世界第2位の経済大国である中国は、今なお不動産相場の上昇が続いています。利回りこそ低いものの、キャピタルゲインが狙えることで世界中の投資家が中国の不動産市場に投資マネーを投入しています。
しかし、中国で不動産を購入する際、中国の土地の所有権は全てが国もしくは農民にあり、建物と土地は別個に扱われないなど、独自の制度に注意する必要があります。
今回は中国での不動産投資の始めるための基本的な情報を紹介していきます。
※本記事内の数値や制度などは2018年9月調査時点の情報となります。最新の情報は外務省やジェトロ、各国の政府サイトなどでご確認下さい。
目次
- 中国の不動産事情を知る
1-1.中国の土地取引に関する規制
1-2.外国人に対する購入規制
1-3.中国不動産の利回り
1-4.2018年の中国不動産市場動向
1-5.税制の新たな動きにも注意 - 資金計画を立てる
- 中国で物件を探す
3-1.新築マンションを探す場合
3-2.中古マンションを探す場合 - 所有権を確認する
- 売買契約を結ぶ
- 中国で売買手続きの審査を受ける
- 不動産購入にかかる税金を支払う
- 中国の不動産登記の名義変更
- 代金の支払い
- 引き渡し
1 中国の不動産事情を知る
海外での不動産投資では、その国の不動産取引事情を把握することが大切です。特に中国の土地・不動産に関する制度は独特なため、基本情報から学ぶことが必要です。
1-1 中国の土地取引に関する規制
中国では土地は政府のものとされます。農村の土地や都市の郊外地区の土地は、中国政府の所有に属する場合を除けば、農民集団のものとなります。そのため住宅などの建設をする業者は土地の使用権を政府から購入しています。
海外の投資家が、中国の投資用不動産を手に入れる際も、土地の使用権を購入する形となります。例えば住宅を購入する場合、土地使用権の期限は最大70年ですが、期限が切れる1年前までに申請すれば延長できます。ただし延長の際には再び土地使用権の支払いをしなければなりません。
中国の不動産相場は、実質的にこの土地使用権の増減によって左右されるといえます。現在、不動産相場は過熱気味と言われますが、政府によって土地使用権の売却がコントロールされているため、不動産市場もある程度コントロールされている状況です。
つまり政府が市場を上手くコントロールしている間は、不動産市場が暴落する(いわゆるバブル崩壊)は起こりにくいと考えることができます。これも中国での不動産投資の魅力の一つといえます。
1-2 外国人に対する購入規制
中国政府は過熱する不動産市場を抑えるため、さまざまな政策を打ち立てています。
例えば外国人が投資用不動産を購入する場合、不動産会社として外商投資企業を設立する必要があります。以前はその設立申請もなかなか通りませんでしたが、中国政府が外国人投資家を積極的に受け入れる方針に転換してからは、それほど困難を伴わず作ることができるようになりました。
なお、1件目を住宅用として購入する場合、この申請は不要です。ただし2件目以降は、投資用とみなされるため、外商投資会社を作る必要があります。
他にも地域によって厳しい規制があります。例えば中国最南端に位置する海南省では、非居住者が購入できる物件は1件のみです。支払いの際には頭金として最低70%必要になるうえ、購入から5年間は転売できないといった条件も付きます。
1-3 中国不動産の利回り
価格上昇が続く上海や北京といった、いわゆる1級都市(中国では都市を規模の大きさによって級数で分類している)では、利回りは2%前後と低くなっています(Global Property Guideより)。
そのため中国での不動産投資は、家賃収入による「インカムゲイン」よりも、売却差益である「キャピタルゲイン狙い」が多くなります。物件選びでは、値上がりが期待できるエリアを探すのが重要です。
1-4 2018年の中国不動産市場動向
中国は長い間、不動産バブルの崩壊が懸念されていますが、実情はどうなのでしょうか。
中国国家統計局が発表した2018年8月の不動産投資は、前年同期比9.2%増です。7月の伸びが13.2%だったため、伸びは鈍化しているといえます。ただ、1〜8月の不動産投資は前年同期比10.1%の増加で、中国当局による不動産投機規制策が継続するなかでも、デベロッパーの資金調達状況の改善を示す数字も出ています。
先述したように、政府が土地使用権の売却によってコントロールしているわけですが、2017年7月から過熱する不動産市場の緩和策として土地所有権の売却を増やすなか、それに対して入札が入らない地域も出てきています
政府が売却する土地使用権は、開発業者などが入札によって競り落とす仕組みになっていますが、入札自体が行われていないことから、需要の減少も伺えます。実際、8月単月の不動産販売は前年比2.4%増で、7月単月(9.9%増)と比較して伸びが鈍化しました。
ただ、不動産相場が下落すれば、政府が規制緩和などの対応によって再び相場を上昇させる可能性もあります。今後は、高騰している不動産を安く仕入れることができる好機になると考えることもできます。
1-5 税制の新たな動きにも注意
現在中国には固定資産税に相当する税金はありませんが、政府は2020年の導入を目指しています。固定資産税が導入されれば不動産投資のコスト負担が増すほかに市場に影響を及ぼします。
中国では2011年に上海・重慶市で固定資産税(不動産税)を試験的に導入した結果、不動産価格が下落しました。
中国は土地の保有ができず、使用権を支払っているわけですが、さらに不動産税を徴収することに強く反発する動きがあります。仮に中国全土でこの不動産税が導入されるとなれば、不動産相場は1割下落するとの見方も出ています。
しかし中国政府は、土地使用権の売却による財源の確保が難しくなっていることから、この不動産税を新たな税源として確保しようとしているため、中国で不動産投資を検討する際は、この動きに注視する必要があります。
2 資金計画を立てる
北京や上海のような1級都市の不動産価格はかなり高額になるため、購入資金の調達方法をよく検討する必要があります。
まず日本の金融機関では、海外不動産に融資する銀行などはほとんどなく、融資を受けられるとしても、国内の不動産を担保にするなど条件は厳しくなります。
次に中国の銀行で融資を受けるようとしても、外資の規制をしているために非居住者が銀行口座を開設することが難しくなっています。口座開設の条件は以下の通りです。
- 中国での居住証を持っている
- 中国の納税者番号を持っている
- 中国の携帯電話とホテル以外の居住住所を必要とする、など
しかし外国人が口座を開設できる外資系銀行もあります。
例えばHSBC(香港上海銀行中国支店)は他のASEAN諸国での不動産投資でも利用できるうえ、中国でも利用できる銀行です。口座開設のためには10万元(2018年9月時点の日本円で163万円ほど)以上の預金があれば可能となります。必要書類の確認などはメールで行えるため、日本にいながら口座開設の準備をすることも可能です。
仮に中国で銀行口座を開設できない場合、ローンを組むことができないため現金の用意が必要になるでしょう。
3 中国で物件を探す
資金計画を立てたあとは物件探しです。中国の物件探しには、エージェント(不動産会社)の協力が不可欠でしょう。なかでも中国事情に詳しい不動産会社を選ぶ必要があります。
3-1 新築マンションを探す場合
不動産エージェントは全国各地でセミナーを開催したり、現地ツアーを手配しているため、まずはこれに参加して物件情報の取集に努めましょう。特に新築マンションを購入する場合は、現地デベロッパーの情報に精通したエージェント選びが重要です。
中国の新築マンションを購入する場合、代金の支払いは売買契約をして登記が終わった直後になります。つまり建設中に売買契約をすれば、完成を待たずに決済が必要になるため、代金の支払いが済んでしまえば、その物件に関する責任は購入者に移ります。
そのため、万が一マンションの建設が中断して完成しなかった場合、物件は引き渡されず、そのまま失うというリスクを負います。そうならないためにも、物件を確実に完成させることができるデベロッパーなのかどうか、見極めるエージェントが必要になるわけです。
3-2 中古マンションを探す場合
中国では新築マンションの購入者は日本の法務局に当たる「房地産交易中心」で登記を行います。直訳すれば不動産取引センターとなりますが、中古物件に関する情報もこの不動産取引センターに問い合わせることができます。
他に中古不動産を紹介している中国サイトに、「百姓網」「捜房網」「中原地産」といったものがあります。これらを利用することでも、中古マンションを探すことが可能です。
4 所有権を確認する
購入したい物件が決まった場合、中古マンションなら所有権を確認する必要があります。中国ではひとつの物件を複数の人が登記するのが当たり前となっているため、中古マンションを購入する時は、全ての登記を移転しなければ完全に所有権を得ることができません。手続きは契約締結から90日以内と決まっているため、事前にしっかりとチェックすることが不可欠です。
また、中古マンションの売買契約は、オーナーと直接行うことになります。契約後のトラブルを回避するためにも細かく確認しておきましょう。
5 売買契約を結ぶ
物件が決まれば、次は売買契約です。
購入希望者はまず「購入意向書」を提出して申し込みをする必要があります。いわゆる仮契約の締結ですが、ここで手付金として物件価格の数%を支払い、物件を押さえておきます。
買主の都合で売買契約を中止する場合には、手付金は返却されません。逆に売主の都合で売買契約を結べなくなった場合には、手付金は倍になって戻ってくるのが中国独自の風習です。
本契約を締結後は、購入金額の20~30%を頭金として支払います。
6 中国で売買手続きの審査を受ける
売買契約を締結したら、その取引が正当なものであるかどうかの確認を受ける必要があります。特に中古マンションの場合には、その売買金額もチェックされます。
売買手続きの審査は不動産取引センターで行います。売買が妥当なものであるか、売買金額が周辺相場と比べて妥当であるかを調べます。審査には7営業日ほどかかります。
7 不動産購入にかかる税金を支払う
売買契約を締結し、審査も無事終われば不動産の登記に移ります。その際に、不動産購入に伴う「契約税」という税金を支払います。
契約税の税率は都市によって異なりますが、目安は購入金額の1%~5%です。そして先ほどの売買手続きの審査において、その金額に妥当性がないと判断された場合には、契約税も変わります。
中古マンションの購入において、周辺相場よりも不当に安い金額であると判断されたら、みなし評価額での売買として契約税を算出します。見なし評価額とは、周辺相場から算出した、本来あるべき売買金額です。
このほか、契約書に貼る「収入印紙税」が、購入額の0.5%かかります。ちなみに、リース契約の場合はリース金額の1%、融資契約の場合は融資額の0.05%を支払うことになります
8 中国の不動産登記の名義変更
不動産の登記は不動産取引センターで行います。このとき、新築の分譲マンションの場合は新たに権利証を発行し、中古マンションの場合は権利証の名義人変更手続きとなります。
中国の不動産登記証には、「房地産権証」「房地産共有権証(複数の所有者で1つの物件を所有する場合)」「房地産他項権証」の3種類があります(地域によって名称が多少変わる場合もあり)。
「房地産権証」はマンションの所有者が保管します。仮に所有者が複数人いれば、「房地産共有権証」というものが人数分発行されます。中古マンションを購入する場合には、この房地産共有権証をすべて書き換えることになります。
「房地産他項権証」はいわゆるローンを貸し出している銀行の抵当権設定証です。住宅ローンを使って購入した場合に発行され、融資をした銀行が保管します。
なお、不動産登記の手続きは、売買契約成立後の90日以内に行うことと定められています。手続きは1ヶ月程度かかります。
9 代金の支払い
登記が完了した後は購入代金の残金を支払います。なお、先述した通り、新築分譲マンションの場合には完成前でも支払いが必要です。
中国では消費者を保護する目的で、代金支払いに関して「エスクロー制度」を採用しています。エスクロー制度とは、売主と買主の代理である不動産取引業者によって支払いのやり取りが行われる仕組みです。
入出金は顧客専用の決済口座を銀行で開設し、その受け渡しに関する問い合わせはこの口座を確認することで不動産取引業者が対応します。
10 引き渡し
購入代金の支払いが終わったあとは、物件の引き渡しとなります。分譲マンションは完成後に引き渡しとなります。
中国の新築マンションには、キッチンや風呂など日本では最低限とされる内装工事がされていないタイプもあります。この場合、購入者が自分で手配して設備や内装工事を行いますが、引き渡しの際にもらう「住宅使用説明書」に違反しないよう注意することが必要です。
説明書には、内装やリフォームに関する注意点が記載されているため、よく確認することが大切です。
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