不動産投資では家賃収入が十分にあっても、ローンの返済など必要経費がかかり過ぎればキャッシュフローが圧迫されます。そこで改善策として有効なのが、ローン返済の負担軽減に向けた「借り換え」です。より金利の低いローンに借り換えることで、毎月手元に残る現金を増やせるようになる可能性があります。
今回は、キャッシュフローの改善に向けた不動産投資ローンの借り換えを行う場合のメリット・デメリット、借り換えを行う際に注意したいポイントをご紹介します。毎月の利息返済で負担が重いと悩んでいる方はぜひご参考ください。
目次
- 不動産投資ローンの借り換えとは
- 不動産投資ローンを借り換えるメリット
2-1.返済負担が軽くなる
2-2.キャッシュフローが改善する
2-3.不動産の売却が有利になる
2-4.不動産投資ローンの完済実績につながる - 不動産投資ローンを借り換えるデメリット
3-1.手数料(違約金)が発生する
3-2.諸経費がかかる - 不動産投資ローンを借り換える際の注意点
4-1.金利上昇リスクが伴う
4-2.返済負担が増えることもある
4-3.借り換えを判断する目安とは - まとめ
1 不動産投資ローンの借り換えとは
不動産投資ローンの借り換えとは、主に金利負担を軽減する目的で借入先の金融機関を乗り換えることになります。
たとえば、金利負担が年率3%のA銀行から融資を受けていたのを、2%のB銀行に乗り換える場合などを指します。このとき既存の金融機関の残債は、新しい金融機関からの融資資金を使って完済することになります。
2 不動産投資ローンを借り換えるメリット
不動産投資ローンの借り換えには、返済負担が軽減されるメリットがある一方、手数料や手間がかかるといったデメリットもあります。結果的に返済負担が減らず、「こんなはずではなかった」と後悔する可能性もあるため、事前に十分な調査とシミュレーションを行うことが重要です。まずはローン借り換えのメリットから見ていきましょう。
2-1 返済負担が軽くなる
借り換えの最も大きなメリットと言えるのが、金利負担の軽減です。借り換えで金利が下がることにより、毎月の返済負担が軽くなり、総返済額も抑えられる可能性があります。
例えば、「借入額4,000万円」「金利年3%」「返済期間20年間」「元利均等返済」といった条件のローンでは、毎月の返済額は22万1,839円となります。
一方、ローンの借り換えにより金利を2%に下げると、毎月の返済額は20万2,353円となり、毎月1万9,486円、年間23万3,832円の負担減少となります。これを20年間続けた場合は、トータルで467万6,640円の差が生じることになります。
このように、金利を1%下げるだけで数百万円以上の負担が軽くなることもあるため、ローンを適切に借り換えるメリットは大きいと言えます。
2-2 キャッシュフローが改善する
不動産投資では、毎月一定のキャッシュフローを確保することが重要です。キャッシュフローとは、帳簿上導き出される利益ではなく、不動産投資における実際の現金の流れのことを言います。
キャッシュフローが不足すると突発的なトラブルなど大きな出費に対応できませんが、毎月十分なキャッシュフローを確保できれば余裕を持った賃貸経営ができるだけでなく、新たな物件を取得する資金として積み立てることも可能になります。
不動産投資のキャッシュフローは、空室率を考慮した年間の家賃収入から諸経費や税金などを差し引いて求めます。
1年間のキャッシュフロー=1年間の家賃収入×(1-空室率)-1年間の維持管理経費-1年間のローン返済金-固定資産税・都市計画税
毎月のローン返済を抑えることがキャッシュフローの改善につながるため、金利が下がる場合、ローンの借り換えを検討する価値は高いと言えます。
2-3 不動産の売却が有利になる
ローンの借り換えで金利が下がると、元本分の返済速度が上がり、残債を早く減らすことが可能になります。将来物件を売却する時点でローンの残債を減らしておけば、一括完済が容易になるため売却計画も立てやすくなります。
2-4 不動産投資ローンの完済実績につながる
ローンを借り換えるためには、元々借りていたローンの残りを完済する必要があります。借り換え先から融資を受け残債を充当できれば、不動産投資ローンを完済したという実績が残ります(完済のための原資は自己資金ではなく借り換え先からの借金ですが、完済したという事実は残ります)。
ローン完済の実績ができると、将来的に別案件で他の金融機関から融資を受けようとする際に信用度が高くなります。借り換え先が大手の都市銀行となっている場合は、借り換え前よりも個人としての信用力がさらに上がることもあります。
3 不動産投資ローンを借り換えるデメリット
ローンを借り換える際のデメリットには、主に「手数料が発生する」「諸経費がかかる」ことが挙げられます。
3-1 手数料(違約金)が発生する
一般的にローンを借り換える場合、借り換え元の金融機関に繰り上げ返済の手数料(金融機関によっては「違約金」と呼ぶ)を支払わなければなりません。手数料の金額は金融機関や個別の契約により異なります。無料で済む場合もありますが、数万円かかることもあります。
繰り上げ返済手数料は金融機関に問い合わせることで確認することができますが、住宅ローンの融資を受ける際に銀行と交わした「金銭消費貸借契約書」でも調べられます。「借り入れから〇年以内に繰り上げ返済する場合は、〇%の手数料がかかる」との記載があれば、手数料がいくらになるかが判明するでしょう。
3-2 諸経費がかかる
ローンの借り換えでは、繰り上げ返済手数料(違約金)以外にも、次のような費用が必要です。
- 借り換え先金融機関の手数料
- 登記費用
- 印紙代
借り換え先金融機関の手数料
借り換える先の銀行等に支払う新規ローンの事務手数料です。金額は、安い場合で数万円から借入額の1%前後としているところもあります。たとえば3,000万円の借り入れで1%の事務手数料を支払う場合、30万円となります。
登記費用
借り換え元の金融機関に対してローン残債を完済した後は、その金融機関が設定していた抵当権を抹消する手続きをしなければなりません。一方、借り換え先の金融機関に対しては融資の担保として新たな抵当権を設定する必要があります。
抵当権抹消と抵当権設定にかかる費用は、司法書士報酬も入れて計10~15万円程度必要になると考えておけば良いでしょう。
印紙代
借り換え先の金融機関との金銭消費貸借契約書に貼付するための収入印紙代も費用としてかかります。印紙代は借り入れ額によって次のように異なります。
借入金額 | 印紙税額 |
---|---|
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5000万円超1億円以下 | 6万円 |
(参照:国税庁 No.7140)
4 不動産投資ローンを借り換える際の注意点
金利の低いローンに借り換えることができれば返済負担は軽くなりますが、金利上昇リスクが伴うことや、借り換えを判断する目安を知っておくことが大切です。
4-1 金利上昇リスクが伴う
ローンの借り換えで固定金利から変動金利にする場合は特に注意が必要です。現在は低金利が長引いており、住宅ローンや不動産投資ローンの金利も低く抑えられていますが、今後も続く保証はありません。
金利はその時々の経済・景気動向や国の金利政策によって決まるため、将来の金利がどう動いていくかを現時点で予測することは困難です。そのため固定金利よりも金利の安い変動金利を選択する場合は、将来の金利上昇リスクを認識しておくことが必要です。
4-2 返済負担が増えることもある
ローンの借り換えは主に金利負担を軽減することが目的ですが、結果的に毎月の返済負担が増える場合もあります。毎月のローン返済額は「借入額」「金利」「返済期間」「返済方法」などの設定次第で変わってくるため、たとえ金利負担が現時点より軽くなっても、返済期間の設定次第で毎月の返済額が上がるからです。
そのため借り換えをする際は、金融機関の担当者とよく相談し、自らシミュレーションすることも大切です。
金利が低くなっても毎月の返済負担が重くなるケース
金利が下がっても毎月の返済額が多くなるケースは例えば次のとおりです。同じ借入額(3,000万円)でパターンAの金利は3%、パターンBの金利は2%ですが、毎月の返済額が多いのはパターンBとなります。
項目 | パターンA | パターンB |
---|---|---|
返済方法 | 元利均等返済 | 元利均等返済 |
借入額 | 3,000万円 | 3,000万円 |
金利 | 年3% | 年2% |
返済期間 | 20年 | 15年 |
毎月の返済額 | 16万6,379円 | 19万3,052円 |
総返済額 | 3,993万960円 | 3,474万9,360円 |
金利の高いパターンAに比べ、パターンBは金利が低いものの返済期間が5年短くなっています。このため毎月の返済負担が2万6,673円、年間にすると32万76円ほど増えています。
「毎月の返済額」と「最終的な返済総額」のどちらを優先するか
金利の高いパターンAは、毎月の返済負担は軽くなりますが、返済期間が5年長いため総返済額が多くなります。パターンAの総返済額が3,993万960円であるのに対し、パターンBは3,474万9,360円と、両者には518万1,600円の差が生じることになります。
このように、上記2つのパターンは、「毎月の返済額」と「トータルの返済額」という面でそれぞれ長所と短所があります。どちらが良いかについては、それぞれローンを利用して返済する方の個別的な事情や投資に対する考え方によって変わってきます。
そのため、ローンの借り換えを行う場合は、自分が置かれている立場や事情から、たとえば毎月の返済額を軽くするのか、それとも返済総額を軽くしたいのか、などの優先すべきポイントを検討することが大切です。
4-3 借り換えを判断する目安とは
ローンの借り換えでは様々な費用がかかるため、「費用を負担してでも借り換えればメリットがある」と判断できる場合に、借り換えを行うのが目安となります。費用を払ってでも金利を下げて効果が期待できるのは、ローン残額が一定額以上あり、返済期間も一定期間以上残っている場合です。
「ローン残高1,000万円以上」「金利が1%以上低くなる」
不動産投資ローンの借り換えで効果があるとされる判断基準の目安は、次のとおりです。
- 借り換えを行うことで、金利が1%以上軽減できる
- ローン残高が1,000万円以上残っている
- 返済期間が10年以上残っている
シミュレーションすることが大切
上記の3つの条件に該当すれば、借り換えを行うメリットがあるとされていますが、無条件にメリットがあるというわけではありません。本当にメリットがあるかどうかの判断は、将来的にローンの負担がどの程度改善されるか試算した上で行うことが重要です。
「複雑な計算は苦手」と敬遠する方もいますが、インターネットで検索すれば、住宅・不動産ローンをシミュレーションできるサイトが数多くあります。借入額・金利・返済期間などの条件を入力し、返済方法(元利均等返済など)を選択すれば、自動でシミュレーションしてくれます。
例えば、インターネット上で不動産投資ローンの借り換えが気軽にできる『インベース』というサービスがあります。ここでは簡単なシミュレーションを入力するだけで、借り換えによって金利や返済額をどれだけ削減できるかを把握することができ、その結果をもとに借り換え手続きの代行を申し込むことが可能です。
シミュレーションでは、設定を変えながら数種類のパターンを検証することが大切です。最終的に自分のニーズを満たし、返済負担にも耐えられる融資案を選び、それをもとに金融機関と交渉してみましょう。
事前にしっかりと準備・検討を行っておくことで、不動産投資事業やローン返済計画に対して真摯に向き合い、研究・検討を重ねている姿勢があることを金融機関に示すことができます。このような努力が、金融機関担当者の熱意を引き出すことや理解を得ること、さらに担当者からの信頼を得るという良い結果につながっていきます。
5 まとめ
不動産投資ローンの借り換えでは様々なメリットがあります。ローンを借り換えて金利負担を軽減させることは、不動産投資におけるキャッシュフローの改善など大きな効果が期待できます。しかし、金利の低さだけにこだわり過ぎると、かえって返済負担が重くなる可能性もあります。
無理のない返済計画のために、金利に加え、返済額、返済期間、返済方法などを総合的に検討することが大切です。毎月の返済負担を軽くしたい方は、ぜひこの記事をヒントに不動産投資ローンの借り換えを検討してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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