フィリピンで不動産投資を始めるための10のステップ

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インフラ整備を伴う経済成長が顕著なフィリピンでは、マニラ首都圏でのコンドミニアム価格上昇が続くなど、不動産への投資人気も続いています。

海外や日本からのも多くの投資マネーが流れ込み、過去5年間の不動産価格の上昇率は7割を超えています(Global Property Guideより)。

今回は著しい成長を遂げているフィリピンで不動産投資を始める方法を解説していきます。

目次

  1. フィリピン不動産の情報を集める
    1-1.外国人に対する購入規制
    1-2.フィリピンの税制
  2. 資金計画を立てる
    2-1.現地銀行を利用した支払いの注意点
    2-2.リコースローンとノンリコースローン
  3. 出口戦略を考える
    3-1.インカムゲインよりもキャピタルゲイン
    3-2.ターゲットは外国人
  4. 売却・転売する際の注意点
  5. 管理方法を考える
  6. フィリピン不動産に強いエージェントを探す
  7. 物件を決める
  8. 売買契約・支払い
    8-1.フィリピン不動産の購入手続き
    8-2.インハウスローンの利用には要注意
  9. 物件の引き渡し
  10. 所有権を移転する

1 フィリピン不動産の情報を集める

フィリピンの不動産投資では、外国人が購入できる不動産はコンドミニアムなど一部の物件に限られるため、事前の情報収集が重要になります。

1-1 外国人に対する購入規制

フィリピンでは、外国人投資家は建物(コンドミニアム)を購入できても、土地を購入することはできません。登記可能なコンドミニアムの購入が実質的な不動産投資の方法となります。

さらにコンドミニアムを貸し出す・転売する相手も同じ外国人相手となります。賃貸貸しをする場合は、どの程度の賃貸需要が見込めるのか、新築物件の建設計画や売買需要がどの程度あるのかも調べましょう。

1-2 フィリピンの税制

収益性を左右する税金なども、税制改革により変わる可能性があります。購入する前には税率の確認が必要です。

なお、フィリピンのコンドミニアム購入にかかる税金は、次の通りです。

印紙税 (購入価格あるいは市場価格いずれかの高い方に対して)1.5%
公証費用 (市場価格の)1~2%
地方譲渡税 (物件価格あるいは市場価格の)0.5~0.75%
不動産収入税 (賃貸収入の)25%
キャピタルゲイン税 物件価格あるいは市場価格の6%
不動産仲介手数料 (物件価格の)3~5%

(2018年4月の時点:最新情報については外務省のサイトやフィリピンの政府サイト等からご確認下さい)

2 資金計画を立てる

フィリピンでは中古物件を購入することもできますが、中古市場が十分に確立されていません。ブローカーを通して物件を紹介してもらったり、物件オーナーと直接取引したりと慣れていなければ中古物件の購入は難しくなります。

そこでフィリピンでの不動産投資は、プレビルド(完成前の物件を購入すること)のコンドミニアムを購入するのがメインになります。

2-1 現地銀行を利用した支払いの注意点

プレビルド物件を購入する場合、頭金は何度か分割して支払い、分割支払い終了後に残金を一括で支払うことになります。

なお、現地銀行からローンの融資を受けて一括で支払う場合には注意が必要です。フィリピンの経済状況によっては、コンドミニアムの担保価値が落ちることで、購入時には融資が下りるはずだったローンが組めなくなる可能性もあります。

仮に残金を支払えない場合、それまで支払ったお金はほとんど没収される可能性があります。実際にはバイヤー(買い手)保護の法律により、デベロッパーは支払った頭金の半額を返還する必要がありますが、現地弁護士を雇って交渉する必要があるなど手間や時間、そして費用がかかります。

フィリピンの物件を購入する際は万が一のリスクに備えて資金計画をきちんと立てておくことが大切です。

2-2 リコースローンとノンリコースローン

現地銀行のローン金利は、例えば東京支店や名古屋出張所があるPNB(Philippine National Bank)の場合、5.95%です(固定金利5%+みずほ銀行の長期プライムレート0.95%)。

PNBの住宅ローンは、返済ができなくなっても最後まで借入金の返済義務を負うリコースローンという種類ですが、他の銀行ではノンリコースローンを組むことができます。

ノンリコースローンとは、担保となる物件を手放しても返済できない分は銀行が負担するという借り手有利の住宅ローンです。負債を抱えずに済みますが、金利が高いのがデメリットです。さらに融資条件としてSRRVビザ(リタイアメントビザ)やクオータビザ(特別割当移住査証)を取得していることが必要になるなど、審査は厳しくなります。

3 出口戦略を考える

フィリピンの不動産市場の動向と資金計画の確認をしたあとは、出口戦略を検討しましょう。出口戦略とは、どのように売却して利益を出すかという計画です。

3-1 インカムゲインよりもキャピタルゲイン

フィリピンのコンドミニアムで利益を出すためには、転売によるキャピタルゲイン狙いがメインになります。というのも、フィリピンでは賃貸運営に適した環境が十分に整っていないからです。

フィリピンでは賃貸管理を行う会社があまりなく、コンドミニアムの賃貸管理はほとんどデベロッパーの賃貸管理部門が行っています。家賃設定もその管理部門で行い、入居希望者はコンドミニアムごとに用意されている管理部門から直接賃貸募集リストを入手しています。

管理部門で設定する家賃金額は、家賃を下げるとコンドミニアムの格が下がってしまうという理由から空室があっても下げたがりません。そこで空室が続いて困るオーナーは、別に賃貸管理をしている会社を探す必要があります。

3-2 ターゲットは外国人

投資用で購入するコンドミニアムの家賃は高いため、ほとんどの場合、ターゲットは海外からの駐在員や旅行客になります。

つまり投資用にコンドミニアムを購入する場合、このような駐在員や旅行客による賃貸需要が多い場所を選ぶことがポイントです。現地のフィリピン人を対象としないため、空室期間が長期化する可能性も加味しなければなりません。

このようにフィリピンのコンドミニアムによるインカムゲインはあまり期待できないことを踏まえて、出口戦略を考えましょう。

4 売却・転売する際の注意点

出口戦略として重要なのが、プレビルドで購入したコンドミニアムをいつ売却するかです。完成後に転売する場合には、登記に時間がかかることを頭に入れておく必要があります。

フィリピンではコンドミニアムが完成し、引き渡しが終わったあとの登記に時間がかかります。完成してから1年後に登記されるというケースもあるため、完成直後に売却する場合は注意しましょう。場合によっては数年間も権利書が手元に届かないこともあるため、その間の賃貸運用も検討しておく必要がなります。

また完成前の転売は、実質的に「所有権がないままの売却」となるため、デベロッパーとの契約名義の書き換え作業が必要になります。契約名義人変更手続きはデベロッパーによって対応の仕方が違うため、購入前にきちんと確認することが重要です。

なお、コンドミニアム売却におけるキャピタルゲイン税は基本的に売主負担ですが、契約書にその旨が明記されていない場合、不払いとなっていれば買主がそのペナルティを課せられることがあります。契約書を作成する時点で税金に支払いに関する条項があるかどうかを確認することが重要です。

5 管理方法を考える

賃貸管理ではデベロッパーの管理部門か、専門の賃貸管理会社に任せるかどちらかを選びます。日本のように物件を一覧で検索できるような仕組みがないため、入居希望者は多くの場合、デベロッパーの管理部門に直接足を運ぶことになります。専門の管理会社を選ぶ際には、どのように客付けをしているのかをよくチェックしておきましょう。

なお、専門の管理会社はさまざまな管理を一括して行ってくれるなどのメリットがあります。コンドミニアムを購入して賃貸運用する場合、内装工事が必要になりますが、デベロッパーは内装工事までは行いません。しかし、管理会社は家具や家電を備え付けて貸し出してくれます。

さらに室内のメンテナンスや空室時の清掃なども任せることができるため、オーナーの手間を省くことができます。

6 フィリピン不動産に強いエージェントを探す

フィリピンに何度も足を運んで物件選びをするのも難しいため、現地不動産を取り扱うエージェント(不動産会社)選びが重要になります。フィリピンの不動産購入手続きは後述するように煩雑なため、手続きに精通しているエージェントを選びましょう。

さらにコンドミニアム購入で大事なのは、デベロッパー選びです。物件の品質はもちろんのこと、その後のアフターフォローをきちんと行うデベロッパーなのかも確認します。

7 物件を決める

物件選びでは、外国人投資家や駐在員に人気のエリアを選ぶのがポイントです。例えばコンドミニアムが多く建設されているマニラのマカティ市や、開発が進むボニファシオ・グローバルシティなどがおすすめです。他の地域でもコンドミニアム価格上昇が見込めるエリアはチェックしておきましょう。

このほか、周辺環境や交通の便などをチェックし、入居者が住みやすい環境が整っているかを調査しましょう。転売するまで賃貸運用する可能性があることを前提に、賃貸付けしやすい物件選びが必要です。

8 売買契約と注意点

フィリピンでは英語が公用語の一つとなっており、不動産の売買契約書も英語表記となります。

なお、中古物件を購入する際は特に注意が必要です。契約後の一定期間以内に税金を支払っていないことを理由に、罰金を求められることがあります。契約書の内容に少しでも不備があれば、余計なペナルティを課せられることがあるため、信頼できるエージェントに契約書の内容を精査してもらうことが大切です。

8-1 フィリピン不動産の購入手続き

プレビルド物件を購入する場合は最初に銀行口座を開設しておきましょう。支払いは小切手で行うのが一般的で、銀行から自宅に送付してもらうようにします。

契約では、まず購入申込書となる「予約契約書」をデベロッパーに提出し、購入金額の10~30%を予約申込金として支払います。申し込みをしてから半年以内に売買契約書が届くため、認証手続きとともに署名した契約書を送り返します。

支払いは、「頭金→月々の分割支払い→残金」と建設段階に応じて振り込みます。残金をローンで支払う場合は、融資が確実に下りると見込める範囲で設定する必要があります。融資が下りずに現金も用意できなければ、それまで支払ったお金のほとんどを失う可能性があります。

8-2 インハウスローンの利用には要注意

なお、残金を支払う余力がなく、銀行の融資も下りない場合、デベロッパーが提供するインハウスローンを利用する方法があります。

ただし、インハウスローンは、金利が銀行ローンよりもかなり高いため、支払い総額も高額になります。どうしても利用せざるを得ない場合には、返済期間が短いプランを利用しましょう。

契約書はすべて手書きによるサインで行いますが、仮に現地でその時間が取れなかった場合、帰国後に届く契約書類を公証役場まで持って行き、公証人の目の前で契約書にサインします。そして、その書類を外務省に持っていき、承認印をもらってフィリピン大使館で認証手続きをしてもらいます。

また、物件が完成したあとに賃貸運用する予定がある場合は、先にTINナンバーとよばれる納税番号を取得しておく必要があります。非居住外国人が賃貸を行い、税務申告をするために必要なものです。

9 物件の引き渡し

プレビルドのコンドミニアムは完成後に引き渡しを行います。

残金の支払いが終わっていることを確認し、デベロッパーから物件の鍵と、引渡証明書および売買証書を受け取ります。その後、売買を仲介したエージェントに「所有権移転の手続き」を依頼します。銀行ローンを利用している場合には、所有権移転が完了したあとに抵当権の設定を行います。

10 所有権を移転する

プレビルドのコンドミニアムの場合、所有権の移転手続きはエージェントに任せておけば問題ありません。注意が必要なのは中古物件や、完成後のコンドミニアム転売物件を購入した場合です。

例えば中古物件の場合、前の所有者が固定資産税などの税金滞納がないかどうかをチェックし、あった場合は支払いを済ませてもらう必要があります。

その後、売主から買主にコンドミニアムの所有権移転を許可するCAR(Certificate Authorizing Registration)と呼ばれる書類が税務署を通して送られます。CARを受け取った後は、登記移転の手続きに進みます。

登記所に提出する書類のなかに、コンドミニアム管理組合からもらう所有権移転承諾書というものがありますが、発行に一週間ほどかかる場合もあるため事前に手配しておいたほうが良いでしょう。

また所有権移転承諾書の発行には、売主に維持管理費や光熱費の滞納がないことの確認が必要です。登記所に提出する書類は多いため、事前にすべてチェックしておかなければ何度も登記所に足を運ぶことになります。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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