「不動産投資をはじめたいけど、人口が右肩下がりの日本で賃貸経営をすることに不安がある。どうやって運営しているのですか?」と聞かれることがあります。
筆者は現在9棟98部屋を所有していますが、不動産投資を始める前は同じような不安を感じていました。日本全体の人口は減少傾向にあり、人口減少に比例して家賃下落の懸念もあります。また、新築物件が建築されることで競合物件も増え、当時は参入ハードルが高いマーケットにも思えました。
現在、筆者の所有物件の稼働率は平均95~96%を維持しています。今回は筆者が考える不動産投資の戦略や賃貸経営のポイントや実践していることを、冒頭の質問に回答する形でお伝えしていきます。
目次
1.人口減少の日本で不動産投資を始める3つの戦略
1-1.人口よりも世帯数に着目する
日本全体の人口は減少傾向にありますが、はたして世帯数はどうでしょうか?
賃貸住宅の需要は、人口よりも世帯数により影響されます。世帯数が増えれば、基本的に必要な住居の数も増えるからです。
国立社会保障・人口問題研究所が2018年に公表している「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」を見てみましょう。主なポイントは下記になります。
- 世帯総数は 2023 年をピークに減少開始、平均世帯人員は減少が続く
- 「単独」「夫婦のみ」「ひとり親と子」の割合が増加
- 世帯主の高齢化が進み、65 歳以上の高齢世帯が増加する
- 高齢者の独居率が上昇
※参照:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018年推計」
上記内訳を見ると、不動産投資のターゲットとなり得るのは下記のような方が考えられます。
- 単身者
- 単身の高齢者
今回は全国情報の参照であるため、詳しくは地域ごとの傾向を確認する必要がありますが、全体的な傾向としては「単身」がキーワードになるでしょう。エリアをしっかり見定めた上で、単身物件を仕込むことは、取り入れても良い戦略と言えます。
つまり、全体ではマーケットが下落傾向でも、細部に目を向けると、違った景色が見えてくる場合があるということです。
1-2.需給バランスが崩れていないエリアに注目する
賃貸ポータルサイト等を見ていると、「あれ、割と良い家賃をとれているな(家賃の下落が見られない)」と感じるエリアがあります。
ある時、購入検討している物件のヒアリングで、横浜市から転勤になった賃貸仲介の営業担当の方と話す機会がありました。エリアについて聞いてみると、「需給バランスがとれており横浜市ほど競争が激しくない、それゆえ家賃が維持されている」とのコメントでした。
つい先だって、神奈川県のあるエリアで物件を探していた時も、同様の話を聞きました。
そのエリアでは2000年代頃に規制がはいり、新築アパートは4戸以下でないと建築ができなくなっているそうです。新築を4戸で建築する地主や投資家は非常に少ないでしょう。つまり、新規物件の供給はとても少ないことになります。
当該エリアの賃貸ニーズは都心と比べるとかなり少ないですが、全くないわけではないのです。少ないながらも一定の需要があり、かつ一定の供給が保たれ、絶妙な需給バランスが保たれているのでしょう。
同じ市内、同じ町内で比較しても、あるエリアの家賃は高止まりしているところがあります。市内、町内というマクロではなく、ミクロでしっかりと見る必要があります。極端な話、通りを1本挟むと、賃貸需要がガラッと変わるケースもあります。
2つの例を見てきましたが、全国にはこういったエリアがいくつかあると考えられますが、このような需給バランスのとれたエリアを見つけるにはどうすれば良いでしょうか?
残念ながら、検索して出てくるほど簡単ではありません。情報収集する中で、現地に足を運び現地の方に話を聞いてみたり、不動産投資の経験を徐々に得ていくことで、貴重な情報が蓄積されていくのだと思います。
1-3.地主や相続大家の割合が多いエリアに注目する
関東では、多くの投資家が1都3県の物件を狙っています。運営の要である空室・修繕対策は、多くの書籍やセミナーで紹介され、知識やノウハウを身に着けた不動産投資家の方々が良い物件を探して競争している状況と言えます。
それに対して、地主や相続人はどうでしょうか?地主にも2つのパターンがあると考えています。
- 真剣に賃貸経営に取り組んでいる地主(大家)
- あまり賃貸経営に興味がない地主(大家)
私の知人には、①の「真剣に賃貸経営に取り組んでいるタイプ」の2代目地主(大家)の方がいます。
先代が築いた物件をベースに、最新の運営手法を学び、貪欲に取り入れています。賃借人とのつながりも大切にし、競合と差別化、唯一無二の物件を展開しています。
また、サラリーマン大家と違って、時間的にも、資金的にも余裕がある場合が多いと言えます。相続で取得した物件のローン返済がすでに完了している場合、キャッシュフローに余裕があり、賃料設定や修繕計画にも柔軟な戦略が取れるためです。
そんな優秀な2代目地主(大家)と、同じエリア、同様のスペックや価格帯で勝負するなら、よほど気合いをいれないと勝負できないでしょう。
片や、あまり賃貸経営に興味がない②のタイプの地主(大家)の方もいます。
私が普段やりとりしている管理会社、客付会社経由の情報だと、ローン返済がないので、空き部屋があっても原状回復をせず空室のままにしていたり、20年前の設備のまま募集していたり、敷金礼金を募集条件にしていたり、大家が強かったひと昔前の感覚を持った方もいらっしゃるようです。
このような地主や相続大家の方の割合が多いエリアでは、賃貸ニーズを見極め、適切なアプローチを行うことで入居者の獲得ができるケースがあります。一見競合が多く見えるエリアでも、背景までしっかり見極めることがとても大切、ということが分かります。
まとめ
人口減少の日本においても、戦略を間違わなければ賃貸経営は可能だと考えています。ポイントは、マクロではなくミクロをしっかり見て、判断することが大切です。
マクロでは、日本全体の人口は減少傾向にありますが、ミクロでは2022年時点までの期間で単身世帯が増えています。マクロでは、空室率は上昇している一方で、ミクロでは、需給バランスがとれているエリアがあります。マクロでは、不動産投資家の裾野が広がり、競争が激化していますが、ミクロでは、投資家が少なくあまり賃貸経営に興味がない地主と戦えるエリアもあるでしょう。
このように、エリアや物件ごとのニーズをミクロの視点で見極めて、賃貸経営を行うことが重要と言えるでしょう。今後の賃貸経営のヒントとして、ご参考ください。
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