赤字大家に共通する5つのポイントと失敗を回避するアパート経営戦略

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不動産投資は、当初のシミュレーション通りに運用できるのであれば毎月の家賃収入が期待できるため、他の投資と比較しても安定した投資となります。しかし、実際には長い期間で赤字が続いたり、ローンの返済ができなくなったりした結果、物件を手放さなければならなくなった人もいます。

成功は偶然の産物ということもありえますが、失敗には多くのケースで明確な原因があるものです。今回は、赤字に陥ってしまった大家達に共通する5つのポイントから、失敗のリスクを回避するためのアパート経営の戦略を考えてみたいと思います。

目次

  1. 利回りだけでエリアや物件を選んでしまっている
  2. リスクヘッジをせずにリスクの高い物件を購入している
  3. 融資条件にこだわらずに契約してしまっている
  4. 運用のシミュレーションをしていない
  5. 賃貸管理や建物管理が不十分な会社と契約している

ポイント1 利回りだけでエリアや物件を選んでしまっている

アパート経営を始める際に、不動産会社の話を聞き、シミュレーションも作成してもらいます。その際、立地や利回り、物件のデザインなど投資家としてチェックすべき項目は様々です。その中でもやはり利回りが一番気になるのではないでしょうか。

しかし、利回りだけでエリアや物件を選んでしまった場合、実際に運用をし始めてみると当初の計画と違う、ということが往々にしてあります。利回りは物件価格に対する収益、つまり家賃収入の割合を計算しただけのものだからです。

例えば、1室あたり6万円の家賃収入の見込みがある部屋が6室入っているアパートを5,000万円で購入したとします。年間の家賃収入は6万円×6室×12ヵ月=432万円、この場合の利回りは432万円÷5,000万円=0.0864で8.64%になります。

しかし、この計算だけでは、家賃設定が相場に沿ったものなのか、あるいは家賃の下落率が現実的な数値で算入されているのかまではわかりません。そういった他の要素も十分に信ぴょう性がある状態で利回りを試算しなければ、計画通りに運用できないからです。

利回り以外の項目を細かくチェックしたかどうかで、運用がうまくいくかいかないかの差になってきます。利回りだけにとらわれず、他の項目も十分チェックしたうえで検討しましょう。以下に購入前にチェックしておきたい項目をいくつかご紹介します。

1-1.エリアの相場に沿った家賃設定になっているか

アパート経営の失敗では、数年たって家賃を大幅に下げざるを得なくなり、赤字経営になってしまった事例が数多くあります。金額でいうと1部屋当たり2万円も家賃を下げなければならなかったという大家もいます。

もし6室あるアパートであれば、月に12万円も収入が減ることになります。エリアの相場をしっかり調べて、相場にあった家賃かどうかをチェックすることが大切です。

1-2.家賃の下落率は現実的かどうか

家賃設定が相場通りだからということだけで安心はできません。特に新築でアパートを建築した場合は、最初は高い家賃がとれても、数年すると家賃は下がってきます。

5年、10年後まできちんと下落率を考えたシミュレーションになっているでしょうか。家賃の設定と同様に下落率を見誤ると大きな損害になりかねませんのでしっかりチェックしましょう。

ただ、下落率といっても自分では計算できるものではないでしょうから、家賃設定同様に信頼のおける不動産会社に相談することをお勧めします。

1-3.サブリース契約の説明がきちんとしてあるか

最近、シェアハウス投資などで話題になっているサブリース契約ですが、サブリース契約自体が悪いわけではありません。保証家賃が支払われなくなったり、他の管理会社に変えることができなかったりする契約になっていることが問題になっているのです。

サブリース契約ではサブリースをする会社に有利なように契約されているケースがほとんどです。サブリース契約を選択する場合でも、サブリースをする理由は何か、途中で解約できるか、管理会社の変更はできるか、など自分の不利な契約になっていないかどうかを細かく確認しましょう。

利回りは収入と物件価格の2つの数字から割り出している数字です。その他の条件を細かくチェックし、その利回りで将来的に運用できるのかどうかを確認して検討することが重要です。

ポイント2 リスクヘッジをせずにリスクの高い物件を購入している

アパート経営に限らず、不動産投資のリスクにはある程度想定できるものがあります。空室リスク、金利上昇リスク、建物損壊のリスクなどです。こういったリスクにはあらかじめ備えることで損害や損失を最小限に抑えることができます。

以下では、安定した運用ができるようにリスクヘッジすべきポイントとそれぞれの対策法を見てみましょう。

2-1.空室リスク対策

先に触れた家賃設定や家賃下落の想定にも関係してくるリスクになります。しかし、いくら相場にあった家賃だとしても、そもそも立地が悪かったり、人が住む環境でなかったりした場合は、空室率は高くなります。

空室率を抑えるためには、最低限立地と周りの環境はチェックしておきましょう。駅から徒歩10分くらいの場所にあるか、周辺にスーパーや病院、コンビニなどがあり人が住みやすい環境になっているか、といった点は抑えておきたいポイントです。

逆に駅から徒歩20分以上かかったり、周りにコンビニや病院などがなかったりする場合はいくら家賃が相場とあっていても、空室になるリスクは高いと考えた方が良いでしょう。

2-2.金利上昇リスクに備える

金利上昇リスクに備えるためにはいくつかの選択肢があります。固定金利にするのも一つの手です。固定金利は5年、10年ごとに見直しをするタイプのものや、返済している期間ずっと固定のものがあります。固定金利にすることで金利が上昇しても返済額をかえずに返済できるメリットがあります。

しかし、金利の低い今の日本経済においては、変動金利を選択することで、低金利の恩恵を受けやすくなっています。融資額、期間が同じで金利だけが違う場合の月々の返済額はどれくらい違ってくるのでしょうか。

以下に融資額と返済期間が同じで金利だけが違う場合の、返済額の差を表にしたものです。融資額を5,000万円、期間を22年、金利を1.5%、3.0%、4.5%の3パターンで試算しました。

融資額 金利 期間 月々の返済額
5,000万円 1.5% 22年 22万2,476円
5,000万円 3.0% 22年 25万8,947円
5,000万円 4.5% 22年 29万8,693円

この場合の試算では一番低い1.5%の金利の時と一番高い4.5%の金利の時では月の返済額に7万円以上の差があります。月7万円というとアパートの場合であれば一般的には1室の家賃収入より大きい金額になります。このように金利が少し違うだけでも大きなリスクになることがわかります。

変動金利で融資を受ける場合の金利上昇リスクに対しては、もともと低い金利でスタートするということが一つの策になってきます。では、なるべく低い金利で融資を受けるにはどのようにすれば良いのでしょうか。

アパート経営を取り扱っている不動産会社はいくつか提携している金融機関があります。その業者の規模や実績などにより扱える金融機関の数や、契約するときの優遇措置が違ってきます。

規模が大きく長年の実績のある不動産会社であれば、多くの金融機関と提携し、多くの優遇措置を受ける可能性が大きくなります。そのような会社であれば、金利の優遇措置など有利な選択肢が多くあります。

なるべく低い金利の金融機関から融資を受けるためには、業者を選択するところから入るのが一つのポイントになってきます。

ポイント3 融資条件にこだわらずに契約してしまっている

融資条件にこだわらずに契約してしまっている融資条件は金融機関によって違ってきます。融資条件とは金利や、返済期間、頭金の額、保証人の有無、団信の有無、といった融資を受ける際に提示される条件のことです。

「どの金融機関で借りても融資の条件は同じじゃないの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。実際には金融機関が違えば条件が同じになることはほぼないと思った方が良いでしょう。

先に触れたように金利が違えば月々の返済額が大きく違ってきます。また頭金が大きくなりストックしている準備金が減れば、その後の運用に影響を及ぼすことになります。

さらに団信がついていない融資条件の場合は、団信を別契約しなければならないため、一般的には月々の支払額が増えます。せっかく金利を抑えてもその分で返済額が増えたのでは意味がありません。

融資を受ける際は金利だけでなく、その他の融資条件も細かくチェックしましょう。

ポイント4 運用のシミュレーションをしていない

4つ目のポイントは運用のシミュレーションをしていない場合に失敗しているケースです。これは、先に触れたリスクヘッジや金利上昇の対策、融資条件の細かなチェックなどと深く関わってきます。

運用シミュレーションは金融機関の償還予定表のことではありません。償還予定表、家賃の下落率、物件の減価償却、毎年の固定資産税の支払いなど細かな運用条件をすべて含めた運用の計画表のことです。

シミュレーションは頭金の額や金利、家賃の下落率など細かな条件を変えることで、いくつものパターンで作成することができます。シミュレーションは現状の社会情勢だけでなく、将来考えられる様々な変化を盛り込んで、慎重に作成することがポイントになります。

ソフトを使えばシミュレーションは自分でも作成できますが、不動産会社の担当者が必ず作成しますので、わからない点は質問をして解決するようにしましょう。

ポイント5 賃貸管理や建物管理が不十分な会社と契約している

賃貸管理や建物管理が不十分な会社と契約しているサラリーマン大家であれば、ほとんどの場合、アパートの管理は全て管理会社に一任することになります。管理会社は、賃借人の募集や賃貸契約の締結から始まり、入居者からのクレーム対応や、物件の清掃など様々な業務を大家の代わりに行います。

ただ全てがうまく運ぶわけではありません。空室になり、次の賃借人がなかなか付かない、ということもあるでしょう。また、入居者が家賃を滞納することもありますし、外壁が壊れて修繕を必要とすることもあります。

このような対応は管理会社が全て対応してくれますが、あまりにも問題が多い場合は管理会社の対応が不十分な可能性があることも頭に入れておいた方が良いでしょう。管理費を安くしたいがために金額だけで管理会社を選んでしまうと、そのような事態に陥りかねません。

自分で管理会社などをやっていない限りは、全ての管理を管理会社に丸投げにすることになりますので、管理会社の選択は長く運用するにあたり重要なポイントとなります。では、管理会社を選ぶ際のポイントはどのような点でしょうか。

管理会社を選ぶ際のポイント

たいていの場合はアパートを紹介してくれる不動産会社が管理会社も持っている場合がほとんどですので、その会社に委任することになります。ただ、入居者の管理と物件のメンテナンスは別々の業者に依頼することが多く、大家の手を煩わすことになります。

また、中小の不動産会社や地域の工務店などが建築する場合は注意が必要です。アパートのメンテナンスは数十年先まで続きます。その間アパートの定期的なメンテナンスが必要になるからです。

近年、アパートに使われている屋根や外壁は特殊加工が施されていて、耐火性や防水性に非常に優れた性能を持っています。このような建物を定期的にメンテナンスしていくには高度な知識や技術が必要になり、小さな管理会社では、長期にわたるメンテナンスに時間と費用をかけにくいことが考えられます。

管理会社を選ぶひとつのポイントは大手の不動産会社の管理システムを利用するということです。大手の不動産会社の中には、ワンストップで入居者の管理や、建物のメンテナンスまで行ってくれる会社もあります。

数十年かけてアパートのメンテナンスをしてくれる会社かどうかが、安心して任せられるかどうかの一つの目安となります。会社の規模や、今までの実績などを調べて管理会社を選ぶようにしましょう。

まとめ

アパート経営の失敗事例をもとに、チェックしておきたい5つのポイントをご紹介しました。アパート経営の投資額は大きな金額となりますので、間違った判断をしてしまうと、あとで取り返しのつかないことになりかねません。

失敗しないためにはスタート時の計画が非常に重要になります。失敗事例の多くはご紹介したように、利回りだけを見ている、リスク対策が不十分であるといったように、ある一面からしかアパート経営を考えていない、という共通したポイントがあります。

アパート経営は数年で結果を出すものではなく、数十年の長期にわたり運用してメリットが生まれるものです。長い期間にわたって物件を所有するということは、その間起こりうる様々なリスクに備えて準備をしなければならないということです。

想定されるリスクの一つ一つは対処可能なものですので、信頼のおける不動産会社と一緒にリスクヘッジをしていくことで、アパート経営の失敗を未然に防いでいくことが重要です。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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