不動産投資家の間でも、東京都内は最も人気が高いエリアです。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大とリモートワークの普及に伴い、都心からの人口流出も報道されています。
実際に東京都内の人口はどのように推移しているのか、疑問を感じる人もいるのではないでしょうか。東京都の統計に基づいて、新型コロナウイルスの感染拡大の前後でエリアごとの人口推移を比較します。
目次
- 東京23区と市の人口推移
1-1.2019年11月以降人口が増加している市区
1-2.人口が減少している市区 - 国分寺市・小金井市・稲城市・三鷹市の人口動態
2-1.4市の中で人口が最も多いのは?
2-2.生産年齢人口の推移 - 不動産投資のエリア選定では詳細な調査が重要
- まとめ
1.東京23区と市の人口推移
新型コロナウイルスの感染拡大が起きる前から比較して、人口増加と人口減少が大きい市区について解説します。
1-1.2019年11月以降人口が増加している市区
東京都の統計に基づいて2019年10月から2021年5月の人口増加率を比較すると、人口増加率が1%を超えている市区は以下のとおりです。
- 千代田区:2.55%
- 中央区:2.54%
- 国分寺市:2.02%
- 小金井市:1.74%
- 稲城市:1.46%
- 三鷹市:1.43%
- 品川区:1.20%
- 江東区:1.14%
- 台東区:1.11%
※参照:東京都「住民基本台帳による世帯と人口」
都心5区にも含まれる千代田区と中央区は人口増加率が2.5%を超えており、新型コロナウイルスの感染拡大が起きた以降、東京都の中では最も人口が増えました。
なお、2019年から2020年にかけて、千代田区は約2.99%、中央区は3.73%公示地価が上昇しています。しかし、2020年から2021年にかけてはどちらも公示地価が下落しました。どちらの区でも今後の不動産価格推移には注意を要します。
また、増加率3位~6位は国分寺市など西側の市が占める結果となっています。国分寺市や小金井市は、路線で見るとJR中央線の三鷹から国分寺に該当するエリアです。
なお、吉祥寺駅周辺の武蔵野市でも、0.93%と台東区に続く人口増加率を記録しています。つまり、吉祥寺から国分寺の沿線では、東京都の中では新型コロナウイルスの感染拡大を経てなお人口が増加していることになります。
1-2.人口が減少している市区
一方、東京都の中で人口が減少している市区は以下のとおりです。
- 福生市:-1.73%
- 羽村市:-1.61%
- 青梅市:-1.26%
- 新宿区:-1.19%
- 豊島区:-1.15%
※参照:東京都「住民基本台帳による世帯と人口」
新型コロナウイルスの前後で人口が減少したエリアは、立川市から西側に位置するJR青梅線沿線に集中しています。
「新型コロナウイルスの拡大によってテレワークが普及した結果、都心に集中していた人口が周辺エリアに拡散し始めた」と考える方も少なくありませんが、エリアごとに細かく見て行くと、東京都では立川より東側に人口が集中している傾向が見られます。
また、新宿区と豊島区は新宿駅や池袋駅周辺のエリアですが、こちらも減少幅が1%を超えました。なお、港区も-0.03%と人口を減らしているため、都心5区の中でも人口が増えているエリアと減っているエリアとの差が大きくなっていることがわかります。
2.国分寺市・小金井市・稲城市・三鷹市の人口動態
人口増加率が高かった国分寺市・小金井市・稲城市・三鷹市に絞って、人口動態をより詳しく解説します。
2-1.4市の中で人口が最も多いのは?
2021年5月時点における国分寺市・小金井市・稲城市・三鷹市の人口は以下のとおりです。
- 国分寺市:127,491人
- 小金井市:124,403人
- 稲城市:92,677人
- 三鷹市:191,119人
※参照:東京都「住民基本台帳による世帯と人口」
4市の比較では三鷹市の人口が最多となっており、反対に人口が最小なのは稲城市です。また、国分寺市は小金井市よりも人口が約3,000人多くなっています。国分寺市・小金井市・三鷹市はそれぞれJR中央線の沿線都市ですが、稲城市は私鉄の京王線沿線都市です。沿線の利便性が人口にも表れているものと考えられます。
なお、人口や利便性の違いは公示地価にも表れており、4市における2021年時点の住宅地公示地価は以下の通りです。
- 国分寺市:287,400円/㎡
- 小金井市:337,600円/㎡
- 稲城市:231,900円/㎡
- 三鷹市:413,400円/㎡
※参照:東京都財務局「地価公示価格(東京都分)」
4市の中で地価が最も高いのは三鷹市で、稲城市の地価は最も低くなっています。なお、人口に大きな差がない国分寺市と小金井市との比較では、地価は小金井市の方が高い点が特徴的です。
2-2.生産年齢人口の推移
不動産投資のエリアを選ぶ上では、生産年齢人口の多さに着目することも重要です。生産年齢人口とは15歳から64歳の人口のことを指しており、この年齢が多いエリアでは単身者用ワンルームマンションだけでなく、新しく賃貸物件を探しているファミリー向け物件の需要も期待できるためです。
人口増加率が多かった国分寺市などのエリアにおける、生産年齢人口の推移は以下グラフの通りです。
※参照:東京都「住民基本台帳による世帯と人口」
4市の比較では、生産年齢人口が最も多いのは三鷹市です。反対に最少なのは稲城市で、稲城市の生産年齢人口は三鷹市の約半分となっています。その一方で、小金井市と国分寺市とはほぼ同数ですが、2021年時点ではわずかに国分寺市の方が多くなっています。
どの市でも増加数がそれほど多いわけではありませんが、新型コロナウイルスを経ても生産年齢人口の増加を続けている状況です。また、対前年比増加率の推移については以下の表のようになっています。
2020年 | 2021年 | |
---|---|---|
三鷹市 | 0.67% | 0.82% |
小金井市 | 0.50% | 0.99% |
国分寺市 | 1.10% | 1.20% |
稲城市 | 1.12% | 0.66% |
※参照:東京都「住民基本台帳による世帯と人口」
4つの市の比較では、国分寺市だけが唯一1%を超えています。なお、稲城市は唯一2021年に増加率を下げており、1年間でほぼ半減しました。一方で増加率が最も伸びたのは小金井市です。
3.不動産投資のエリア選定では詳細な調査が重要
新型コロナウイルスの拡大によって東京都の人口一極集中傾向が弱まる可能性もありますが、千代田区と中央区とでは人口が増えているなど、一概に都心部で人口が減っているとは言えません。その一方で都心5区の中でも新宿区では人口が減っているなど、エリアによって状況は異なります。
リモートワークの広がりから地方移住者の増加などもメディアで取り上げられる機会が増えました。しかし、西東京の市部で人口が増えている実態から、都内もしくは首都圏の中でのみ人口が動いているとも考えられます。
不動産投資のエリア選定においてはマクロの視点に加えて、各エリアにおけるミクロの視点で人口動態を確認することが重要です。
まとめ
東京都内の市区別人口動態を見ると、都心5区の中でも状況は異なっています。また、2019年末以降の統計では、三鷹市や国分寺市など東京西部の市で人口が増加しました。今後はこれらのエリアに注目してみるのも良いでしょう。
国分寺市は特に生産年齢人口が増えており、賃貸需要の拡大も期待できます。その一方で、2021年5月までの推移では、立川市から西側の青梅線沿線では人口が減少中です。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後の「アフターコロナ」においてもテレワークが継続されるのか、以前の職住近接の傾向に戻るのか、未知数な状況です。定期的にエリアごとの人口動態を調べ、その背景にどのような原因があるのか、試案していくことが重要と言えるでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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