不動産投資の最大の特徴であり、他の投資商品と決定的に異なる点は「融資(レバレッジ)」を活用できることです。自己資金が少なくても、銀行からの融資を利用することで数千万円、場合によっては数億円規模の資産を運用することが可能になります。
この「融資」をどのように活用するかによって、不動産投資のスタイルは大きく「守り」と「攻め」に分かれます。どちらが正解というわけではなく、投資家の属性、資産状況、そして投資の目的によって最適な戦略は異なります。
本記事では、不動産投資における融資戦略を「守り」と「攻め」の視点から整理し、それぞれのメリット・デメリット、そしてどのように使い分けるべきかについて解説します。
1 融資における「守り」の戦略とは
「守り」の融資戦略とは、徹底してリスクを低減し、破綻の可能性を極限まで排除する手法です。主に「安全性」と「確実性」を重視します。すでに一定の資産を築いている方や、絶対に失敗できない(リスク許容度が低い)方に適しています。
1-1 自己資金を多めに投下する(低レバレッジ)
最も基本的な「守り」の手法は、物件購入価格に対して自己資金を多めに入れることです。
例えば、5,000万円の物件を購入する際、2,500万円(50%)を自己資金で賄い、残りの2,500万円だけ融資を受けるといった形です。借入金額が少なくなれば、当然ながら毎月の返済額は少なくなります。
- 返済比率が下がり、空室や家賃下落が発生してもキャッシュフローが赤字になりにくい
- 金利上昇時の返済額増加インパクトを最小限に抑えられる
- 銀行からの評価が高まり、好条件(低金利)での融資を引き出しやすくなる
極端な例では、現金一括購入(ノーローン)が最強の「守り」ですが、それでは不動産投資のメリットであるレバレッジ効果(資金効率)が失われてしまいます。「守り」を重視しつつも、適度な融資活用で効率を高めるバランスが重要です。
1-2 固定金利を選択する
金利タイプには「変動金利」と「固定金利」がありますが、「守り」の戦略では固定金利が選好されます。
現在の日本では超低金利政策が続いており、変動金利の方が固定金利よりも利率が低いのが一般的です。しかし、将来的に金利が上昇した場合、変動金利では返済額が増加するリスク(金利上昇リスク)があります。
固定金利を選択すれば、融資期間中の返済額が確定するため、将来の収支計画が立てやすく、金利上昇におびえる必要がありません。「安心を買う」という意味で、多少金利が高くても固定金利を選ぶのは有効な防衛策です。
1-3 元金均等返済を選ぶ
返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。
- 元利均等返済:毎月の返済額(元金+利息)が一定。当初は利息の割合が多く、元金が減りにくい。
- 元金均等返済:毎月の元金返済額が一定。当初の返済額は多いが、元金が確実に減っていく。
「守り」の視点では、元金均等返済が優れています。返済が進むにつれて支払い利息が減少し、総返済額を抑えられるほか、借金(残債)が早く減るため、将来的な売却や借り換えがしやすくなるためです。当初のキャッシュフローは厳しくなりますが、財務体質を早期に健全化できる手法です。
2 融資における「攻め」の戦略とは
「攻め」の融資戦略とは、リスクを取ってでも資金効率(レバレッジ)を最大化し、短期間での資産拡大を目指す手法です。「スピード」と「収益性(CCR)」を重視します。これから資産を築きたい若年層や高属性の方、資産拡大フェーズにある方に適しています。
2-1 フルローン・オーバーローンを狙う
「攻め」の真骨頂は、自己資金をほとんど使わずに物件を購入するフルローン(物件価格の全額融資)やオーバーローン(諸費用込みの融資)です。
自分の財布から現金を極力出さないため、手元の資金(キャッシュ)を温存できます。温存した資金を次の物件購入の諸費用や頭金に回すことで、1棟目、2棟目、3棟目…と、倍々ゲームのように資産規模を拡大(スケール)させることが可能です。
自己資金に対する利回り(CCR:Cash On Cash Return)は劇的に高まりますが、借入金が大きくなるため、返済比率が高まり、少しの空室でキャッシュフローが悪化するリスクと隣り合わせです。
2-2 変動金利・期間延長でキャッシュフローを出す
借入金額が大きくなる「攻め」の戦略では、毎月の返済額をいかに抑えるかが生命線となります。そのため、以下の条件を狙います。
- 変動金利:固定金利よりも低い金利で借り、支払利息を抑える。
- 期間延長:法定耐用年数を超える期間(劣化対策等級付き物件や、銀行独自の評価など)で融資を組み、月々の返済額を圧縮する。
「金利上昇リスク」や「残債が減らないリスク」を許容し、目先のキャッシュフロー(手残り現金)を最大化させることで、次の投資への原資を作ります。
2-3 資産価値向上によるキャピタルゲイン狙い
単に長く持つだけでなく、適切なタイミングでの売却(出口戦略)を積極的に狙うのも「攻め」のスタイルです。
融資を活用して大規模な物件を購入し、運営努力によって満室稼働させ、家賃収入をアップさせることで物件の収益価値を高めます。その上で、購入価格よりも高く売却できれば、売却益(キャピタルゲイン)とインカムゲインの双方を得ることができます。
この場合、短期譲渡所得税が解消される5年後などを目安に、出口を見据えた融資期間設定や戦略が必要となります。
3 「守り」と「攻め」、自身のフェーズによる使い分け
重要なのは、「守り」と「攻め」のどちらが優れているかではなく、自身の状況に合わせて適切に使い分ける、あるいは組み合わせることです。
3-1 資産拡大期(資産0〜数億円まで)
まだ資産が少なく、これから大きく増やしていきたい「資産拡大期」においては、ある程度の「攻め」が必要です。自己資金を貯めてから安全に買おうとすると、資産形成に数十年かかってしまいます。
若くて労働期間が長く残っている、あるいは本業の給与収入(属性)が高く、万が一のリスクを給与でカバーできる場合は、フルローンや変動金利を活用し、レバレッジを効かせて資産規模を一気に拡大させるのが合理的です。
3-2 資産安定期(リタイア前後・資産数億円以上)
十分な資産規模になり、サラリーマンをリタイアして不動産収入だけで生活する「資産安定期」に入れば、戦略を「守り」にシフトすべきです。
拡大スピードよりも、資産を守り抜くことが最優先となります。保有物件の借入を変動から固定に借り換える、物件を売却して自己資金比率を高めた安全な物件に買い替える、繰り上げ返済を進めて無借金物件を作るなど、財務体質の強化に舵を切ります。
3-3 ハイブリッド戦略
多くの投資家にとって現実的なのは、両者を混ぜたハイブリッド戦略です。
- 1棟目はフルローンで「攻めて」キャッシュフローを確保する
- 貯まったキャッシュフローと給与を2棟目の頭金に入れ、少し「守り」の比重を高める
- ポートフォリオ全体で見て、返済比率が50%を超えないようにコントロールする
このように、アクセル(攻め)とブレーキ(守り)を微調整しながら、破綻しない範囲で最大限の成長を目指すのが、成功する不動産投資家の共通点と言えます。
4 融資に強く、入居率が高いアパート経営会社
最後に、融資戦略を実践する上でパートナーとなり得る、融資付けに強く、かつ入居率の高い物件を提供するアパート経営会社を2社紹介します。
4-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、日本で初めて新築アパート経営において独占提携ローンにより「頭金0円」からのアパート経営を可能にしたパイオニア企業です。
創業30年以上の実績と、グループ会社による管理戸数50,000戸以上(2024年12月末時点)、入居率98.75% (2024年年間平均/自社企画開発物件)という高い実績が金融機関から評価されており、好条件での融資アレンジに強みを持ちます。
「金利1%台」「期間35年」といった有利な融資条件の実績も豊富で、初心者であっても「攻め」と「守り」のバランスが取れた投資設計を提案してくれるのが特徴です。土地を持っていないサラリーマン層をメインターゲットにしており、年収500万円台からでも相談可能です。
4-2 アイケンジャパン
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」を掲げ、入居者のターゲットを社会人女性に絞った防犯性・デザイン性の高いアパートを展開しています。
融資に関しては、金利1%台後半~、期間35年といった実績があり、複数の金融機関と提携しています。特筆すべきは「収益稼働率」の高さです。新築時の想定家賃に対し、経年してもどれだけ家賃が下がっていないかを示す指標で、98.3%(2022年12月末時点)という高水準を維持しています。
これにより、銀行からの評価(積算評価・収益評価)が出やすく、フルローンに近い融資実績も豊富です。失敗しないための「守り(物件力)」と、資産を増やすための「攻め(融資力)」を兼ね備えた会社と言えます。
5 まとめ
不動産投資における融資戦略に、万人に共通する「正解」はありません。
- 守りの戦略:自己資金多め、固定金利、元金均等返済(安全第一)
- 攻めの戦略:フルローン、変動金利、期間延長(スピード・効率第一)
重要なのは、自分の現在の属性、資産状況、リスク許容度、そして最終的なゴール(いつまでに、いくらのキャッシュフローが欲しいか)を明確にし、それに合った戦略を選択することです。
多くの成功者は、初期段階ではリスクを取って「攻め」て資産を作り、規模が拡大するにつれて徐々に「守り」へシフトしていく傾向にあります。
融資は適切にコントロールすれば、個人の力では到達できない大きな資産を築くための有効な手段となります。自身のフェーズを見極め、適切なパートナー(不動産会社・金融機関)を選び、戦略的に融資を活用してください。
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伊藤 圭佑
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