今回は、従来の金融市場とビットコイン市場の相関関係について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- ビットコインとその他資産との相関関係
1-1.米国株とビットコイン
1-2.米国債金利とビットコイン
1-3.ゴールドとビットコイン - マーケットの現在の相関関係
- 株式市場と債券市場現在の状況
- ビットコインの足元の環境
- まとめ
時価総額最大の仮想通貨(暗号資産)であるビットコインは「デジタルゴールド」と呼ばれることもありますが、一方で「リスク資産」と呼ばれることもあり、まだ金融商品としての位置づけが定まっていません。
2022年にビットコインは株式市場との相関が強まり、米国株とほぼ連動しているような動き方をしていました。しかし、ここへきてその相関が崩れつつあります。
ここでは現在のマーケット状況と相関関係からビットコイン相場をどのように見ていくべきか考察したいと思います。
①ビットコインとその他資産との相関関係
1-1. 米国株とビットコイン
最初に2022年5月現在のビットコインと、その他資産の相関関係を確認してみましょう。下記のチャートをご覧ください。
オレンジがビットコイン、青色がS&P500指数のチャートで2022年からの騰落率を示しています。
このように見るとS&P500指数とビットコインの価格の相関が強かったことがわかるでしょう。そのため2022年はビットコインの投資家はアメリカの株式市場をチェックしながらトレードを行っていました。
しかし黄色の丸印をご覧ください。このタイミングでビットコインとS&P500指数の相関関係が突如崩れ始めています。
1-2. 米国債金利とビットコイン
米国債金利とビットコインのチャートをみてみましょう。
上記は米国債2年金利(青色)とビットコイン(オレンジ)のチャートです。このようにしてみると大きな相関はないと捉えることができるでしょう。
次に、米国債10年金利とビットコインのチャートをチェックしてみます。
こちらも同様に相関関係は強くないと言えるでしょう。
1-3. ゴールドとビットコイン
最後にゴールドとビットコインの関係性を確認してみます。
青色がゴールドでオレンジがビットコインですが、下落局面は同じような動きで推移しているものの、相関が強いようには見えません。
ではここからそれぞれのどのような関連性が考えられるでしょうか?
②マーケットの現在の相関関係
これらの相関関係を整理してみましょう。ビットコインは株式市場と連動していたものの、現在は相関が崩れています。また債券金利ともゴールドの価格の値動きとも相関関係は見られていないといません。
そのため、一つのトレーディング方針として「しばらく、ビットコイン特有のフローに着目してトレードしていく必要がある」と考えることができます。
ビットコインの現在の状況について深堀りする前に、金融市場全体のマクロ環境についても触れておきたいと思います。
③株式市場と債券市場現在の状況
株式市場ではS&P500指数やNASDAQともに反発の兆しを見せる中、経済指標は住宅関連の指標を中心に芳しくない数字も出ています。
一方で注目されているインフレ関連の指標では、インフレが進行するよりも、緩やかになる、あるいは鈍化する可能性があるような数字も見られ始めています。つまり、インフレ懸念が弱まっていることが足元の株高の材料となっています。
米国債金利も金利高が止まり、足元は2年ゾーンを中心に金利低下方向の動きとなっています。これまでは2年ゾーンの金利が10年ゾーンの金利よりも上昇スピードが早く、一時逆イールドと呼ばれる現象が起きていました。※逆イールドとは短期金利が長期金利を上回ること。景気後退の前兆とも言われている動き
しかし、現在では2年金利の金利低下が10年金利の金利低下よりも早いスピードで低下しており、2年金利と10年金利の金利差は拡大しつつあるというのが足元の状況です。
上記は米国債2年金利と10年金利の金利差を青色で表示しており、S&P500指数をオレンジで表示しています。
一度青色がマイナスの付近まで低下していますが、足元は拡大する方向に転じつつあり、株価も遅れて反発の兆しが見え始めています。
米国株式市場をみる時は債券金利の動きや長期金利と短期金利の動きも大事なポイントのため触れておきました。投資をしたいと思っている方は是非見ておきましょう。
④ビットコインの足元の環境
ビットコインは5月28日時点、株式市場の上昇についていけておらず、30,000ドル(360万円)を割り込むあたりでの推移が継続しています。
仮想通貨市場全体でもLUNAの暴落が起こり、ステーブルコインの信任に揺らぎが生じており、アルトコインも大幅な下落となっていることから、センチメントとしては良くない環境ということは間違い無いでしょう。
ビットコイン相場では、大口の機関投資家のフローが価格形成のトリガーとなっており、大口のフローを確認しておくことが重要になってきています。
26,000ドル(約330万円)から30,000ドルの間というのは大口の損益分岐点となっているため、この水準で止まるかどうかで年後半の相場が変わってくるでしょう。
⑤ビットコインとの相関が崩れた場合の考え方
これまでは株式市場とビットコインは相関が強かったものの、現在はその傾向が薄れてきています。
相関が崩れている場合は、どちらもロング(買いポジションを保有)することで、ポートフォリオの分散効果を発揮します。分散効果とはポートフォリオの考え方で相関が低いものを組み合わせて、全体の資産の上下の幅を小さくするということです。ポートフォリオを色々な種類で分散するメリットはリスクとリターンのバランスが良くなり、全体の値動きを抑えることができるという点です。
ただし、「分散をたくさんすればいいのか?」というと、これは間違いです。大切なのはそれぞれの資産の値動きの方向となっています。例として仮想通貨をポートフォリオに入れたいと考えたとして、ビットコインとイーサリアムとリップルを購入したとします。しかし、これら3つの仮想通貨の値動きは総じて相関関係が強く、ビットコインが下落すると他の2種類も同時に下落することもあるため、このように相関関係が高いものを複数ポートフォリオに入れたとしても、分散効果は期待できません。
仮想通貨内で入れるならビットコインとは相関関係がないトークンを選択する必要があります。
また、ビットコインよりもアルトコインのほうが値動きが大きいため、その値動きの幅が大きい方の金額を小さくして評価損益の金額を調整することでポートフォリオの分散が期待できるでしょう。
ビットコイン以外でもポートフォリオを考える場合は、常に「資産の値動きの方向性」をみながら投資をすることが長期的な資産形成を考える上ではとても大切であるということを頭に入れておきましょう。
⑥まとめ
ここでは仮想通貨とその他の資産との相関関係について解説しました。現状の状況と、今後のビットコイン相場を含めて、仮想通貨をどのように資産運用のポートフォリオに組み込むかについてもご紹介しました。
個人的にはポートフォリオ内における仮想通貨の割合は5%程度でいいのではないかと考えています。やはり仮想通貨市場自体が通常では経験しなかった値動きの幅が生じる場合があります。またハッキング等、仮想通貨特有のリスクもあるため、資産の大多数を仮想通貨で保有することは危険だと思っています。
しかし、仮想通貨の値動きの大きさと、伝統的金融市場との相関関係が弱まっている今では、ポートフォリオに入れてもいい資産クラスになっているとも考えられます。ポートフォリオの一部を使って、現物ビットコインを保有してみることを検討してもいいでしょう。
中島 翔
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