人生で最も高い買い物とも言える不動産を手放すとき、売主としては「どうすれば高く売却できるか」が最大の関心事となります。通常、不動産の売却は仲介業者に任せますが、中には売主の希望を上回る査定額を提示して顧客を釣り、販売開始後に値下げする業者もいます。
しかし不動産売却は個人で行うには難易度が高く、専門の不動産業者の営業・情報力に頼らざるを得ない状況にあるため、売主は不動産売却に関する知識をある程度身につけた上で依頼する必要があるわけです。
そこで今回は不動産売却で悪質な仲介業者の餌食にされないよう安全・確実な売却活動を進めるためのポイントをまとめました。「不動産業者にカモにされたくない」「失敗したくない」という方はぜひご参考ください。
目次
- 不動産売却を業者に依頼するリスクとは
- 事前に売却相場を調べる重要性
2-1.不動産サイトを利用する
2-1.一括査定サイトを利用する - 「不動産買取」と「不動産仲介」業者の違い
3-1.「不動産買取」のメリットとデメリット
3-2.通常は「不動産仲介」がおすすめ - 不動産の査定を受けるときのポイント
4-1.査定は複数業者に依頼する
4-2.査定業者の選び方 - 仲介業者の選び方
5-1.物件の査定額の根拠を求める
5-2.良い業者を見分けるポイント - 不動産仲介契約のポイント
6-1.仲介契約の種類とメリット・デメリット
6-2.急いでいないなら「一般媒介契約」がおすすめ - 業者による「囲い込み」の対処法
7-1.不動産売却が足止めされかねない囲い込みとは
7-2.囲い込みを防ぐポイント - 仲介手数料を安くしてもらうコツ
8-1.仲介手数料の上限
8-2.仲介手数料を安くするポイント - まとめ
1 不動産売却を業者に依頼するリスクとは
不動産の売却は高度な専門知識を必要とするため、一般的には個人で行わず専門の不動産業者に依頼します。しかし、事前の情報取集や準備なしに依頼すると、不動産業者のいい“カモ”にされることが少なからずあるため注意が必要です。不動産業者に売却を依頼する際には、例えば次のようなリスクがあります。
- なかなか売れないため、相場より安い価格で売却される
- 手数料だけ取られて売却に力を入れてくれない
- 売却に関する情報提供やアドバイスがほとんどない
- 対応を後回しにされ、連絡がなかなかとれず返事も遅い
売却実績が豊富で誠実な仲介業者に巡り合えれば幸運ですが、悪質な業者に当たるとこのようなリスクが待ち構えています。不動産売却で失敗しないためには「仲介業者選び」「売却価格の設定」「募集・宣伝活動」などの重要なポイントを知っておくことが重要になります。以下に不動産売却のポイントを7つにまとめました。それぞれ見ていきましょう。
- 事前に売却相場を調べる重要性
- 「買取」と「仲介」業者の違い
- 査定を受けるときのポイント
- 仲介業者の選び方
- 仲介契約のポイント
- 業者による「囲い込み」の対処法
- 仲介手数料を安くしてもらうコツ
2 事前に不動産の売却相場を調べる重要性
自分の物件がいくらで売れるかは不動産関係に詳しい人でなければ見当がつきません。そこで業者に依頼する前に売却不動産の相場を調べておくことが大切です。あらかじめ相場を調べておくことで、悪質な業者が提示する不当に高い査定価格や、安易な値下げ提案に騙されることがなくなります。
2-1 不動産サイトを利用する
不動産の相場を調べるにはネットが役立ちます。売却予定の不動産の所在地と最寄り駅からの距離、土地・建物面積、築年数、建物構造などについて書き出し、類似の販売物件を不動産サイト上で探します。
この場合、不動産の所在地や最寄り駅からの距離については、同一路線・同一最寄り駅の相場情報を優先します。同一路線・同一最寄り駅の販売物件がなければ、できるだけ似た条件の販売価格を参考にします。
2-2 一括査定サイトを利用する
ネット上には不動産の一括査定サイトが複数あります。一括査定サイトでは、不動産の所在地や築年数など必要な情報を入力するだけで、複数の不動産業者から査定額を手に入れることができます。査定額を相場情報として事前に入手しておくのはとても効果的です。ただ一括査定を受けると業者からの電話・メール攻勢に悩まされることは留意しておきましょう。
なお一括査定はあくまで机上査定であるため、本査定を依頼する業者選びの参考として活用するのが良いでしょう。
3 「不動産買取」と「不動産仲介」業者の違い
不動産を売却するには、「買取」と「仲介」という2つの形態があります。「買取」は不動産を買取業者に直接売却する方法で、「仲介」は不動産業者に間に入ってもらい、買主を探してもらう方法ですが、特殊な事情がない限り、「仲介」で売却を進めるのが良いでしょう。
3-1 「不動産買取」のメリットとデメリット
買取は、買取業者が査定して素早く買い取ってくれるため、時間がかからずに現金化できるというメリットがあります。買取業者は不動産を買い取った後に整地やリフォームを行いあらためて売りに出しますが、相場の2~3割程安い価格で買い取るのが一般的です。そのため不動産を高く売却したい場合には、あまりおすすめできる方法ではありません。
不動産をできるだけ早く現金化したい場合、または、売却不動産の価格が非常に高額だったり、物件が広すぎたりして一般の買手がつきそうもない場合など、特殊な事情がない限りは止めておいたほうが良いでしょう。
3-2 通常は「不動産仲介」がおすすめ
一方、仲介は不動産業者に依頼し、時間をかけて高く買ってくれる買手を探す方法になります。もちろん前述した通りのリスクはありますが、仲介のほうが不動産を高く売れる可能性が高くなります。
4 不動産の査定を受けるときのポイント
一括査定サイトで査定を受けた後は本査定(訪問査定)を受けることになります。なお、本査定も複数の業者に依頼するのがおすすめです。
4-1 査定は複数業者に依頼する
本査定(訪問査定)は、不動産業者に現地に来てもらい、実際に物件を見てもらった上で査定額を算出してもらうものです。最も重要なポイントは、複数の業者に依頼することです。複数社の査定額を比較検討し、さらに誠実に売却活動を進めてくれる業者を見極めます。最低でも3~4社程度は依頼する必要があります。
4-2 査定業者の選び方
不動産相場を知るために一括査定を利用した場合、査定を受けた業者の中から本査定を依頼する数社を選びます。次の基準で業者を選ぶと良いでしょう。
- 自分の売却希望価格に近い査定額を出してきた業者
- 電話連絡などの対応が迅速な業者
- 熱心に営業活動をしてくれそうな業者
不動産売却を依頼する業者に必要な条件は、売却エリア内の土地や物件相場に精通し、指定地域に密着した営業力・情報収集力があることです。例えば「全国展開している大手有名不動産会社の地域支店」「その地域に特化して支店を持っている中堅の不動産会社」などは、近隣で最近売却された類似物件の販売価格など、対象エリアの不動産情報を迅速に把握することができます。
昔ながらの、商店街に1軒だけあるような家族経営の業者でも地元の情報に精通していることもありますが、営業員の数や売却活動力の面で大手にはかないません。大手・中堅業者であれば豊富なネットワークを持っており、対象地域の売却物件情報があまりない場合でも、範囲を広げて情報収集ができます。
しかし中には仲介契約獲得を目的として故意に高い査定額を出してくる業者もいるため、不自然に高い査定額を出す業者は避けたほうが無難です。
5 仲介業者の選び方
本査定を受けた複数者の中から仲介を依頼する業者を決めます。本査定で提示された査定額には算出根拠があるはずです。希望的観測やあやふやな計算をしていないか、納得いくまで説明を求めましょう。
5-1 物件の査定額の根拠を求める
一般的な仲介業者であれば査定額は次のポイントを基準に計算します。
- 土地の公示価格・道路の路線価
- 近隣エリアにある類似物件の相場価格
- 売却予定物件が持つ固有の長所・短所など
あくまで一例ですが、上記ポイントに基づき査定額の算出根拠を明確に説明できない業者は再検討したほうが良いでしょう。
5-2 良い業者を見分けるポイント
優良業者と悪質業者を見分ける方法を以下の通り比較してまとめました。
比較項目 | 良い業者 | 悪い業者 |
---|---|---|
物件の査定額 | ・近隣の相場に近い ・売主の売却希望価格に近い |
・不自然に高い査定額を出す(仲介契約獲得目的) ・売主の売却希望価格を大きく下回る ・査定額の算出根拠を明確に説明できない |
実績・専門性 | ・売却実績が豊富 ・売却が得意分野 |
・売却実績が少ない ・売却が専門外(賃貸専門、1戸建て売却なのにマンション売却が専門など) |
情報力 営業員の姿勢 |
・売却物件エリアの不動産や相場情報に精通 ・依頼人の立場から、熱心に売却活動してくれる期待が持てる ・売却物件の価値や長所を評価してくれる |
・情報やアドバイスをあまりくれない ・顧客にわかりやすく説明できない ・熱意が感じられない ・対応が遅い |
6 不動産仲介契約のポイント
依頼する業者が決まれば仲介契約を結ぶ段階になります。
6-1 仲介契約の種類とメリット・デメリット
仲介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれの内容と特徴、メリット・デメリットは次の通りです。
比較項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数業者との契約 | 可能 | 不可 | 不可 |
契約期間 | 当事者間の合意期間 | 3か月以内 | 3か月以内 |
レインズへの登録義務 | 任意 | 7日以内に登録義務あり | 5日以内に登録義務あり |
売主に対する活動状況報告 | 任意 | 2週間に1回以上 | 週に1回以上 |
売主が見つけた買主に売却することの可否 | 可能 | 可能 | 不可 |
メリット | ・物件を広く周知 ・業者同士の売却活動を競わせることが可能 |
・1社契約のため、売却活動に力を注いでくれる ・レインズ※への登録義務あり ・広告宣伝に費用をかけてくれる ・売却活動の状況報告を受けることが可能0% |
|
デメリット | ・業者が売却活動に力を入れない可能性あり ・レインズへの登録義務なし ・広告宣伝に費用をかけてくれない可能性あり |
・1社契約のため、物件の周知範囲が限定 ・自社の買手を優先するため、他社の照会・申込みを断る可能性あり(囲い込み)0% |
(※「レインズ」とは、国の指定を受けた「不動産流通機構」が運営しているネットワーク・システムで、不動産業者間でリアルタイムの情報交換ができることにより売却物件を広く周知できる仕組み)
6-2 急いでいないなら「一般媒介契約」がおすすめ
この通り、仲介契約には3つの形態がありますが、「業者選びの段階で依頼したい業者を見つけた」「売却物件が不人気のため簡単に売れそうにない」などの場合、「専任媒介契約」か「専属専任媒介契約」が適しています。
そのような事情がない場合は、複数の業者と仲介契約を結べる「一般媒介契約」にすると囲い込みの心配もなく、売却を有利に進めることができるでしょう。
7 業者による「囲い込み」の対処法
不動産売却では仲介業者による「囲い込み」が問題になることがあります。どのように対処すれば良いか見ていきましょう。
7-1 不動産売却が足止めされかねない囲い込みとは
「囲い込み」とは、仲介業者が自社の見つけた買手を優先する目的で、他社経由の照会や申込みを断ることです。本来、売却物件は広く周知し、他社経由の照会や申込みであっても積極的に受けてもらわないと売主としては困ります。
しかし仲介業者は自社の買手を優先することで、買主から手数料を得られるというメリットがあるため、売主にとって有益な提案でも断ることがあります。
7-2 囲い込みを防ぐポイント
業者の囲い込みを防ぐには一般媒介契約を結ぶのが最も効果的です。しかし、さまざまな事情から専任媒介契約を結ばなければならないケースも多いため、その場合には売却物件の情報を広く周知するため、業者間ネットワーク・システム「レインズ」に必ず登録してもらうことが重要です。
専任媒介契約や専属専任媒介契約では、業者側に売却物件情報をレインズシステムに登録する義務が課されています。しかし業者によっては「登録し忘れ」「故意に登録しない」といったケースも少なからずあります。レインズは通常業者しか使うことができませんが、専任媒介契約・専属専任媒介契約を結んでいれば売主でも情報を確認できます。
そのため、売主は定期的にチェックを行うようにします。業者から、売却物件をレインズに登録した証明書を発行してもらえば、レインズにログインするためのIDやパスワードが記載されています。レインズの登録項目で、他の業者も広告を出して顧客を集められるように「広告転載区分」を「広告可」にしてもらうのも効果的です。
8 仲介手数料を安くしてもらうコツ
不動産売却の手数料は上限が決められていますが、交渉次第では安くしてもらえる可能性があります。
8-1 仲介手数料の上限
仲介手数料は、不動産の売買価格(税込)により以下の通り上限額が定められています。しかし、あくまで上限額であるため工夫次第で引き下げてもらえることもあります。
売買価格(税込み) | 仲介手数料の上限額 |
400万円超 | 売買価格×3%+6万円+消費税 |
200万円超400万円以下 | 売買価格×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 | 売買価格×5%+消費税 |
8-2 仲介手数料を安くするポイント
業者と仲介契約を結ぶ際に、「契約締結の交換条件」として仲介手数料の値引き交渉をすると効果的です。なお値引き交渉は仲介契約を結んでしまった後では難しくなるため注意してください。
また、あまりにしつこいなど値引き交渉など度が過ぎると業者に嫌われ、売却活動に支障をきたすことがあるため、交渉の状況次第で素直にあきらめることも肝要です。
9 まとめ
不動産の売却は専門の業者に依頼せざるを得ないことから様々なリスクが生じます。しかし、リスクを事前に把握し対応策を立てておけば、安心・安全に売却活動を進めることができます。不動産の売却を検討されている方は、今記事で紹介したポイントを参考に万全に準備してください。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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