあります。いずれの会社も無料相談が可能ですので、まずは情報収集も兼ねて話を聞いてみると良いでしょう。
また、タイではコンドミニアムを建設するデベロッパーの多くが公認のエージェントを指定しています。これらのエージェントは、通常、担当するコンドミニアム内に住んでいるか、周辺にオフィスを構えています。物件の契約から賃貸の客付け、物件管理も任せることができます。現地のエージェントであれば、タイ語による登記簿のチェックなども任せることができます。
ステップ3 タイの物件を選ぶ(視察する)
セミナーなどで情報収集をしたら、次は具体的な物件探しに移ります。国内物件でもそうですが、海外物件は特に現地視察が重要です。
タイの物件視察ツアーは、その注目度の高さから多くの不動産会社が開催しているため、目星の物件や周辺状況を細かくチェックする良い機会となります。
ツアー選びのポイントは、安心・安全面から日系賃貸業者が対応しているエリアを視察するものがおすすめです。例えば開発が進む「MRTラマ9世通り」の周辺エリアは、2004年の地下鉄開通以降、日系企業が増えてコンドミニアムの建設ラッシュが続いていますが、エリアを担当する日系企業が少ないため注意が必要です。
またタイは水害も多いため、道路が陥没しないエリアを選ぶことも大切です。例えば日本人が多く住む「スクンビット・ソイ31通り」や「39通り」は冠水の解消に時間がかかることで有名です。
ステップ4 タイの優良エリアを選ぶ
エリア選定ではタイ独自の不動産事情、社会情勢などを把握した上で検討することが必要です。単に「コンドミニアムが多く建設されているから」という理由だけで選ぶと、利回り低下や家賃下落で後悔することもあります。今後の不動産需要の増加が見込めるエリアを選定することが大切です。
例えばバンコク屈指のビジネス街として不動産価格の高騰や賃貸需要が見込める「スクンビット」は今注目のエリアです。高架鉄道(BTS)の「アソーク駅」から「ナナ駅」の間は、すでに多くのコンドミニアムが建設されています。
あるいはアソークに隣接する「トンロー」や日本人居住者が増加している「オンヌット」なども比較的安心して物件を保有できるエリアとして知られています。
ステップ5 収支シミュレーションをする
タイでコンドミニアムを購入した場合、収益を上げる方法は、物件売却による差益(キャピタルゲイン)と賃貸経営による家賃収入(インカムゲイン)の2種類が考えられます。
キャピタルゲインを目的に投資する場合、「新築のプレビルド物件を購入して完成前に売却する」方法が一般的です。
バンコクでは現在、年間4万戸規模でコンドミニアムが建設されています。バンコク中心部の新築プレビルド物件は、プリセール(完成前販売)から完成時まで、120%〜150%ほど値上がりしています。
この値上がり幅を見込んで購入する際、レバレッジを効かせた投資が可能になります。
通常、プレビルドのコンドミニアムは契約時に購入金額の10%から20%程度を支払い、残りは工事の段階に応じて支払い、完成時に残金を支払います。つまり、どの工事段階で売却するかによって投資利回りが変わるため、周辺の転売状況をよくチェックしておく必要があります。
一方、完成後に賃貸付けをしてインカムゲインを得る場合、人気のバンコク中心部の利回りは平均5.1%です(Global Property Guideより)。2015年から年間4万戸ほどコンドミニアムが建設されていることで、利回りは低下傾向にあります。
今後賃貸需要が見込めるエリアは、不動産価格が上昇する利便性の良い場所などが考えられます。利回りと賃借人のバランスを考慮してエリアを選定すると良いでしょう。
ステップ6 購入の「申し込み」をする
目当てのコンドミニアムが見つかれば、まず予約金を支払って「購入の予約」を入れる必要があります。予約金は物件価格の1%前後が相場です。支払いはクレジットカードでも可能ですが、現金のみの場合に備えて、ある程度タイバーツを用意しておいたほうが良いでしょう。なお、予約金は購入を取りやめた場合には返金されません。
ステップ7 ローン申請する
タイで外国人によるコンドミニアムの購入が許されているのは、外貨獲得のためとされています。したがって基本的にタイ国内の銀行で住宅ローンを組むことはできない点に注意が必要です。そこで日本の金融機関からお金を借りて、外貨送金して支払いをする必要があります。
たとえば日本でタイのコンドミニアムに融資している金融機関には以下のようなところがあります。
- オリックス銀行(同2.5〜3.3%)
- 日本政策金融公庫(同1%台)
またタイ国内の外資の銀行を利用することもできます。例えばシンガポールに本店があるユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は米ドルあるいはシンガポールドルで融資しています。金利は6%〜7%で、タイでの労働許可証(ワークパミット)がない場合、年収216万バーツ(約719万円)以上あることが条件となります。
このほか中国工商銀行(ICBC)を利用する場合には、金利は同じく6%〜7%で、中国通貨である「元」建ての融資となります。
ステップ8 売買契約
予約を入れた後は、2週間〜1ヶ月以内で売買契約を交わします(新築の場合)。このとき、頭金として物件価格の10〜20%ほどを支払うのが通例です。
支払いは海外送金が一般的となります。例えば、事前に自分名義の銀行口座をタイで開設し、日本から残金を自分の口座へ海外送金したあと、タイバーツに両替する必要があります。
そして送金先銀行で「外貨送金証明書」を取得し、コンドミニアムを管轄する土地局へ提示します。この場合、自身でタイに足を運んで外貨送金証明書の発行依頼をすることが必要です。
なお、送金額が5万米ドル以上であれば、電話で外貨送金証明書の依頼をすることができます。5万米ドル未満の場合は、銀行から「コンドミニアム購入のためのお金であること」を証明する書類を貰う必要があります。
ステップ9 物件の支払いをする
購入金額のうち予約金と頭金を除いた残金は、「分割払い」と「完成時の一括支払い」で支払います。
コンドミニアムの建設工事は、期間中、購入金額の何%かを分割支払いすることになります。日本の不動産のように最初にまとめて全額支払う必要はありません。もちろん住宅ローンを組んでいる場合は、毎月返済しながら月々の支払いに充てることになります。そしてコンドミニアムの完成後に残金を支払います。
ステップ10 物件の引き渡し
プレビルドのコンドミニアムを購入した場合は、完成後に引き渡しとなります。購入金額の残金を支払い、土地局で登記を行います。登記手数料として物件価格の2%ほどを支払います。このとき、以下の書類も必要になります。
- パスポート
- 売買契約書
- 外貨送金証明書
- 小切手
登記は自分に名義変更されているかをしっかり確認することが大切です。念のため、「銀行などの抵当権がついていないか」なども確認しましょう。登記簿はタイ語で記載されているため、タイ人のエージェントに確認をしてもらった上で登記書をもらい、残金を支払います。
また、引き渡しの前には立ち入り検査が行われるのが通常です。このとき水回りやガス周りに瑕疵が見つかることも多いため、信頼できる点検業者に診てもらうことが重要です。修繕個所が見つかれば、デベロッパーに連絡し、修繕してもらいます。点検から修繕するまで3週間以上かかるため、竣工してから住み始めるまで2ヶ月以上かかることも珍しくありません。
またプレビルドのコンドミニアムは、一般的に壁紙などの内装は何もされないまま引き渡されます。なお、内装準備は自分で業者を選び、見積もりをとるか、購入時に利用した不動産会社やエージェントに任せることもできます。賃貸付けをするためには内装と家電などの設置も必要になります。
ただ最近ではキッチンやバスルームの他に、エアコンや家具も設備されている物件もあります。中には家電も標準装備されていて、あとはカーテンを取り付けるだけという物件も見られます。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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