海外不動産投資は投資先が様々ありますが、国によって経済状況や不動産市場の動きが異なります。そこで投資リスクを軽減する方法である「分散投資」が重要になります。海外不動産を活用した分散投資では、投資対象を1つの国に限定するのではなく、複数の国に資産を分散して投資することになります。
今回は分散投資の考え方を整理した上で、国際分散投資のメリットや複数の国に投資する上で気をつけたい注意点などをご紹介します。
目次
- 海外不動産投資における分散投資
1-1.分散投資とは
1-2.購入機会における分散投資
1-3.海外不動産投資のリスク分散 - 海外不動産投資で分散投資するメリット
2-1.為替リスクを分散できる
2-2.出口戦略の方法を分散できる - 分散投資で注意したいポイント
3-1.管理の管理が煩雑になる
3-2.高額物件を購入しにくくなる - 海外不動産の分散投資に向いている人
4-1.ある程度の資金的余裕がある人
4-2.複数の専門家とのコネクションがある人
4-3.トラブルが生じた時に現地に足を運べる人
4-4.世界経済の動向に詳しい人
1 分散投資とは
海外不動産投資の魅力は国内の不動産投資よりも幅広く分散投資できる点にあります。しかし分散投資は単純に複数の国で物件を購入すれば良いわけではありません。
1-1 分散投資とは
投資対象となる金融商品は元本保証がないため、一定のリスクを伴うことになります。リスクとは損益の振れ幅のことですが、大きなリスクを取れば利益を狙える反面、損失も大きくなる可能性があります。
そこで損失を抑えるためにリスクを少なくする手段のひとつが分散投資となります。分散投資では異なる性質の金融商品を購入することでリスクを平準化することができます。例えばひとつの金融商品で損失を出したとしても、それ以上の利益を他の金融商品で得られれば損益はプラスになります。
また、損失を出した金融商品を早めに処分して利益を生んでいる金融商品をそのまま保有することで、さらに大きな利益を生み出すことも期待できます。
購入した金融商品をひとつの塊と考えて、トータルのリスクを極力少なくして利益を出す可能性を高めるのが分散投資の特徴です。
1-2 購入機会における分散投資
前述した通り分散投資の目的はリスクの平準化とリターンの可能性を高めることです。リスクの大きな金融商品のみに集中して投資をすると、大きな損失を出した時には運用資金が少なくなるため、他に大きな利益を得られる金融商品があったとしても、少ししか購入できず利益を得る機会を失います。
そこで資金のすべてを同じ金融商品に投じず、利益が得られそうな他の金融商品を購入しておきます。「購入機会における分散投資」とも呼び、ドル・コスト平均法などが有名な機会分散の投資方法です。購入時期をズラしながら金融商品を購入することで購入単価を平準化することにもなります。
あるいは経済動向によって好調なセクター(業種)と不調となるセクターが入れ替わります。複数のセクターに投資資金を分散することで、経済状況の変動による収益性の変化にも対応できます。
国内の金融商品には様々な種類がありますが、国が変わることで同じ金融商品でもリスクが変わります。つまり異なる国の金融商品を購入することでもリスク分散はできるということです。
1-3 海外不動産投資のリスク分散
海外不動産投資の分散投資には様々な形があります。
購入する国によって不動産価格の上昇率やテナントの入居率、家賃の利回りや節税効果は変わります。さらに海外不動産を購入するためには現地通貨を使いますが、日本円から現地通貨に換金する際のレートも変動しています。そこで生じる為替差損のリスクも分散できます。
投資先を複数の国に分散すればリスクも分散できます。海外不動産投資ではひとつの国に集中投資すると、大きな値上がりが期待できても突然不動産バブルがはじける可能性もあります。
また、収益目的でも分散投資することでリスクを抑えることができます。
不動産投資における収益の出し方には、家賃収入による「インカムゲイン」、物件を売却する際の値上がりによる「キャピタルゲイン」、賃貸運営をする中での節税による「税金の還付」があります。
例えばインカムゲイン狙いで購入した国の賃貸需要が悪化すれば利回りが低下します。一方で他に利回りが上昇している国があれば、利回りが低下した国のカバーをすることが可能となります。
2 海外不動産投資で分散投資するメリット
分散投資のメリットは様々ありますが、海外不動産投資で得られる主なメリットは「為替リスクの分散」「出口戦略の分散」の2つです。
2-1 為替リスクを分散できる
海外不動産投資をするうえで避けて通れないのが為替リスクです。不動産を購入した国の通貨が下落すれば、売却時に為替差損を生じます。例えば1ドル100円で10万ドルの不動産を購入し、同じ10万ドルで売却しても、1ドル90円に下落した場合は購入金額1,000万円に対して売却金額は900万円になります。
逆にドル高になれば、ドル建てでの売却金額が変わらないとしても円建てでの売却金額は多くなるため為替差益となります。
そこで投資先を分散すれば為替変動を見ながら売却のタイミングを図ることが可能です。為替変動には波があるため、通貨下落している国の不動産をそのまま保有して状況が改善してから売却するか、あるいはさらに下落する前に処分するかを判断できるようになります。
特にキャピタルゲイン狙いで人気のある東南アジアの新興国の場合、経済状況の変化によっては通貨下落のリスクを伴います。また利上げを続ける米ドルがいつ利下げに反転するのか、一方で低金利が続くEUが利上げに転じるのかによっても、為替相場が変動します。他国の政策金利の動向によっても、新興国の通貨は変動します。
例えば2018年8月、トルコの通貨リラが対ドルで20%近く下落しました。トルコの米国人牧師拘束問題に対してトランプ米大統領がトルコへの追加経済制裁を表明したのが原因です。トルコの経済自体は堅調でしたがひとつの国際問題で為替相場に多大な影響を与え、さらにインド・ルピーも大きく下落しました。仮に通貨が下落する国の不動産を保有していた場合、家賃収入も日本円に換金すれば目減りしたでしょう。
ただ一方で、通貨下落は投資先の不動産を購入する際にプラスに働きます。一時的な変動で収まるのであれば絶好の購入時期となるため、ある程度の現金を常に用意しておくことが大切です。
2-2 出口戦略の方法を分散できる
不動産投資で利益を得る方法は複数あります。日本の場合には物件の値上がりがあまり期待できない代わりに、条件の良いエリアを選べば安定したインカムゲインが期待できます。一方で東南アジアの新興国は、短期の物件価格上昇が期待できるため大きなキャピタルゲインを狙えます。あるいはアメリカやヨーロッパの資産価値の高い物件を購入することで、大きな節税効果を得ることもできます。
ただ、インカムゲインとキャピタルゲインは常に一定の収益性を期待できるわけではありません。そこで不動産収益を見込める国への投入資金を分散し、さらに得られた利益の税金を少なくするために節税効果が大きい国へ資金投入することで、安定した収益を図ることができます。
3 分散投資で注意したいポイント
リスクを分散できるのが分散投資のメリットですが、物件管理が複雑になったり、高額な物件が購入しにくくなるといった注意すべき点もあります。
3-1 物件の管理が煩雑になる
海外不動産を購入する場合、日本から遠く離れた物件の維持・管理が問題になります。また日本とは異なる独自の商習慣にも注意が必要です。
例えばコンドミニアムをプレビルドで購入した場合、頭金を数回に分けて支払うことになります。その支払い方法は契約書に記載されますが、その後は一切通知がこないため、いつ支払えば良いのかわからないというケースがあります。支払いがなくても督促をするわけでもなく、急にキャンセル扱いとなってコンドミニアムの購入権を失うこともあります。
海外で複数の物件を購入する場合、自分の目でそれぞれチェックすることが大切です。管理会社やエージェントに支払いのためのお金を送金することもありますが、デベロッパーにきちんと支払われていないというケースもあります。分散投資ではこのような事態が起きやすくなるため、物件管理には細心の注意を払わなければなりません。
3-2 高額物件を購入しにくくなる
複数物件に分散投資する場合、1戸当たりに投入する資金は必然的に少なくなります。その結果、値上がりが期待できる都市部の物件を購入できずに、地方の物件しか購入できないこともあります。再開発計画があれば別ですが値上がりする保証があるわけではありません。
分散投資する際は、購入できる物件が限定されることも考慮しておきましょう。
4 海外不動産の分散投資に向いている人
全ての投資家に分散投資が向いているわけではありません。資金的な余裕があったり、国際経済の動向に敏感だったりする必要があります。それぞれ見ていきましょう。
4-1 資金的な余裕がある人
分散投資では一般的にすべての物件で利益を出すという考え方はしません。なかには損失を出す物件もあるかもしれませんが、早期に売却して、他に収益を見込める物件に投資資金を振り分けることになります。
柔軟に物件を買い替えるためには、ある程度の資金が必要になります。損失を生じている物件を売却する前に他の物件を購入する必要が生じることもあるからです。仮にローンを組んでいれば、残金を一括で支払う必要があります。そのため、分散投資を前提とした海外不動産投資はまとまった現金を用意できる方が向いていると言えます。
あるいはプレビルドのコンドミニアムを購入した場合、完成が大幅に遅れるというケースがあります。当初の予定では早期に売却するはずでも、買い手が見つからず残金支払いのためのローン返済が始まることもあります。未完成であれば賃貸貸しもできず、ローン返済は持ち出しとなるでしょう。そういう場合に備える意味でもまとまった現金は必要になります。
4-2 複数の専門家とのコネクションがある人
海外不動産は国が違えば運用のために必要な知識や情報が異なります。そこで保有する国それぞれに詳しい専門家とのコネクションがあれば、有利に分散投資ができるでしょう。
同じ国であっても購入する物件情報に詳しいエージェントもいれば、賃貸需要に詳しいエージェントもいます。あるいは契約時のトラブルを回避するための専門知識を持った管理会社など得意分野が異なります。各分野の情報に詳しい専門家がいれば、複数の国で不動産投資をする際の心強い味方となるでしょう。
4-3 トラブルが生じた時に現地に足を運べる人
海外不動産投資の物件管理は基本的に専門業者に任せることになります。しかし何か問題が生じた時には、自身が直接現地に足を運んで交渉する場面も出てきます。
例えば支払いを依頼していたエージェントが行方不明となり、デベロッパーへの入金が遅れているというケースです。そのような場合、早急にデベロッパーに事情を説明し、支払いに関する交渉をしなければ、支払ったお金の全てを失うことになりかねません。
もちろん頻繁に現地に赴く必要はないですが、深刻なトラブルが発生したときには現地に足を運べるフットワークの軽い方が海外不動産投資に向いていると言えるでしょう。
4-4 世界経済の動向に詳しい人
世界中で投資をしている投資家は、世界経済の動きを常に注視して投資資金の投入先を適宜変えています。海外不動産投資も同様に、国ごとに異なる経済動向に注意しながら分散すべき投資先を選別することが大切です。
投資資金がどのように流れているのかなどお金の動きを把握できる人は、分散投資に向いていると言えるでしょう。世界経済の動向に敏感な方は収益が見込めない国の物件は処分して、次の投資先を探すことができるため、資金を増やしたり物件を買い増しすることも容易になるでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
最新記事 by HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム (全て見る)
- 【12/4 東京都 港区】老後に月20万円の家賃収入を手に入れる方法 - 2024年11月19日
- 【11/30 東京都 港区】【医療業界で働くオーナー生の声】 本音で語る!私が中古ワンルーム投資を始めた理由 - 2024年11月19日
- シノケンのアパート経営の評判は?営業、融資、物件、入居率の評判・口コミ - 2024年11月15日
- 【11/27 東京都 港区】【金融機関で働くオーナーの生の声】失敗から学ぶ不動産投資の成功への道 - 2024年11月12日
- 【11/29 オンライン】TSMCで賃貸需要高まる熊本、アパート経営事情を徹底解剖! - 2024年11月12日