不動産投資はローンを利用することで必要な自己資金を抑制できる資産運用です。しかし、海外不動産投資の場合は、日本国内の不動産投資ローンの融資条件と異なるポイントが複数あります。
また、不動産投資ローンを利用できる投資先の国は限られるため、どこであれば利用できるのか、あらかじめ把握することも重要です。この記事では、海外不動産投資でローンを利用できるエリアに加え、必要な自己資金の目安についても解説します。
※本記事は2023年11月時点の情報をもとに執筆されています。最新情報についてはご自身でもよくご確認のうえ、投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 海外不動産投資でローンを利用しやすい国と自己資金
1-1.ハワイを含むアメリカ
1-2.オリックス銀行の不動産投資ローン
1-3.海外不動産投資で必要な自己資金 - 海外現地の不動産投資ローンについて
2-1.海外現地の銀行からは借入できない?
2-2.海外現地の銀行は高金利になることも - 海外不動産投資でローンを利用する手順
2-1.物件購入の申込
2-2.不動産売買契約を締結
2-3.不動産投資ローンの審査を受ける
2-4.公証役場での認証手続き
2-5.ローン実行および決済資金の送金
2-6.登記済証の提出 - 海外不動産投資では物件の見極めが特に重要
- まとめ
1.海外不動産投資でローンを利用しやすい国と自己資金
数は少ないものの、日本国内にも海外不動産投資に融資している銀行があります。ローンを利用できる投資先や、必要な自己資金の考え方について解説します。
1-1.ハワイを含むアメリカ
2021年8月時点、海外不動産投資の中で最もローンを利用しやすい投資先はアメリカです。
日本国内の金融機関で海外不動産投資に融資するところは少数派です。しかし、アメリカ不動産投資であれば、購入物件のエリアを限定する条件で融資しているところが複数あります。
例えば、ハワイ州オアフ島のホノルルエリアであれば、東京スター銀行やSBJ銀行などでローンを利用可能です。そのほか、カリフォルニア州の物件であれば香川銀行のローンを使えます。
海外現地の銀行で外国人向けに住宅ローンを出しているところもありますが、情報の有無やローン利用の可否については、不動産エージェント次第であることも否めません。
外国人向けの住宅ローンについては、インターネットで情報を収集するのが困難であり、現地の不動産エージェントが個人的に情報を持っているケースも多くなります。また、ローン申込の条件として該当する銀行での口座開設や、投資先の国における継続的な収入を求められることも少なくありません。
初めての海外不動産投資であれば特に、日本国内の銀行で融資元を探す方がローンを利用できる確率は高くなります。
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1-2.オリックス銀行の不動産投資ローン
アメリカ以外の国で投資したい場合は、オリックス銀行の不動産担保ローンを利用することも検討できます。オリックス銀行のローンは、原則、投資先の国について制限がありません。(※参照:オリックス銀行「不動産担保ローン」)
ただし、オリックス銀行の場合は、購入する物件とは別に日本国内の首都圏など限られたエリアに立地した不動産を担保に入れる必要があります。アメリカ不動産投資に利用できるローンでは、購入物件を担保に入れるため別途担保不動産を用意する必要がありません。
オリックス銀行のローンは、すでにローン完済済みの自宅か別の投資用物件を持っていないと利用できない点に要注意です。そのほか、前年度の税込み年収が700万円以上など複数の申込条件があります。利用を検討する場合は、申込条件の事前確認が必須です。
1-3.海外不動産投資で必要な自己資金
日本国内の銀行が提供するローンでは、それぞれ商品説明書には明記されていないものの、おおむね物件評価額の50%が融資限度額となっています。このため、例えば評価額が2,000万円の物件を購入する場合は、諸経費を含めると1,000万円以上の自己資金が必要です。
また、物件価格ではなく評価額の50%が限度である点に注意を要します。銀行はローン審査にあたって独自に現地の評価機関等から物件の評価レポートを取得し、評価レポートに基づいて融資額を決定しています。
価格が2,000万円の物件を購入するからと言って、必ず1,000万円のローンを利用できるわけではありません。周辺相場よりも高価格の物件を購入する場合は特に、審査の結果として融資額が下がることも考えられます。
日本国内と比較すれば、海外不動産投資ではローンを利用しても初期費用の節約幅に制限がかかると考えておきましょう。
なお、オリックス銀行のローンを利用する場合に融資額の根拠となるのは、担保とする日本国内の物件評価額です。評価額が高い物件を担保に入れられれば、物件購入額の大部分をローンで調達できる可能性もあります。
2.海外現地の不動産投資ローンについて
海外不動産投資にローンを利用するのであれば、様々な条件をクリアする必要はあるものの、日本国内の銀行から借入する方が確実です。
一方で、日本国内の銀行から借り入れる場合は為替の影響を受けることになります。2023年11月時点では円安傾向が強いため、不動産投資の利益を考慮すると、あまり良い環境とは言えません。
2-1.海外現地の銀行からは借入できない?
日本で日本円を借りて海外不動産の購入資金に充てようとすると、円安の状況下ではどうしても不利益が大きくなります。それでは、海外現地の金融機関でローンを利用できないかと考える人もいるのではないでしょうか。
しかし、海外現地の金融機関でローンを利用できる人はかなり限られるのが実態です。投資先の国に居住しておらず、現地での収入もない人に融資する金融機関は基本的にないと考えておくほうが良いでしょう。
海外現地の金融機関でローンを利用するための目安としては、以下のポイントが最低条件となります。
- 投資先の海外現地に最低でも1年以上は住んでいる
- 現地の金融機関に口座を持っている
- 現地の口座に入ってくる定期的な収入がある
少なくとも、海外現地支社の社員として会社に勤務している人でもない限り、上記の条件を満たすのは難しいと考えられます。なお、アメリカの場合は、上記の条件に加えてクレジットカードの返済などを継続している履歴が求められることも少なくありません。
2-2.海外現地の銀行は高金利になることも
世界各国における金利の動向を考慮すると、海外現地の金融機関でローンを利用することがメリットになるとは言い切れないこともあります。
コロナショック以降における世界各国の金利動向を見ると、2023年11月時点では、例えばアメリカの金利はかなり高くなっているのが実態です。
日本でマイナス金利政策の導入が決まったのは2016年1月ですが、2023年11月時点になっても本格的な利上げには至っていません。アメリカに限らず、多くの国では日本よりも金利が高くなっています。
また、外国人向けの金利は現地人向けの金利よりも高いケースが大半です。高金利は不動産投資のコストを増大させるため、海外現地での借り入れが必ずしも有効とは限りません。
3.海外不動産投資でローンを利用する手順
ここからは、日本国内の金融機関で海外不動産投資ローンを利用する手順について解説します。海外不動産投資でローンを利用する場合は、日本国内での不動産投資とは異なる複数の手順を要します。手続きをスムーズに進めるためには、スケジュールの事前確認が重要です。
3-1.物件購入の申込
海外不動産投資を進めるためには、最初に投資先の国と不動産エージェントを選び、購入する物件を決めます。ローン利用上の注意点としては、物件購入前に不動産価格の周辺相場を調べておくことです。
評価額よりも大幅に高い価格の物件を購入してしまうと、物件価格に対する融資額の比率が下がるために必要な自己資金額が上がります。ローンを利用して自己資金比率を下げるためには、可能な限り評価額が高く、周辺利回り相場と合致した物件を購入することが重要です。なお、物件購入の申込が済んだら、手付金もしくは申込金を売主に支払います。
3-2.不動産売買契約を締結
申込金の着金が確認されたら、買主と売主との間で売買契約を締結します。なお、売買契約書にはキャンセル条項が入っているか、契約締結の前に確認することが重要です。
キャンセル条項とは、買主が物件購入にあたってローンを利用する場合に、審査を通過できなかったら契約をキャンセルできるという条項のことです。キャンセル条項には契約締結後の期限が設けられており、期限と審査期間の目安とが合致しているか確認することが重要になります。
3-3.不動産投資ローンの審査を受ける
売買契約の締結が完了したら、銀行に申込書類を提出してローン審査に入ります。本審査の場合は1週間~2週間前後の日数が必要になるので、あらかじめ銀行へ目安の期間を確認することが重要です。
なお、審査にあたってはサイン済みの売買契約書に加え、収入証明など複数の書類が必要になるので、あらかじめ用意しておくとスムーズに手続きを進められます。
3-4.公証役場での認証手続き
銀行の審査を通過できたら、公証役場で認証手続きをします。認証手続きをするのは、購入対象の不動産について、投資先の国で銀行が抵当権を設定するためです。アメリカ不動産投資でローンを利用する場合は特に、認証手続きが必ず必要になります。
なお、すでにご紹介したオリックス銀行のローンを利用する場合は、日本国内の不動産に抵当権を設定するため認証手続きは不要です。
また、公証役場は平日の日中しか認証の対応をしていないことに注意を要します。土日には対応していないため、平日のスケジュール調整が必要です。多くの銀行ではローン契約の当日に認証手続きをします。
3-5.ローン実行および決済資金の送金
ローン契約および認証手続きが完了したら、決済日に合わせてローンが実行されます。なお、融資額の振込先が契約者の銀行口座になるのか、物件売主が指定する口座になるのか事前に確認することが重要です。
契約者の銀行口座になる場合は、融資額の着金を待ってから売主の指定口座へ決済資金を送金することになります。海外送金は日本国内の資金送金よりも完了までに日数を要するため、決済日に間に合わせるためには余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
3-6.登記済証の提出
日本と違って、海外では物件所有権の登記済証が発行されるまでに時間がかかることもあります。ローン実行後に銀行または保証会社から登記済証の提出を求められることがあるため、登記済証の発行スケジュールを事前に確認することが重要です。
例えば、アメリカではそれほど時間がかかりませんが、新興国の不動産投資では、発行までに数ヶ月以上の期間がかかることもあります。あらかじめ売主に必要期間を確認しておくと、ローン契約の時に銀行へ説明できるためトラブル防止に役立ちます。
4.海外不動産投資では物件の見極めが特に重要
日本国内の金融機関でローンを利用するとしても、海外不動産投資では国内不動産投資よりも多額の初期費用が必要になることも少なくありません。
このような状況の中で、「海外で安い物件に投資すれば良いのではないか?」と考える方もいるでしょう。しかし、安価な物件には特に注意は必要です。
東南アジアを中心とした新興国では、首都の中心地近郊の物件が数百万円程度の価格で売られていることも多いものです。しかし、安い物件には安い理由があり、その背景についてしっかり確認する必要があります。
例えば、首都から車で数十分の立地と言えば、日本の地理に当てはめれば「東京都内の郊外」程度に感じられる方もいると思いますが、経済の落ち込み具合などが盛んに報じられているとはいえ、日本は世界中を見渡しても有数の先進国です。
新興国と日本とでは「首都郊外」の意味が大きく異なります。新興国では首都郊外に質の良い居住者がいるとは限りません。また、日本国内と海外とでは建物の品質が根本的に異なるのが実態です。特に新興国で建設費用の安い建物は、本当に質の悪い建設会社が建てていることも多いものです。
日本は治安が良い国として世界的に有名です。多少犯罪率が高いエリアであっても、建物に危害を加えられるようなことは少ないと言えるでしょう。しかし、新興国では首都近郊であっても、人が少ない場所では犯罪のリスクは比較して高いのです。
先進国についても同様に、安い物件には何らかの形でリスクが内在しています。
例えば、アメリカでは人が集まる都心の不動産は最低でも十万ドル以上するケースが大半です。数万ドル程度で購入できる物件は、治安が悪いなど何らかの特徴を持ったエリアに立地しているものがほとんどとなっています。
いずれにしても、現地の雰囲気を確かめてみないことには、正しい購入の判断を下すのが難しいでしょう。海外不動産投資で安価な物件の購入を検討する際は特に、現地確認と不動産エージェントへのヒアリングを徹底することが必須です。
まとめ
海外不動産投資で最もローンを利用しやすいのはアメリカ不動産投資です。ハワイやカリフォルニアなどエリアはある程度限定されるものの、ローンを利用できる銀行が複数あります。
ただし、ローンを利用できても融資総額・金利の条件ともに厳しくなり、国内不動産投資と比較すれば資金調達の難易度は高いと言えます。
また、例えばオリックス銀行のローンを利用して日本国内の不動産を担保に入れるのであれば、海外よりも国内不動産の拡大を考慮した方が多くのメリットを得られるケースもあるでしょう。
アメリカは海外不動産投資の中でも比較的低リスクと言えるものの、エリアによってリスクの大きさが異なるため、エリアと物件の選定にあたっては慎重になることが求められると言えます。
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