複数のソーシャルレンディング会社に対する行政処分、そして案件募集停止などの問題が発生し、投資家としてもソーシャルレンディング投資におけるリスク管理を慎重に考えなければいけない時期にさしかかっています。
ソーシャルレンディングのリスク管理の手段としてよく言われるのが、投資先の分散です。仮に投資先一社で問題が発生しても、複数の会社に投資先を分散していれば限定的な損失に抑えることが可能です。
しかし、安易な分散投資はリスクを拡大させてしまうこともあります。どういった点に注意して分散投資を心がけなければいけないのでしょうか。この記事では、分散投資のリスクやデメリットをご紹介しながら適切な取り組み方を考えていきたいと思います。
目次
- ソーシャルレンディングでは、分散投資にもリスクがある
1-1.中小のソーシャルレンディング会社への投資は、事業者リスクを拡大する
1-2.分散投資をすると投資効率は低下する
1-3.「分散投資だから安心」と思い込まないことが大切 - こんな分散投資は意味がない!
2-1.同じ会社内の投資案件で、一つの案件を分散しているだけの場合
2-2.業界が同じ分野だと、連鎖倒産の可能性もある
2-3.海外案件もリスクがある - 安定したソーシャルレンディング会社への集中投資が安全?
- まとめ
1.分散投資にもリスクがある
分散投資はリスクを拡散する性質上、リスクそのものを軽減する効果が高いと言われます。しかし、分散先をよく吟味して投資しなければ、逆に損失が生じることもあるのです。
1-1.中小のソーシャルレンディング会社への投資は、事業者リスクを拡大する
現在、日本のソーシャルレンディング会社は20社以上ありますが、その中でも比較的規模が大きく、バックについている会社もしっかりした所は以下のような会社です。
- 東証グロース上場企業ロードスターキャピタルの100%子会社であるロードスターインベストメンツ株式会社が運営する「オーナーズブック」
- 伊藤忠や第一生命が出資をしている「クラウドクレジット」
上記会社の実績を見ていくと、オーナーズブックではまだ、貸し倒れが発生していません。
一方で現在、案件募集停止状態に追い込まれている下記三社は、大手の金融グループに所属していたわけではなく、また会社も小規模でした。
- みんなのクレジット
- ラッキーバンク
- グリーンインフラレンディング
その一方で、金融庁からの行政処分を受けるまでは、高利回りで案件の貸し倒れを発生させたこともなく、運営実績は投資家から高く評価されていました。
つまり、今日まで貸し倒れのない小規模な会社は、業績や実績を華々しく見せるため、無理のある営業を続けているというケースもあるわけです。
大手の会社であれば、たとえ案件の貸し倒れが発生したとしても、資金を回収できるスキームを確立しています。そのため、貸し倒れによるダメージの範囲は、ある程度限定されることになります。
分散投資に気を取られすぎて大手の会社だけではなく、中小のソーシャルレンディング会社まで投資先にしてしまうと、事業者リスクの影響を受ける可能性が高くなります。
中小のソーシャルレンディング会社に投資する場合、融資先そのものや事業内容などをしっかり確認し、できるだけ高利回り案件ばかりを提供している会社を避けた方が良いでしょう。
1-2.分散投資をすると投資効率は低下する
分散投資ではどうしても投資効率が低下してしまいます。複数の会社に少しずつ資金を投入することになりますので、1社のみに投資するよりも振込手数料や出金手数料も多くかかります。また、毎月の分配金を複利投資に回すことも難しくなります。
例えば300万円を1社に投資していた場合、利回り8%のファンドの毎月の分配金は約1,780円です。最小投資単位が1万円の会社でしたら、6ヶ月待てば分配金を複利運用できます。
しかし、30万円ずつ3社に投資していた場合、同じ利回り8%だとしても1社あたりの毎月の分配金は180円弱です。1万円貯まるまでに60ヶ月がかかってしまう計算です。
このように、分散投資を行うと複利投資の効率が低下します。少額の分配金を自分の銀行口座に移そうとすると、手数料がかかってしまう会社もあります。
この弱点をカバーするにはデポジット口座がなく、直接自分の銀行口座に分配金が振り込まれるソーシャルレンディング会社を利用すると良いでしょう。もしくは、出金手数料が無料のソーシャルレンディング会社を選ぶことでもカバーできます。
1-3.「分散投資だから安心」と思い込まないことが大切
分散投資をする上で最も良くない考えが、「分散投資は安心だ」と思い込むことです。分散投資はあくまで手段にすぎず、目的はソーシャルレンディング投資のリスクを避けることです。
逆に言ってしまえば、非常に安全だと信じられる会社があれば、その会社に全ての資金をつぎ込んでも全く問題ないのです。
ただ何も考えずに、10社にそれぞれ毎月1万円ずつ投資していく。それはまるで機械的だと言わざるを得ません。投資対象と投資時期を分散するという意味で有効な手ですが、投資先の会社の中にリスクの高い会社が含まれていれば、最終的には損失を被る可能性も出てきます。
安心できる投資先をしっかりと選んだ上で、分散投資していきましょう。
2.こんな分散投資は意味がない!
また、分散投資のつもりでも実際は分散ではなく、あまり意味がないことがあります。そんな分散投資とはどのようなものでしょうか。
2-1.同じ会社内の投資案件で、一つの案件を分散しているだけの場合
ソーシャルレンディング会社の案件を見ていくと、複数回に分けて一社に融資していることがあります。例えばクラウドリースのこちらの案件の記載を見てみましょう。
複数回募集されている案件は、事業者Fへの融資を分散したに過ぎません。
結局、自分では分散投資のつもりでも、その案件で貸し倒れが発生すれば、一気に複数の投資案件で損失が膨らむ可能性が高いです。同じ会社の案件でも、「何号と何号が実質的に同じ案件だ」などと、融資先はきちんと把握しておきましょう。
2-2.業界が同じ分野だと、連鎖倒産の可能性もある
また、色々な会社に投資していても融資先の業界が同一だと、分散投資が意味を成さないことがあります。
仮にこれから先、経済危機が起こって不動産業界全体が被害を被ったとします。そうなると、不動産関係のソーシャルレンディング投資案件も全て、ダメージを受ける可能性があります。
投資時期を分散していれば多少のダメージを軽減できますが、不動産案件に集中して色々な会社に投資していた場合、全く無意味になってしまうこともあります。
逆に、これが不動産案件ではなく太陽光発電やバイオ技術の開発案件など、他の業界の案件に投資していれば、影響の範囲は限定的なものになります。融資先の業界も、きちんと分散させていくようにしましょう。
2-3.海外案件もリスクがある
海外案件への分散投資は、リスク回避のために有効な手段と言われます。ただ、日本には日本のリスクが、海外には海外のリスクが存在します。
クラウドクレジットのカメルーン案件や、ヨーロッパでの個人融資案件などでは、貸し倒れが実際に何件も起き、そのリスクは案件詳細にきちんと記載されています。
カントリーリスク、災害リスク、政治リスクなど、日本にはない外国ならではのリスクも存在します。特に発展途上国は、残念ながら先進国に比べてコンプライアンス意識などが未発達という点についても認識をしておく必要があります。
海外案件への分散投資の際もハイリスク・ハイリターン型なのか、それともローリスク・ローリターン型なのか、確認してから投資先を選びましょう。
3.ソーシャルレンディング業界の現状を見ると、安定した会社への集中投資が安全?
これらの現状を踏まえ、日本のソーシャルレンディング業界では今後、どのような分散投資が有効でしょうか。あくまでも2018年時点の話になりますが、現在は大手ソーシャルレンディング会社への数社間分散投資が、最も安全と考えられます。
オーナーズブックなどの大手であれば、他の会社と比べて規模が大きく、事業も黒字化を達成しているため、他の会社と比べて事業者リスクは小さいと言えるでしょう。
中小規模のソーシャルレンディング会社は、確かに利回りや収益性が高い案件を有していますが、実際の貸し倒れ時における対応は現時点では未知数です。それぞれの会社の特徴を見て、本当に投資リスクが低いのはどの会社なのか、きちんと自分で考える必要があるのです
分散投資を検討する際は大手を含む4社~5社程度、その中でも大手は2、3社入れておきたいところです。
4.まとめ
ソーシャルレンディングの分散投資は、確かにリスク対策としては有効です。しかし、意味のある分散投資を行うには、きちんと自分の頭で考えながら融資先情報や実績を収集・調査の上、リスクが低い投資先か否かを判断する必要があります。
情報収集を常に怠らず、信頼できる投資先をきちんと自分の目で見抜いてから、分散投資に乗り出しましょう。
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