公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は5月30日、使用済み漁網の回収・リサイクルを通じて漁業者による漁具の管理を促すプロジェクト「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」を発足した。宮城県気仙沼市と協働で使用済み漁網を回収、リサイクルする。
同プロジェクトの背景には、海洋プラスチックごみ問題の原因となる「ゴーストギア」問題がある。海洋プラスチックごみは、最も急速に悪化している国際的な環境問題の一つ。海洋に流出しているプラスチックは推定で年間1100万トン、なかでもウミガメや海鳥といった生物に深刻な被害を与えているのが海に流出した漁網やロープ、釣り糸などの漁具(ゴーストギア)。ほとんどの原料がプラスチックで、その量は推定年間50万~115万トンに上る。
WWFジャパンは、問題の解決策の一つとして、いつくかの水産都市の自治体と漁協などの協力を得てゴーストギアの発生予防に取り組む。今回プロジェクトで協業する気仙沼市は、2019年に「気仙沼市海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」を制定、海洋プラスチックごみゼロを目指し、海岸清掃、海中ごみの回収、海ごみ回収ステーションの設置など、積極的な対策を行なっている。
同市教育委員会と教職員向けESD(持続可能な開発ための教育)研修を行なっていた繋がりから、WWFジャパンより漁網回収・リサイクルの協働について同市に提案。漁協を通じて、まずサケ刺し網などを対象に回収を開始することを決めた。使用済みになった漁網を無償で回収することで、漁業者の経済的負担を軽減しながら、漁具の管理に対する意識を高め、ゴーストギアの発生を予防する狙い。
使用済み漁網の回収とリサイクルは、米国のリサイクル専門会社、テラサイクルジャパン合同会社が、マテリアルリサイクルを行ない、再生プラスチック原料としたうえで、スポンサー企業の協力を得て製品化を行なう計画だ。
プロジェクトの発足日は、環境月間間近の「530(ゴミゼロ)の日」にちなんだ。「使用済み漁網の回収は、海洋プラスチックごみの発生を抑制し、同市の主要産業である漁業を持続可能にすることは地域コミュニティの持続性にも繋がる」として、同市教育委員会は一般社団法人3710lab(みなとラボ)と連携し、新たな海洋教育カリキュラムを開発。みなとラボは「海・学び・ヒト」をテーマに「学び」のアイデアや新しい時代の教育のあり方を考えるためのプラットフォーム。学校の教育現場や地域社会、市民活動で、海や学びにまつわる様々な情報を集約し、実践的なワークショップを中心としたイベントやウェブメディアで提供している。漁業者の漁具管理、役目の終わった漁具の回収・リサイクルの取り組みを題材の一つとして取り上げ、今年度中に展開する予定。
WWFジャパンは他の水産都市の自治体にもプロジェクトへの参画と協働を拡げていく方針。スポンサー候補も募集している。
【関連サイト】WWFジャパン「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」
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