知っておきたいアパート経営の3つの罠、失敗事例から考える投資戦略

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アパート経営には、長期にわたる安定収入の確保や次世代に引き継げる資産形成など大きなメリットがありますが、その一方でさまざまな投資上のリスクもあります。

ここでは、アパート経営の3つの失敗事例を通じてその失敗の原因を探るとともに、有効な投資戦略のポイントについてご紹介します。

  1. 都心の一等地でのアパート経営失敗事例
    1. 一等地の物件でも家賃は適切な範囲にする
    2. 無理がない資金計画を策定する
  2. 相続税対策でのアパート経営失敗事例
    1. 賃貸需要を見極めた適切な立地選定が重要
    2. サブリース契約に注意
  3. 格安物件購入でのアパート経営失敗事例
    1. 相場より安い物件はその理由を探る
    2. 現地を必ず視察する
    3. 賃貸経営は魅力ある建物・部屋づくりが重要
  4. まとめ

1 都心の一等地でのアパート経営失敗事例

まずは、都心の好立地物件における失敗例を見てみましょう。

某大企業に勤めるAさんは、都心の一等地に新築アパート1棟を2億円で購入しました。物件は高額でしたが、Aさんの年収が比較的高かったため、銀行からまとまった額の資金を借りることができました。

物件の場所はJR山手線のターミナル駅から徒歩10分以内という好立地で、アパートの仕様は全室が単身者用となっていました。「このエリアなら賃貸需要が相当に見込める」と自信を深めたAさんは、ローン返済に支障が生じないよう、家賃額を相場より2万円ほど高く設定して募集を開始しました。

しかし、募集を開始するとなかなか空室が埋まらなかったため、Aさんは仕方なく、家賃を引き下げて再度募集をかけました。最終的には家賃の引き下げが功を奏し、満室にすることができましたが、家賃収入から必要経費やローン返済金を除くと、現金の手残りがほとんどありませんでした。

事例ではAさんの投資戦略のどこに問題があったのでしょうか。

1-1 一等地の物件でも家賃は適切な範囲にする

事例では、物件が2億円と高額だったため、募集家賃を高めに設定して一定の利回りを確保する必要がありました。また、毎月のローン返済を可能にするためにも、ある程度まとまった額の家賃収入が必要でした。

しかし、相場より高い家賃を毎月払うことができるのは、一等地にある新築物件といっても一部の経済力がある人を除きそれほど多くありません。立地条件に恵まれた高額な物件でも家賃を一定水準以上にすると入居者は集まりにくくなります。そのため入居募集に支障が生じない程度で家賃を設定することが求められます。

加えて、アパートはマンションに比べると性能面での競争力が低いことが多いため、賃料を近隣のマンションの相場以下に設定することが求められるという点も念頭に入れておきたいポイントです。

1-2 無理がない資金計画を策定する

立地などから「この物件は賃貸需要が相当見込める」とのAさんの判断は、それほど間違った見立てではありません。

しかし、一等地にある新築物件の購入には巨額の資金が必要で、ある程度の自己資金を準備していても、残りは銀行から借り入れることになります。そして、その返済のために一定水準以上の家賃収入がなければ、賃貸経営を維持していくことが難しくなります。

この事例では、相場より高い募集家賃が敬遠され、入居者が集まらなかったために家賃額を引き下げたことから、ローン返済金の支出が手元のキャッシュフローを圧迫する結果になってしまいました。

このような状態が続くと、空室の発生時やリフォーム・修繕工事を行う場合に、必要な現金が不足して適切な対応を講じることが難しくなってしまいます。都心での賃貸経営は、一定の賃貸需要こそ見込めるものの、自己資金を十分に準備し、無理のない資金計画を立てたうえで取り組むのでなければ、ローン返済開始後に資金難におちいる危険があります。

2 相続税対策でのアパート経営失敗事例

次に、相続税対策として購入した新築アパートにおける失敗事例を見てみましょう。

銀行にお金を預けていても金利がほとんど付かないため、ある地方都市に住んでいるBさんは、相続税対策として自宅の敷地にアパートを新築しました。Bさんの自宅は県庁所在地の市内でしたが、最寄駅からバスの乗り継ぎが必要な場所です。

検討段階で、Bさんは入居希望者がどれほどいるかが心配でしたが、「30年一括借上げの家賃保証をつけるので、空室や家賃滞納があっても大丈夫」という業者の言葉に背中を押され決断しました。賃貸開始後、Bさんが心配したとおり、部屋はなかなか埋まりませんでしたが、サブリース会社から保証家賃がきちんと支払われるなど、しばらくの間は順調でした。

ところが、2年が経過した頃、サブリース会社から「入居状況がよくないため保証家賃額を現在より5%下げてほしい。それが無理なら、サブリース契約は継続できない」と突然言われ、従わざるを得ませんでした。

さらにその後何年かして、保証家賃額の再見直しにあたり双方が折り合わず、サブリース契約が解約となった結果、Bさんは自力で賃貸経営を行うことになりました。自己資金100%で建築したためローンの返済はありませんが、依然として入居率は低調なままの状態が続いています。Bさんは「経営を続けても投下資金の回収は難しい」と諦めています。

この事例における失敗の原因を考えてみましょう。

2-1 賃貸需要を見極めた適切な立地選定が重要

Bさんがアパート経営を始めた動機は相続税対策となります。多額の銀行預金を持ち続けているより、それを賃貸用不動産に変える方が相続税の算定における評価額を大幅に圧縮できると考えていました。

しかし、不動産投資が相続税対策として有効な手段であっても、最初に検討しなければならないのは、事例のようなアパート経営が「賃貸事業として本当に成り立つかどうか」という点です。肝心の賃貸事業で損失を出しては、相続税対策を行う意味も失われてしまいます。

そもそも地方都市で交通の利便性があまり良くないエリアでは、積極的な賃貸需要が見込めるとはいえません。事例のケースは「最寄駅からバスの乗り継ぎが必要な場所」と、交通アクセスが良いとはいえず、賃貸需要が見込めないエリアを選定したことが失敗の要因だったと考えられます。

2-2 サブリース契約に注意

また、サブリース契約を結んだことも原因のひとつと考えられます。

サブリース契約は、サブリース会社がオーナーから物件を一括して借り上げ、それを入居者に賃貸する契約です。空室や家賃滞納の発生にかかわらず、オーナーには当初設定家賃額の80~90%の保証家賃額が支払われるので、長期的な家賃収入を確保できるといったメリットがあります。

しかし、サブリース契約は、2~3年ごとに保証家賃額の見直しが行われ、また、対象物件の賃貸需要が低調とみなされれば、契約期間の途中で解約する場合もあります。当初からサブリース契約に頼ることを想定した賃貸経営計画は、検討段階で一旦立ち止まり、冷静に考え直すことも必要です。

3 格安物件購入でのアパート経営失敗事例

最後に、物件の安さばかりに注目した結果、失敗した例をご紹介します。

Cさんは、東京近郊に築後20年近く経つ中古のアパートを1棟購入しました。
購入の動機は、近隣の相場と比べて物件価格が安かったこと、想定利回りがよいこと、空室があまりなかったこと、不動産業者に強く勧められたことなどでした。本業の仕事が忙しかったCさんは業者の言葉を鵜呑みにして、現地の下見をせずに購入しました。Cさんは、「募集すれば入居者がすぐに現れるだろう。利回りがよい物件だから、これからはどんどん稼げるぞ」と気楽に構えていました。

しかし、蓋を開けてみると空室はなかなか埋まらず、手持ち資金に余裕がなかったため、リフォームも最低限度しか行えませんでした。そして、経営2年目に入る頃、追い打ちをかけるように屋根や外壁の劣化が進行して補修や塗装の必要が出てきました。

さらに老朽化による排水管の漏れや、建物・設備に不具合が次々と発生しました。退去者も増えてしまい、空室は全10室中5室となりました。そのため、実際の利回りは当初想定したものより大きく落ち、ローン返済ができなくなりました。

この事例の問題点を見ていきましょう。

3-1 相場より安い物件はその理由を探る

事例の物件は「物件価格が安い」「利回りがよい」「空室が多くない」と一見有利な面ばかりのように見えました。しかし、ここで考えなければいけなかった点は「なぜ近隣の相場と比べて物件価格が安かったのか」ということです。

事例では、その理由が賃貸経営開始後に明らかになってきました。築後20年のアパートは、外回りに傷んだ箇所がいくつもありましたが、補修やメンテナンスを行ったことはほとんどありませんでした。そのため、近いうちに建物・設備面で不具合が発生する可能性が高く、大規模な修繕工事が必要な物件だったのです。

3-2 現地を必ず視察する

建物は、安全性を維持するため一定期間ごとに屋根や外壁の補修、塗装などのメンテナンスを行う必要があります。

築古物件を購入する際は、建物・設備の修繕工事が行われた時期・内容を確認する必要があります。さらに物件は自分の目で確かめることがとても大切です。
また、当面必要となる補修箇所やリフォーム範囲など、物件の現状と必要な措置を調査・確定することも必要です。

さらに、屋根・外壁の防水・塗装など、将来の大規模修繕が必要な時期を予測し、物件選定の判断基準に加えて十分に検討することが大切です。

Cさんはその認識が欠けていたばかりでなく、忙しさを理由に内覧せずに購入を決めるなど、アパート購入・アパート経営の基本的な事項をよく勉強していなかったことが失敗の原因となりました。

3-3 賃貸経営は魅力ある建物・部屋づくりが重要

賃貸住宅は、時代のニーズに合わせた外観・内装の刷新を適宜実施していかないと入居者を惹きつけることが難しくなります。この事例では、建物の老朽化にともない次第に退出者が増えたにもかかわらず、Cさんは魅力ある建物・部屋づくりに有効なリフォームを行わなかったため、その後、入居者が見つからなくなってしまいました。

特に築古物件では、適宜必要な補修を行うとともに、入居者の最新のニーズに合った部屋づくりをするなど、空室を増やさないよう最大限努力することが常に求められます。

4 まとめ

アパート経営は、安定した収入の確保や相続税対策など、人によりその取り組む動機や手法が異なります。しかし、アパート経営が事業の一種であるからには、そこには生き残るための戦略が不可欠といえます。

アパート経営に取り組む際は、「無理がない資金計画の策定」「賃貸需要を踏まえた適切な立地選定」「現地視察など十分な現状把握」「魅力ある建物・部屋づくり」など、賃貸経営を成功に導く戦略を立てることがとても大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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